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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第二章 骸骨標本の怪 19

2021年12月09日 | 霊感少女 さとみ 2 第二章 骸骨標本の怪
「オレは権左と言ってな……」男は、権左は話し始めた。「悪の限りを尽くしていたがとっ捕まって、ここで処刑された。オレはまだまだやり残した悪事がある。そう思いながら磔台の上で槍で突かれた。からだから解き放たれたオレは、悪霊となって物に憑く事が出来た」
「物だと?」
「そうだ。子供の好きそうな人形に憑いて子供を唆し、一家皆殺しをさせたり、骨董品に憑いて、高い銭を払って買い取った野郎の時には、その夜の内に憑いた骨董品をずたずたにして無駄金にして自害させたり…… まあ、他にも色々とな。生きていた時よりも散々楽しい思いを続けていた」
「屑外道めが!」みつが吐き捨て、腕組みを解くと素早く刀を抜いた。切っ先が権左を捕らえる。「権左! 覚悟しろ!」
「だから、待てと言っているだろう!」権左は両手を前にしてみつを制する。「散々に悪事を続けてきたオレだったが、ある時、綾部冨と言う小娘に封じられた。なめてかかったオレも油断していたが、あの小娘の力は凄まじかった……」
 権左はさとみを見つめる。さとみは負けじと見つめ返した。
「……にしても、お前、綾部冨にそっくりだな」権左は苦笑する。「オレを何とかあの世へ行かそうとしていたがな、オレは拒んだ。生きていた時よりもやりたい放題だ。こんな愉快な事、やめられるわけが無い」
「うわぁ、最低……」
 さとみが全力でイヤそうな顔をする。
「ひゃひゃひゃ」権左は不気味に笑う。「そうそう、今のお前とおんなじ顔をしていたぜ。その後だった。『じゃあ、ここでずっと石になってなさい!』……今でもあの声と様子を思い出すぜ…… その言葉の後、オレは石に封じ込められた。あっと言う間だったな。そして、石の上に札を張られた。それっきりオレは封じられた」
「ふん! ざまあみろだわ!」
 さとみは勝ち誇ったように言う。
「別にお前の手柄じゃないだろうが」権左は呆れたように言う。「だがな、そのせいで、オレはずっと恨みと呪いとを糧に、石の中でしのいでいた……」
「それが、封が解かれて、一気に恨みと呪いとを噴出させた言うわけか」みつは言うと、刀を構え直した。「さあ、話は聞いてやった。そこに直るが良かろう。安心しろ、一瞬で片が付く」
「もう少し話をさせろ」権左が言う。「こうして話をするのは久し振りなんでな…… どう言うわけか封が解け、オレは放たれた。空地だったここに、いつの間にかでかい建物が出来ていた。オレは綾部富を探した。そうしたら、この建物から綾部冨が出てきやがったのを見かけた……」
「それがわたしだったようね」さとみが言う。「でも、わたしは孫だから」
「その時は分からなかったのさ。オレはお前を見た時に、オレの中の恨みと呪いとが一気に噴き上がった。……が、オレが覚えてたのはそこまでだ」
「そこからは……」さとみが言う。「黒いあの影に操られたってわけね……」
「そう言う事になるのだろう」権左はさとみに顔を向けた。「オレは骸骨に憑いていたのでさえ気がついていなかったよ」
「じゃあ、骸骨はあなたが自分から憑いたわけじゃないのね」
「そりゃそうだ。こんな価値の無いものに憑いたってオレには何の楽しみも無い」
 権左は言って粉々になった骸骨を見た。
「それから、お前がオレに話しかけ続けただろう?」権左はさとみを見る。さとみはうなずく。「オレはお前があの世へ行くようにと言う話に乗ろうかと思ったんだ。覚えているのはそこまでだ。再びオレは何も分からなくなった。気が付いたら、この別嬪剣士に、取り憑いていた骨がかち割られていた」
「そうだったのか……」みつは別嬪と呼ばれたことに心なしか気を良くしているようだ。「……さとみ殿、如何しましょうか?」
「たしかに、改心しかけたのよねぇ……」さとみは権左を見ながら言う。「それが急におかしくなったのよね。あの黒い影が現れたせいで……」
「そうだろう? もう冨が居ないんじゃ、オレにはどうしようもない」権左は言う。「それに、邪悪さではなく清さで強くなるって言うのも良い感じがするぜ」
 そう言って、にやりと笑った権左が突然消えた。一瞬で姿も気配も消えたのだ。
 さとみははっとして後ろに振り返った。消えていた黒い影が現れていて、浮き漂っている。


つづく

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