1、
『影枕』(18歳の頃に書いた詩です)
何をしても情けない日々とうだる夏の暑さで
狂ったような体が汗をしぼり出す。
昼寝をするにしても涼む所はなく
たまに吹き来る風に任せて寝息も荒く
加減のきかぬ影枕
あっちに行ったり
こっちに来たり
ふう、まだ始まったばかり
毎日毎日体温にも似た温度計(はかり)を見ては
芋の子洗いの海もいや、登るに疲れる山もいや
せめては風呂へと思っても浸かるだけではやり切れぬ
暑い暑い、いや、面倒だ面倒だ
加減のきかぬ影枕
あっちに行ったり
こっちに来たり
ふう、まだ始まったばかり
まだエアコンが一般的ではなかった時代の、ぼくの夏の一コマだ。
あの頃は、日の当たらない場所を探しては、そこで寝るという猫のようなことをしていた。寝ることで暑さを忘れるようとしていたのだ。
2、
昨今はというと、あまりに暑すぎて日影で寝ることもできない。
とにかく暑い!どうにかしてくれ、といった暑さだ。生まれてこの方、こんなに暑かったことがあっただろうか。
日影はサウナよりも暑いし、日が当たると痛みすら感じる。沖縄でもこんな経験はなかった。
3、
「心頭滅却すれば、火もまた涼し」という言葉があるが、あの言葉は嘘だと思う。なぜなら、心頭を滅却すれば、涼しいという気持ちも起きないはずだからだ。
あの言葉を真に受けて、「涼しい」という気持ちを探したことがあるのだが、結局その「涼しさ」を探しているうちに暑くなってしまった。
まあ、夏は暑いものと割り切ってしまえば、気は楽なのだろうけど、この暑さじゃね。
とにかく、この史上最高の暑さは、まだまだ続くだろう。