撃墜の恐れがあるため、民間の飛竜艇や魔導船は戦地には降りないのが常である。
そのため俺は、目的地にたどり着くため、一歩手前の地、カイゼルオーンまで飛んだ。
各地の戦火が本格的に燃え上がれば、アースの失陥ーーいわゆる″八月崩神(オーガスト・フォール)″後に頻発するようになった魔力嵐もあいまって、魔導船そのものが運航困難な状況となるだろう。
今回の断続的な衝突の発端は、その首謀者の口から確認ができた。
そこで航路を切り替え、約半日後の到着。
エジュー・プラティセルバ間の小競り合いが、カイゼル側まで延焼しないうちに降りられたのは運が良かった。ツテを頼ってカイゼル側の発着所で馬を用意してもらい、そこからは陸路を辿ることとなった。
ありがたいことに、良馬だった。これは要人への礼というより、現場担当者の見栄だろう。
カイゼル=ヴォルフスブルグからエジュー=シーランディアへは簡単な身元確認だけで通行が可能となっている。
幸い、まだ顔パスだったようだ。
エジューに入った。
彼女との共謀関係を考えれば、ここは俺が押さえておく方が据わりがいい。どちらも自陣の駒になりうる。これ以上の消耗は無益だろう。
幸い、ルネージュ側から侵攻している兵は非正規兵、この場限りの雇わればかりだった。あんな場所で遅々とやっているところを見るに、名にし負う者もいるまい。
しがらみがなければ話は早い。
*
約束の、三日後の大酒場。
「フー様」
それまで口を閉じていたカティが、
「主からの伝言です。
『丘は私が押さえました。白銀と牙は″不埒な工作者が画策した不幸な行き違い″があったと理解し、現在は休戦状態。会談のテーブルが遠からず設けられることになるでしょう。
なお、″不埒な工作の首謀者″は国境付近にて、双方の正規の現場指揮者の前で処刑されました』。
……以上です」
*
≪……っている。それから傭兵のていの者が増えてきた。稼ぎ所をみな嗅ぎ付けているようだ。巷はその噂で持ちきりで……≫
アグナからネウガードの状況を聞き取りつつ、俺は″首謀者″の遺骸が死体袋に包まれて運び出されるのを眺めていた。
擾乱罪は重い。そしてありふれていた。
知りもしない背後関係を洗われたあと、彼は近隣の廃材処理地か、運が良ければ無縁墓地に葬られることになるだろう。
悲しいが、彼の命の値段はそのくらいだったのだ。
そのため俺は、目的地にたどり着くため、一歩手前の地、カイゼルオーンまで飛んだ。
各地の戦火が本格的に燃え上がれば、アースの失陥ーーいわゆる″八月崩神(オーガスト・フォール)″後に頻発するようになった魔力嵐もあいまって、魔導船そのものが運航困難な状況となるだろう。
今回の断続的な衝突の発端は、その首謀者の口から確認ができた。
そこで航路を切り替え、約半日後の到着。
エジュー・プラティセルバ間の小競り合いが、カイゼル側まで延焼しないうちに降りられたのは運が良かった。ツテを頼ってカイゼル側の発着所で馬を用意してもらい、そこからは陸路を辿ることとなった。
ありがたいことに、良馬だった。これは要人への礼というより、現場担当者の見栄だろう。
カイゼル=ヴォルフスブルグからエジュー=シーランディアへは簡単な身元確認だけで通行が可能となっている。
幸い、まだ顔パスだったようだ。
エジューに入った。
彼女との共謀関係を考えれば、ここは俺が押さえておく方が据わりがいい。どちらも自陣の駒になりうる。これ以上の消耗は無益だろう。
幸い、ルネージュ側から侵攻している兵は非正規兵、この場限りの雇わればかりだった。あんな場所で遅々とやっているところを見るに、名にし負う者もいるまい。
しがらみがなければ話は早い。
*
約束の、三日後の大酒場。
「フー様」
それまで口を閉じていたカティが、
「主からの伝言です。
『丘は私が押さえました。白銀と牙は″不埒な工作者が画策した不幸な行き違い″があったと理解し、現在は休戦状態。会談のテーブルが遠からず設けられることになるでしょう。
なお、″不埒な工作の首謀者″は国境付近にて、双方の正規の現場指揮者の前で処刑されました』。
……以上です」
*
≪……っている。それから傭兵のていの者が増えてきた。稼ぎ所をみな嗅ぎ付けているようだ。巷はその噂で持ちきりで……≫
アグナからネウガードの状況を聞き取りつつ、俺は″首謀者″の遺骸が死体袋に包まれて運び出されるのを眺めていた。
擾乱罪は重い。そしてありふれていた。
知りもしない背後関係を洗われたあと、彼は近隣の廃材処理地か、運が良ければ無縁墓地に葬られることになるだろう。
悲しいが、彼の命の値段はそのくらいだったのだ。