お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

持病克服 2

2020年11月15日 | 怪談
1

 ぼくには持病がある。
 人の生き血を吸うと言う、とんでもない病気、「吸血鬼病」だ。
 幸い吸血鬼が畏れる太陽の影響はなく、普通に健全な生活が出来ている。
 ところが、突然、人の血が吸いたくなり、抑えが利かなくなる。
 男女を問わず、首筋に噛みついて血を吸うわけだけれども、相手が死ぬほどは吸わない。
 献血よりもちょっと多めに吸わせてもらうだけだ。
 まあ、そう言う意味でも健全だろう。

 しかし、悲しい事がある。
 この病は治しようがないそうだ。
 しかも、吸血鬼だから、不死身の身体になってしまった。

 ならば仕方がない。
 この病と上手に付き合うしかない。
 ほどほどに人を襲い、ほどほどに人の血を吸い、生きて行くしかないだろう。
 ぼくはそう開き直った。
 
 ところが、この病気、感染力が強かったようだ。

 ぼくに襲われた人が「吸血鬼病」になってしまい、別の人を襲った。
 そして、襲われた人も「吸血鬼病」になって、さらに別の人を襲う……

 気が付いたら、世界中の人が吸血鬼になってしまった。
 
 そうなると、困った事が起きる。
 血を吸う相手が居なくなると言う事だ。

 不死身とは言え食べ物が無くなってしまったら話は別だ。

 ボクたち吸血鬼は、あっという間に滅んでしまった。


2

 わたくしには持病がございます。
 恥ずかしゅうございますが、「雪女病」と申すものでございます。
 わたくしの触れるものは皆、凍ってしまうと言う、厄介な病なのでございます。
 それも、突然に発症致しますので、わたくしにはどう仕様もございません。
 ほとほと、困り果てておりました。

 ところが最近、某漢方薬が効くとの話を聞きまして、取り寄せました。
 効能書きには、最低一年間は服用する事とございました。
 それで治るのなら、安いものでございます。
 わたくしは服用を続けました。

 漢方薬は体質改善を目指しているとの事。
 服用し始めてから数か月で効き目が出始めました。
 冷え症だったからだが、いつも温かになりました。
 冷たい物を好んでいた食べ物の嗜好も、温かい物へと変わりました。
 「雪女病」の発症は次第に間隔が開き、ついには全く現れなくなりました。
 
 それで、一年が経ちました。
 完治したのでございます。

 わたくしは嬉しくなりました。
 時期は夏でしたので、頑張った自分へのご褒美と言う事もあって、海水浴へと赴きました。
 
 しかし、それがいけませんでした。
 
 海水の塩分が刺激になったのでしょうか、海に入った途端、症状が出てしまったのでございます。

 あっという間に海が凍りはじめました。
 海は世界と繋がっております。
 世界中の海が凍りました。
 海には河川が注いでおります。
 世界中の河川も、それに繋がる湖も凍りました。
 海も河川も湖も底まで凍りつきました。
 冷気が地球を包み、太陽の熱くらいではどうにもなりませんでした。

 地球は、再び氷河期になってしまったのでございます。

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