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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第三章 窓の手形の怪 3

2021年12月19日 | 霊感少女 さとみ 2 第三章 窓の手形の怪
 翌朝、さとみは鼻歌を歌いながらご機嫌で登校していた。
 昨夜はみんな(とは言え霊体だが)が集まってくれて、久々に楽しい時を過ごすことが出来たからだ。疲れもすっかりどこかへ行ってしまった。
 綺麗に晴れた空を仰ぎながら、さとみの鼻歌が益々冴えてくる。途中の四つ角を曲がった所で、麗子とアイに会った。
「あら、さとみ!」
「会長!」
 二人は驚いたような、それと同時に何となく気まずそうな表情をした。二人は組んでいた腕を慌てて解いていた。
「あら、お二人さん、おはよう」さとみは機嫌良く挨拶をする。「昨日はパフェを食べたのかしら?」
「……さとみ」麗子がじっとさとみの顔を見る。「どうしたの? 何か良い事でもあったの?」
「たしかに、会長、今日は晴れやかなお顔です」アイも言う。「何があったのか聞いても良いですか?」
「ふふん!」さとみは楽しそうに鼻を鳴らす。「みんな無事だったのよ。それに、みんな集まってくれて」
「それは良かったですね!」アイは自分の事のように喜ぶ。「会長のお知り合いなら、今度紹介してくださいよ」
「う~ん、紹介してあげたいんだけど、難しいかなぁ……」
「え? ダメなんですか……」アイが悲しそうな顔をする。「会長の信頼がまだ足りないって事ですか……」
「そうじゃないの」さとみが慌てて否定する。「アイはとっても頼りになるし、とっても信頼しているわ。でもね……」
 さとみは言いながら麗子をちらっと見た。麗子は、さとみが会っていた連中の事が、薄々分かったようだ。とってもイヤそうな顔をしている。
「アイ、行こう!」麗子がぶっきら棒に言う。「遅刻しちゃうわ!」
 麗子は言うと、足早にその場から行ってしまった。
「ちょっと、麗子! まだ遅刻になんかならねぇよ!」アイは言うと、困った顔でさとみを見る。「……会長、すみません……」
「良いのよ、麗子と一緒に先に行っちゃって」さとみは言う。「こういう話になると、麗子っていっつもこうだから」
「はあ……」アイは分かったような分からないような顔をする。だが、舎弟は会長の言う通りにしなければならない。「じゃあ、先に行かせて頂きます」
 アイはさとみに一礼すると麗子を追いかけた。
「ふふふ、弱虫麗子に拍車がかかって来たわね」
 一人ほくそ笑む「いじわる少女 さとみ」だった。
 学校に着くと、さとみは用務員室へと向かった。ドアをノックする。
「はい……」
 中から返事があって、ドアが開いた。白髪頭を短く刈り込んだ、小柄だががっしりした体格に作業服を着こんだおじいさん(さとみにはそう見えた)が出てきた。
「あ、おはようございます! 二年の綾部って言います!」さとみは言ってぺこりと頭を下げた。「あのう、高島さんっていらっしゃいますか?」
「高島は僕だけど?」おじいさんが言う。さとみはこんな歳の人が自分を「僕」と呼ぶのが妙に新鮮で面白かった。「何か用かな? 授業が始まっちゃうけど?」
「あの、お昼休みの時間、ここに居らっしゃいますか?」
「どうしてだい?」
「お聞きしたい事がありまして……」
「どんな事?」
「あの、生物の井村先生から聞いたんですけど、校舎三階の窓の事で……」
「……それって、窓の手形の話かい?」
「そうですけど……」
「あの先生も口が軽いなぁ」
「いえ、そうじゃないんです」さとみが弁解する。「わたし、実は心霊サークルに所属していまして……」
「心霊?」高島は首辺りで両手をだらりと下げて見せた。「幽霊とか、そう言うヤツ?」
「そうですけど……」
「そうかい…… 分かったよ。じゃあ、お昼休みにここに居るから、来ると良い」
「はい、ありがとうございます!」
 さとみは言うと用務員室を後にした。……井村先生の口が軽いって言っていたけど、高島さんも軽そうだわ。さとみは思った。人は自分だけの秘密を知ると話したくなるものだ。
 教室に行くと、麗子がむっとした顔でさとみを見てきた。
「さとみ! アイに色々と勘繰られちゃったじゃない!」麗子は怒っている。「こう言う話ってなんだ? とか、 いっつもこうだってどう言う事だ? とか。迷惑半端ないわ!」
「え? だって、いっつもじゃない? ほら、霊の話とかさ……」
「ふん!」麗子はそっぽを向く。青ざめた顔を見られないようにするためだ。「もう良いわ! 授業始まっちゃうから!」
「ええ、そうね」
 そっぽを向いたままの麗子に向かってさとみの唇が動く。その形は「弱虫麗子」だ。


つづく

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