吹く風ネット

1979年夏、浅草橋

上京してから二年目の夏に、ぼくは
浅草橋で運送のバイトをやっていた。

午後四時に秋葉原で友人と落ち合い、
総武線レモン色の電車に駆け込んだ。
二分ほど電車に揺られ駅から出ると、
そこは人形玩具の店がある街であり、
お相撲さんが生活している街であり、
夕方どきのラジオが似合う街であり、
なつかしさの漂っている街であった。

いとしのエリーを初めて聴いたのも、
フラッペということばを知ったのも、
新しい友人との出会いがあったのも、
人から裏切られる経験があったのも、
東京というのは特別な街ではなくて
普通の街だというのがわかったのも、
この街に足繁く通ったおかげだった。

バイトの終わる時間が遅かった為に、
夏の暑い時期だったにもかかわらず、
週に一度しか銭湯に行かれなかった
という実に臭い思い出もあるのだが、
あの頃がぼくの東京での生活の中で
一番充実していた時期だったと思う。

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