
2025/07/02 wed
2025/07/09 wed
前回の章
ゲンとの弘明寺商店街探索は、俺にとってとてもいい刺激となった。
ああいう金の遣い方なら、本当にいい経験をして人生におけるプラスになると思う。
何軒もグダグダ飲み歩いたり、決まった店で飲み続ける日々の日常に比べたら雲泥の差だ。
いつもと違う日常を心掛ける。
仕事と家の往復にしても、同じルートで帰るのではなくたまには別の道を使う。
そこにちょっとした何かしらの発見があるかもしれない。
福富町西通りから横浜駅根岸道路に出て、細い路地を曲がってみる。
少し進むと『和洋創作Dining匠』という看板が見えてきた。
店の入口横には本日の日替わりメニューが書かれていたので拝見してみる。
トンカツ定食で五百円。
立地は一階の十字路角地。
夜の営業に繋げる為だろうが、イタリーノでさえ六百円に値上げしているのにこの値段で大丈夫なのかと思う。
昨日とんかつスズキで食べたばかりだが、気になったので中へ入り日替わりを注文してみた。
夜はダイニングバーとして営業しているようだが、ランチは一律五百円のワンコインランチ。
一体このお店は何を考えてランチをやっているのだろか?
出てきた料理を見て、そんな風に思った。
五百円ランチなのに、出てきたトンカツの肉は厚いし味も悪くない。
いや、むしろ美味しいほうだ。
付け合せの小皿も二つあるし、味噌汁お変わり自由。
しかもドリンクまでついて、この値段。
ここまで良心的で丁寧なお店って、ランチでは初めてかもしれない。
会計も本当に五百円で済んでしまい、こちらが申し訳ないなあという気持ちになるほどだった。
今度早めに起きたら、是非夜の営業も行ってみたい店だ。
暑い日差しの中、汗を掻きながら部屋へ戻る。
マゲとチッチは相変わらず仲良く並んで巣壷に入っていた。
この子たちの子供を見たいけど、未だ卵一つ産まないよな……。
水と餌を取り替え、プールの水も変えるとチッチがすぐ飛び込んで水浴びを始める。
鳥だって暑いよな、ほんと。
寝て起きたくらいにまた変えてあげよう。
数日間携帯電話の電源を切ったままだったので、久しぶりにつけてみる。
うん、当たり前だが小川絵美からのメールは無い。
ゲンは仕事をして帰れば迎えてくれる妻に、産まれたばかりの子供がいる。
正直淋しかった。
今の生活環境に何の不満も無い。
ただプライベートを共に過ごす伴侶が欲しくなってくる。
横浜に来てから俺と関わった女たちを思い出す。
塚田めぐみ…、半同棲のような形であるが、あいつは少し金にだらしない。
口じゃ一丁前な事を抜かすくせに、常に金が無い女だった。
あの頃はこっちに来て俺も金が無かった時期なので、精神的にも生活的にもすべてに於いて厳しい日々を送っていたのだ。
そこへ一万円など何度も無心されては溜まったものじゃない。
向こうから去っていく形で終わったが、後ろ髪を引かれる思いはまるで無かった。
本多麗美華や武田奈々は顔がタイプでも、所詮飲み屋の女である。
若さも手伝い性格も行動も適当だし、こっちが店で金を使ってなんぼと非常に分かりやすい。
恋愛対象外だろう。
それは向こうにしても同じだろうが……。
増山敦子は真面目なコンビニ経営だか、スナックあいだのババーの妨害により破局。
俺が怒って帰ったあと、高橋満治やインターコンチの森田たちと数軒飲み歩くような無神経さはあの時衝突していなくても、いずれいつかはぶつかっていたはずだ。
このように過去をあえて思い出そうとしない限り、まったく顔も出てこない女。
未だ何故なのか真相を知りたいのが小川絵美だ。
有馬莉奈のエンジェルで知り合い彼女の同級生だった絵美。
初めて見た時から可愛い子だなと思った。
うまい具合に連絡先も交換でき、毎日のように楽しいやり取りをした。
彼女の誕生日が近かったという幸運も利用しての祝福デート。
あれだけ喜んでいたはずなのに、その翌日で連絡は一切途絶えたまま。
上手くいくものだと思ったんだけどな……。
過去を回想している内に自然と眠りについた。
携帯電話のコールが何度も鳴り、それで目を覚ます。
人がいい気分で寝ているのに誰だよ、まったく……。
画面を見ると、里菜から。
里菜、里菜…、どの里菜だ?
有馬莉奈?
いや、それなら苗字も入れてある。
あ、川越の里菜か!
以前休みで地元へ戻った時、ホテルで抱いた裕也の妻。
「中に出して。そうしたら踏ん切りがつくから」とセックスの最中にデンジャラスな台詞を言った女だ。
あの時離婚するとか言っていたが、こんな時間が経って今さら俺に何の用だ?
とりあえず電話へ出てみた。
「久しぶり…、元気だった?」
「ああ、元気に暮らしてはいるよ。今日はどうしたの?」
「会いに…、会いに行ってもいい?」
面倒な女であるが、来れば抱けるのは確定だ。
小川絵美で受けたダメージを発散するのにちょうどいいかもしれない。
「別にいいけどさ…、里菜は今どこにいるの? 川越? 離婚はしたの?」
ストレートにすべて聞き、彼女の状況を把握しておけば問題はないだろう。
「離婚はとっくにしたよ…。今は群馬…。群馬の実家にいる」
「やっぱり別れたのかー…、それで群馬…、え? 群馬? 俺は横浜だよ? 神奈川だよ?」
群馬のどこだか知らないが、埼玉、東京を通り過ぎてからの神奈川だ。
時計の針を見ると、夕方六時半。
仮に来たとして何時になるんだ?
どっちにしても今日俺は夜中の三時から仕事がある。
「行ってもいい?」
少し間を置いてから里菜が聞いてくる。
「いいけどさ、群馬にいるんでしょ?」
「大丈夫、車で行くから……」
「来てもいいけど、今日夜中三時から仕事があるから、俺の部屋にいていいけど帰るの昼過ぎにはなるよ?」
「今から出るから…、その時間より全然前には横浜着けると思う。住所を教えてもらってもいい?」
過去に抱いた女が会いたいと、遥々群馬から横浜まで来るのだ。
俺は今の白妙町の住所を伝えた。
「横浜橋通商店街ってアーケードの商店街がすぐ近くにあるから。高速だと坂東橋。分からないようなら連絡ちょうだい」
「分かった、ありがとう」
里菜が来たら、思いきり抱いてやる。
それから仕事なのは怠いが、しばらくはセックス漬けの日々になるのだろう。
俺は彼女が到着するまで、妙に落ち着かずその辺をブラブラと散歩した。
夜の九時過ぎになり、里菜から連絡が入る。
「里菜、今どの辺にいるの?」
「桜木町ってところを過ぎたくらい」
もうそこまで来ていたのか。
横浜橋通商店街の白妙町付近は、色々と入り組んでいて分かりづらいだろう。
俺は桜木町駅から日ノ出町駅まで真っ直ぐ伸びる道を説明し、タクシーへ飛び乗った。
日ノ出町駅辺りで待つよう指示する。
向かう途中、携帯電話が鳴った。
一原から。
面倒なので電話には出ずに駅へ向かう。
彼女は駅付近に路上駐車し、俺を待っていた。
一年ぶりくらいか?
久しく見る里菜は、苦労からか若干やつれて見えた。
顔を見るなり抱きついてくる里菜。
「久しぶりだな、元気だったか?」
「凄く会いたかった……」
「お腹は?、減ってないの?」
「智一郎さんと落ち着ける場所で、ゆっくりしたい」
会っていきなりホテルもさすがに節操無さ過ぎるよな……。
「落ち着ける場所…、落ち着ける場所…。里菜、俺の部屋来るかい?」
「え、いいの?」
「いいも悪いもせっかく横浜まで来たんだろ? 食事してからがいいならそうするけど」
「智一郎さんの部屋に行きたい……」
何だよ、里菜もすぐ俺に抱かれたかったのか。
それなら話が早い。
「助手席に乗って、部屋まで道案内してくれる?」
「うん、任せな」
ドアを開けて車へ乗り込もうとすると、後部座席に籠のようなものが見えた。
何だ、ありゃ?
「とりあえずこの道を真っ直ぐいけばいいの?」
運転席に里菜が腰掛けながら聞いてくる。
「うん、そう。先に行って左へ曲がるけど、それは近くになってから言うね」
道を間違えないようフロントガラスを慎重に見つめながら話し掛けた。
「あいつとは離婚したと言うけど、しっかり片はついたのか?」
「うん、最初は別れたくないとずっと断っていたけど、あの店もコケて本当にお金無い状態だったからね…。親にも相談して、協議離婚という形で……」
「そうか…、大変だったな。でも何故こんな期間空いてから俺に連絡してきたんだ?」
「ちゃんと…、ちゃんとした形になってからじゃないと失礼かなと思って…。でもやっぱり凄い会いたくて…。ごめんね、迷惑だったでしょ?」
「迷惑だと思うなら、仕事前なのにこんな風にわざわざ時間作るかよ」
「……。ありがとう……」
俺のマンションの近くにあるコインパーキングに到着する。
「着いたよ、里菜」
車から降りて里菜が出てくるのを待つ。
ん…、あいつ何をモタモタしているんだ?
里菜が一度降りてから後部座席のドアを開けている。
両腕で大きなものを車から出そうとしていた。
ひょっとして手土産でも持ってきたのかな?
早く部屋に入ったら、今すぐにでもやりたいのに……。
「え……」
目が丸くなるとはこういう事を言うのだろうか。
彼女が後部座席から出してきたのは赤ん坊の入った大きな籠だった。
今布団は掛かっていないコタツテーブルを挟み、俺と里菜は向かい合って座っている。
彼女の左には赤ん坊の入った籠。
「えーと…、赤ちゃんだよね?」
「うん……」
俺の子だとか言い出されたらどうしよう?
いや、それは絶対に無い…、はず……。
確かに一度は里菜を抱いた。
しかし中に出して欲しいという彼女の願いを俺は断った。
抱いた事は抱いたが、俺自身射精すらしていないのだ。
「えーと、その子は?」
「前の別れた旦那…、裕也との子……」
「……」
何でいつもこうなるの?
里菜も里菜だ。
会いたいと言われれば俺も男だ。
無理に時間だって作る。
だけど何故赤ん坊も一緒に連れてくると、始めに予め言えないのだろう。
まあ最初にそれを言ったら断られるのを分かっているからだろうな……。
「里菜さ…、俺にわざわざ群馬から横浜まで会いに来てさ…、どうしたかったの?」
「うん…、自分でもよく分からないんだけど、気付いたら智一郎さんに電話してて、顔が見たくなったの……」
「うーんとね…、はっきり言っておく。その気持ちは本当嬉しかったよ。でもさ、赤ちゃん連れてくるなら最初の段階で俺に言うべきのんじゃないのかな?」
「うん…、そうだよね。ごめんなさい……」
力なくスーッと立ち上がる里菜。
「おいっ! とこ行くんだよ?」
「迷惑掛けてごめんなさい…。帰ります」
「お、おい……」
ここで遥々群馬から来た里菜をこのまま帰していいのか?
いや、何故黙って子供を連れてきたのか考えろ。
彼女は明らかに俺に寄り掛かりに来たのだ。
但しこの赤ちゃん付きで……。
他の男との間に生まれた子供付きで、里菜と一緒に生活する覚悟があるのか?
淋しさは解消できるかもしれない。
だが、仮に共に生活していて彼女との間に子供ができた際、俺はおじいちゃんに対して何て説明する?
冷たいようだが俺には無理だ……。
いくら何でも里菜は浅はか過ぎる。
お互い黙ったまま部屋の外へ行き、コインパーキングのところへ行く。
「帰るのか?」
「……。うん…、智一郎さん、ごめんなさい」
俺は財布から二万円を取り出し、里菜へ渡した。
「智一郎さん、受け取れないよ」
「いいから取っておけ。気を付けて帰れよな」
「ありがとう……」
里菜の車が去っていく。
これで良かったのかなんて俺には分からない。
しかし他人の子供を一緒に育てる覚悟は俺には無かった。
何故二万円という金額を渡したのかすら不思議だった。
十万でも二十万でもあげられたが、そこまでの義理は無いし、下手したらそれがきっかけで里菜には頼られてしまう可能性も出てくる。
群馬からわざわざ車で来たのだ。
足代として考えれば適正な金額だろう。
それにしても何で俺は、こんな変な展開ばかりになってしまうのか?
まともな付き合いをしたい。
遣る瀬無い気持ちのまま部屋へ戻る。
これから仕事へ行くのが堪らなく憂鬱だった。
七月もあと十日で終わり。
仕事中も先日の出来事を反芻するように何度も振り返る。
突然群馬県から来てすぐ帰った里菜は、あれから連絡一つ無い。
変にこちらから声を掛けると無駄な期待をさせてしまうだろう。
変な優しさを出してはいけない。
色々と考えさせられる出来事だった。
今の職場のオープン準備で時間があった俺は一度地元川越へ帰る。
その時ガールズバーで初めて出会い、気に入ったから口説きキスもした。
二度目に川越で会った時、店が終わると俺についてきた。
その時当然ホテルへ向かうが、入れる瞬間彼女は俺に言った。
結婚をしていると。
それでも構わず抱いた。
里菜は中に出してほしいと言った。
俺が中へ出せば今の相手と離婚をして諦めがつくと。
まだ横浜へ来て間もない俺は、断りその場で抱くのを中断した。
彼女と俺との関りはそれだけだった。
それが一年ぐらい経ち、会いたいと言われれば奇麗な女である、俺だって時間を作るさ。
何で赤ん坊がいる事を言わないんだよ……。
未だ自分の選択がどうだったのか分からない。
いや、あのように手を出さずに帰して正解だったのだ。
それにしても無駄な出費をしたものである。
まだ女のいる飲み屋へ行き金を遣ったほうが……。
一人ほったらかしのままの女がいた。
美容師であり熟女パブの川端里代。
小川絵美の一件以来、まったく連絡を取っていなかったが、近い内彼女の店に顔を出してみるか。
今の俺には誰かしらの異性の優しさが必要だ。
仕事明けの帰り道、また和洋創作ダイニング匠へ寄った。
五百円の激安ランチの店。
中へ入ると店員から本日のランチはもう塩サバ定食しか残っていないと伝えられる。
俺をそれを注文し、席へ座った。
五百円なのに相変わらずこの店のランチはしっかりちゃんと作ってある。
運ばれてきた塩サバ定食を見て、またまた感心してしまう。
大きめなサバ、ちゃんと大根おろしにレモンまで付けてある。
小鉢は冷奴にお新香。
サラダにご飯とみそ汁。
本当にこれ五百円だけでいいのかと、申し訳ない気持ちになってくる。
思えば宝水産のマグロ丼以外で魚を注文したの、横浜来て初めてかもしれない。
今度時間ある時、夜の営業にも顔を出してみよう。
部屋へ帰ってから川端里代へメールを打つ。
チッチとマゲの世話をしてから深い眠りについた。
起きてからシャワーを浴びる。
携帯電話を確認すると里代からの返事は来ていなかった。
一原からの着信が三件あるだけ。
新宿歌舞伎町の店の話をこの精神状態でするつもりは無かった。
鳥の餌と水を取り替え、部屋でボーっと過ごす。
出勤より早めに出て、里代の熟女パブでも行くか。
そう思って部屋を出たが、返事も来ない相手のところへ俺が顔を出すのは何か違うだろと福富町をグルグル歩き回る。
イタリーノのある中通りに差し掛かると一軒の中華料理屋が目に付く。
そういえば冷やし中華の季節だよな。
汗ばんだ身体を冷やしたい意思も手伝い俺は目の前の清香楼へ入った。
当然冷やし中華を注文する。
こんな深夜にまで営業をしているなんて有難い店だ。
ここの冷やし中華、本当に美味しいぞ。
今度普通に中華料理を食べに来てもいいくらいである。
八百五十円を支払い外へ出た。
職場へ行き、次の休みがいつ頃取れるか長谷川隆に聞いてみる。
「まあ下陰さん次第だからなあ。とりあえず岩ちゃんが休みが欲しいと伝えてはおくよ」
「よろしくお願いします」
ゲンと弘明寺へ行ったのが十九日。
あと一回ぐらい八月は休みたい。
仕事明け帰り道に大岡川の長者橋のところにある洋食屋ミツワグリルへ寄ってみる。
日ノ出町駅近くまで来ると、先日会った里奈をどうしても思い出してしまう。
いや、考えても仕方ない。
変に俺から関わってもできる事など何も無いのだから。
ミツワグリルへ入る。
入口にある手書きのメニューを見て、Bランチとナポリタンを注文した。
ミニハンバーグにチキンカツという組み合わせのBランチ。
サラダにミックスベジタブル、付け合わせのパスタにハム、そしてご飯とみそ汁がついて五百八十円。
ここも本当に良心的な店である。
来る度値段の安さに感心してしまう。
続いてナポリタンが運ばれてくる。
この店、何故かミートソースよりナポリタンのほうが百円高い七百七十円。
昔ながらの洋食屋さんといった感じのお店で、味付けも悪くない。
ナポリタンはイタリーノパスタよりも具材が入って贅沢だが、この値段なら次はミートソースにしてみよう。
部屋へ戻り、大人しく過ごす。
早めに起きたのでパソコンでもしようと大型モニターを見ると、色合いがおかしい。
配線かなと裏側を見ている内にとうとう画面もつかなくなった。
どうもテレビが壊れたようだ。
ノートパソコンやプレステーション三を繋げる用途しかなかったが、無いと何かと不便だ。
しかし電気屋へ買いに行くのも面倒。
三十二インチの新しいモニターをアマゾンで探す。
これまでの様々な一連の出来事から、俺はすべてが怠く感じていた。
特に先日の里菜の一件が目に見えないダメージを受けているのだろう。
条件に合ったモニターを手配する。
明日にはもう届くようだ。
そしたらプレステーション三を繋げ、ゲームにハマってオタクになろう。
里代からの連絡は未だ無い。
金と時間を使って結果こんなに俺はグッタリとしている。
本当に何をやっているんだか。
もうしばらく女関係はいいや……。
休みも特に取らず、新宿へ副収入の金だけ取りに行く時のみにしてもいい。
とりあえず目的も何も無いのだから、ひたすら働いて金を貯めればいいのだ。
皮肉な事に出勤すると二十七日の水曜なら休んでもいいと言われる。
オーナーである下陰さんが出てくれるようだ。
自分から言い出して置いてやっぱり休みはいらないなんてできない。
あと三日間頑張って仕事をしよう。
仕事明け連日でミツワグリルへ行く。
フライ系を始め、様々なメニューがショーウインドーに並ぶので色々と目移りしてしまう。
散々迷って末、結局昨日がBランチだから今日はAランチと安易に決める。
そして昨日がナポリタンだったから今日はミートソースにした。
Aランチのポークソテー。
Bランチと同じようにサラダ、ミックスベジタブルにパスタ、ハムが同じ皿に盛られ、ご飯とみそ汁がついて六百八十円。
原材料の違いなのかBランチより百円高い。
ミートソースは何故かナポリタンより百円安い六百七十円。
昨日と値段的には同じ金額になるのであった。
「すみません、マヨネーズ頂けますか?」
サラダの上に掛ける為頼むと、手作りのマヨネーズが出てくる。
こういうところが昔ながらの洋食屋の凄い部分でもあった。
イタリーノ同様このお店も俺は何気に気に入っている。
一応営業時間とかチェックしとこう。
昼は十一時から二時まで。
夜は十七時から十九時までの営業で、水曜日が定休日。
真っ直ぐ部屋へ帰り、マゲやチッチと戯れるいつものルーティン。
さて、予定だとこれからテレビが届くはずだ。
ノートパソコンを使ってインターネットをして時間を潰す。
最近隣国である韓国と日本の話題がどうも目に付く。
慰安婦問題にしろ、竹島の領土問題にしろ韓国とは様々な問題点が多い。
半日を掲げる韓国の主張を見ていると、やはり俺も日本人として苛立ってくる。
慰安婦なんて戦争の時の話だし、そんなものどの国だって貧しければ身体を売るだろう。
日本人に強制されたと大騒ぎしているが、そんなに日本が憎いなら何故在日韓国人たちは向こうに行かずこっちにいるのだろうか?
知識不足な俺はインターネット上の知識程度しかないので、竹島問題と言われるものを調べてみた。
千九百四十五年にポツダム宣言。
日本の領土は一旦白紙になる。
ここで韓国が竹島に目をつけだす。
千九百五十一年にラスク書簡。
アメリカが竹島は日本の領土とし、この約束は来年の四月二十八日から有効とする。
これは国際法に乗っ取ったもの。
分かりやすく説明すると、竹島が日本のものと証明された。
しかし千九百五十二年、李承晩ライン宣言。
あの島は韓国のものだとアピール。
以来何かにつけて韓国は自分たちの領土だと言い始め、不法占拠。
これは現在まで続く。
国際法に於ける裁判には応じようとしない韓国。
つまり駄々っ子と同じだ。
俺はインターネットにある画像を集めた。
竹島問題を分かりやすくまとめて作ってみる。
フェイスブックに投稿すると有馬莉奈がコメントで反応してきたが、そんな事よりおまえが紹介した小川絵美はどうなったと聞いてやりたかった。
夕方になり新品のテレビが届く。
早速開けてプレステーション三や、パソコンを接続してみる。
「ん? 何だ?」
思わず出る独り言。
モニターに映し出された画面の様子がおかしい。
違う画面に切り替え暗めにすると、中央辺りから十字の変な線が映りっ放しなのを気付く。
色々確認してみると、文字や映像が二重にチラつきながら映るし、眺めていると気分が悪くなってくる。
新品を購入したのに何だこれは?
このメーカー舐めてんのか?
苛立ちを抑えノートパソコンでアーケードゲームのエミュレーターを起動し、マイケルジャクソンのムーンウォーカーをプレイする。
俺が小学生の時のゲーム。
川越のデパート丸広の近くにあったゲームセンターペルル。
そこに置いてあったのを懐かしく思い出しながら始めた。
ステージが始まる前にマイケルジャクソンがコマ割りで出てきて「ウォー」と吠える意味不明な演出。
俺より上の世代がマイケル世代なので、いまいち分からない部分も多いが、それでも楽しめた。
昔のゲームセンターは薄暗い雰囲気で、不良の溜まり場だった。
ペルルは入口で今川焼きを売っている変なゲームセンターだったが、中に入れば薄暗い証明はそのままである。
思い出に残るゲームセンターといえば、蓮馨寺の境内にあった同級生河野隆二の親が運営していたピープルランド。
松本清張原作『鬼畜』でも映っている。
小学生高学年の頃ピアノの先生に送ってもらう時、いつもここに寄りペンゴをやった。
もちろん記憶違いの後者の先生の時だ。
幼稚園から同級生の笠間康史と共にプレイしたエグゼドエグゼス。
みんながコインを投入し、クレジットがマックスの九十九になったグラディウス。
そして今は湯遊ランドになったが、ニチイの三階のゲームセンター。
気の短く常に怒っているジジババが居て、年中怒鳴られている子供たちがいた。
ここでは八方向レバーのついた特殊筐体のフロントライン。
何故か車がジャンプするバギーポッパー。
あとは蔵造りの町並みが始まる後輩のマツザキスポーツの隣りにあった『ゲームセンター999』だな。
キン肉マンに出てくる完璧超人のネプチューンマンの素顔の喧嘩マンに似たオヤジが経営していた薄暗い雰囲気のゲームセンター。
中学生になってサッカー部をサボって初めて行った時の衝撃は未だ鮮明に残っている。
立ちながらプレイする筐体のスーパーパンチアウト。
前作のパンチアウトは今は無きボーリング場ファミリーレーンにしか当時は置いてなかった。
何故か大好きだったミステリアスストーンズ、ドクターキックの大冒険。
大人気だった魔界村。
回想しながら昔のゲームを楽しむ。
いつしか俺はそのまま寝ていた。