笹船が川を流れて行く。
流れ着くのがどこかも知らず、ただせせらぎと共に川を行く。広すぎるその川の澄んだ水に差す光が笹船を際立たせ、だから私は立ち止まった。
ああやって、身の丈を知り流れゆくものを照らすのだ、照らされるのだ、と緩やかな流れを見守る。
この何気ない景色の中で、あの小さな緑に気づいたのは一体どちらの手柄だろう。陰に暮らすとつまらないことを考える。
キラキラと行ってしまうものはもうここには戻らない。いつもそう。行く先を見送り、この光景を忘れないでと願ったのは、私か笹船か、と空に問う。
オトギリソウによく似た黄色い花が河川敷に揺れて光の玉のようだった。待ち侘びていたものは、届かない場所へ行ってしまったのだと、光の花が私に囁く。
ああこの輝きは、たしかキンケイギクだと教えてくれた。忘れてしまった遠き日の影も揺れていた。
見えなくなった笹船の、煌めく川面に遠く目をやる。傾く陽射しが陰るころ、蜩がそろそろ森へ帰れと鳴きだした。
心残りは置いたまま小さな森に引き返す。
森に月がかかる夜、どこかで物語が語られる。それはとうに忘れ去られた小さな森の物語。
流れ着くのがどこかも知らず、ただせせらぎと共に川を行く。広すぎるその川の澄んだ水に差す光が笹船を際立たせ、だから私は立ち止まった。
ああやって、身の丈を知り流れゆくものを照らすのだ、照らされるのだ、と緩やかな流れを見守る。
この何気ない景色の中で、あの小さな緑に気づいたのは一体どちらの手柄だろう。陰に暮らすとつまらないことを考える。
キラキラと行ってしまうものはもうここには戻らない。いつもそう。行く先を見送り、この光景を忘れないでと願ったのは、私か笹船か、と空に問う。
オトギリソウによく似た黄色い花が河川敷に揺れて光の玉のようだった。待ち侘びていたものは、届かない場所へ行ってしまったのだと、光の花が私に囁く。
ああこの輝きは、たしかキンケイギクだと教えてくれた。忘れてしまった遠き日の影も揺れていた。
見えなくなった笹船の、煌めく川面に遠く目をやる。傾く陽射しが陰るころ、蜩がそろそろ森へ帰れと鳴きだした。
心残りは置いたまま小さな森に引き返す。
森に月がかかる夜、どこかで物語が語られる。それはとうに忘れ去られた小さな森の物語。