「これ、下さい」
何度このセリフを、目の前の青年が言った辺りだったろうか。
とうとう私の堪忍袋の緒が切れた。
「だーかーらー、何で欲しいんですか、あなたは!!」
「そんなのいいでしょう、ケチだなぁ」
「誰がケチよっ!!」
何を言っても、目の前の青年はニコニコと笑っている。
彼は、なぜそこまで「これ」が欲しいのだろうか。
何の変哲も無い、すみれの花束だと言うのに。
しかも道の途中で摘んだだけ。買い物の帰り道、綺麗だと思って野原をふらふらしていたのだ。すると、すれ違いざまに、この奇妙な青年に捕まった。
私の花束を見るなり、「僕に下さい」と笑顔で、頼んできたのである。
「これぐらいの花束だったら、その辺で摘めば手に入るじゃないですか。どうしてわざわざ…」
「じゃあ、何で『これぐらい』のものを渡してくれないんです?」
青年は微笑んだまま問う。私は言いよどんだ。
「それは、えっと…そう!自分で綺麗なのを選んだからですよ。せっかく苦労したのに…」
「僕は、その花束が欲しいんです。自分が摘んだのじゃない、あなたの摘んだのが」
「は?」
「だから下さい」
ますます意味が分からない。
「何で私のが欲しいんですか…?」
何で私はさっさと渡して逃げてしまわないのだろうか。そうすれば何の問題も無いのに。自分がどうして意地を張って渡さないのか、不思議だった。
「何で、かと言うと…」
ここにきて、初めて青年の顔に戸惑いが見えた。
「僕にもよく分からないんです。ただ、あなたが持っているその花束がとても貴重で綺麗なものに見えて…どうしようもなく欲しくなったんです。…こんなの可笑しいですよね」
「可笑しいですね」
「やっぱり」
青年が苦笑する。私もつられて笑う。
「でも私も、あなたに欲しいって言われてから何てこと無い花束が惜しくなってしまって…私も可笑しいですね」
青年は、またニコニコとして頷いた。
その顔を見ていると、何だかこのままになるのは惜しい気がして、私の頭に浮かんだ案を口に出してみた。
「あの…せっかくだから、この花束半分こしません?」
「半分こ?」
「だって…欲しいんですよね。だったら…」
「いいんですか?」
「ええ、もちろん」
私が半分にしたすみれの束を手渡すと、青年は今までとは比べ物にならない笑顔を見せた。
「ありがとう!!」
そこまで喜んでくれて、こちらこそありがとう。そう言いたい気分だったが、笑顔に留めた。
なんてことの無いすみれなのに、こうも可笑しなことになるなんて。
半分このすみれを手に、しばらく二人で歩いて帰ることになってしまった。
そして二人を分かつT字路で、お互いのすみれを振ってさよならを言った。
何故だか分からないが、明日も彼に会うと思う。
水差しの中のすみれが、片割れを呼んでいる気がするからだ。
何度このセリフを、目の前の青年が言った辺りだったろうか。
とうとう私の堪忍袋の緒が切れた。
「だーかーらー、何で欲しいんですか、あなたは!!」
「そんなのいいでしょう、ケチだなぁ」
「誰がケチよっ!!」
何を言っても、目の前の青年はニコニコと笑っている。
彼は、なぜそこまで「これ」が欲しいのだろうか。
何の変哲も無い、すみれの花束だと言うのに。
しかも道の途中で摘んだだけ。買い物の帰り道、綺麗だと思って野原をふらふらしていたのだ。すると、すれ違いざまに、この奇妙な青年に捕まった。
私の花束を見るなり、「僕に下さい」と笑顔で、頼んできたのである。
「これぐらいの花束だったら、その辺で摘めば手に入るじゃないですか。どうしてわざわざ…」
「じゃあ、何で『これぐらい』のものを渡してくれないんです?」
青年は微笑んだまま問う。私は言いよどんだ。
「それは、えっと…そう!自分で綺麗なのを選んだからですよ。せっかく苦労したのに…」
「僕は、その花束が欲しいんです。自分が摘んだのじゃない、あなたの摘んだのが」
「は?」
「だから下さい」
ますます意味が分からない。
「何で私のが欲しいんですか…?」
何で私はさっさと渡して逃げてしまわないのだろうか。そうすれば何の問題も無いのに。自分がどうして意地を張って渡さないのか、不思議だった。
「何で、かと言うと…」
ここにきて、初めて青年の顔に戸惑いが見えた。
「僕にもよく分からないんです。ただ、あなたが持っているその花束がとても貴重で綺麗なものに見えて…どうしようもなく欲しくなったんです。…こんなの可笑しいですよね」
「可笑しいですね」
「やっぱり」
青年が苦笑する。私もつられて笑う。
「でも私も、あなたに欲しいって言われてから何てこと無い花束が惜しくなってしまって…私も可笑しいですね」
青年は、またニコニコとして頷いた。
その顔を見ていると、何だかこのままになるのは惜しい気がして、私の頭に浮かんだ案を口に出してみた。
「あの…せっかくだから、この花束半分こしません?」
「半分こ?」
「だって…欲しいんですよね。だったら…」
「いいんですか?」
「ええ、もちろん」
私が半分にしたすみれの束を手渡すと、青年は今までとは比べ物にならない笑顔を見せた。
「ありがとう!!」
そこまで喜んでくれて、こちらこそありがとう。そう言いたい気分だったが、笑顔に留めた。
なんてことの無いすみれなのに、こうも可笑しなことになるなんて。
半分このすみれを手に、しばらく二人で歩いて帰ることになってしまった。
そして二人を分かつT字路で、お互いのすみれを振ってさよならを言った。
何故だか分からないが、明日も彼に会うと思う。
水差しの中のすみれが、片割れを呼んでいる気がするからだ。
これ、いいですねー。
でも、スミレ好きとしては、突っ込みところが少々(笑)
頑張ってるあの人に捧げてみたり。
読了しました。
うーむ……。
ブログの記事に上げるには、少し勿体ない小説のような気がしました。俺みたいな意地悪な人が読んだら、「あ、この台詞回しは使えるな」なんて、いたずらに商売敵を増やすだけだと思います。
……。
違う! そんなことを書きたくてコメントしたんじゃない!!
えー。要するに、「戯曲出身は伊達じゃねーな」ってことが言いたかったんです。
俺みたいな小説を読んで小説を書いてるような人間には、とても新鮮に目に映るんですよ。
文章が普遍的で、自己満足の気配が微塵もしない。
私的に、海さんの自己満足を読んでみたいんですけどね(もう、技術を盗む気まんまんで) ←死ね俺
こ、これは褒められてるのか褒められてるのか!?(褒められ慣れてない不憫な子)
いやー、えー、どもども。
ざーっと、心の赴くままに(つまり推敲すらせず)書いたので、色々批評されるかなと覚悟してたんですが。
自己満足かー…。
つまり、自分だけの修辞法、拘りを尽くしまくった世界のことですね。
高校時代のノートはそれに溢れてるけど、まぁ読み難い読み難い。
技術とかそんなんじゃなくて、自己満足を書くのは楽しそうだ(笑)
リアルのアキラんをちょっと感じて笑えますねぃ。
妄想輪郭線の形もそれなりにハッキリしてるけど
まだまだもっと恥ずかしい小説が書けるはずだ!(イミフ応援)
リアルはこんなアレは無いですぜ、旦那。
恥ずかしい小説ってアンタ!!(身の危険)