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首領日記。

思い出の味はいつもほろ苦く、そして甘い

【戦争RP】何時か何処かの戦の炎(5)(記録用)

2012年10月16日 22時45分46秒 | KOCSNS・【戦争RP】何時か何処かの
撃墜の恐れがあるため、民間の飛竜艇や魔導船は戦地には降りないのが常である。
そのため俺は、目的地にたどり着くため、一歩手前の地、カイゼルオーンまで飛んだ。

各地の戦火が本格的に燃え上がれば、アースの失陥ーーいわゆる″八月崩神(オーガスト・フォール)″後に頻発するようになった魔力嵐もあいまって、魔導船そのものが運航困難な状況となるだろう。

今回の断続的な衝突の発端は、その首謀者の口から確認ができた。
そこで航路を切り替え、約半日後の到着。
エジュー・プラティセルバ間の小競り合いが、カイゼル側まで延焼しないうちに降りられたのは運が良かった。ツテを頼ってカイゼル側の発着所で馬を用意してもらい、そこからは陸路を辿ることとなった。
ありがたいことに、良馬だった。これは要人への礼というより、現場担当者の見栄だろう。

カイゼル=ヴォルフスブルグからエジュー=シーランディアへは簡単な身元確認だけで通行が可能となっている。
幸い、まだ顔パスだったようだ。
エジューに入った。

彼女との共謀関係を考えれば、ここは俺が押さえておく方が据わりがいい。どちらも自陣の駒になりうる。これ以上の消耗は無益だろう。

幸い、ルネージュ側から侵攻している兵は非正規兵、この場限りの雇わればかりだった。あんな場所で遅々とやっているところを見るに、名にし負う者もいるまい。
しがらみがなければ話は早い。

*

約束の、三日後の大酒場。

「フー様」
それまで口を閉じていたカティが、
「主からの伝言です。
『丘は私が押さえました。白銀と牙は″不埒な工作者が画策した不幸な行き違い″があったと理解し、現在は休戦状態。会談のテーブルが遠からず設けられることになるでしょう。
なお、″不埒な工作の首謀者″は国境付近にて、双方の正規の現場指揮者の前で処刑されました』。
……以上です」

*

≪……っている。それから傭兵のていの者が増えてきた。稼ぎ所をみな嗅ぎ付けているようだ。巷はその噂で持ちきりで……≫

アグナからネウガードの状況を聞き取りつつ、俺は″首謀者″の遺骸が死体袋に包まれて運び出されるのを眺めていた。

擾乱罪は重い。そしてありふれていた。
知りもしない背後関係を洗われたあと、彼は近隣の廃材処理地か、運が良ければ無縁墓地に葬られることになるだろう。

悲しいが、彼の命の値段はそのくらいだったのだ。

【戦争RP】何時か何処かの戦の炎(4)(記録用)

2012年10月15日 20時15分31秒 | KOCSNS・【戦争RP】何時か何処かの
「私は今宵、更に出向かねばならない先もありまして、
宿を出たら一旦、これ(転移魔法の護符を見せる)で戻りますが…貴方はどうされますか?」

「願わくば、貴女への随伴を。そうすれば、僕は主の歓心をさらに得ることができるでしょう。貴女は我が主とのチャンネルと、使い捨ての駒を一機得ることになります」


 その代わりに。
 毒の滴る諸刃を懐に抱えることになりますが。


表情だけで少年が語る。


与える。
与える。与える。与える。

【戦争RP】何時か何処かの戦の炎(3)(記録用)

2012年10月14日 20時06分37秒 | KOCSNS・【戦争RP】何時か何処かの
「貴方の『主』のお望みは、わたしの描く絵図によく馴染みます。その方と…お話できますか? 何なら転移で直にうかがっても良い」

少年がふわっと微笑みながら首を傾げて、7秒で戻す。口を開く。
「お声掛け頂きありがとうございます」
滲み出た声は、若い男のものだった。

「この子の主です。恐縮ですが、名は控えさせて頂きます。Gさんもそのことは承知で、先程は敢えて貴女にだけ漏らしたのでしょう。フェアではないですからね。そのことについて私も異存はありませんし、もとよりその予定でした。
今は、この子に私の言葉を代弁させています。やや時間差はありますが、私と使い魔は常に交信できる状態にあります。……これも貴女だけにお伝えしていることですので、ぜひご内密に」

にこにこと、声とは不釣り合いな表情が饒舌に語る。
「卿が去った以上、この場に留まるのは害あって利のないこと、早々に立ち去り、別所に席を取るべきかとは思いますが、失礼のお詫びに、まずは手短にこちらの札を開示しましょう。この子に持たせた手土産ですが、」

可憐な舌が踊る。
「差し上げます。はなからギルヴィッド卿に渡り着くことを望みとしていました。私も、彼自身もね」

酒席に預けられたままの魔剣が、耐魔性の布に包まれてなお空気を澱ませる。低く唸るように鳴動する。
「それが貴女の交渉のお役に立つのなら、なお喜ばしい」
血の予兆に、吠え猛る。

矢継ぎ早に薄い唇が走る。
「それにこの子にもう一度持ち帰らせても、物が物です、帰途で強盗にも遭ったら目も当てられない。
そしてもう一つ、私の目的についてですが、現状、今回は2つ。そのうち1つをお教えしましょう。俗な欲望で恐縮ですが、噂のネウガードのあれですよ。手に入れられずとも、見てみたい。ーー実在すれば、ですがね」

そのために戦火が必要なのだ、と言外に告げていた。『私と貴女は少なくとも同じ方を向いている』と。

愛くるしい表情とは相容れない言葉がわらわらと湧いていた。
不吉な魔剣と憑かれたように語る美少年。夜霜のような冷気に満ちていたはずの部屋が、いつの間にかじっとりと、生温い鬼火のような熱にあてられていた。

「何も一心同体である必要はない。可能な範囲での協力を申し出たいのですが、いかがでしょうか」

【戦争RP】何時か何処かの戦の炎(2)(記録用)

2012年10月14日 17時21分25秒 | KOCSNS・【戦争RP】何時か何処かの
「……私の条件は以上だ。如何か」
錆びた剣が木床に突き立てられ、軋る。
僅かな沈黙の後、『G』の問いかけに答えたのは、しかし眼前の少女ではなく
その奥部屋の扉を叩く控えめなノックの音と、

「――その条件、代わって我が主がお請け致したいと」

唐突に過ぎる横槍だった。
二人の警戒を他所に言葉は続いていく。
「ギルヴィッド卿。主からの言付けを読み上げます。
……『お久しぶりですGさん。直接赴かずに使いを遣るという失礼はご容赦下さい。残念ながらあの頃のように、己の心のまま我が身ひとつで、とはいかぬようで。つまらぬ世間体に縛られた、世知辛い世の中です。時間が許せば”智慎くん”の思い出話でもしたいところですが、それはお話のあとの楽しみに取っておきましょう。手っ取り早く言いますが、……取引をしませんか』」

気配が変わる。
少なくとも、『G』には思い至るところがあったようだ。
言伝が少なくとも今は袖にされずに済んだと受けて、ノックの主が扉を開く。

「お二方とも、お初にお目にかかります。名乗るほどの者ではございませんが、主からは『カティ』と呼ばれております。皆様の言葉で言うなら、使い魔といえばご了解頂けますでしょうか」
初等教育も半ばに見える、小柄な少年が微笑む。
身体を黒のスラックスとベストに包んだ、両家の子息といった出で立ち。柔らかな桃を思わせる美少年の、爽やかな品の良い笑みだった。

カティは両手に抱えた、彼の身長ほどもある包みを『G』に向けて差し出し、
「これが先ほど申し上げた『条件』、そして、我が主からの手土産でもあります。お気に召せばよろしいのですが」
包みが解け、それが空気に触れる。
「あなたのカイゼルが滅亡したあと、戦士たちの墓標として飾られた数多の剣は、野盗に脅かされることとなりました。これは、それを憂いた我が主が『保護』したうち、もっとも状態のよい一振り。――凍りし時の地の、剣の丘の一柱です」
そこにあるだけで部屋に闇と冷気が満ちる。
昏い刀身が見る者を吸い込むような、紛うことなき魔剣だった。

「それは献上いたします。もともと主のものというわけでもございませんし。取引に応じて頂けるなら、追加の物資と、さらに僕を伝令として、舞台袖からの情報をお届けいたします。わずかばかりの、後方支援といったところです。対して、我が主は卿に次のことを求めたいと申しております」
少年が『G』を見上げ、天使じみた声を鳴らす。


「大暴れ」

【戦争RP】何時か何処かの戦の炎(1)(記録用)

2012年10月14日 17時16分15秒 | KOCSNS・【戦争RP】何時か何処かの
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ここでこんなん参加してまーす。良かったら皆さんもどうぞ。
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で、とりあえず記録用ということで書いたのをこっちにも転載。

***





《――以上だ。ボス》
《わかった。ところで身体の調子はどうかな、アグナ》
《十全だ。もらった魔石ももう随分と馴染んだ。生還のみの任務であればまず問題ない》
《結構だ。そのまま調査を続けてくれ。油断はしないように》
《了解(ヤー)》


ヘルハンプール北西部、レオプール伯爵邸から徒歩にして半刻。
伯爵家の別宅に、ヘルハンプール・ジャーナル事務局は設けられている。
初代編集長・女傑つなたんに始まり、私紙ながら国内随一のクオリティペーパーとして“へるじゃ”の愛称で親しまれるその新聞社が、今の俺の身を預かっている。

脱走将校であり、元反体制活動家であり、凍牙初代副首領にして、そして今の俺は記者見習いAだった。
我ながら経歴の無節操ぶりに笑ってしまう。

8月末での公国復興の後も、俺の立場は事実上の空白、政治的な輻輳の隙間に落ち込んでいた。
少なからぬ因縁の糸で繋がれつつも、その結び目はこの浮雲を引きとどめるほどに強くもなく、曖昧な諸力が俺の上で交錯したまま、結果として何でもない男がひとり放られているといった体。
それを憐れみ深くも拾い上げてくれたのが、
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「もー、お嬢様はやめて下さっ」
この気高き幼な月というわけだ。
俺は表向きにはブン屋の真似事をしつつ、端的に言えば、彼女の私兵という立場にあった。

彼女の薄手の外套を預かり、コートハンガーに掛けながら尋ねる。
「どうだった? 状況は」
「んー、なんかよくわかんない感じ? ひとによって話が違うとゆか。でも、色んなところで動きがあるのは間違いない……みたいにゃ」
ルナリアは眉の間に薄い皺を寄せながら応える。
「こんなに状況がつかめないって、なんか変。もしかして普通の戦争じゃないのかな」
「そう思って、もうネウの周辺に使い魔をひとり送り込んである。あ、紅茶でいい?」
「それって黒虎さ? ルナぬるめがいい。あとレモンも」
「残念ながら私は留守番」
答えたのは別の声だった。ルナリアが声の主を探すと、窓辺で午後の陽を浴びながら、猫科の黒毛が伸びをしていた。
「そして子猫のお守り役、だ。はいどうぞ」
俺はルナリアの前にカップを置き、そして自らの外套を取りに動く。
「先遣を送ってはいるけど、俺も合流するよ。自分の目で見てくるのが確かだろうし。情報があればその子を通じて知らせるから、編集長様はここででんと構えていて下さいませ。ではそういうことで」
事務所の扉を後ろ手に閉め、足早に歩き出す。ネウガードはここから丸一日の距離だが、もうしばらくは使い魔に任せておいて良いだろう。その前に、立ち寄らなければならないところがある。

 *

閉じられた扉を見ながら黒虎は欠伸をもう一度。
そして窓の外のデンファレの花を見つめながら、
「まだ坊やに気付かれるから、出るなら紅茶が冷めてからかしらね」
ただ暇を嫌って、幼な月を唆していた。