*** 公海上 海賊船内 ***
向かい合う鬼面の男がどこまで把握しているか不明のため、一応状況説明が必要だろう。海賊という相手の立場を考えると、
「さっき見せた襟章の通り、俺は凍牙で元帥相当の権利を与えられてる。立場は、まあ凍牙首領直下の役外任用官といったところかな」
この程度の口調がいいか。
そして、事実に近い説明だが、その権利は俺が凍牙に利する限りだということは伏せておいた。
「貴殿はおそらくルネージュと契約している船団だと思うんだが、どうかな?」
相手は少し考えーー頷く。
状況を鑑みて敵性が低いと判断してもらえたか。身元を明かしたことが奏功したな。
そしてこの男、かなり判断力は高い。
だとすると。
ここで俺は明確に口調を変える。
「……目下の私の目的は二つだ。
ネウガードを中心として進行しつつある情況の把握と、それに付随する権益の確保。そして、我が首領閣下の権勢をナハリに届かせること。
ご存知とは思うが、ナハリの政体は現在その能力を著しく欠いている。これは我が国にとっては機会でもあり、危機の芽でもある。
今後予想されるネウガード戦役を契機として、それを摘み取っておきたい」
これがこちらの大目的だ、と示し、そして本題に入る。
「周囲には伏せているが、呪いの岡での小競り合いの後、すでに我が国とルネージュは同盟締結が決定している。
今後の予定として、ルネージュ・凍牙、そして進行中の交渉次第だが、もう一国の連合軍がネウガードに向け陸路進軍を開始する。
連合軍は凍牙領土内を通って軍を進め、国境線に大軍を待機させた状態で、ナハリへ通行許可と連合軍への物資供与を要求する。
言うまでもないが、これは占領と同義だ。
だがナハリにはこの事態に対応する手段がないため、国内の富裕層、そして現在の政務関係者の多くは我先に国外脱出を図ることになるだろう。
ジグロードは傭兵国家で身を寄せる先として不適格。東西を連合軍勢力に挟まれている状況で、脱出先は海路ネウガードに向かうしかない。
ーーそこで、大挙するカモを丸ごと攫う。
貴殿にお願いしたいのはそこだ。
私は個人的な手勢を求めている。ナハリをコントロールするにあたり、私が凍鉄の牙の人間であるということを知られずに動きたい」
そしてもう一つ。
「フレッドバーンへ、ごく個人的な要件があるのだが、便は出しているかな」
向かい合う鬼面の男がどこまで把握しているか不明のため、一応状況説明が必要だろう。海賊という相手の立場を考えると、
「さっき見せた襟章の通り、俺は凍牙で元帥相当の権利を与えられてる。立場は、まあ凍牙首領直下の役外任用官といったところかな」
この程度の口調がいいか。
そして、事実に近い説明だが、その権利は俺が凍牙に利する限りだということは伏せておいた。
「貴殿はおそらくルネージュと契約している船団だと思うんだが、どうかな?」
相手は少し考えーー頷く。
状況を鑑みて敵性が低いと判断してもらえたか。身元を明かしたことが奏功したな。
そしてこの男、かなり判断力は高い。
だとすると。
ここで俺は明確に口調を変える。
「……目下の私の目的は二つだ。
ネウガードを中心として進行しつつある情況の把握と、それに付随する権益の確保。そして、我が首領閣下の権勢をナハリに届かせること。
ご存知とは思うが、ナハリの政体は現在その能力を著しく欠いている。これは我が国にとっては機会でもあり、危機の芽でもある。
今後予想されるネウガード戦役を契機として、それを摘み取っておきたい」
これがこちらの大目的だ、と示し、そして本題に入る。
「周囲には伏せているが、呪いの岡での小競り合いの後、すでに我が国とルネージュは同盟締結が決定している。
今後の予定として、ルネージュ・凍牙、そして進行中の交渉次第だが、もう一国の連合軍がネウガードに向け陸路進軍を開始する。
連合軍は凍牙領土内を通って軍を進め、国境線に大軍を待機させた状態で、ナハリへ通行許可と連合軍への物資供与を要求する。
言うまでもないが、これは占領と同義だ。
だがナハリにはこの事態に対応する手段がないため、国内の富裕層、そして現在の政務関係者の多くは我先に国外脱出を図ることになるだろう。
ジグロードは傭兵国家で身を寄せる先として不適格。東西を連合軍勢力に挟まれている状況で、脱出先は海路ネウガードに向かうしかない。
ーーそこで、大挙するカモを丸ごと攫う。
貴殿にお願いしたいのはそこだ。
私は個人的な手勢を求めている。ナハリをコントロールするにあたり、私が凍鉄の牙の人間であるということを知られずに動きたい」
そしてもう一つ。
「フレッドバーンへ、ごく個人的な要件があるのだが、便は出しているかな」