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健康相談ブログ

健康に関連するQ&A集やよくある相談。

良性神経神経鞘腫のオペ後、たまに痛みやしびれがあります

2015-07-28 18:53:44 | 整形外科

質問

昨年、左鎖骨上にできた「神経鞘腫」の摘出手術を受けました(2cm程度切除)。しかし、患部に腕神経叢があって神経を損傷するおそれがあったため、一部取り残しがあります。現在、月に1回受診して薬をいただいていますが、天候の加減や体調により、手術部位が痛んだり、左手やま肩、胸、腕に虫が這うような感じがすることがあります。

また、疲れると、左手の親指と人さし指に力が入らなくなります。担当医に相談したところ、「ブロック注射による治療もあるが、効果は一時的」といわれました。気長に付き合うしかないのでしょうか。再発した場合、再手術はできるのでしょうか。

答え

「神経鞘腫」とは、神経線推を包む、文字どおり鞘の部分の細胞に発生する腫瘍です。90 近くが良性で、発育速度は緩慢であり、悪性変化もほとんど起こしません。

 

頚部では迷走神経(声帯と心臓・消化管などの内臓に分布する神経)に最も頻繁に発生し、それに続いて腕神経叢に多く発生します。腕神経叢は首から上腕に向かって分布する神経が束状に集まったものです。鎖骨上の皮膚がへこんだところを走っており、上肢の感覚と運動を司る大事な神経です。

まひの神経叢が傷つくと、肩や上肢の知覚麻痔および運動麻痺が起こります。頚部に発生する神経鞘腫の症状は、「しこり」が唯一の自覚症状であることも多く、深刻な症状は少ないのですが、腫痛を圧迫したときに、せき咳が出たり、神経にビリビリとした痛みを伴ったりすることがあります。

腕神経叢神経鞘腫の診断は、発生した部位とMRIなどを参考にすると比較的容易です。神経鞘腫の治療は、該当する神経を切断して摘出すると麻痔が生じるため、腫瘍を包む膜(被膜) を切開し、神経を切断することなく腫瘍の本体を摘出する被膜下摘出術が推奨されます。もちろんこの方法でも、腫瘍と神経の位置関係から麻痔が生じうるのですが、半年から1年程度の一時的麻痺や、不完全麻痔のみですむ場合も多いのです。

またこの方法では、肉眼的に取り切れても目には見えない取り残しがあり得ますが、腫瘍の性質上、長年かかって再発してくるに過ぎません。手術を行う場合は、これらの状況を考慮して行うこととなります。

神経を保存して摘出してあり、手術後まだ半年程度しか経過していないため、しびれはもう少し待つとよくなる可能性があります。また天候の加減や体調により、どんな手術による傷でも、「古傷が痛む」というような症状が出てしまいますから、今の痛みが取り残しの腫瘍のせいとは言い切れません。

「神経ブロック」の効果は、担当医の説明どおり一時的なもので、手術後に現在のような症状が出たのなら、ブロック自体でも神経麻痺が起こりうるので、あまりお勧めはできません。再発時の手術はどのような病気でも難しくなりますが、手術用顕微鏡を用いて丁寧に摘出すると、前述の手術による麻痺の発生も少なくてすみます。


頸椎後縦靱帯骨化症が心配

2015-07-22 14:03:30 | 整形外科

質問

先日、整形外科を受診し、検査の結果、髄液の流れが少し悪いことがわかり、「頸椎後縦靱帯骨化症」と診断されました。点滴とリハビリテーション、薬の服用による治療を3ヶ月続けましたが、あまり効果が得られず、現在も1.起床時に脚が立たず起きるのが困難、2.腕や手の指に痛みやしまたびれがある、3.股の裏が張って歩きにくい、4.体重減少、5.尿の出が悪く排尿回数が増えた、6.左の肩と腕の痛みが続いている、などの症状があります。現在は整骨院で温熱療法も受けています。今後の対処法をお教えください。

答え

後縦靱帯は首の骨(頚椎)の体部(椎体)の背側にあり、7つある首の骨をつないでいます。この靱帯が太くなり(肥厚し)、かつ骨になる(骨化する) 病気です。原因はまだ不明ですが、日本人に多く、厚生労働省の特定疾患調査研究事業の対象となっています。

この病気の症状は次の2つに分けることができます。1 つは神経圧迫の症状で、脊髄が圧迫されると、1.手足のしびれ感(指先や手全体あるいは足先のジンジンした感じなど)、2.手先の不器用さ(ボタンを留めにくい、箸が使いにくいなど)、3.歩行障害(速く歩けない、小走りができない、階段が降りにくいなど)、4.排尿排便障害(排尿回数が増える、尿がすぐに出ない、便秘など)が生じます。

ご質問者の1.2.3.5はこれに相当する可能性があります。また、脊髄から手に分かれていく神経(神経根) が圧迫されると、腕の痛みやしびれ感が生じます。これは6の可能性があります。もう1つは脊椎の靱帯の骨化により生じる症状です。首の動きが悪くなる、胸郭の動きが悪くなって深呼吸がしにくくなるなどの症状です。6の肩の痛みなどはこの可能性もあります。

なお、体重減少はこの病気による直接の症状ではありません。この病気では糖尿病がしばしば合併しますから、それが関係している可能性や、長引く痛みによる精神的落ち込みなどの可能性もあります。

治療ですが、痛みに対しては痛み止め(消炎鎮痛剤)、また首が動きにくいことからくる首や肩の痛みには温熱療法が有効です。しかし、脊髄への圧迫による症状に対しては、今のところ確実に有効な薬物療法はなく、外科治療を考えることになります。

最も問題となるのは手術のタイミングです。階段の下りが不安定である、箸を使った食事がしにくいなどといったレベルになると、手術を考える時機と思います。脊椎の手術というと、大変な手術という印象を持たれている方もあると思います。もちろん、簡単な手術ではありませんが、手術治療を含めてこの病気の研究は日本が最も進んでおり、過度の不安を抱く必要はありません。診断や生活指導は日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医の資格を持つ医師から、また、外科治療は日本脊椎脊髄病学会指定の脊椎脊髄外科指導医から受けるとよいでしょう。