晴嵐改の生存確認ブログ

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総務省はインターネットを規制するのか?

2005年07月03日 | 時事
「ネットに匿名性は不可欠」――総務省(ITmedia)

この記事を読んで、先日のエントリーは間違いだったか? 私はとんでもない勘違いをしていて、恥ずかしいことを書いてしまったのか? ――と、思ったのですが……。

確かに、公表された「情報フロンティア研究会」報告書を読む限りでは、「匿名性を排除」するとか、「実名でのネット使用を推進」するといった意図は読み取れません。それどころか「実名」といった単語自体が、同報告書中に2回しか出てきていません。

「ICTにより実現されるバーチャルな環境を、現実社会と同じ感覚で活用すること、すなわち、サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と安全に交流することを自然の術として身につけるための教育が必要である」

「学校の中でセキュアなネットワークを整備した上で、児童・生徒が自らのアカウントを持ち、実名でブログやSNSを用いて他の児童・生徒と交流することでネットワークへの親近感を養うとともに、ネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害等に対する実地的な安全の守り方も同時並行的に学ぶことが重要である」

以上の記述を素直に読めば、「インターネット利用にあたって、本名か固定ハンドル名を使用して、掲示板への書き込み等を行う習慣を身につけさせる」「学校内に構築されたクローズドネットワークの中でブログやSNSといったシステムを利用して、ネット上でのコミュニケーションについて演習を行う」といった程度の内容でしかないわけです。要するに、学校教育に対する提言ですね。
この程度なら、まぁ、目くじら立てるほどのことではないのかもしれません。もっとも、提言内容に全面的に賛成することもできませんけれど。

ITmediaの記事に書かれているとおり、総務省が「匿名性の排除」や「実名性の推進」を意図していないとすれば、なぜこのようなミスリードとしか言いようのない記事が配信され、それに対して総務省の担当者が「報道は、誤りではない」とコメントしているのでしょうか?
誤りではないということは、共同通信の配信記事の内容に近いことを総務省が意図している、とも受け取れます。単純に「共同通信の先走りで、総務省はネットにおける匿名性の排除なんて考えてなかったんだ♪」なんて思えるほど、私は楽観的な人間ではありません。

実際のところ、総務省が何を考えているのかはわかりません。が、それについて考えるための材料は提示されていると思います。例えば、6月24日の大臣記者会見での質疑応答に、こんなやりとりがあります。

問:それ(注:山口県光高校爆弾事件のこと)に関連して、インターネットの有害情報を規制するかどうかの、政府で検討が始まりましたけれども、一方で表現の自由との抵触の懸念もありまして、大臣としては、これについてはどのように対応されていかれる考えですか。

答:これは基本的には、この種の便利なものが出来たときに必ずついてくる光と影の部分の影の話なのですけれども、麻薬の売買、自殺の薦め、爆弾の作り方等々いろいろ問題のあるものがインターネットに載るというのは、こういった有害な情報というものが出ていることは確か。何らかの形で規制をしなくてはいけないという声があることも間違いないのですが、今言われたように、表現の自由という話とか、いろんな問題があります。そういった意味では、常識的には、この種の話は、普通は(インターネットに)載せないほうが常識なような気がしますけれども、載ったものを観る人は非常に多いというようなことになってくると、これはどうやって規制するかということはなかなか難しいところだと思いますのでね。これはその種のことには先進的な国もありますので、そういった諸外国の情報やらをよく調査した上で、学識経験者やもちろん事業者も含めて、他に関係する警察も含めて、関係省庁いろいろあると思いますので、よく連携をしておきたいと思っているのですが、研究会を7月に立ち上げます。


要するに、総務省としては、ネット上の有害情報(何をもって有害とするのかはともかくとして)を規制するための方法を検討する意志を明確に持っているわけです。総務省はこれから研究するというのですから、具体的な手法はおろか、そもそも規制するのかどうかさえも決まっていないはずです。しかし、実名でのネット利用を促進することで有害情報の公開を抑制する、という選択肢を全く考慮していないとは言えないのではないでしょうか。

奇しくも、お隣の韓国では政府が「インターネット実名制」導入を検討しているとのこと。まさかそんなことはあり得ないと思いますが、麻生総務大臣が仰った「先進的な国」が中国や韓国ではないことを祈ります。


>>その他、関連していそうな情報へのリンク

■インターネット上における違法・有害情報対策について(IT安心会議)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/others/kettei.pdf

■ネット有害情報:政府が判断基準、自主規制促す(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/kokoro/news/20050630dde041010005000c.html

■ネット情報に第三者の「有害判定委」…総務省が検討(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050625i101.htm


【追記:7月4日】文意が変わらない程度に、エントリーの記述を修正しました。

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