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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第二章 骸骨標本の怪 24

2021年12月14日 | 霊感少女 さとみ 2 第二章 骸骨標本の怪
 放課後になった。既に朱音としのぶ、それにアイがさとみの教室の外で待っていた。
「さあ、麗子、行くわよ」さとみはにやにやしながら麗子に言う。「今日で『弱虫麗子』が返上できると良いわね」
「ふん! わたしは弱虫なんかじゃないわよ!」
「はいはい」
 さとみは麗子の背中を押しながら教室を出る。アイたちが一斉にさとみに向かって頭を下げる。通りかかる生徒たちが怪訝な顔をしながら通り過ぎて行く。
「さとみ会長、話はつけておきました」しのぶが言う。「ですけど……」
「どうしたの?」
「井村先生って、人見知りだって話したじゃないですか。だから、わたしと会長だけなら良いって言うんです……」
「何だよ、折角来たって言うのによう!」アイがぶんむくれる。「そんなヤツが先生なんかやるなってんだ!」
「わたしも、そう思いました」朱音がうなずく。「でも、相手が先生ですから……」
「そんな戯言なんか無視してみんなで押しかけましょうよ、会長」アイがさとみに言ってにやりと残忍な笑みを浮かべる。「ひょっとしたら、人見知り、直るかもしれません」
「あ、荒療治ってやつですね!」朱音が楽しそうに言う。「でも、あの先生変わり者だから、逆効果にならないかなぁ……」
「そうよ!」麗子が大きな声を上げる。「先生に迷惑かけちゃいけないわ。ここは残念だけど、さとみとしのぶちゃんに任せた方が良いわね。わたしたちは帰りましょ? ね、アイ?」
 麗子は一方的に言うとアイの腕に自分の腕をからませる。
「……どうします、会長?」アイがさとみを見る。「押しかけた方が良いと言うんでしたら、それに従います。舎弟は姐さんには逆らわないものですし、ましてや会長ですからね。命だって惜しくはありませんが……」
「そんな、大袈裟な……」さとみは呆れる。「まあ、話を聞くだけだから、問題はないと思うわ」
「じゃあ、決まりね!」麗子が言う、声がうきうきしている。「お二人でどうぞ」
「分かったわよ」さとみはため息をつく。「三人は帰って良いわ。わたしのしのぶちゃんとで行くから」 
「そうと決まったら、帰りましょ。……ねえ、朱音ちゃんはどうする?」麗子が朱音を見る。「帰るんなら一緒に来ない? 美味しいパフェのお店があるのよ」
「本当ですかあ!」不満そうだった朱音の顔がぱっと明るくなる。「行きます! わたし、パフェが大好きなんです! ……アイ先輩も好きなんですか?」
「アイはお替りするくらい好きなのよ」麗子はくすくすと笑う。「すんごい渋い顔して食べるんだけどね、内心は美味しいって満面の笑みだわね」
「うるせぇなあ!」アイは赤くなって文句を言う。「わたしだって、女の子だぞ……」
「きゃあああっ!」朱音が楽しそうな悲鳴を上げ、ピョンピョンと跳ね回る。「アイ先輩、かわいいっ!」
「……と言う訳で、さとみ」麗子がさとみに言う。「そう言う事情なら仕方がないわね。残念だけど、わたしたちは帰るわね。後で話を聞かせてちょうだい」
「はいはい、よかったわね」
 ……本当はほっとしているくせに。「弱虫麗子」がばれなくて良かったわね。さとみは思っていた。
「あ、そうだ!」さとみは麗子を見て、にやりと笑う。「麗子には、一番に、詳しく、丁寧に、話してあげるわね」
 麗子はイヤそうな顔をした。それをアイと朱音が引っ張るようにして去って行く。


つづく

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