*** 開戦 夜半 ネウ砦から西北西上空 ***
パッケージノーヴェンバー、イスルギの部隊を先頭とし、対艦部隊は敵戦艦へと向けて進軍開始。
つかの間の猶予が破られるまでに、距離は1kmを切っていた。接触まで残り数百mと迫ったところで、一つの影が行く手を遮るように浮上する。男の影は両の手をこちらに掲げ――「回避!」――、三発の巨大な竜巻を放射。
部隊はそれぞれ戦闘単位たるパッケージごとに散開。三つのうねりを飛び越え、くぐり、躱していく。
が、
(こりゃ陽動)
威力が先刻から放射されていた男の魔力と釣り合わない。
竜巻の撃ち終わりと同時に男が急加速、掲げられた掌の先に、
“我こそは盟約者 我が名こそは斬風王”
直径約30m、緑に輝く魔法陣が顕現する。
魔法陣を目視分析。風使い、戦型不明、先の布石――
“我が呼び声に応え、来たれ―――”
「次弾来る! 防御陣形!」
豪風に体勢を崩しつつも、応えて各部隊が密集し防御術者が障壁展開。武将クラスを相手に一般兵級が避けるか守るかでいちいち判断していては話にならん。掻き回されて何もできずに落ちる。
同時に俺は後ろ腰の召喚剣を抜剣。
“―――風の王ッ!”
男の背後に光のシルエットが浮かび、瞬時にエネルギー化して複合魔法陣に溶け込む。そして光の奔流が、夜を薙ぎ払う。
「おいで」
閃く虹色の横一文字。空が割れる。
*
凄まじい光と風が吹き荒び、自軍に直撃。轟音と激流に、白く輝く視界の中でいくつものシルエットが吹き飛ばされてゆく。そしてゆっくりと、光が耳鳴りと共に収まり、やがて消える。
自軍の前方、無数の身体が飛ぶ力を失い、あるいは既に絶命して落下。落ちながら次々に光へと昇華していく。選択したのは魔獣の群れの召喚――肉の壁。判断は正解だった。数にして100近いタフな種族が、一撃で全滅していた。それだけでは足りず、平均四重の多重障壁を各所で射貫、更にハーティーの魔術による祝福効果までを弾き飛ばし、
「こちらイスルギ! 報告します! 戦闘不能数名、重軽傷20名超! 今のは――」
この有り様か。
「こちらシュアリー。戦闘続行。イスルギ、お前臨時指揮官。部隊率いて戦艦殴れ。私のシャルラも貸してやる。全隊、近接敵兵を牽制しつつ即上昇移動はいGO」
私ですか!? とか聞こえるが無視。
やっこさんは時間稼ぎに出てきてるのが見え見えだ。だが無視もできない戦力、ならば。
長射程の兵たちが牽制攻撃を始めた音を背景に、
「オルドレッドとフォーマルハウトは私に付け。武将狩りだどうぞ」
告げながら辰砂の魔装竜から飛び降りる。
「「イェッサー!」」
二騎の魔装竜が老竜シャルラッハロートの脇を抜け前進。フォーマが鋼鉄の尾で俺を拾って行く。
≪アグナ、少し離れる。まだ大人しくしてろ≫
≪了解(ヤー)≫
ホントにわかってんだろうーな……。
伸長させた尾をフォーマが引き戻す勢いで俺も飛び、その背に着地。斜め頭上へ行く部隊の尻を見つつ、牽制の雨に対し回避運動を取る敵に叫ぶ。
「今の一撃、名の有る将とお見受けした!」
彼と視線が合う。
「私は凍鉄の牙、総軍司令代理シュアリーだ」
敢えて明かす。これで敵も部隊を追えなくなるはずだ。
「お相手しよう。……名乗るが良い」
一対一ではないが、な。
パッケージノーヴェンバー、イスルギの部隊を先頭とし、対艦部隊は敵戦艦へと向けて進軍開始。
つかの間の猶予が破られるまでに、距離は1kmを切っていた。接触まで残り数百mと迫ったところで、一つの影が行く手を遮るように浮上する。男の影は両の手をこちらに掲げ――「回避!」――、三発の巨大な竜巻を放射。
部隊はそれぞれ戦闘単位たるパッケージごとに散開。三つのうねりを飛び越え、くぐり、躱していく。
が、
(こりゃ陽動)
威力が先刻から放射されていた男の魔力と釣り合わない。
竜巻の撃ち終わりと同時に男が急加速、掲げられた掌の先に、
“我こそは盟約者 我が名こそは斬風王”
直径約30m、緑に輝く魔法陣が顕現する。
魔法陣を目視分析。風使い、戦型不明、先の布石――
“我が呼び声に応え、来たれ―――”
「次弾来る! 防御陣形!」
豪風に体勢を崩しつつも、応えて各部隊が密集し防御術者が障壁展開。武将クラスを相手に一般兵級が避けるか守るかでいちいち判断していては話にならん。掻き回されて何もできずに落ちる。
同時に俺は後ろ腰の召喚剣を抜剣。
“―――風の王ッ!”
男の背後に光のシルエットが浮かび、瞬時にエネルギー化して複合魔法陣に溶け込む。そして光の奔流が、夜を薙ぎ払う。
「おいで」
閃く虹色の横一文字。空が割れる。
*
凄まじい光と風が吹き荒び、自軍に直撃。轟音と激流に、白く輝く視界の中でいくつものシルエットが吹き飛ばされてゆく。そしてゆっくりと、光が耳鳴りと共に収まり、やがて消える。
自軍の前方、無数の身体が飛ぶ力を失い、あるいは既に絶命して落下。落ちながら次々に光へと昇華していく。選択したのは魔獣の群れの召喚――肉の壁。判断は正解だった。数にして100近いタフな種族が、一撃で全滅していた。それだけでは足りず、平均四重の多重障壁を各所で射貫、更にハーティーの魔術による祝福効果までを弾き飛ばし、
「こちらイスルギ! 報告します! 戦闘不能数名、重軽傷20名超! 今のは――」
この有り様か。
「こちらシュアリー。戦闘続行。イスルギ、お前臨時指揮官。部隊率いて戦艦殴れ。私のシャルラも貸してやる。全隊、近接敵兵を牽制しつつ即上昇移動はいGO」
私ですか!? とか聞こえるが無視。
やっこさんは時間稼ぎに出てきてるのが見え見えだ。だが無視もできない戦力、ならば。
長射程の兵たちが牽制攻撃を始めた音を背景に、
「オルドレッドとフォーマルハウトは私に付け。武将狩りだどうぞ」
告げながら辰砂の魔装竜から飛び降りる。
「「イェッサー!」」
二騎の魔装竜が老竜シャルラッハロートの脇を抜け前進。フォーマが鋼鉄の尾で俺を拾って行く。
≪アグナ、少し離れる。まだ大人しくしてろ≫
≪了解(ヤー)≫
ホントにわかってんだろうーな……。
伸長させた尾をフォーマが引き戻す勢いで俺も飛び、その背に着地。斜め頭上へ行く部隊の尻を見つつ、牽制の雨に対し回避運動を取る敵に叫ぶ。
「今の一撃、名の有る将とお見受けした!」
彼と視線が合う。
「私は凍鉄の牙、総軍司令代理シュアリーだ」
敢えて明かす。これで敵も部隊を追えなくなるはずだ。
「お相手しよう。……名乗るが良い」
一対一ではないが、な。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます