・「リンパ脈管筋腫症」「LAM」「肺リンパ脈管筋腫症」「肺過誤腫性リンパ脈管平滑筋腫症」とは
リンパ脈管筋腫症は、異常な平滑筋様細胞(LAM細胞)が、肺を中心としてリンパ節、腎臓(血管筋脂肪腫)、などで増殖する稀な病気です。ほとんどは妊娠可能な女性に発症すると言われています。肺ではびまん性にLAM細胞が増殖し、無数の小さな穴(嚢胞)が生じ、進行すると呼吸不全に至る難治性疾患です。び慢性過誤腫性肺脈管筋腫症として報告されました。LAMは単独で発生する場合と、結節性硬化症という病気に伴って発生する場合の2種類があります。
・この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
どの位の患者さんがいるのか、実数はわかっていません。日本では、平成15・16年に厚生労働省難治性疾患克服研究事業「呼吸不全に関する調査研究班」(久保恵嗣班長)で医療施設を対象とした全国疫学調査が行われ、173人の患者さんの情報が集まり検討されました。その結果、日本でのLAMの有病率は100万人あたり約1.2~2.3人と推測されています。
・ この病気ではどのような症状がおきますか
主な症状は肺病変によるもので、労作性呼吸困難、咳嗽、血痰、喘息様の喘鳴、などを認めます。進行すると、安静にしていても呼吸困難を感じるようになります。気胸、乳糜胸水や腹水を合併することがあり、それに伴う胸痛、呼吸困難を認めることがあります。腎臓の血管筋脂肪腫から出血を認めることもあります。結節性硬化症では、LAMによる症状の他に、てんかん、皮膚病変など結節性硬化症による症状も認められます。
・ この病気にはどのような治療法がありますか
症状や合併症のある場合はその治療と対策が重要です。呼吸不全には酸素投与、繰り返す気胸には胸膜の癒着が必要です。乳糜胸水や腹水に対しては内科的、外科的治療が行われます。肺外の症状として、まれに腎血管筋脂肪腫から出血することもあり、血管塞栓術や外科的処置が必要になることがあります。呼吸不全が進行した場合は、肺移植の対象になりますが、肺移植の後、LAMが再発したとの報告もあります。LAMの発病や進行には女性ホルモンが関わっていると考えられ、性腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体(GnRH)、メドロキシプロゲステロン、卵巣摘出術、などのホルモン療法が行われています。これらは有効であったとの報告もありますが、効果に一定の見解はなく、今後、明らかにしなくてはなりません。
病気の進行スピードは個人差があるため、すべての患者さんに治療が必要になるというわけではないようです。治療は、個々の患者さんの進行スピード、重症度などに応じ、生活の質を考慮し、心理的、社会的な配慮もしながら、慎重に選択する必要があります。
LAMでは、病気の仕組みが徐々に明らかになりつつあり、有効な新規治療法の開発を目指して活発に研究がされています。
・ この病気はどういう経過をたどるのですか
一般に、LAMは慢性に進行し呼吸不全に至る予後不良の病気です。古くは10年以内に多くの方が亡くなられると言われていましたが、平成15・16年に行われた日本の全国調査では、10年後の生存率は76%でした。病気の理解が深まるにつれて、長期間にわたって安定した呼吸機能を示すような軽症の方がいることもわかってきました。
厚生労働省難治性疾患克服研究事業 呼吸器系疾患研究班 作成の難病情報センターホームページから引用