防災分野で、「事前復興計画」という考え方がある。これは、震災や津波等の災害の被害を想定し、「事前に復興に備える」もので、阪神淡路大震災の後に注目され、1998年の災害対策基本法等で示された考え方である。
東北大震災の被災地で作成されている復興計画は、既に起こってしまった震災害からの「事後復興計画」であるが、日本全国各地の地域もなんらかの被災の可能性があり、「事前復興計画」を作成し、その実践を進めることが望まれる。
人が集住する都市は、いざ災害が起こったときの被害が大きいという宿命を持っている。災害というネガティブな未来に対しても予測し、準備をしておくことつまり、「事前復興計画」を作成しておくことが、未来都市の実現においても必要である。「事前復興計画」の対象となる災害は、地震や津波だけではない。地球温暖化の影響とも考えられる豪雨や暴風等の被害もある。 「事前復興計画」において、重要な4点を指摘する。
1つは、被害を事前に想定しておくことである。どのような災害が、どの程度の規模で発生し、どのような被害が発生していくのか、それを予想することで、災害への適切な備えをすることがでる。
2つ目は、復興の目標をつくる際、災害が起こる前の水準に回復することを目指すだけなく、それよりも高い目標を掲げることである。例えば、津波により市街地が更地になったとしたら、寂れつつあった街並みを再生することを目指す必要はなく、より魅力的な新しい街を創造することができるはずである。
3つ目は、災害の影響として想定される被害を地域住民と共有し、一緒になって、復興計画を策定しておくことである。こうすることで、地域住民が、災害を自分の問題として知ることができ、自分がどのような行動をとるべきことを準備しておくことができる。つまり、地域住民に参加してもらうこと自体が災害対策になる。
4つ目は、事前にとるべき行動を実際に実行することである。避難経路を確保、確認しておいたり、災害で街が壊れたときの一時的な居住地を確保しておいたり、災害廃棄物の保管や処理場所を確保しておいたり、移転を考えた方がよい場合は移転先の準備をしておいたり、事前にとるべき行動はたくさんある。
「事前復興」とともに重要なキーワードとして、「結果防災」という言葉がある。これは、阪神・淡路大震災の後、神戸のある地区で行われていたまちづくりの活動が結果的に震災の被害を抑えることになったという経験から、注目された考え方である。例えば、中心市街地が衰退し、老朽化した建物が増えたり、高齢者の単独世帯が増えたりすることに対して、地域の活性化や福祉という観点から、高齢者の単独世帯をサ支える取組みをしたとする。こうした取組みは防災を意識したものではないが、災害時は高齢者を助けることになり、「結果的」に防災対策になる。
あらゆる地域が未来を計画するとき、どの地域においても、「事前復興」、そして「結果防災」をキーワードにして考えてみたらどうだろうか。
参考文献)
藤田弘夫・浦野正樹編「都市社会とリスク~豊かな生活を求めて~」東信堂、2005年6月.