インドへのロードマップ

インドでの消費者情報、広告媒体情報などに特化したブログです。

インドの人口の読み方

2006-01-31 18:38:28 | インドの基本データ
中国の人口は約13億人、そしてインドは約10億5000万人。
人口規模だけで見ると中国が世界一なのですが、インドは29才以
下で6割を占めています。しかし中国は5割以下です。65才以上
の高齢者比率で見ると、中国は7.1%、インドは4.6%です。中国
では、明らかに高齢化の問題と、労働人口不足という問題を近未
来に抱えています。

中国は一人っ子政策が1979年に始まってから、生まれてくる子供
の数が制限されているので、人口ピラミッドは紡錘型となってい
ます。それに対して、インドはピラミッド型に近く、しばらくの
間は労働力不足に悩む心配はありません。25才以下の人口で比較
すると、すでにインドが中国を越えているという話です。労働力
という点だけから見ると、インドがやがて中国を凌駕するのは時
間の問題です。

ここで、実際の中国の人口ピラミッドとインドのそれとを比較し
ていただくために、参考となるサイトをご紹介します。

中国の人口ピラミッドと性比

インドの人口ピラミッドと性比

上記ページに詳しく解説されていますが、中国の人口はやがて日
本のような高齢化問題(人口の少ない若年層が、多すぎる高齢者
を支えきれなくなる)に直面せざるをえなくなり、様々な問題を
引き起こす危険性を孕んでいます。それに対して、インドの人口
構成は、豊富な労働人口を今後しばらく安定して供給できる状況
です。

また人口的にもあと30年したらインドの人口が中国を抜くと予測
されています。その頃には中国はかなりの高齢者をかかえること
になるので、社会システムがうまく維持できるかどうかという心
配があります。

先ほど参照させていただいたページに、インドと中国の男女比率
に関してのグラフがありましたので、補足させていただきます。
この前の記事で、インドは男性の比率が高いと説明いたしました
が、中国もその傾向があるのですね。一人っ子政策がスタートし
てから、男子比率が増加(その理由は上記サイト参照)している
だけではなく、人民共和国成立以前から男性重視の伝統があった
ようです。この男女比のアンバランスから、男性の結婚難の問題
も出ています。

インドの人口の話から中国に話題がそれてしまいましたが、再び
話を戻して、インドの人口について説明していきます。インドの
人口は、年齢的に見て「若々しい」構造を持っているというのを
お分かりいただけたと思いますが、マーケティングの対象として
見る場合これらすべてがターゲットと捉えるのは間違いです。

この前の記事でも説明したとおり、文字の読み書きのできない層、
商品を購入するための収入を得られていない層を除外して考えな
いといけません。インドの消費者は、マーケティングの視点で、
SEC(Socio Economic Classification)という切り口でAからEまで
の5段階に区分されます。これはカースト制とか、身分制度とか
とは無関係です。このSECに関しましては、また改めてご説明し
ます。

インドの人口は、大半が農村部に住んでいます。インドの全人口
の約7割が人口5000人以下の村に住んでいると言われています。
これは中国も同様の傾向です。都市部の比率は3割以下ですが、
高所得者の大半が大都市に住む傾向があります。また農村部は
高所得者の比率が低く、広告しようとしても効率が非常に悪い
ため、あまり重視されません。

大都市をインドではメトロと呼びますが、ムンバイ、デリー、
バンガロール、コルカタ、チェンナイ、ハイデラバード、プネ、
アーメダバードの8都市を「8大メトロ」と称したりしていて、
重要なターゲットになります。インドマーケティングでは、
インド全体をカバーするというのは不可能に近く、かなりセグ
メントされたターゲットを設定しなければなりません。詳細は
また追々お伝えしていきたいと思います。

インドの識字率

2006-01-30 22:51:26 | インドの基本データ
インドへのマ-ケティングを考える上で、「識字率」が問題に
なります。日本やシンガポールなどでは、識字率が問題になる
ことはほとんどないのですが、インドでは大きな問題です。

消費者は、年齢、性別、職業などの属性でデモグラフィックに
分類されますが、インドではこれに「識字率」が加わります。
通常のマーケティングでは、文字を読めない消費者を相手にす
るということはあまりありませんが、その実態を把握しておく
のは重要です。

教育の向上により、識字率は着実に上昇しています。1970年初
頭には32%だった識字率は、2001年に入って65%を越えました。
大変な成長率です。しかし、35%くらいの人はまだ文字の読み
書きができません。総人口を10億とすると、3億5千万人の人
が読み書きができないのです。

これはあくまでも平均数値のお話しですが、男女別、地域別で
見ると、格差が歴然としてあり、その悲惨な現実に驚かざるを
えません。

まず、男女差です。日本とかだと、女子生徒のほうが勉強熱心
の感じがするのですが、インドではこれが全く違うのです。
インドでは、女性のほうが圧倒的に識字率が低いのです。

2000年までは女性の識字率は5割に達しませんでした。2001年
になって、やっと54%を越えた程度です。2001年時点で、男性
の識字率は76%ありますので、その差の大きさにびっくりして
しまいます。

女性の識字率が低いのは何故かを追求していくと、非常に複雑
な社会問題に触れざるをえません。実は、インドの人口の男女
比率を見ると、50:50ではないのです。男性の数が女性の数を
上回っています。これも識字率と同じような根の深い問題に繋
がっているのです。

インドは男尊女卑の歴史が長く、女性は虐げられてきました。
男性に比べて劣るものと認識されていましたので、結婚式の時
には、嫁入りする相手の家に多額の金品(ダウリ)を贈与しな
いといけないということです。貧しい農家などでは、女の子が
生まれるのは迷惑なこととなります。また、結婚した後でも、
ダウリの不足が原因でのイジメや殺人事件が後をたたないよう
です。

そんなわけで、結果的に女性の人口が少なくなり、生まれても
あまり教育機会にも恵まれないのだそうです。詳細は、ブログ
に書くにはあまりも残酷でありますので、参考となるサイトを
ご紹介いたしますのでそちらをご参照ください。
インド最新事情_農村部に生きる少女達の現状と課題

私はこのレポートを読んで、恐ろしくなってしまいました。
インドの女性人口が何故少ないのか、またインドの女性の識字
率が低いのは何故かということに関して、非常に根深い問題が
あったのですね。

このレポートの最初に出ていますが、ケララ州は例外的に識字
率が高い州として有名です。このページに添付した図にもそれ
が明記されています。ケララ州とは、インドの半島の一番南の
左側(西海岸)にある州です。

ケララ州は、「ケララカレー」とかで有名ですが、教育レベル
の高さと、観光地としても有名です。ここは決して豊かな州と
いうわけではないのですが、伝統的に教育を重視してきていま
す。この州の言語は、マラヤラム語という言語ですが、マラヤ
ラ・マノラマというマラヤラム語の新聞は、発行部数でいうと
Times of Indiaにつぐ数を誇っています。

識字率が高いのはケララ州なのですが、高学歴ということに関
してはまた違うことになるというのが下のニュースに出ていま
したのでご参照ください。
学歴はデリーがトップ

識字率の高い州のトップ5は、ケララ州を除いては、比較的
小さな地域です。ミゾラムというのはミャンマー国境付近の
州です。ラクシャドウィープは、アラビア海に浮かぶ島嶼部
ですが、モルジブと同じようにイスラム教が優勢な地域です。

一方、一番低いのがビハール州。ガンジス河流域の州で非常
に貧しい州として有名です。参考サイトはこちらです。
ビハール州

ということで、インドの消費者を見る場合には、単に人口や
地域のみで把握するととんでもないことになる場合があります
ので注意しましょう。

インドは多言語国家

2006-01-29 13:40:07 | インドの基本データ
インドはヒンディー語が国語のように思ってしまうのですが、
実はかなりたくさんの言語が共存しています。その証拠にこの
インド紙幣の写真をご覧ください。500ルピー札の裏面の左端を
撮影してみたものです。

インドの紙幣に一番大きく表記されているのはヒンディー語と英語
ですが、、この左隅に小さくぎっしり書かれているのは、各地域
言語での表記です。

ここに表記されている言語は次の通りです。
1)アッサミー/マニプリ(アッサム州/マニプル州)
2)ベンガリ(西ベンガル州)
3)グジャラーティ(グジャラート州)
4)カンナダ語(カルナタカ州)
5)カシュミーリ(ジャッムカシミール州)
6)コーンクニー(ゴア)
7)マラヤラム(ケララ州)
8)マラティ(マハラシュトラ州)
9)ネパーリ(ヒマラヤ山麓)
10)オリヤー(オリッサ州)
11)パンジャビ(パンジャブ州)
12)サンスクリット
13)タミール(タミルナドゥ州)
14)テルグ(アンドラプラデシュ州)
15)ウルドゥー&シンディー(北インド)

これだけ見ても、インドの言語状況の複雑さが一目瞭然です。
中国も各地の中国語はかなり異なっているのですが、公式言語は
中国語(北京語、マンダリン)で、マスコミの言語も一本化され
ています。しかし、インドは複雑です。ヒンディー語が広く普及
していますが、ヒンディー語が強いのは北部地域で、東部地域、
南部地域ではそれぞれの言語が強くなります。

一番上のアッサミーはアッサム語ですが、マニプリ(マニプル語)
とは別言語なのですが、かなり似た言語と推測されます。また
その下のベンガリ(ベンガル語)とも似ていますが、どこが違う
のかは私はよくわかりません。ベンガリは、バングラデシュでも
話されていますので、人口的にはベンガル語は約2億人の人に
使われており、世界の中でも5、6位になります。

グジャラート州はインドの西のはずれにありますが、商才豊な
グジャラート商人は、インドの各都市にちらばり活躍しています。
4番めのカンナダ語というのは、カルナタカ州の言語ですが、
カルナタカ州の州都がバンガロールです。

5番目のカシュミーリに関しては、北部のインドパキスタン国境
付近で紛争のたえない地域なのですが、人口的には非常に少なく
インド全体の中ではマイナーな言語です。6番目のコンカニ語は
ゴアで話されている言語です。

7番目のマラヤラム語は、南部のケララ州で話されている言語です。
8番目のマラティ語は、ムンバイのあるマハラシュトラ州の言語
です。9番目のネパーリ(ネパール語)はネパール付近で話されて
います。10番目の中東部のオリヤーはオリッサ州の言語です。

11番目のパンジャビはデリーの近くのパンジャブ州の言語です。
その次のサンスクリットはインドの古代に公用語として使用されて
いて、宗教、学術、文学の分野で使われていた言語です。西洋での
ラテン語、ギリシャ語のような感じですね。今では、日常言語とし
てサンスクリットを使用している人はほとんどいないのですが、
公用語として認められています。

13番目のタミール語は、チェンナイのある南部タミルナドゥ州の
言語です。シンガポールにはタミール人が多いので、シンガポール
の公用語の一つにもなっています。

14番目のテルグ語は、ハイデラバードのあるアンドラプラデシュ州
の言語です。最後の、ウルドゥ語、シンディー語は同じ文字で表記
されています。ウルドゥ語とヒンディー語は基本的には同じ言語の
ようなのですが、文字が異なり、宗教も異なっているので、基本的
語彙もかなり異なってきているようです。ウルドゥーはパキスタン
の国語にもなっています。シンディーはパキスタンとインド国境付
近に住んでいるシンディー民族によって使われていますが、商人と
して各地で活躍しています。

このようにかなりの数の言語が存在しているのですが、インドの
複雑さは、同じ地域に複数言語が同時存在しているということです。
例えば、ゴアでは、コンカニ語が一番ポピュラーですが、それを
話す人は約半数、3割くらいがマラティ語を話し、0.5割くらいが
カンナダ語というように複雑です。

各言語の話者数比較および、各地域でのトップ3言語の情報が
インド国勢調査のサイトに出ています。
データはかなり古いですが、基本的な部分は大差ないと思われます。

このように言語が複雑に交錯するインドでは、公用語としての英語
の重要性は非常に高いです。とくにビジネスの世界では、英語は
キャリアアップのためにも必須条件となっているため、各言語より
もステータスの高い言語として認識されています。

マスコミの印刷媒体としては、新聞も雑誌も英語のものが圧倒的に
人気も品質も高いです。読者数で比べると、ヒンディー語の新聞、
雑誌が非常に多いですが、高所得者層に着目すると英語媒体という
ことになります。テレビの場合は、ヒンディー語の人気が高くなり
ます。

以下に、インドの言語に関して、参考になりそうなリンク情報を
添付しておきます。

インドの言語と文字
インドの言語と文字に関して、さらに詳しい表があります。

インドの言語と言語政策
インド各言語に関して、そのグループ分けおよび言語政策に関し
ての解説があります。

インフィニシスの外国語学習ソフト
このサイトにはインドで使われている数言語の学習用ソフトが
紹介されています。

アジア文字曼荼羅インド系文字
インドの文字に関する紹介が出ています。アジアアフリカ言語
研究所のサイトです。

インド関係ブログ本日開店

2006-01-28 16:55:35 | インドの基本データ
初めまして、シンガポールの広告代理店K&L Advertising Asia
の岩本と申します。本日より、インド関係のブログを立ち上げ
ます。今後ともよろしくお願いいたします。

インドはこのところ日本のマスコミでかなり注目されています。
シンガポールでもインド関係のセミナーが最近何度もあり、
インドへの興味は留まるところを知りません。

実は私は別のブログを持っていたのですが、インド関係の真面目
なテーマだけ独立させたほうがよいのではと思い、このブログ
立ち上げを決意いたしました。

私のところの会社は、零細企業なのですが、インド関係の広告の
仕事はわりと多く、数年前から、テレビ、新聞、映画館、屋外
看板、雑誌などの広告媒体の扱いを行ってきました。

インド国内に会社を持っていないのですが、シンガポールから
俯瞰的にインドを眺めている感じです。かなりローカルな仕事は
現地パートナーと一緒に行うこともありますが、主要媒体の扱い
はシンガポールからでも十分にできます。

インドは、中国と同じで、その巨大さと複雑さゆえ、なかなか
全体像を明確に把握することができません。インド人がインドの
全体像を把握しているかというとそういうこともなく、どこの
都市で、どんなレベルの生活をしているのか、どんな仕事をして
いるのかによって、その情報はまるきり違います。

また、実際にインドの都市を訪問してみても、まず目につくのは
貧困と交通渋滞とインフラの劣悪さ。しかしそれがインドのすべて
ではありません。一方、マスコミで話題になるのがバンガロール
などのIT産業。しかしそれもインドの一面であり、すべてではあり
ません。インドは何を見るかによって全く違った見え方をします。

中国は、方言がいくつもあるとは言っても、国語は中国語(北京
語=マンダリン)です。しかしインドは、言語状況はかなり複雑
です。インドと言えばヒンズー語と想像されがちですが、そう簡単
ではありません。インドには十数種類の公用語があり、印刷物の
文字は全く異なります。

テレビもいろんな言語に対応したチャンネルが混在していて、衛星
やケーブルで見られるのですが、日本などとは全く異なった複雑さ
の媒体状況です。

1月の正月早々、インドに一週間ほど出張して、主要新聞社、雑誌
社、テレビ局を訪問し、情報収集してきました。

インドに関する情報をいろいろご紹介できればと思っております。
よろしくお願いいたします。