サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

ヘルスプロモーションから学ぶこと

2012年09月15日 | リスクマネジメント

リスクマネジメントというカテゴリーをたてたが、なかなか投稿できないでいるので、少しずつ書いてみる。様々なリスクを総合的に評価、マネジメントをすることに関心があるが、勉強しながらの投稿になる。

さて、最初に、リスク管理を行う主体の問題として、公助、互助、自助について、若干整理する。

●気候変動への適応策における公助、自助、互助

私が参加している気候変動への適応策の研究では、例えば温暖化の影響である豪雨の多発等が対応課題となる。この場合、将来の降水量の増加等を予測し、堤防を整備したり、河川管理を行うことが公助となる。

ただし、中小河川等では十分に予算もなく、公助での対応は期待できない。このため、豪雨になったら自らが判断して避難する自助や、避難が困難が高齢者等を近隣で助けあうという互助が必要になる。

細かいことを言えば、自助には災害保険に入るなど、民間市場を活用することも含まれる。互助には、隣同士の結合型社会関係資本による助けあいもあれば、地域外やNPO等の支援をうけるは橋渡し型社会関係資本による支援も入るだろう。前者を互助、後者を共助ということもできよう。

いずれにせよ、公助だけでは限界があり、自助や互助も対策に盛り込み、それらの分担による多重性を確保することが重要である。

●ヘルスプロモーション

こうした話に関連して京都の保健士の方から、「ヘルスプロモーション」という考え方を聞いた。日本ヘルスプロモーション学会によれば、ヘルスプロモーションとは、WHO(世界保健機関)が1986年のオタワ憲章において提唱した新しい健康観に基づく21世紀の健康戦略で、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義されている。

「すべての人びとがあらゆる生活舞台-労働・学習・余暇そして愛の場-で健康を享受することのできる公正な社会の創造」を健康づくり戦略の目標としており、目標実現のための活動方法として、1.健康な公共政策づくり、2.健康を支援する環境づくり、3.地域活動の強化。4.個人技術の開発、5.ヘルスサービスの方向転換、といった5つが示されている。

この考え方は、気候変動適応策にも当てはめることができるだろう。すなわち、適応プロモーションとは、「人々が気候変動に対する自らの安全・安心とその決定要因をコントロールし、改善できるようにするプロセス」と言い換えることができる。このためには、行政計画も必要だが、自助や互助を促すことが必要である。

●あらゆるリスク管理(ガバナンス)に対する示唆

ヘルスプロモーションの考え方は、地震や津浪等の自然災害に対する防災・減災、エネルギー危機への対応、経済的な危機への対応、あるいは防犯や交通事故など、様々なリスク管理(ガバナンス)にも適用できる。

ここで重要なことは、リスク管理は他者がやってくれるのではなく、自分でやることが基本だということである。その自分でやることを支える様々な機会が提供されなければいけないし、そのためのリスク情報がきちんと提供され、アクセス可能でなければならない。

こうした主体性を中心に捉えるという考え方は、国が言い出すと責任放棄にも見られがちで、政治が言い出すと選挙の票になりにくいだろう。研究者等がリスク管理のあり方をもっと強く発信すべきともいえる。

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