吹く風ネット

災難は続いた(後)

 温かい気持ちで下宿に帰ったぼくは、さっそくヤカンに水を入れて、すすけたガスコンロに火を付けた。そしてお湯が沸くまでの間、バイト先でもらったマイルドセブンを三本ほど吸った。
 しばらくしてお湯が沸き、カップに注いだ。三分間後ふたを開け、箸を手にとり、つまんだ麺と濃いめのスープを空っぽのお腹の中に流し込んだ。
 一気に食べ終えたぼくは、再びマイルドセブンに火をつけた。それを吸い終わると生水を飲み、またもやマイルドセブンをくわえたのだ。
 ところが、立て続けのタバコのせいなのか、数日間空だった腹に、脂っこい麺を一気に流し込んだせいなのか、賞味期限が微妙なせいなのか、すこし気分が悪くなった。
「起きているとさらに悪くなる」と思ったぼくは、とりあえず横になり、気分の回復を待つことにした。

 そのまま眠ってしまったようだ。その眠りの意識の中、腹の奥に種のようなものがあるような感じがした。「何だこれは!」と夢で叫んだ時に目が覚めた。
 それからしばらくして、それはやってきた。みぞおち近くを鋭利なもので内側からググッと突かれるような激しい痛みだ。
「何だこれは!?」、生まれてから一度も味わったことのない激痛だった。
 一度は治まった。しかしすぐに、その次が来た。
「何だこれは!?」「何だこれは!?」「何だこれは!?」
 何度も何度も激痛が襲ってきた。その周期は三十分おきが二十分おきに、二十分おきが十分おきにというふうに時間が経つごとに狭まっていった。酷い時には三分置きで、それが一週間続いた。
 その間、貧乏人のぼくは病院へも行けず、仲が悪かった下宿屋の大家には助けを求めることも出来ず、ダニのいなくなった下宿部屋で一人のたうち回っていたのだった。

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