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吹く風ネット

続・夏の風物詩

ゴキブリ。小さい頃に親から「触ったら病気になる」などと吹き込まれたため、後々まで凄い恐怖心を抱いていた。ゴキブリを見ると、「死ぬんじゃないか」とまで思いつめていた時期もあった。

それを克服したのは、小学校高学年になってからだった。ここでも何度か紹介しているのだが、当時ぼくは、ひよこを一羽飼っていた。飼い始めた当初は鳥の餌を与えていたのだが、そのうち勝手に虫などを捕まえて食べるようになった。

ある日ゴキブリを見つけた。たまたま手元に蠅たたきがあったので、ぼくは恐る恐るゴキブリを叩いた。見事命中のはずが、かすっただけに終わった。しかし、ゴキブリはこの一撃でかなり弱っている。

その時ぼくの後ろにいたひよこが、そのゴキブリめがけて突進してきた。そして嬉しそうに、そのゴキブリをムシャムシャと食べだした。
「おい、死ぬぞ」と言ったが、お構いなしだった。
その後、ひよこに変わったところはなかった。
ますます元気になっているように思えた。

その日からひよこは、ぼくが蠅たたきを持つと、喜んでついてくるようになった。蠅や便所蜂など、ぼくが蠅たたきで叩いたものはすべて食べる。
その中でも、一番の好物はゴキブリのようだった。ゴキブリを一匹たいらげると、ぼくの顔を覗き込み、「もっとくれ」というような顔をする。

こうなると、ぼくもゴキブリが怖いなどと言っていられなくなった。家のゴキブリは絶滅したんじゃないか、と思えるくらい叩きまくった。
そうこうするうちゴキブリに対する恐怖心は消えていった。

その後、ひよこはすくすくと成長した。団地で飼うことは不可能なので、親戚が引き取っていった。最後は立派な鶏肉になったということだ。
その日。親戚から連絡があり、「今日鶏鍋するから、食べに来い」と言ってきた。
さすがにぼくは遠慮した。そこには情もあったが、何よりもそのひよこの嗜好を知っていたからだ。


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