ぬくぬくと♪ 温泉宿の亭主の日々

お世話になります♪群馬県猿ヶ京温泉の猿ヶ京ホテルの三代目亭主のブログです。歴史と野球とゴルフが「当座」の趣味です。

『決断力』 羽生善治

2009-12-20 18:14:59 | 読書
12月某日

自分は将棋をあまりやらないので、将棋界のことには無知です。

羽生氏が大山康晴や米長邦雄、中原誠、升田幸三などかつての名棋士の棋風や生活態度から学んだことが、棋界のみならず博学な知識とともに語られて行き、コンピューターを使っての将棋の分析が盛んな現代の将棋界がどのような未来に向かっていくかを淡々と考察しています。

また羽生氏自身の頭の休ませかたや、対戦に向かう態度なども明かされており、興味深く読むことが出来ました。

「過去にどれだけ勉強したかではなく、最先端の将棋を、どれだけ勉強したかが重要」

「将棋は厳然と勝ち負けの結果が出る。「道」や「芸」の世界に走ると言い逃れが出来る。」

過去についての勉強や経験よりも現状の認識や研究の方が重要であると言う合理的な考え方や、
人間としての総合的な生き方=茶道や花道などの「道」の世界にはまると勝負の結果について「逃げ」が生じる、
と言うこれもまた合理的な考え方が提示されていく。

日々結果が出て、評価がされていく、そんな生業の世界に自分達も生きている。

そこで結果に対してこれから「精進していく」「努力していく」と「~道」の修行中のように考えて行くのは、結果に対する逃げなのかもしれない。




東京骨灰紀行 小沢 信男 著

2009-12-11 18:57:14 | 読書
師走某日

「ランナーズ・ハイ?」と言う状態に、私はなったことはありません。

走ることが気持ち良いなんて・・・

ところで読書にもこれに近い状態の場合があり、集中力が高まったところで一気に読み進むことができるそうです。

仮にこれを「リーダーズ・ハイ」とすれば、私にも経験はあります。

今年のドラフト会議で埼玉西武ライオンズが交渉権獲得、先ごろ入団会見した菊池雄星投手は大変な読書家で、読書のために視力が2.0から0.9に低下していたと言う記事も拝見しました。

菊池雄星投手は歴史小説を好んで読んでいるとも伝わってきます。

私も学生時代、司馬遼太郎の「坂の上の雲」「翔ぶが如く」「世に棲む日々」などは寝食を忘れて、不眠不休で読みふけったものです。

日本海海戦の英雄や明治維新の礎を築いた元勲、天性の才能に恵まれた軍略家を描いたこれらの小説こそ、NBAはおろかMLBも視野に入れる天才投手にこそ相応しいと。

「東京骨灰紀行」で描かれているのは、英雄、元勲など違った無名の、明暦の大火に始まり、彰義隊の乱、関東大震災、東京大空襲、吉原、内藤新宿の苦界、玉川上水に心中した諸氏、等々が葬られ、供養、回向されている寺や墓地が、花の東京の真ん中でビル群に囲まれながらもそこかしこに残っており、そこを著者が巡り歩く鎮魂の紀行となっています。

教科書に出ている明暦の大火、関東大震災などの大事件を追っていけば、日本史の流れを記憶することが可能です。

そこはそこでおさえた上で、著者のような大東京の忘れ去られた史跡を巡る、這いずるような作業の結果、「東京骨灰紀行」は私の中の江戸東京の歴史観にリアリティーを感じさせて頂いております。

今後、私が築地場外に設けられた幾多の寿司店で、新鮮なネタをつまむとき、そこが築地本願寺の子院の跡の上に建っており、そこを開発した諸氏の御霊とともにあることをビールのほろ酔いとともに思い出すことでしょう。