インドへのロードマップ

インドでの消費者情報、広告媒体情報などに特化したブログです。

インドのテレビ所有率

2006-02-17 23:20:07 | インドの基本データ
インドの家庭にテレビはどれくらい普及しているのでしょう。
上のグラフはNRS(National Readership Sruvey)という媒体
関係の調査の2005の数値をもとにしています。農村部を除い
た都市部のSEC AからEまで(つまり金持ちから貧しい世帯ま
でのあらゆる世帯)の数値が上の段、そして、SEC Aのみ
(つまり金持ち層)で見た数字が下の段になります。

テレビの所有率でみますと、全体では、約半数の世帯がまだ
テレビを所有していないということになりますが、お金持ち
層では95%以上の世帯がテレビを持っています。

次にカラーかモノクロかという項目がありますが、インドで
は未だにモノクロテレビが存在しています。他の国ではモノ
クロテレビ自体見る事はまれなのですが、インドではテレビ
を持っている人たちの約半数がモノクロです。しかしながら
お金持ち層では、ほとんどカラーテレビというふうになりま
す。ちょっと前まで、大半のテレビがモノクロだったのです
が、カラー化は急速に進展してきています。

さてその次はリモコンタイプかそうでないかということです。
これも、テレビを持っている世帯で約半数がリモコンタイプ
ではないテレビということですが、お金持ち層では当然リモ
コンタイプが多くなります。

インドにおいて携帯電話、自動車、パソコンなどの普及率は
全体でみると非常に低いのですが、テレビはそれらに比べる
とかなり高い普及率になっています。

テレビと言うと日本製と思いきや、実は、人気が高いのは、
LGとサムスン、それからオニダとかビデオコンというインド
のブランドなど。日本のブランドは苦戦しています。

この一月にハイデラバードのマリオットホテルに泊まったの
ですが、部屋にあったテレビは、LGのフラットパネルのLCD
テレビでした。ホテルの部屋でそれを見たのははじめてで、
さすがハイデラバードは最先端だと感心したものでした。

インドの数字のシステム

2006-02-07 22:19:22 | インドの基本データ
この間、インドのラック(Lakh)とクロー(Crore)に関して
お知らせしましたが、やはり上には上がありました。インド
人の知り合いに問い合わせていたのですが、この上の表のよ
うなシステムになっているのがわかりました。

数字が二つづつで、位があがっていきます。ゼロの数は見事
な奇数の序列です。クローの上のゼロが9個ついたものを
アラブ(arab)といいます。日本語にすと10億です。さらに
その上、ゼロが11個ではカラブ(kharab)となります。千億
です。その上は、ほとんど使わないそうですが、ニール、
パドマ。シャンク、マハシャンクというふうになっていきま
す。

これはあくまでも昔のインドのシステムで、現代では、例え
ばゼロが12個ついた場合(日本語では一兆)、1lakh crores
のように言う場合もあるのだとか。知っていないとわけが
わからなくなります。国家予算をルピーで表記するときには
使われるのでしょうか。

パドマとか、カラブというのは、ヒンディー語では時々使わ
れることもあるらしいのですが、インド人でも知らない人も
多いかもしれません。

アラブ(十億)の語源はわかりませんが、地名のアラブと関連
しているとしたら面白いですね。アラブの民と言ったら、十億
の民ということになるのかもしれません。

アラブ以上の数字は、めったに使う事はないので、覚えておく
必要はあまりないですが、普通のインド人も知らないインドの
ことを知っておくと、何かで得することもあるかもしれません。






インドの新聞における発行部数と購読者数

2006-02-03 11:42:47 | インド雑学
インドには新聞がいろいろあります。英語の新聞から、地域
語の新聞まで様々です。2000年のデータでは379の新聞タイ
トルが存在し、監査されていない新聞まで含めると3500もの
新聞が存在しているということです。

世界新聞協会(WAN)が発表した2004年度の調査によりますと、
一日あたりの新聞発行部数は、中国が一位の約9350万部、
二位がインドで、7880万部、三位が日本の7040万部という
ランクなので、インドではかなりの新聞が消費されている
ことになります。人口が多いので一人当たりの数は日本に
負けてしまいますが。

インドの新聞は、その発行部数および読者数を、ABC (Audit
Bureau of Circulation)という管理局で監査されます。発行
部数(circulationと言います)と、読者数(readershipと
言います)は、インドでは極端に違います。

それは何故か?インドでは新聞は一人で読むものではないの
です。家族で、親戚で、そして会社で、みんなで回し読む。
その数字が読者数に反映されてきます。この回し読みという
行為は田舎に行くほど顕著になります。

一つの新聞を何人で共有するのかというのは、新聞によって
異なります。それはきちんとオーディットされているという
ことなのですが、ある新聞は3、4人で読み、ある新聞は10
人くらいで読むというその根拠が何かアバウトな感じもする
のですが、一応そのような形でモニターされています。

インドの新聞は(雑誌も同じですが)、発行部数で見るのか、
読者数で見るのかによって、ランキングが大きく変わります。

インドで発行部数が最も多い新聞は、英字紙のTimes of India
で、トータルの発行部数は257万部です(2005年)。この上の
写真の手前に写っている新聞です。この新聞についてはまた
後日詳しく解説しますが、ムンバイをベースに、インドの主要
メトロをだいたいカバーしています。

読者数で見た場合は、発行部数では7位くらいのヒンディー語
の新聞のダイ二ク・バスカル(Dainik Bhaskar)が一千万人以上
の読者ということになり一気にナンバーワンに躍り出るのです。
読者数という点で見ると、ヒンディー語の新聞、テルグ語の新
聞、マラヤラム語の新聞などが上位にランクアップされます。

インドで一番の新聞と言った場合、Times of IndiaもDainik
Bhaskarも両方とも一番を主張できるので、注意しないといけま
せん。また英字紙としては一番、ヒンディー語としては一番、
テルグ語としては一番とか、チェンナイでは一番とか、歴史の
長さでは一番とか、いろんな切り口でナンバーワン(インド人
の発音ではヌンベルワン)を主張してくるのでよくわからなく
なるので注意しましょう。

インドは新聞に限らず、かなり自己アピールの強い傾向があり
ます。ちなみに、Times of IndiaはUSA Todayの発行部数
(230万部)を抜いて、英語の新聞としては、昨年ヌンベルワン
になったと自慢しておりました。日本の新聞の発行部数には負
けますが。

インドの新聞(とくに英字紙)は、近年、カラーページが増え、
印刷もかなり奇麗になりました。英語の文章ということに関し
てはインドの英字新聞はきちんとした格調の高い文章を書くの
で、シンガポールのストレーツタイムズを読むよりは、英語の
勉強になる、とシンガポールに住むインド人の人が言っていま
した。インドの英字新聞の文章は、確かに難しい単語を使った
り、関係代名詞などを使って長々とした文章になったりして、
我々からすると読みにくいこと限りないです。やっぱりインド
人ってそういう文章読解能力にも優れているのですね。

インドの数字の位取りに関して

2006-02-02 00:31:41 | インド雑学
インドでビジネスをしていると、ラック(Lakh)とかクロー(Crore)
という言葉が頻繁に現れ、最初は戸惑います。最初だけではなく、
私などは今でもわけがわからなくなってしまいます。

インドでは、数が大きくなると、Millionなどの西洋の単位では
なく、10万を1ラック、100万を10ラックスというふうに表しま
す。1000万になると、100ラックスとは言わずに、1クローとい
ふうに位がアップします。そして、1億が10クローになります。
それ以上の単位もあるのかもしれませんが、それ以上は寡聞に
して知りません。

このLakh(LakとかLacとか表記されたりもします。複数形はsを
つけます)とか、Croreとかは、インドでビジネスをしていると
しょっちゅう出てきます。日常的な買い物程度では、あまり関
系ないのですが、仕事での取引で、何十万ルピーだとかの金額
になるとラックスが登場してきます。また人口統計だとかにな
るとムンバイの人口は1.6クロー(1600万)とか表現したりす
るのです。

この数字の位取りに関して、どこかのサイトで誰か解説してい
ないかと探してみたのですが、なかなか見つかりませんでした。
インドでのビジネスにおいてはきわめて重要な概念なのですが、
誰もこのことに関して触れていないのは納得がいきません。と
いうわけで、この件に関しては自分で解説を書かなければと思
いたったわけです。

実は、何年もの間、インド人と金額交渉や、媒体の読者数など
に関して打ち合わせしている時に、このラックスやクローが出
てきて、そのつどゼロがいくつだったかなと計算しなおさなけ
ればならずとても非効率でした。いつもわけがわからなくなり、
と言って調べてもなかなか出てないので、この記事に記した、
1ラック=10万、1クロー=1000万というのは、実は自分用の
メモです。

インドのこの独特の位取りの歴史的な背景はよくわからないの
ですが、おそらく何か深い哲学的な思想が背後にあるのかもし
れません。何しろ、数字のゼロの概念を発見したのはインド人
だと言われていているくらいで、また果てしなく大きな数の、
無量大数に至るまでの数のシステムもインドで作られた概念と
聞いていますので、ラックやクローの背後に潜む謎をご存じの
方は是非ともご教授いただきたく存じます。

インドの数字に関して考えていると、果てしないラビリンスに
迷い込むような気がして、そしてそれは仏教の奥義と接してい
るような、そしてまた最先端の高等数学や、コンピュータにお
けるデジタルの考え方にもひょっとしたら通じているのかとも
想像されたりして、チャネリングの境地に到達しそうになって
しまいます。

数学的に、このインドの位取りがどんなもんかという分析は、
専門の方におまかせするとして、上の図でも示した通り、ラッ
クと、クローの位取りでゼロにカンマを入れてみます。する
と、千のくらいで一つのカンマ、そしてゼロが二つでラック
のカンマ、そしてまたゼロが二つでクローのカンマとなります。

欧米の位取りは、3、3、3と3が基本になります。ゼロ3つ
でカンマが入ります。それに対してインドは、3、2、2とい
うふうになります。ゼロの数だけ並べると何か不規則ですが、
ゼロの合計数でみると、最初のゼロ3つで千になり、トータル
5つでラックになり、トータル7つでクローになるという規則
性があるのがわかります。3、5、7ときちんと奇数になって
いるのです。これに気付いたときは、自分でもすごい発見かと
思ったのですが、だからこれがどんな意味を持つのかというこ
とまではわかりません。インド人のことだからおそらくこれに
は我々にわからないような科学的な思想が隠されているのかも
しれません。

このゼロ二つづつでの位取りですが、以前、インドから来た
見積もりに、千の位のカンマにゼロ二つでまたカンマがついて
いるのがありました。インド人はそれをラックのカンマとして
用いていました。ところが、我々はそんなのを見た事がありま
せん。西欧流のやり方に染まっている我々は、そのカンマのつ
けかたを、何かのミスとして扱ってしまいました。ゼロを一個
うっかりとタイプミスしてしまっていると。

ラックのことを知っていれば、それはそういう位取りだと分か
のですが、知らないと、大変な誤解につながります。そのカン
マの付け方は、インドではごく普通に行われる方式だったので
す。インド関係のお仕事をされる方はそのことを頭のどっかに
記憶しておいてもらえると、このような誤解を未然に防ぐこと
ができます。

日本の位取りは、一十百千万億兆というふうになっていますが、
実はゼロが4つづつで位があがるというシステムです。本来は、
数字表記を欧米に合わせてゼロ3つごとにカンマをうつのでは
なく、4つめごとにカンマをうてば、日本語としては数字を読
みやすくなります。日本のカンマは、日本の位取りと一致して
いないので、非常に読みにくいのです。インドと同じように、
我が道を行くで、4つのゼロでカンマというシステムにしたら
よかったのかもしれません。今となっては遅いですが。

インドで話をしていて、ここに書いてある30クローというのは
300ミリオンだとか説明されると余計にこんがらがってしまいま
す。大きな数字になるとどうしても日本語の概念で把握する癖
が抜けきれず、30クローというのは3億だと理解したほうが楽
になります。クローには本当に苦労させられます。

インドは、掛け算の九九を99x99まで覚えさせられるというのは
有名な話です。九九九九となってしまい、なかなか苦しそうな
勉強です。しかしこの計算能力がインド人を数学に強くしている
のですね。シンガポールの両替商はインド人が多いですが、お金
の計算や、おつりの計算の仕方はかなり速いです。

インド人は、おそらくラックとかクローという概念を使い、大き
な数字をひとまとめにして扱うことでメリットを得ているような
気がします。日本のようにゼロが4つでやっと万が億になるとい
のだと、ちょっとITの時代には合わないのかもしれません。イン
ド人がITに強いというのも数字の位取りに秘密があるのかもしれ
ませんね。

SEC (Socio Economic Classification)

2006-02-01 12:18:02 | インドの基本データ
各国で消費者をクラス分けする場合に、所得によって数段階に
分類するのが普通ですが、インドの場合SECに基づいて、区分を
します。SECとはSocio Economic Classificationの頭文字を取っ
たものです。

SECはAからEまで大きく5段階に区分されていて、さらにそれぞ
れがA1とかA2とかに区分されます。A1はさらにA1+とかA+のよう
にさらにAクラスの中でも上位層を区分けする場合もあります。

SEC Aとか、SEC A1というふうに、常にSECを頭につけて表記し
ます。これをどう発音するのか、よくわからなかったのですが、
現地でのマスコミ関係の人たちは、一般的に「エスイーシーA」
とか「エスイーシーAワン」のように発音しているのがわかりま
した。「セックA」というふうに発音したりもするのかなと思っ
たのですが、そういうケースはありませんでした。

それではこのSECの区分ってどうやって決まるのかということを
ご説明いたしましょう。これには所得は関わってきません。
結果的には所得との相関関係はあるのでしょうが、SECに関して
は所得は問題にしません。それでは何を基準にして区分をして
いるのでしょうか。

上の図がそのマトリックスですが、横軸が学歴、縦軸が職業です。
学歴と職業だけで消費者をランク分けするのです。上の図の横軸
の青い部分ですが、左のほうから、Illiterate(文字の読み書き
ができない人)、5年未満の教育、というのからだんだん上がっ
ていき、左に行くに従って大卒というふうになっていきます。

縦軸は上のほうから、未経験のワーカーというところから始まり、
一番下は10人以上の従業員を持つビジネスマンというようになっ
ています。このマトリックスで右下のエリアに該当すればA1とい
うふうになります。これは一家の家長を基準にしますので、その
妻や子供も家長のSECが適用されます。

これは法的には何の効力がないもので、あくまでも消費者を把握
するための分類方法です。

このようにSECでインド消費者を区分するとどのような人口比率に
なるのかを見てみますと、以下のような比率になります。
A: 10%
B: 16%
C: 21%
D: 23%
E: 30%
データソースはIRS(India Readership Survey 2003)で、都市部
の世帯におけるSECの比率です。

農村部に行くと、このピラミッド構造はさらに末広がりになりま
す。長期的に見ると、都市部のピラミッド構造は次第に上に持ち
上がってきて、紡錘型あるいはダイヤモンド型に近くなっていく
ことが予測されています。

特に購買力のあるSEC Aにのみ着目しますと、彼らの大半は大都
市に住んでいます。A1に限ると、デリー、ムンバイなどの巨大
メトロに住んでいる確率が高くなります。

自動車や、プラズマテレビはインドでも盛んに広告されています
が、高額の耐久消費財のマーケティングということを考えると、
Aクラスの多い、巨大メトロをピンポイントで攻めていくという
のが効率のよいマーケティング手法になります。

SEC Aの人口を、都市別に見てみますと、2005年のIRSのデータに
よれば、次のようなランキングになっています。
1. デリー: 2,934,000
2. グレータームンバイ:1,975,000
3. コルカタ: 1,709,000
4. ハイデラバード:707,000
5.チェンナイ:655,000
6. バンガロール: 566,000
7. アーメダバード:408,000
8. プネ:315,000

すべての人口で見ると、ムンバイが一位で、コルカタが二位なの
ですが、SEC Aのみの人口で見ると、デリーがトップになります。
また総人口では6位のハイデラバードがSEC A人口のみでみますと
チェンナイ、バンガロールを抜いて4位に入っているというのは
注目です。

ハイデラバードは、近年IT都市として注目されていて、マイクロ
ソフトやオラクルなども拠点をハイデラバードの置いています。
ビルゲーツや、クリントンもハイデラバードを訪問しています。
私もこの1月にハイデラバードを訪問してきましたが、確かに他
の都市に比べて、奇麗な感じはしました。

バンガロールはSEC Aの人口からすると、予想外に低迷しています。
インドのシリコンバレーと騒がれていたにしては、SEC Aの人口が
思ったほどにはありません。この1月にはバンガロールも訪問し
ましたが、不動産関係は相変わら伸びていて、人々はリッチな感じ
がしたのですが、話題が先行しすぎているのかもしれません。

ということでSECという切り口で、さらに都市ごとに見て行きます
と複雑なインドも何となく見えてくるのではないでしょうか。

インドの人口の読み方

2006-01-31 18:38:28 | インドの基本データ
中国の人口は約13億人、そしてインドは約10億5000万人。
人口規模だけで見ると中国が世界一なのですが、インドは29才以
下で6割を占めています。しかし中国は5割以下です。65才以上
の高齢者比率で見ると、中国は7.1%、インドは4.6%です。中国
では、明らかに高齢化の問題と、労働人口不足という問題を近未
来に抱えています。

中国は一人っ子政策が1979年に始まってから、生まれてくる子供
の数が制限されているので、人口ピラミッドは紡錘型となってい
ます。それに対して、インドはピラミッド型に近く、しばらくの
間は労働力不足に悩む心配はありません。25才以下の人口で比較
すると、すでにインドが中国を越えているという話です。労働力
という点だけから見ると、インドがやがて中国を凌駕するのは時
間の問題です。

ここで、実際の中国の人口ピラミッドとインドのそれとを比較し
ていただくために、参考となるサイトをご紹介します。

中国の人口ピラミッドと性比

インドの人口ピラミッドと性比

上記ページに詳しく解説されていますが、中国の人口はやがて日
本のような高齢化問題(人口の少ない若年層が、多すぎる高齢者
を支えきれなくなる)に直面せざるをえなくなり、様々な問題を
引き起こす危険性を孕んでいます。それに対して、インドの人口
構成は、豊富な労働人口を今後しばらく安定して供給できる状況
です。

また人口的にもあと30年したらインドの人口が中国を抜くと予測
されています。その頃には中国はかなりの高齢者をかかえること
になるので、社会システムがうまく維持できるかどうかという心
配があります。

先ほど参照させていただいたページに、インドと中国の男女比率
に関してのグラフがありましたので、補足させていただきます。
この前の記事で、インドは男性の比率が高いと説明いたしました
が、中国もその傾向があるのですね。一人っ子政策がスタートし
てから、男子比率が増加(その理由は上記サイト参照)している
だけではなく、人民共和国成立以前から男性重視の伝統があった
ようです。この男女比のアンバランスから、男性の結婚難の問題
も出ています。

インドの人口の話から中国に話題がそれてしまいましたが、再び
話を戻して、インドの人口について説明していきます。インドの
人口は、年齢的に見て「若々しい」構造を持っているというのを
お分かりいただけたと思いますが、マーケティングの対象として
見る場合これらすべてがターゲットと捉えるのは間違いです。

この前の記事でも説明したとおり、文字の読み書きのできない層、
商品を購入するための収入を得られていない層を除外して考えな
いといけません。インドの消費者は、マーケティングの視点で、
SEC(Socio Economic Classification)という切り口でAからEまで
の5段階に区分されます。これはカースト制とか、身分制度とか
とは無関係です。このSECに関しましては、また改めてご説明し
ます。

インドの人口は、大半が農村部に住んでいます。インドの全人口
の約7割が人口5000人以下の村に住んでいると言われています。
これは中国も同様の傾向です。都市部の比率は3割以下ですが、
高所得者の大半が大都市に住む傾向があります。また農村部は
高所得者の比率が低く、広告しようとしても効率が非常に悪い
ため、あまり重視されません。

大都市をインドではメトロと呼びますが、ムンバイ、デリー、
バンガロール、コルカタ、チェンナイ、ハイデラバード、プネ、
アーメダバードの8都市を「8大メトロ」と称したりしていて、
重要なターゲットになります。インドマーケティングでは、
インド全体をカバーするというのは不可能に近く、かなりセグ
メントされたターゲットを設定しなければなりません。詳細は
また追々お伝えしていきたいと思います。

インドの識字率

2006-01-30 22:51:26 | インドの基本データ
インドへのマ-ケティングを考える上で、「識字率」が問題に
なります。日本やシンガポールなどでは、識字率が問題になる
ことはほとんどないのですが、インドでは大きな問題です。

消費者は、年齢、性別、職業などの属性でデモグラフィックに
分類されますが、インドではこれに「識字率」が加わります。
通常のマーケティングでは、文字を読めない消費者を相手にす
るということはあまりありませんが、その実態を把握しておく
のは重要です。

教育の向上により、識字率は着実に上昇しています。1970年初
頭には32%だった識字率は、2001年に入って65%を越えました。
大変な成長率です。しかし、35%くらいの人はまだ文字の読み
書きができません。総人口を10億とすると、3億5千万人の人
が読み書きができないのです。

これはあくまでも平均数値のお話しですが、男女別、地域別で
見ると、格差が歴然としてあり、その悲惨な現実に驚かざるを
えません。

まず、男女差です。日本とかだと、女子生徒のほうが勉強熱心
の感じがするのですが、インドではこれが全く違うのです。
インドでは、女性のほうが圧倒的に識字率が低いのです。

2000年までは女性の識字率は5割に達しませんでした。2001年
になって、やっと54%を越えた程度です。2001年時点で、男性
の識字率は76%ありますので、その差の大きさにびっくりして
しまいます。

女性の識字率が低いのは何故かを追求していくと、非常に複雑
な社会問題に触れざるをえません。実は、インドの人口の男女
比率を見ると、50:50ではないのです。男性の数が女性の数を
上回っています。これも識字率と同じような根の深い問題に繋
がっているのです。

インドは男尊女卑の歴史が長く、女性は虐げられてきました。
男性に比べて劣るものと認識されていましたので、結婚式の時
には、嫁入りする相手の家に多額の金品(ダウリ)を贈与しな
いといけないということです。貧しい農家などでは、女の子が
生まれるのは迷惑なこととなります。また、結婚した後でも、
ダウリの不足が原因でのイジメや殺人事件が後をたたないよう
です。

そんなわけで、結果的に女性の人口が少なくなり、生まれても
あまり教育機会にも恵まれないのだそうです。詳細は、ブログ
に書くにはあまりも残酷でありますので、参考となるサイトを
ご紹介いたしますのでそちらをご参照ください。
インド最新事情_農村部に生きる少女達の現状と課題

私はこのレポートを読んで、恐ろしくなってしまいました。
インドの女性人口が何故少ないのか、またインドの女性の識字
率が低いのは何故かということに関して、非常に根深い問題が
あったのですね。

このレポートの最初に出ていますが、ケララ州は例外的に識字
率が高い州として有名です。このページに添付した図にもそれ
が明記されています。ケララ州とは、インドの半島の一番南の
左側(西海岸)にある州です。

ケララ州は、「ケララカレー」とかで有名ですが、教育レベル
の高さと、観光地としても有名です。ここは決して豊かな州と
いうわけではないのですが、伝統的に教育を重視してきていま
す。この州の言語は、マラヤラム語という言語ですが、マラヤ
ラ・マノラマというマラヤラム語の新聞は、発行部数でいうと
Times of Indiaにつぐ数を誇っています。

識字率が高いのはケララ州なのですが、高学歴ということに関
してはまた違うことになるというのが下のニュースに出ていま
したのでご参照ください。
学歴はデリーがトップ

識字率の高い州のトップ5は、ケララ州を除いては、比較的
小さな地域です。ミゾラムというのはミャンマー国境付近の
州です。ラクシャドウィープは、アラビア海に浮かぶ島嶼部
ですが、モルジブと同じようにイスラム教が優勢な地域です。

一方、一番低いのがビハール州。ガンジス河流域の州で非常
に貧しい州として有名です。参考サイトはこちらです。
ビハール州

ということで、インドの消費者を見る場合には、単に人口や
地域のみで把握するととんでもないことになる場合があります
ので注意しましょう。

インドは多言語国家

2006-01-29 13:40:07 | インドの基本データ
インドはヒンディー語が国語のように思ってしまうのですが、
実はかなりたくさんの言語が共存しています。その証拠にこの
インド紙幣の写真をご覧ください。500ルピー札の裏面の左端を
撮影してみたものです。

インドの紙幣に一番大きく表記されているのはヒンディー語と英語
ですが、、この左隅に小さくぎっしり書かれているのは、各地域
言語での表記です。

ここに表記されている言語は次の通りです。
1)アッサミー/マニプリ(アッサム州/マニプル州)
2)ベンガリ(西ベンガル州)
3)グジャラーティ(グジャラート州)
4)カンナダ語(カルナタカ州)
5)カシュミーリ(ジャッムカシミール州)
6)コーンクニー(ゴア)
7)マラヤラム(ケララ州)
8)マラティ(マハラシュトラ州)
9)ネパーリ(ヒマラヤ山麓)
10)オリヤー(オリッサ州)
11)パンジャビ(パンジャブ州)
12)サンスクリット
13)タミール(タミルナドゥ州)
14)テルグ(アンドラプラデシュ州)
15)ウルドゥー&シンディー(北インド)

これだけ見ても、インドの言語状況の複雑さが一目瞭然です。
中国も各地の中国語はかなり異なっているのですが、公式言語は
中国語(北京語、マンダリン)で、マスコミの言語も一本化され
ています。しかし、インドは複雑です。ヒンディー語が広く普及
していますが、ヒンディー語が強いのは北部地域で、東部地域、
南部地域ではそれぞれの言語が強くなります。

一番上のアッサミーはアッサム語ですが、マニプリ(マニプル語)
とは別言語なのですが、かなり似た言語と推測されます。また
その下のベンガリ(ベンガル語)とも似ていますが、どこが違う
のかは私はよくわかりません。ベンガリは、バングラデシュでも
話されていますので、人口的にはベンガル語は約2億人の人に
使われており、世界の中でも5、6位になります。

グジャラート州はインドの西のはずれにありますが、商才豊な
グジャラート商人は、インドの各都市にちらばり活躍しています。
4番めのカンナダ語というのは、カルナタカ州の言語ですが、
カルナタカ州の州都がバンガロールです。

5番目のカシュミーリに関しては、北部のインドパキスタン国境
付近で紛争のたえない地域なのですが、人口的には非常に少なく
インド全体の中ではマイナーな言語です。6番目のコンカニ語は
ゴアで話されている言語です。

7番目のマラヤラム語は、南部のケララ州で話されている言語です。
8番目のマラティ語は、ムンバイのあるマハラシュトラ州の言語
です。9番目のネパーリ(ネパール語)はネパール付近で話されて
います。10番目の中東部のオリヤーはオリッサ州の言語です。

11番目のパンジャビはデリーの近くのパンジャブ州の言語です。
その次のサンスクリットはインドの古代に公用語として使用されて
いて、宗教、学術、文学の分野で使われていた言語です。西洋での
ラテン語、ギリシャ語のような感じですね。今では、日常言語とし
てサンスクリットを使用している人はほとんどいないのですが、
公用語として認められています。

13番目のタミール語は、チェンナイのある南部タミルナドゥ州の
言語です。シンガポールにはタミール人が多いので、シンガポール
の公用語の一つにもなっています。

14番目のテルグ語は、ハイデラバードのあるアンドラプラデシュ州
の言語です。最後の、ウルドゥ語、シンディー語は同じ文字で表記
されています。ウルドゥ語とヒンディー語は基本的には同じ言語の
ようなのですが、文字が異なり、宗教も異なっているので、基本的
語彙もかなり異なってきているようです。ウルドゥーはパキスタン
の国語にもなっています。シンディーはパキスタンとインド国境付
近に住んでいるシンディー民族によって使われていますが、商人と
して各地で活躍しています。

このようにかなりの数の言語が存在しているのですが、インドの
複雑さは、同じ地域に複数言語が同時存在しているということです。
例えば、ゴアでは、コンカニ語が一番ポピュラーですが、それを
話す人は約半数、3割くらいがマラティ語を話し、0.5割くらいが
カンナダ語というように複雑です。

各言語の話者数比較および、各地域でのトップ3言語の情報が
インド国勢調査のサイトに出ています。
データはかなり古いですが、基本的な部分は大差ないと思われます。

このように言語が複雑に交錯するインドでは、公用語としての英語
の重要性は非常に高いです。とくにビジネスの世界では、英語は
キャリアアップのためにも必須条件となっているため、各言語より
もステータスの高い言語として認識されています。

マスコミの印刷媒体としては、新聞も雑誌も英語のものが圧倒的に
人気も品質も高いです。読者数で比べると、ヒンディー語の新聞、
雑誌が非常に多いですが、高所得者層に着目すると英語媒体という
ことになります。テレビの場合は、ヒンディー語の人気が高くなり
ます。

以下に、インドの言語に関して、参考になりそうなリンク情報を
添付しておきます。

インドの言語と文字
インドの言語と文字に関して、さらに詳しい表があります。

インドの言語と言語政策
インド各言語に関して、そのグループ分けおよび言語政策に関し
ての解説があります。

インフィニシスの外国語学習ソフト
このサイトにはインドで使われている数言語の学習用ソフトが
紹介されています。

アジア文字曼荼羅インド系文字
インドの文字に関する紹介が出ています。アジアアフリカ言語
研究所のサイトです。

インド関係ブログ本日開店

2006-01-28 16:55:35 | インドの基本データ
初めまして、シンガポールの広告代理店K&L Advertising Asia
の岩本と申します。本日より、インド関係のブログを立ち上げ
ます。今後ともよろしくお願いいたします。

インドはこのところ日本のマスコミでかなり注目されています。
シンガポールでもインド関係のセミナーが最近何度もあり、
インドへの興味は留まるところを知りません。

実は私は別のブログを持っていたのですが、インド関係の真面目
なテーマだけ独立させたほうがよいのではと思い、このブログ
立ち上げを決意いたしました。

私のところの会社は、零細企業なのですが、インド関係の広告の
仕事はわりと多く、数年前から、テレビ、新聞、映画館、屋外
看板、雑誌などの広告媒体の扱いを行ってきました。

インド国内に会社を持っていないのですが、シンガポールから
俯瞰的にインドを眺めている感じです。かなりローカルな仕事は
現地パートナーと一緒に行うこともありますが、主要媒体の扱い
はシンガポールからでも十分にできます。

インドは、中国と同じで、その巨大さと複雑さゆえ、なかなか
全体像を明確に把握することができません。インド人がインドの
全体像を把握しているかというとそういうこともなく、どこの
都市で、どんなレベルの生活をしているのか、どんな仕事をして
いるのかによって、その情報はまるきり違います。

また、実際にインドの都市を訪問してみても、まず目につくのは
貧困と交通渋滞とインフラの劣悪さ。しかしそれがインドのすべて
ではありません。一方、マスコミで話題になるのがバンガロール
などのIT産業。しかしそれもインドの一面であり、すべてではあり
ません。インドは何を見るかによって全く違った見え方をします。

中国は、方言がいくつもあるとは言っても、国語は中国語(北京
語=マンダリン)です。しかしインドは、言語状況はかなり複雑
です。インドと言えばヒンズー語と想像されがちですが、そう簡単
ではありません。インドには十数種類の公用語があり、印刷物の
文字は全く異なります。

テレビもいろんな言語に対応したチャンネルが混在していて、衛星
やケーブルで見られるのですが、日本などとは全く異なった複雑さ
の媒体状況です。

1月の正月早々、インドに一週間ほど出張して、主要新聞社、雑誌
社、テレビ局を訪問し、情報収集してきました。

インドに関する情報をいろいろご紹介できればと思っております。
よろしくお願いいたします。