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健康相談ブログ

健康に関連するQ&A集やよくある相談。

胸水呼吸不全について

2015-09-29 17:27:33 | 呼吸器内科

質問

3年前の夏、突然声がかれてしまいました。これといった心当たりもなく、1週間過ぎても治らないため、医療機関を受診しました。検査の結果、「左反回神経麻ひ痺」により声帯(左)が麻痺していることがわかりました。 数年前から感じていた「息切れ」も、胸水の貯留による「胸水呼吸不全」があるためで、左反回神経麻棲もそのために起こっているとのことです。胸水呼吸不全は治るでしょうか。

答え

ご質問には2つの内容が含まれています。1つは「反回神経麻痺」で、もう1つは「胸水貯留による呼吸不全」です。反回神経は声を出す声帯の運動を司る神経です。迷走神経が脳から頚部を通り、胸部・腹部へ下行する途中で、その神経の一部が枝分かれし、反回して、頭側へ上行し、声帯の根部に到達します。

このような特別の神経走行をすることから、「反回神経」と呼ばれています。その通路は左右でかなり異なり、左は、大動脈弓部で分かれた枝が気管に沿って反回し、左側を頚部に向かって、長い距離(10数cm)にわたって走行しています。

 

右では、鎖骨下動脈付近で迷走神経から分かれて反回し、比較的短い距離を走行して頚部に到達します。この反回神経は、その途中のどこかを損傷されると「反回神経麻痔」となり、声帯の麻痔が発生します。

走行距離が長いことから、左側に麻痔が発生することが多いと考えられています。その原因としては、頚部胸部の手術にいんとうせんより損傷した場合、「咽頭がん」、「甲状腺がん」や「肺がん」などの悪性腫瘍の場合、外傷による場合、大動脈瘤が存在する場合、その他、特に原因を特定できない場合などがあります。

一方、胸水貯留による呼吸不全ということですが、その原因と反回神経麻痔の原因が同じである可能性があります。大量の胸水が胸腔内に貯留すると肺を圧迫して呼吸がしにくくなり、息切れ・呼吸困難などの症状が出現します。その原因としては、「がん」、「肺炎」、「結核」、「膠原病」、「心不全」などがあります。

また、「ネフローゼ」、「肝硬変」、あるいは「急性膵炎」などの腹部の疾患が原因となることもあります。胸水が貯留しすぎて呼吸困難を来すような場合は、胸壁からチューブを挿入して、胸水を排液しなければなりません。この処置で一時的には呼吸困難感はコントロールできます。

意図的に胸膜と肺を癒着させて、胸水貯留を防ぐ方法もあります。いずれにしても、発生した原因に応じた治療がなされなければなりません。胸水の治療は原因となる病気の治療をすることが根本課題です。

しかし、この胸水貯留が原因で反回神経麻痔を起こすことはありません。胸水貯留、反回神経麻痺ともにさまざまな原因で発生するので、対応法(治療) は単純ではありません。胸部の専門医師によく相談して、痛気のことをよく理解して治療を受けることをお勧めします。

 


ぜんそくの薬は発作時のみ服用すればいいでしょうか?

2015-01-16 18:38:17 | 呼吸器内科

相談内容

小・中学生のころから、年に5~6 回「ぜんそく」が起こり、そのつど点滴を受け、薬をのんでいました。20歳を過ぎた頃から強い発作が起きるようになり、救急入院して手当てを受けなければならないような状態になりました。そのころから、呼吸器内科に通院し始め、10年がたちました。

現在もテオドール、オノン、フルタイド、セレベントを毎日使用し、症状が強いときは4日間ほど副腎皮質ホルモンのステロイドも服用します。

しかし、最近は発作が以前ほど起こらなくなり、起こっても軽くてすむようになったので、発作が出たときだけテオドールを数日間服用するようにしたいと思いますが、それではだめなのでしょうか。また、ずっと薬をのんでいますが、将来、妊娠した際に胎児に影響が及ぶことはないでしょうか。

答え

「気管支ぜんそく」は気道の慢性的な炎症性疾患で、特に成人になってから発作を繰り返している人は、その後もずっと発作を起こす可能性が高いと考えられています。さらに、ぜんそくのある人は、呼吸器疾患のない人に比べて、呼吸機能が早く低下することも知られています。

呼吸機能がある程度低下すると、日常生活を送ることが困難になったり、仕事やスポーツをするうえで大きな支障を来すこともあります。したがって、ぜんそくのある人、特に発作を繰り返して入院したことのあるような人は、発作のないときでもぜんそくの治療(長期管理薬の使用) を続けることを強くお勧めします。

現在、ぜんそく治療の基本薬は、気道l直接到達する吸入薬となっています。ご質問者も、内服薬であるテオドールやオノンは中止できる段階にあるのかもしれません。ただし、それを判断する際、自覚症状だけに頼ることは危険です。ぜんそく発作を繰り返した人は、しばしば、発作(呼吸苦しさ) に対する感受性が低下してしまい、以前なら苦しいと感じた状態を苦しいとは感じなくなることがあるからです。

このような状態の人が苦しいと感じるような発作を起こしたときは、重篤な発作で、短時間で生命に危険が及ぶ可能性もあります。ご質問者は呼吸器専門医にかかっておられるようですから、呼吸機能 、あるいは気道過敏性などのデータがあると思います。それらを総合的に検討したうえで必要な薬の種類と量を決めてもらってください。

なお、発作時には速効性が高い吸入薬の気管支拡張薬を第一選択とするべきです。テオドールをはじめとする「のみ薬」の気管支拡張薬は効果の出現まで数時間以上を要し、発作時だけ服用することはお勧めできません。ちなみに、大多数のぜんそく治療薬、特に吸入薬は、胎児に悪影響を及ぼす心配がないと言って差し支えありません。むしろ、妊娠中にぜんそく発作が起こると、流産や早産など、胎児への危険性が増しますので、妊娠中は必要最低限のぜんそく治療(吸入薬を主体とする) を継続してください。