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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第二章 骸骨標本の怪 3

2021年11月23日 | 霊感少女 さとみ 2 第二章 骸骨標本の怪
「のぶ、いきなり、そんな話を始めなくてもいいんじゃない?」朱音が言う。「今日は、先輩の様子を伺いに来ただけだし……」
「でも、先輩は元気そうじゃない?」しのぶは朱音に言う。「それに、松原先生が……」
「松原先生が、どうしたの?」さとみが割って入る。「何かあったみたいね?」
「ええ、実は」朱音がにやにやしながら言う。「松原先生、昨日の事で、俄然張り切っちゃって」
「張り切る……?」
「そうなんです!」しのぶがテーブルをばんと叩く。「松原先生、同好会を立ち上げちゃったんです!」
「先生が? 生徒じゃなくて?」
「一応、発起人はわたしと朱音なんですけどね」
「何だか、面倒な話っぽいけど……」
「面倒なんかじゃありません!」しのぶがまたテーブルを叩く。「むしろ、大歓迎です!」
「何? どう言う事?」
 さとみは朱音を見て言う。
「松原先生、心霊研究の同好会を立ち上げたんです!」
「はあ?」
 朱音の楽しそうな言い方に、さとみは呆れる。目と口が大きく開く。麗子が思い切りイヤな顔をする。
「しかも」朱音がくすくす笑って続ける。「その名も『百合恵同好会』です」
「ええええっ! 何それぇぇぇ!」
 さとみが驚いて大きな声を出す。
「松原の野郎! ふざけやがって! よりによって、百合恵姐さんのお名前を!」
 アイが立ち上がった。このまま学校に戻って、職員室に殴り込みをかけに行きそうな勢いだ。
「アイ、落ち着いて!」さとみが諭す。アイの剣幕で逆にさとみは冷静になった。「もう少し話を聞かないと」
「……はい……」
 アイは不満気な顔をしていたが、姐さんには逆らえない。渋々と座り直した。
「活動内容が活動内容だから、おおっぴらには出来ない。そのためには、名前は極めてあいまいな感じの方が良いだろうと言う事です」しのぶは何事もなかったかのように話を続ける。「それで、さとみ先輩が同好会の会長で、百合恵さんが特別顧問で行こうと、松原先生は決めています」
「ちょっと、待ってよう!」さとみが口を尖らせる。「わたし、何も聞いていないわよ!」
「そうでしょうね。実は同好会の立ち上げ話、下校時に松原先生に呼び止められて、伝えられたんですから」しのぶは言うと、さとみに向かってぺこりと頭を下げた。「と言う事で、よろしくお願いします、さとみ会長。それで、骸骨標本の話なんですけど……」
「あのさぁ……」
 話を続けようとするしのぶを、さとみはさえぎった。
「何ですか、会長?」しのぶは怪訝な顔だ。「早速、次の打ち合わせを……」
「わたし、会長になるって言ってないわよ」
「イヤなんですか?」しのぶがぐっとさとみに顔を寄せる。「そんな優れた能力を持っているのに? イヤなんですか? 北階段の件も解決したじゃありませんか!」
「誰に聞いたの?」
「松原先生が、百合恵さんから聞いたって。その話を聞いて、同好会を思いついたって……」
「え~っ!」
 ……百合恵さん、面白がっているんだわ! さとみはからかうようにぺろっと舌を出す百合恵の姿を思い浮かべた。
「と言う事なんで、話を進めて良いですか?」しのぶはじれったそうだ。骸骨標本の話をしたくてたまらない。「一階の第一理科室なんですけど……」
「ちょっと、待って!」大きな声を出して遮ったのは麗子だった。「何の話だか分からないけど、わたしとアイには関係なさそうよね。だから、帰るわ! さあ、アイ!」
 麗子は怒った顔をして立ち上がり、アイを促す。麗子の本心としては、一刻も早くこの場を立ち去りたい。
「待て、麗子……」アイは立ち上がらない。じっとさとみを見る。「さとみ会長……か」
 アイはつぶやくと、にやりと笑った。さとみはアイの様子にイヤな顔をする。
「会長、良いじゃないですか、姐さん!」アイは楽しそうだ。「姐さんって呼ぶよりも、会長の方が、格が上って感じがします」
「うわぁ……」……ほうら、来たっ! やっぱりその辺よねぇ。さとみはうんざりする。「……でもね、単なる同好会の会長よ。格がどうのって話じゃないわ」
「底辺からのし上がるってのが良いじゃないですか!」アイは上機嫌だ。「ねえ、さとみ会長!」
「メンバーが五人になれば、サークルとして認められます」しのぶが余計な事を言う。「サークルになれば、一応、学校の活動として認められます」
「五人……」
 アイが右の人差し指を立てて、朱音、しのぶ、麗子、さとみと順番に指差し、最後に自分自身を指した。
「ちょうど、五人じゃないか!」アイは楽しそうに笑い、さとみに向かって言う。「会長! 同好会からサークルへ、早速の出世じゃないですか! こりゃあ、幸先が良いですよ!」
「え? じゃあ、アイ先輩たちも入ってくれるんですか!」しのぶも嬉しそうに言う。「うわ~っ! 嬉しい! ねえ? かね!」
「うん!」朱音も嬉しそうな顔で立ち上がる。「明日、松原先生に報告しなきゃ!」
「いや、今から学校に戻って報告しようよ! まだ松原先生、学校に居るはずよ!」
「それが良いわ! じゃ、先輩……じゃない、会長! 失礼します!」
 朱音としのぶはさとみたちにぺこりと礼をすると、きゃあきゃあ言いながら学校へと戻って行った。
「行動的な舎弟が二人も出来ましたね」
 アイは、何度もうなずきながら駈けて行く二人を見ている。 


つづく

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