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猿山政治論

巷に溢れる情報から妖しく光る原石をピックアップ!ステロタイプ的政治論に囚われぬ独自の世界観で「きれいごと」抜きに鋭く分析

外国ローファームが弁護士業務を牛耳る~年次改革要望書2008に見る横暴(3)~

2009-09-06 10:26:15 | 年次改革要望書
今回は、「年次改革要望書2008」に見る米国の横車についての第三弾として、日本の「弁護士業務」への米国の介入についてご紹介します。

日本では長らく、日本の司法試験に合格し弁護士登録を行った者にのみ日本国内で「法律事務」を行うことが認められ、外国弁護士(外国等において法律事務を行うことを職務とする者で弁護士に相当するもの)には認められませんでした。

しかしその後、どこぞからの圧力が働き、徐々に制限が緩和されてきました。

1986年
外国弁護士は、法務大臣の承認を受ることにより「外国法事務弁護士(≒外国ローファーム)」として原資格国法に関する法律事務を行うことができる(外弁法)。→原籍国法に関する業務の解禁。

1994年
一定の条件の下、「外国法事務弁護士(≒外国ローファーム)」と弁護士間において、日本国内の法律事務を行うことを目的とする共同の事業(「特定共同事業」)が可能になる(外弁法改正)。→パートナーシップの解禁。国内登録弁護士の雇用の禁止は従来のまま。

2003年
「外国法事務弁護士(≒外国ローファーム)」による国内登録弁護士の雇用と外国法事務弁護士と国内登録弁護士の「外国法共同事業」が、日本弁護士連合会に届け出ることにより可能になる。→日本人弁護士の雇用解禁。外国ローファームによる国内弁護士事務所の系列化解禁。

こうした流れにより、監査法人に見られるような、米国大手ローファームによる日本の大手法律事務所の系列化が可能になる下地が作られてきました。

年次改革要望書2008の内容はこの流れをさらに進め、米国企業による日本企業支配を、司法面から支えることを強く意識したものとなっています。

1.外国ローファームが直接日本に支店を開設

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-2. 外国ローファームならびに日本にいるその弁護士および外弁パートナーを含むすべての弁護士事務所が、専門職法人の設立にかかわらず、日本国内に複数の支店を設立することを認める。

まさに、日本の法曹(主に弁護士)登用制度に風穴を開けるものです。例えば米国で弁護士資格をとれば、日本の司法試験を落ちた人でも日本で弁護士ができるようになります(英語が堪能な人であれば、米国の司法試験は日本と比べてかなり受かりやすいものです)。

それ以上に重要なことは、日本におけるM&Aを強力に推進するための法的支援を、外国ローファームが直接的に支援することができるようになり、敵対的買収の敷居が低くなり、外国企業の日本企業支配が進むという点です。

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-3. 弁護士がインターナショナル・リーガル・パートナーシップのメンバーになることの法的な意義について、インターナショナル・リーガル・パートナーシップの実際の実務に関する調査を含めた法務省による検討を2009年3月までに完了する。また、単独か、他の弁護士もしくは外弁とのパートナーシップを通じてかにかかわらず、日本の弁護士が日本国外で弁護士の国際パートナーシップのメンバーになることに対して、法的あるいは弁護士会の規則上の障害は存在しないということを明確にするための措置を講じる。
III-A-4. 日本以外の法律に準拠するすべての仲裁を含め、日本で行われるすべての国際裁判外紛争解決(ADR)手続きにおいて、外弁が主宰者として活動すること、また当事者を代理することができることについて、法的確実性を高めるための適切な措置を講じることができるかどうかに関する法務省の調査を2009年3月までに完了する。また2009年中にそのような措置を実施するための措置を講じる。

弁護士法の規定はあいまいな表現が多く、司法書士・行政書士等との住み分けで紛争が耐えませんが、ここでは「外国ローファームが好きにできるということを条文上明確にしろ!!」と言ってきているわけです。

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-5. 日本弁護士連合会および各地の弁護士会が、原則として法務省に対する原出願日から3カ月以内かつ法務省による承認日から2カ月以内に、外弁の新規登録請求を承認するよう確保する。

外国企業によるM&A事案等が発生した場合に、機動的に外国ローファームから弁護士を送り込んで日本国内で活動できるようにするためです。



司法の問題は、一般国民に関心の薄いところかもしれません。

しかし、米国企業による日本企業の買収の目的は、日本国内における地道な企業活動を意図したものというより、日本企業が溜め込んだ企業内留保を配当という形で、外国への持ち出すことを目的としたものですので、それを法的に支援するための仕組みが、日本の司法制度内に組み込まれることで、外国企業による不当な日本搾取を防止する有力な防壁が取り払われることは、我々一般国民の雇用等にも非常に大きな影響がある点に注目すべきです。

続きは次回で

筆:猿山太郎

米国製薬会社が日本の薬価を決定??~年次改革要望書2008に見る横暴(2)~

2009-09-04 09:42:00 | 年次改革要望書
今回は、「年次改革要望書2008」に見る米国の横車についての第二弾として、日本の「医療機器・医薬品」「食品添加物」行政への米国の介入についてご紹介します。

1.薬価決定プロセスへの介入

[年次改革要望書2008抜粋]
II-A-2. 米国製薬業界の代表を中医協の薬価専門部会の委員に選任する。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、日本における薬の価格は、中医協(中央社会保険医療協議会)という厚生労働省諮問機関の答申に基づき決定されることになっており、具体的な検討は中医協内の「薬価専門部会」においてなされることになっています。

もちろん厚生労働省お気に入りの薬品会社・医者・学者等がずらりとならぶ御用機関ではありますが、いちおう日本人だけで構成されております。厚生労働省としても外国から口を挟まれるのはうっとうしいですし、自分の思いのままにならないのは困りますから当然のことです。

ところが米国は、ここに米国製薬業界の代表を参加させろといってきたわけです。

米国の製薬会社は、日本の製薬会社よりもはるかに巨大で、例えば国内最大の武田薬品工業ですら世界のトップ10に入っていません。新薬の開発力では日本の製薬会社も十分健闘していますが如何せん見劣りしてしまいます。

つまり新薬の特許を多く保持する米国の製薬会社としてはジェネリック品の拡大は望ましいことではなく、薬価を維持することでジェネリック品に対する価格競争力を維持したいという強い動機があるのです。

そこで、中医協の薬価専門部会に委員を送り込むことで、薬価をコントロールしようという腹積もりなのです。

せっかく日本で根付いてきたジェネリック品の使用を、尻すぼみにさせてしまっては、将来の医療コストの削減にも影響を及ぼすことになります。ジェネリック品の使用は、なにせ患者さんに損をさせることなく医療コストを引き下げるための最も有効な手立てだからです。

2.薬価の維持圧力

[年次改革要望書2008抜粋]
II-A-3. 新薬の革新的価値を初期価格に反映させ、特許期間中および独占権期間中はその既存価格を維持しながらジェネリック医薬品の促進を行うことにより、価格算定制度を改革する。
II-A-4. 革新的医薬品の価値を損なう毎年の価格改正を控え、革新的新薬の導入を促進させる。

ジェネリック品を注文してもあまり価格が下がらないということ出れば、どうしても患者・医者は「本物」を選んでしまいます。

新薬の特許を多く保持する米国の製薬会社はそれを狙って、価格改正を控えるよう求めているのです。

他の多くの分野では、自由競争による価格引下げを求めているにもかかわらず、この分野だけがそれに逆行しており、米国の身勝手さがとてもよくあらわれているケースです。

3.新薬の販売促進策

[年次改革要望書2008抜粋]
II-A-8. 新薬の処方期間を基本的に30日まで延長し、新薬が市場に出回ってから6カ月後に、30日を限度とする処方期間を終了する。特定の安全性に関する懸念により、新薬の処方期間を30日未満とすべき際には、透明で科学的根拠に基づいた方法により決定する。

新薬に限って処方期間を延長することで、新薬に強い米国製薬会社に便宜を図ろうとする意図が丸見えです。

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-4. 日本と類似する安全基準を持つ国において既に承認された医薬品について、負担がより少ない審査要件を検討するよう総合機構を奨励する。
III-A-5. 2012年までに、新薬の承認申請に関して厚生労働省の最終承認までの審査期間を2カ月以内に短縮する。
III-A-6. 承認後の変更に関する審査期間を国際的な基準である3カ月に短縮する。

この期間では、日本人のDNA特性、体質、食事、生活習慣等を考慮した治験を行うことは不可能で、きちんとやったのか疑わしい海外のデータを鵜呑みにせざるを得なくなります。

以前、香港で感染が広がったSARS(カナダでも発生しましたが感染者はアジア系)など気持ち悪いほどアジア人ばかりが感染する病気があるように、妙な病気が流行る時代ですので、こうした要求を鵜呑みにするわけには参りません。

他にも次のような審査期間短縮に関する要求があります。個々に検討してみると、とんでもない話のオンパレードです。

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-7. 新薬の薬事規制の改善と平行して、ワクチンの利用の促進および薬事規制を向上する。予防医薬品およびワクチン問題について米国業界と協議する。
III-B-4. 薬事承認を必要としない小さな変更、届出のみで可能な変更、また年次報告書への記載で可能な変更を明確にすることにより、一部変更に関する承認を迅速化し、その要件を削減するためのガイダンスを発行する。米国食品医薬品局の慣行と整合する変更については、「リアルタイム審査」手続きを導入する。
III-B-5. 厚生労働省の2008年9月5日付通知に基づき、加速化試験の方法の有効性が科学的に立証されているすべての場合において、医療機器の承認の基準として、加速化安定性試験のデータの受け入れを拡大する。
III-B-6. 一度の審査で科学的および規制的な問題を最も効率的に審査できる場合には、機器の一括申請を許可する。機器または適応症が類似している場合、添付データが類似している場合、および同一の審査チームにおいて審査が可能な場合には、一括申請を許可する。
III-B-7. 申請における原材料記載要件を簡素化し、原材料の化学組成を特定するための要件を通知19より削除する。日本の生物学的同等性試験の要件がISO 10993と十分整合していることを保証する。
III-B-8. 外国の工場について、現行の認定制度に代わり、国際慣行に一致した簡易登録制度を採用する。
III-B-9. 品目ごとの品質管理システム(QMS)調査を廃止し、工場ごとの定期的なQMS調査を採用する。
III-B-10. 審査の一環としての、国立感染症研究所による体外診断薬の事前承認審査を廃止する。治験から保険償還までの間に体外診断薬の使用を認める規定を設ける。

4.血液製剤の輸入制限緩和

[年次改革要望書2008抜粋]
IV-A. 原産国表示を認め、「任意」もしくは「非任意」表示制度を廃止する。
IV-B. 需給計画ならびにその他の措置が血漿タンパク製品の輸入を制限しないよう保証する。
IV-C. 血液製剤の製造や構造の変更の一部変更に関わる承認の迅速化を図り、審査の効率性を向上させる。
IV-D. 米国業界およびその他の利害関係者が規制当局へ有意義な意見を提出する機会を提供するためにコミュニケーションを向上させる。

とんでもない血液製剤を日本に押し付けて、深刻な薬害エイズ問題を引き起こしておきながら、あいた口が塞がりません。この問題では、何故か日本側当事者(厚生労働省と旧ミドリ十字)ばかりが槍玉に挙げられますが、輸出側にそもそも問題があったのです。

血液経由の妖しげな病気は他にもいろいろとありますので、このような要求を呑んではいけません。

5.食品添加物の輸入要件緩和

[年次改革要望書2008抜粋]
V-C-1. 食品添加物における新規ならびに変更の申請が、科学的な原則に基づき、透明かつ迅速に完了するよう、国内および国際的な団体を含む既存の科学的審査と評価を最大限活用する。
V-C-2. 安息香酸やソルビン酸等、食品添加物と分類される天然由来の物質の痕跡により、検疫所で止められている貨物の通関手続きに関するプロセスの一貫性を向上させ、体系的に問題に取り組む方法を策定する。

清涼飲料水(某大手コーラ会社製らしいです)において、安息香酸(保存料)とアスコルビン酸を使用している場合、ある条件下で反応しベンゼン(発癌物質です)が生成することが報告されたため、10ppbを超える製品の自主回収が要請されたという事実もありますので、とんでもない話です。

もしかすると当該某大手コーラ会社の圧力かも・・・。

続きは次回で

筆:猿山太郎

日本の消費者金融を狙う米国~年次改革要望書2008に見る横暴(1)~

2009-09-01 15:16:53 | 年次改革要望書
雑誌類にぽつぽつ取り上げられるようになって、年次改革要望書という言葉を聞いたことがあるという方が最近ぐんと増えています。

かくいう私も、恥ずかしながらインターネット上で郵政民営化批判が繰り広げられるようになった数年前までは、まったくその存在を知りませんでした。

どの年の年次改革要望書を読んでも米国の横暴は目に余るものがありますが、今回から数回に分けて最新の「年次改革要望書2008」をもとに投稿してみたいと思います。

年次改革要望書は、すこしづつ微妙に名称を変えておりますが、最新の2008年10月15日版は「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」とあり、米国日本大使館のホームページからダウンロードできるようになっています。

この米国の堂々とした恫喝に比べると、その存在に言及することさえタブーとしつつ、唯々諾々とその指示通りに政策を進めてきた日本政府の弱腰には、歯がゆい思いでいっぱいです。

でも、あなただって日本政府の偉いさんと同じ立場に立たされれば、同じ行動を取るかもしれません。下手なことすると命がないんですから・・・。

「お国のためなら立派に死んで見せます!!さようならお父さんお母さん!!」と特攻攻撃さながらに虎の尾の上でタップダンスを踊り続けることのできる自信のある方も少ないのではないでしょうか(「私なんかリバーダンスを踊ってるわよ!!」という女傑もいらっしゃるかもしれませんが)?

逆に黙って言うこと聞いてれば、その人だけ少しいい目にあえますし、ましてや進んで売国活動に協力する倫理感覚遮断症候群の方々ともなれば、自分は総理大臣になって息子まで代議士にさせたり、なんちゃって経済理論を洗脳マスコミで吹きまくっただけで日本有数の人材派遣会社の会長にまでなれるんですから・・・。

前置きは、これくらいにして、まずは「年次改革要望書2008」から伺える米国の日本における消費者金融進出の野望です。

1998年にGEファイナンスが消費者金融レイクを買収した際に、迎え撃つ日本側サラ金業者も、いよいよ米国大資本の本格進出かと色めきたった時期がございましたが、日本の繊細かつ高度な消費者金融テクニックを真摯に学ぼうとする姿勢に欠けていたせいか、使えない「外資系渡り鳥日本人社員」に高給をむしり取られただけに終わりました。

まともにビジネスしたのでは負けてしまうとわかると、今度は日本政府とマスコミを動かして次のような手練手管を使い、もうあとわずかで日本の消費者金融業界を破滅に追いやるところまで成功を収めつつあります。

①消費者金融業者を絶対悪とする徹底的なネガティヴキャンペーン(確かにワル揃いの業界ではありましたが、実際のニーズがあったからこそ成立した業界であったことも忘れてはなりません。)

②利息制限法の厳格適用による収益構造の破壊

③過払い利息取戻しによるサラ金内部留保奪取(一応消費者の懐に納まりますが)

④過払い利息取戻しの制度的整備。「過払い利息取戻し判例創造」と「司法書士の過払い利息取戻し業務参入」

⑤都市銀行への系列化推進 プロミス・アコム

⑥見せしめとしての武富士潰し(故武井保雄氏への波状的ネガティヴキャンペーン。叩いてホコリの出ないサラ金業者なんていますか?)

というように、まず日本の民族消費者金融業者を潰して、きれいにしたところでおもむろに進出を狙ってきたのが、「年次改革要望書2008」の次のような内容です(最期に内容をまとめましたので、お読みにならなくても大丈夫ですよ)。

I-B. 信用情報機関
米国は、金融サービスのすべての部門を網羅する、消費者や中小企業の包括的な信用情報制度を設け、これを実施することにより、信用情報制度を近代化するための継続的な取り組みを要請する。この目的を達成するためには、包括的なすべての信用情報を収集し、またアクセスを提供することができる有効な規制の枠組みが必要である。そのような制度は、スコアリングのための信用情報の活用や、消費者や企業に信用を供与するためのスコアリングに基づいたリスク管理の活用を促すものとなる。その中には、あらかじめ決めておいた収入ベースの制限を超えて信用を供与する決定も含み、従って健全な信用の引き受けを促し、過剰融資を防ぎ、そして消費者福祉や信用市場の競争力を改善することも含まれる。

I-D. 顧客情報の共有のためのオプトアウト
米国は、現在のファイアウォール規制緩和の下で、企業顧客向けの合理的なオプトアウト制限は、リスク管理、健全な商習慣および管理目的、権限のある上層部経営者、その他の適切な目的のために、関連会社間の幅広い顧客情報を共有することを、今もなお容認すべきであると提案する。企業顧客にオプトアウトする権利を通知する、実践的で効率的な方法を導入する必要がある。

I-E-1. ノンバンクの決済プロバイダーが送金やオンライン決済などの為替取引に携われるようにするための為替取引の定義の修正。

つまり、「信用情報を米国の消費者金融業者によこせ」「消費者には黙って信用情報を米国の消費者金融業者に渡せ」「米国の消費者金融業者が銀行を通さずに海外送金できるようにしろ」ということです。

続きは次回で

筆:猿山太郎