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猿山政治論

巷に溢れる情報から妖しく光る原石をピックアップ!ステロタイプ的政治論に囚われぬ独自の世界観で「きれいごと」抜きに鋭く分析

少子高齢化・人口減を構造的に組み込まれた日本社会~日本は核武装すべきか(8)~

2009-08-25 08:58:02 | 日本核武装
(3)国民の意思決定能力にかかる要件

わが国は第二次世界大戦で、兵員・一般市民併せて310万人の犠牲を出しました。わが国戦争指導部の決断によって防ぐことができたはずの沖縄戦と、宗主国による容赦ない都市部への無差別爆撃によって、自国領土内での全面的な戦闘を経験したドイツを上回る膨大な一般市民の犠牲を出してしまいました(かくいう私のところも戦争遺族です)。

それゆえに、残された国民一人一人の胸のうちに湧き上がった、何の打算もない純粋な平和の願いと潔い自省の思いは、いかにも日本人らしい心情の表れとして、日本人の誰もが違和感なく受け入れるができます。

ところが宗主国は、日本人こうした心情を、極めてドライに受け止めて(「血を流さない戦争」においては当然の行動ですが)、日本を再び欧米を脅かす覇権国家となり得ない国にするという、その政略上の目的を達成するため最大限に利用し、

 ①根拠なき平和思想の植え付け

 ②過剰な自虐志向の刷り込み

 ③個人の尊重という名の孤立強制(大家族→核家族→おひとり様・独居老人。見せ掛けは自己選択ですが事実上の強制。)

 ④子育不能な労働環境下での共働き強制(金融資産海外流出に伴う労働者一人当たりの収入の抑制)

 ⑤洗脳マスコミと偏向歴史教育による政治・社会・国家・軍事を考える意欲・能力・機会の奪取(笑えないお笑い番組・多様性を欠くバラエティ番組・日本を絶対悪とする近代史教育・真実を隠蔽する報道と教育)

 ⑥若年層の仮想現実世界への誘導(IT技術を駆使したネトゲ廃人・携帯依存症など現実世界からの遊離促進プログラム)

 ⑦エスタブリッシュメント階層の破壊(「国益」と「生き様」が一致する社会階層の消滅→機会を改めて論じたいと思います)

といった社会的テロを積み重ねることによって、少子高齢化・人口減を日本社会に構造的に組み込むことに成功したわけです。

このまま日本人が手を拱いていれば、半自動的に「日本民族雲散霧消化」プログラムは進展していくでしょう。

これが欧米指導者たちの意図的誘導によるものであるというと首をかしげる方もいらっしゃるでしょうが、ご自身で深く調査・分析すればするほど、きっとこうした結論に近づいていくことにお気づきになると思います。

このような社会的テロ、とりわけ洗脳マスコミと偏向歴史教育による政治・社会・国家・軍事を考える意欲・能力・機会の奪取により、自分なりに理想とする国家像をイメージし具象化する能力を持った有権者が減少してしまったことが、日本の民主主義が機能不全を起こしている最大の理由だと思います。

今の状況を、もし戦国時代の武将や明治維新の英傑がご覧になったら「なんじゃこりゃ!!」と卒倒してしまうのでしょう。

ただでさえ横並び優先・孤立恐怖症の日本人が、空っぽの脳みそで、核武装問題に直面した場合(まさに今の状況ですが)は、思考停止した上で、横並びサーチモードに突入したままフリーズするしかないのです。

選挙権を18歳から与えるなんてとんでもありません。

この状態から脱出するためには、マスコミが洗脳報道を即座に中止し、真実の情報をバイアスなしに国民に提供すると同時に、国民が意思決定しやすいように、実現性のある政策を利害得失を添えて判りやすく提供できる環境を整える必要があります。

具体的には、某広告代理店が広告屋さんとしての「本分をわきまえた」経済活動に専念できるよう、宗主国と調整の上、法的・政治的環境を整えてさしあげるとよいでしょう。

また放送法等による過度な偏向報道規制も、逆効果になっております(というか意図的に逆効果を狙っている)ので、改正すべきです。

さらにこうした民主的環境を整えて政策の大枠でコンセンサスを形成すると同時に、外交・軍事のテクニカル面での研究・開発を間に合わせることができれば、核武装するしないにかかわらず日本としてやれるだけのことはやった(最低限の要件は満たした)といえるのではないでしょうか?

もっとも、冷厳な国際社会の掟は、こうした地道な努力を超越したところに確固として存在しますので、必ずしも報われるかどうかは保障の限りではありません。

失敗すれば日本は滅びるかもしれません。

続きは次回で

筆:猿山太郎

怖いのは核武装した「持たざる国」「失うものがない国」~日本は核武装すべきか(7)~

2009-08-22 10:11:38 | 日本核武装
先に結論を申し上げますと、現実の議論は、既に核武装した「持たざる国」&「失うものがない国」北朝鮮に対抗するために日本も核を持つべきか否かという点に集約すべきだと考えています。

以下、少々お付き合いください。

(2)経済活動・外交上の要件

 まもなく中国に追い越されるにしろ、現在の日本は世界第二の経済大国です。このまま米国が没落した場合は、中国次いで第二位をキープするかもしれません。
 日本のGDPが米国を上回るという話は決して夢物語ではなく、米ドルの信用が低下した場合、対ドル為替レートが50円以下に下落する可能性は十分ありますので、ドル換算のGDPで日本が上回るという事態も想定できるのです。

 つまり、日本は、今後も「持てる国」であって「失うものがある国」であり続けるのです。そしてその力の源泉は、卓絶した経済力にあり、それを維持するためには、商売が成り立つ程度には世界秩序が保たれていることが条件となります。

 当たり前の話ですが、世界中で戦争が起こりますと、商権の維持に軍事費を含む余計なコストがかかりますし、なによりも相互の「信用」が損なわれますので、身軽な商売が成立しにくくなるからです。

 もっとも、戦争が多発したところで、日本が直接の当事者とならない限りは、商売のネタが変化するだけで、経済活動自体が絶対的に不可能になるわけではありませんが、今の米国のように国ごと「死の商人」に徹するためには、自分から能動的に戦争を誘発し、軍需マーケットを創造していく「たくましさ」「厚かましさ」「冷酷さ」が必要です。

でも我々には向いていないように思いませんか??

 ですから、無闇に核武装を進めることにより、日本が戦闘の直接当事者として巻き込まれてしまっては、元も子もないのです。

 まず中国は、自ら「もてる国」になりつつあって、こうした事情はよく理解していますし、生かさず殺さず巧妙に収奪してこその日本属国化であって、クロ焦げになった日本では魅力半減ですから、外交的にうまく立ち回っている限り、中国側からむやみに軍事的攻勢(特に核攻撃なんか)をかけてくることは考えにくいと思います。

 ところが、「持たざる国」であって「失うものがない国」北朝鮮だけは、自国に有利と見るや、包丁(核兵器)を振り回して襲い掛かってくることも外交的選択肢の一つとしていますので、現実の議論は、核武装した北朝鮮に対抗するために日本も核を持つべきか否かという点に集約されることになります(また集約すべきです)。

 さらに日本が、核不拡散防止条約に事実上反して核武装を進めた場合(別に脱退しなくても厚かましく開発する手もあります)、それを大義名分とした軍事的攻勢を受けるリスクの他に、より現実味のあるリスクとして、他国による経済制裁が考えられます。

 経済制裁にはあまりに多くのバリエーションがあるため、網羅的に対応策を挙げることはできませんが、少なくとも現在の日本の外交力では、容易にブレイクスルーすることはできないでしょう。

 後に述べますが、私が結論として核武装を推進することに消極的なのは、まさにこの点があるからなのです。

 もっとも、次のような局面が出てくれば外交的にはチャンスです。逆にこうしたチャンスが巡ってこない間は、あきらめざるを得ないでしょう。

 ・北朝鮮がとち狂って、実際に核攻撃を仕掛けてきた場合(いったん被害は出ますが、戦略上チャンスです)
 ・中・ロの覇権争いに乗じて、両国のコンセンサスを得た場合(もうこの頃には米国はうるさく言わないでしょう。他の国の意見は無視しても怖くありません)
 ・どこかの国から完成品売却の打診があった場合(もしかすると北朝鮮だったりして(爆))
 ・核拡散防止条約が事実上拘束力を失う事態が生じた場合

 続きは次回で

 筆:猿山太郎

仮想敵国は核武装後の北朝鮮だけに絞るしかないが・・・~日本は核武装すべきか(6)~

2009-08-20 11:57:44 | 日本核武装
3.日本における核武装の条件とは

 これまで、近年の極東における米国の軍事的プレゼンスの著しい低下と、それに伴う米国から中国に対する「日韓台貢物三点セット化」についてお話してきました。

 では、こうした極東の軍事情勢と日本の地政学的要件を考慮した場合、どのような条件が揃えば、核武装することが日本の国益にかなうことになるのでしょうか?

(1)地政学的観点から生じる条件
 
現代において、世界的覇権国家であるためには、次の条件を兼ね備えた上で、自ら覇権国家たる自覚を持ち、現実にそう振舞う必要があります。

 ①広大な国土(国家の発展を地理的に十分吸収でき、敵国の攻撃から縦深的な防御体制が取れる)

 ②相応の人口(あらゆる産業をすべて支えきるために、現在では億単位の人口が必要となろう)

 ③十分な資源(植民地・衛星国を含め、多少の過不足があろうと、あらゆる資源が自己完結的に入手できる)

 ④近代的かつ重厚な産業構造(最先端の工業製品を素材から最終製品まで自己完結的に加工し終えるだけの技術力と生産力を備える)

 ⑤文化的先進性(他国をリードするコンテンポラリな文化の発信地である)

 ⑥他を圧する軍事力(他国から戦争を仕掛けることが事実上不可能な程度に卓抜した軍事力を備える)

 20世紀以降、こうした条件の多くを兼ね備えた覇権国は、第一次大戦まではイギリス、第二次世界大戦までは米国、冷戦終結までは米国及びソ連、20世紀末までは米国、21世紀に入ってからは米国、中国、ロシアといったところに限られています。

 日本の場合、国土と資源が明らかに欠けていることから、今後、相当数の侵略戦争を貪欲に仕掛けて勝ち抜いた後でなければ、覇権国家たることは不可能です。

 もし、現在の状況で覇権国家として振舞った場合どうなるでしょうか?

 これで、真の覇権国家は、容易に日本叩きの大義名分を得ることができます。

 その上で、平和的手段で攻勢をかける場合は、第二次世界大戦前夜における日本に対する米国等の資源輸出禁止措置のような手段を取るでしょうし、軍事的手段で攻勢をかける場合でも、戦略核兵器による叩きあいに持ち込む腹さえくくれば、最終的勝利は真の覇権国家に帰することになるでしょう。

 こんなことは小学生でも分かるような話ですが、単純な核武装論者の主張には、こうしたリアリティを明らかに欠いていることが多いのです。

 そして、この程度のことに気づかないはずのないクレバーな人物が単純な核武装論を唱えている場合、その裏に何か陰惨で巧妙な政治的意図が隠されていることは間違いありません。

 ですから、日本が核武装するとすれば、その目的は、他の覇権国とその覇権を争うものであってはならず、覇権国側から見ても明らかに挑戦を受けるものではないと認識される必要があります(こうした生温い核武装という概念が、現実に存在するとは思えませんが・・・)。

 現在の国際政治情勢に沿い、敢えていえば、核武装後の北朝鮮(≒韓国との統合があれば統一朝鮮)のみを仮想敵国とし、間違っても米・中・ロと張り合う水準の核武装を行ってはならないということになります。

 自国民の2割3割の犠牲など屁とも思わない(というか既に膨大な実績を積み上げている)野蛮な覇権国家とチキンゲームをしても、最後は痛い目に遭うだけです。ここで第二次世界大戦の戦訓を思い起こさなければなりません。当時の日本人老若男女数百万人が、この教訓を残すためだけに国際金融資本主導の殲滅戦に巻き込まれ死んでいかれたのですから・・・。

 過去の似た話としては、1970年代から80年代にかけての欧州における中距離核兵器配備の歴史が参考になると思います。

 このとき、ソ連は、欧州各国を射程に入れるものの米国本土には届かない中距離核ミサイルSS20を欧州正面に配備することで、米国と欧州の間に利害衝突を生じさせようとしましたが、結果として欧州は米国を説得し、対抗兵器としてパーシングⅡの配備を取り付け、核兵力の拡大均衡を成立させることで、ソ連の軍事費を押し上げることに成功したわけです。

 こうした一連の軍事費増大に耐え切れなくなったソ連はやむなく中距離核戦力全廃条約を持ちかけ、軍拡競争(≒冷戦)に敗北したことを事実上認めざるを得ない状況に追い込まれました。

 日本においても、朝鮮半島のみを射程内に納め、覇権国家中・ロの主要都市を射程外とする程度の射程を持つ中短距離核ミサイル(IRBM・MRBM)または巡航ミサイルを運搬手段とする核兵器体系の構築のみが、奇跡的な外交的成功により各覇権国家の承諾を得ることを条件に、かろうじて許されるものと考えるべきです。

 もちろんこうした兵器開発を平和裏に進める利害関係各国とのタフな交渉は、わが国の外務省の手にはあまるような気がしますが、できたと仮定すれば、旧ソ連のように経済力で力負けという格好の悪い事態を心配する必要はないでしょう。

続きは次回で

筆:猿山太郎

年次改革要望書など糞食らえ~日本は核武装すべきか(5)~

2009-08-19 13:54:43 | 日本核武装
(4)宗主国の日本収奪

極めて多面的な分析が可能なテーマですが、ここでは次の3点に絞ってお話します。

①年次改革要望書による露骨な内政干渉

 いずれ独立した記事で取り上げますが、1994年以降宗主国は、毎年欠かさず年次改革要望書を日本に突きつけ、国際金融資本による収奪が容易になる障壁(=日本の国益を守るための防壁)を次々に取り払ってきました。

持ち株会社・三角合併の解禁、郵政民営化、労働自由化等、日本の国益にプラスになるとはとても思えない押し付け政策は、枚挙に暇がありません。

 この間、日本政府・官僚組織も、自らの利権が維持・伸張できる(=下々の一般国民が苦しんでいるに留まる)限りにおいて、敢えて叛旗を翻すことなく唯々諾々とそれを受け入れてまいりました(逆らうと橋本さんや小渕さんみたいになりますので)。

 もっとも、戦後50年にわたって、「国益」を論じることをタブーとし、薄っぺらな「平和」を謳ってさえいればよしとする、誤った大衆教育とマスコミ世論操作によってすっかり腑抜けにされてしまった我々オバカな国民には、ある意味ふさわしい屈辱であるのかもしれません。

未だ大多数を占める我が愛すべき大衆は、「年次改革要望書」という言葉すら知ることなく、日々垂れ流されるくだらないテレビ番組に洗脳され続けております。

 ここで明確に言えるのは、「年次改革要望書」が、共に栄えていこうという対等な友好国に対する善意のアドバイスでは決して無く、19世紀の帝国主義国家が被支配国に対して押し付けた収奪ノルマに等しい仕打ちであるということです。

②BIS規制による邦銀支配

 バブル崩壊直後、不良債権処理に苦しんでいた都市銀行に対し、追い討ちをかけるように自己資本比率8%の達成を求めてきたのがBISでした。

 ちょうど保有株式の下落による含み損が目立つこの時期を見計らって、株式持合い慣行のため自己資本に占める株式の割合が他国に比べ高い邦銀の弱点を突いてきた、国際金融資本の巧妙な揺さぶりです。

 その結果、金融機関の貸出が縮小し、企業の短期資金の調達・長期資金の借り換えが困難となる「貸し渋り現象」が発生し、日本企業(とりわけ中小企業)の経営が非常に圧迫されるようになりました。

 また、従来日本銀行が担ってきたBIS規制監督権限が、1998年お金融監督庁(現金融庁)発足以降、国際金融資本の支配下にある?金融庁に移行しました。

 このことは、各邦銀の死命を制する自己資本比率について、その算出根拠となる勘定科目の算定基準が、金融庁(≒国際金融資本)のさじ加減ひとつでコントロールできるようになってしまったことを示しています。

 その結果、りそな銀行を舞台とした濡れ手に粟の株価操作や、UFJ銀行の東京三菱銀行への半強制合併といった、やりたい放題の邦銀支配が進められていったのです。

③巧妙に仕掛けられた外国投資の強制

 自己資本比率維持のため、信用創造機能がすっかり麻痺してしまった状況下では、日銀としても金利を上げづらく、預金性向の高い日本国民を満足させるだけの預金金利を確保できなくなりました。

 お年寄り等の金利生活者は、真に困った状況となってしまったわけです。

 そうした預金者の不満を背景に、国際金融資本は、年次改革要望書を通じて外為法の大改正を強いることで、国内金融資産の海外流出(=踏み倒しを前提とした資本収奪)を可能にし、さらに国を挙げての重畳的な海外投資キャンペーンによって、何も知らない善良な一般国民の虎の子預金を、海外投資信託という収奪装置に投入させることによって、実際に国際金融資本の懐に収めることに成功しつつあります。

 郵政民営化はそのメインイベントであったわけですが、民主党優勢が伝えられる中、現在かろうじて「徳俵」で踏みとどまっている状況といえましょう。

 現在の国民生活の窮乏化も、国内産業育成のために国内で循環させるべき金融資産を、返済する気があるとも思えない海外の魑魅魍魎どもに手渡したことにその原因があるのです。

続きは次回で

筆:猿山太郎

日本から引き上げて行く宗主国軍~日本は核武装すべきか(4)~

2009-08-18 18:20:16 | 日本核武装
 日本と宗主国の関係については「宗主国の日本離れ」と「宗主国の日本収奪」に分けてご紹介します。まずは「宗主国の日本離れ」についてです。

(3)宗主国の日本離れ

 まだ、日本からの収奪が終わっておりませんので、経済面における構造的な日本離れという現象は顕著になっておりません。

例えば、東証が発表する投資部門別の株式売買動向を見ると、昨年度は、世界金融恐慌による手元流動性確保の要請から、日本マーケットからの外資引き上げは顕著でしたが、今年度に入ってからは逆に買い越し基調となっています。

 従って、ここでは軍事面を中心に取り上げてみたいと思います。

①第5空軍の第13空軍への統合

 2004年に横田基地の第5空軍司令部のグアム移転が発表されましたが、日本政府の懇願に応じた形で、移転は中止と発表されました。しかしそれは日本をなだめる方便でしかなく、2007年には、別途ハワイに設けられた第13空軍に統合する形で、実質的なハワイへ移転が実現されています。

 中国は、宗主国全土を射程に収めたICBM(DF-5)が1980年代初頭に実戦配備したものの、液体燃料式で発射準備に時間がかかり報復核攻撃を実施する能力に欠けていたため、先制核攻撃で対処可能な範囲に納まっていました。

 しかし、その後ICBMの改良が重ねられ、2007年には、固形燃料・慣性誘導・多弾頭(MIRV)の報復核攻撃力の3要素を兼ね備えたDF-31Aが実戦配備された結果、うかつに核先制攻撃することができなくなり、その脅威はロシアに準じる水準に達しています。

 宗主国は、そのように恐ろしげな国と事を構える気はさらさらありませんので、中国と植民地間の揉め事に、宗主国の軍隊が巻き込まれ、直接戦闘を交えざるを得ないような事態になることを絶対的に回避するため、極東からの引き上げに着手し始めました。
 
②第3海兵機動部隊(8000名)グアム移転 

 2014年を目処に、沖縄駐留海兵隊の半数がグアムに移転することになっています。

 横田基地の第5空軍司令部のハワイへの実質移転の流れに沿って、在韓米陸軍に続いて、いよいよ極東に配備した海兵隊についても太平洋第二列島線への引き上げを開始することになった訳です。

③F22ラプターの売却拒否

 米空軍は追加配備・生産継続を強く求めていたにも関わらず、米下院が次期主力戦闘機(FX)の最有力候補F22ラプターの追加調達費削除を決定したことから生産打切りが確定的となり、政府はF22の輸入を断念しました。

 F22については、軍事技術流出を懸念して、米国議会が対日本を含む輸出禁止措置をとっていたため、日本側からは解除の働きかけを続けていましたが、これによってその望みも消えることになりました。

 過去のFX選定において、属国日本がその時代時代の最新・最強戦闘機の導入することは、開発コスト回収及び対共産圏防衛の面から、米国側にむしろ歓迎されてきた歴史があります。

 今回のF22にしても、量産化が望ましい非常に高価な機体(米国上院では1機250億円の声も)であり、また裾野の広い関連労働者の雇用にも配慮が必要な経済情勢でもありますので、米国にとって資金力がある経済植民地の日本は、絶好の売却先のはずです(輸出先として、日本以外ではイスラエル・サウジアラビアくらいしか考えられません)。

 これは、何れ仮想敵国の身内になる日本に最新のステルス技術を売り渋ったものと見るべきでしょう。 

④パトリオットPAC3配備による日本核武装化けん制

 朝鮮戦争後、1950年代後半に、核武装を目的とした科学技術庁(原子力と宇宙開発に特化した隠れ軍事技術開発統括部門)の設置や東海村原発の稼動に見られるような一連の原子力技術研究の高まりがありましたが、左翼主導によるその後の過度な平和主義志向の流れの中で、わが国は核武装化のタイミングを逸してしまいました。

 その後、主に日本と西ドイツ(当時)の封じ込めを狙った1968年の核拡散防止条約の調印により、国連常任理事国は核独占のお墨付き取得に成功し、他の国は、よほどの外交リスクを負わなければ核武装することが困難と成ってしまった訳です。

 ただ、わが国の核爆弾開発技術および大陸間弾道弾開発技術は、原子力発電と人工衛星打ち上げ技術という形で、不完全ではありますが温存されており、未だ「日本に核武装の大義名分を与えない」ということが、他国の対日外交目標の一つであり続けています。

 昨日、台湾へのパトリオットPAC2配備が、台湾の核武装化をけん制する意味合いを持つ旨お話しましたが、2007年に陳水扁前総統が公式発表したように、実際に成功寸前まで行っていた核兵器開発の封じ込めに、米国は見事成功しました。

 日本のパトリオットPAC3配備につきましても、「撃墜できるんだから核兵器はいりませんよね」という意味あいが含まれていると受け取るべきでしょう。

続きは次回で

筆:猿山太郎