Archaic Smile

私的な備忘録です。

欧米景気と日本景気の時間軸

2012-01-14 23:09:46 | Weblog
【景気の行方】

昨年の今頃は、世界でリーダーの選挙が控えているので各国の与党が財政政策の大判振る舞い、世界景気は上向くようなストーリーで証券会社のちょうちん記事が新聞、雑誌で賑わっていたが、年初から景気が良くなるなんて楽観的な筋立てはかなり厳しいし、今年は、お気楽景気回復記事は、ほとんど影を潜めている。

日本の与野党のみならず諸外国も同様に与野党ともに国民を魅了する政策を提示できていない気がする。資本主義なる経済システムが揺らいでいることによるのだろう。この行き詰まりを打開する政策解を巷の専門家は持ちあわせてなさそうだ。政治家は利害調整する知恵も乏しく、分かりやすい支持団体(財務省・役人・外国人・連合・経団連etc)の利益誘導発言ばかりをする。各団体のむき出しの要求をそのまま提示したら各団体で利害が対立するのは当然で、大局的な視点が欠落したまま、ちぐはぐで矛盾した発言を耳にするにつけ、政治家の無能さばかりが際立っているように思う。

正月に土木関係や宝飾品海外ブランドに勤める親戚と話をしていたら、日本の内需はそこそこ底堅いように感じた。土木関係の専門業種は、西日本の会社でさえ東北の仕事が増えて人が足りないそうで、申し訳ないけど景気がよいそうだ。ニュースでも流れているとおり高級品は、本当に売れているらしい。ブランド品については一千万もするアクセサリーが売れたり、中国人は来なくなったけど昨年よりも販売実績をのばしているそうだ。こんだけユーロ安だというのに価格に反映しないで売れるのだから利幅は半端ないのだろう。これこそカルテルだあと、独占禁止法違反だと騒いで円高還元セールを庶民のためにしてもらいたいものだ。

震災時にがまんしていた反動や税金対策や増税を見越した駆け込みやインフレを見越した換金性の高いものへ資産内容の見直しなのか、お金を持っている人たちのさまざまな思惑で需要が盛り上がっているようだ。もちろん震災を経験した私たちは、大きな地震がまた起きて運が悪いと死ぬかもしれないという発想も芽生えたわけだから、年金がなくなるとか国家が破綻するというような遠い世界の心配をしてお金を節約して貯めこむことも重要だけど、生きている今を楽しむ(自分のために消費する。孫や子供や人のためにお金を使う。)ことも併せて重要だと従来以上に強く感じるようになったのだろう。

欧州は、資金が引き上げられて失血死する状態になるならば、財政も統合し欧州共和国?になって、かつお金を刷って加盟国の負債を肩代わりするしかないのだろうが、当然ながら船頭も多いので船は山に登りそうだ。ドイツのように生産性も高く、比較的堅実な船頭もいれば、ギリシャは論外にしても陽気で楽観的なラテンノリのバブリー南欧諸国と、そこへの貸付が多いフランスなど、各国の利害のバックグラウンドが異なることで足を引っ張り合いがつづきイチかゼロかの瀬戸際に来ているのだろう。ドイツ中心に統一されるのか、ドイツが他を見切って大ショックが起こるのか、もうあまり時間が残されていない。

各論ではおもしろいことを言うが、総論では意味不明のクルーグマンが雑誌のインタビューで、アメリカの経済学者は日本に謝罪するべきだとコメントしていた。リフレが正しいとか間違っているとかではないが、一年くらい前までは、日本化(ジャパナイゼーション)という言葉は、欧米が日本の政治・経済の無能振りと非常に珍しいデフレ現象を揶揄する言葉として、ああはならないよ~という文脈で使われていたように記憶するが、今思えば日本は時代の最先端を突っ走っていただけで、バブル崩壊を知らない当時の欧米諸国から好き勝手に言われていただけだったようだ。そうなってくると、日本はもう一度、当時の小泉・竹中改革については、不良債権処理は良いとしても、競争を是として中間層を解体した点についてもう一度よく検証するべきであろう。

中間層という同質の分厚い需要を減らしたことによりデフレスパイラルに拍車をかけてしまったのだろう。競争のもつインセンティブのメリット以上に競争による消耗やそのデメリットが上回ってしまった。リストラ(固定費削減)の大義として度をこえた競争が奨励され、結果的に構造的な格差社会を推し進めてしまった。今ではアメリカンドリームも本国でさえ雲散霧消している。

TPP礼賛=グローバル礼賛は、日本以外の欧米先進国がバブルであった当時においては、輸出で新たに稼ぎ出す発想は正解であったろうが、先進国のバブルがはじけてマーケットがシュリンクする状況において引き続き正解かどうかということもよく考える必要があるのだろう。彼ら(欧米)も日本と同じ大きなバブルが崩壊する局面になって、市場参加者が納得しうる成長に向けた具体的な処方箋を提示できていないことからも、上記の解釈は間違っていないのだろう。

あとヨーロッパと米国のバブル崩壊過程における対応において、決定者が複数であることとそうでないこと、及びドラギ・ショックなんかからも分かるように日本の失われた10年をそれなりに観察していたバーナンキみたいな学者が指導的立場にいたかどうかも大きな違いなのだろう。リーマンショック時におけるヨーロッパのストレステストは、オリンパスなみに詐欺で、問題の先送りなのは、当時だれもが気付いていたことだ。

それにしても欧州が逝ってしまうことが規定路線ならば、直接的な影響を受けるのは、投資や貿易の比率の高い中国であったり、投資やCDSなどで強い結びつきのある米国であったりするのだろう。もう一度直近で東南海地震みたいな大きな地震が来ない限りではあるが、日本の財政破綻は緩やかにやって来る(日本国債が買い支えられなくなるタイミング、もちろん国益・国民の幸福に適った、まともな改革がこのまま何もなされなければであるが)だろうし、日本の崩壊は最後になるのかもしれない。

CDS市場が崩壊したりして米国の銀行がピンチになったら、お金をたくさん刷って、メイやマックみたいな新しい官立の不良債権の山を作って、また銀行を救済するのだろうか。ユーロ安は当然としても、更にドル安になるストーリーも想定するべきだろう。中国も欧州という上客の消費が落ち込み、また自国のバブルをねじ伏せられないのならば厳しいことが起こるのだろう。引き続き換金性の高く、価値が損なわれないと信じられる資産・ストックに向かって、逃げ場を失い死蔵されていた、いろいろな国名をプリントした余ったマネーは活発に動きまわるのかもしれない。

瞬間的な状況なのかもしれないが、ドイツの新規発行の短期国債の金利が、マイナスになってしまったことは、非常に象徴的なことにように思う。安心してお金(価値)を大量に保存できる場所が少ないからといって、投資先の見当たらないお金持ち(投資主体)が、お金を貸した相手に相対的にリスクが少ないという理由だけで、お金を貸し与えた上に、一部喜捨する(利息まで与えてしまう)なんて博愛精神の極まった?需給バランスなのだろう(笑)お金を貸して利息を取ることを、社会悪と見做すイスラム教徒もびっくりの所業なのだろう。
コメント
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