作物病害 メモ帳 主に畑作物に寄生するネコブカビ類

作物の病害に関するメモ #コムギ #テンサイ #バレイショ #マメ類 #ソルガム #Polymyxa

peanut clump diseaseの病原ウイルスpeanut clump virusの性質 [マメ科に感染するPolymyxa属菌と媒介するウイルスに関する文献リスト(2)]

2021-04-20 22:23:53 | 文献概要
マメ科に感染するPolymyxa属菌と媒介するウイルスに関する文献リスト(2)

Title: Some properties of peanut clump, a newly discovered virus
Author: J C Thouvenel, M Dollet and Fauquet
Journal: Ann. appl. Biol. 84:311-320 (1976)

★コメント★
PCVに関する記載はThouvenelら1974が最初だが、入手できなかった。おそらく英文ではこれが最初。

要旨
Upper Voltaにおけるpeanut clump diseaseをもたらす汁液接種可能な土壌伝染性ウイルスについて記述した。それは主にアカザ科の種に感染し、アカザで増殖した。感染能の喪失はアカザの汁液で、64℃10分や10×-5で起こり、10×-4では感染した。純化法を記載した。粒子は棒状で190と245nmの長さが主であった。このウイルスは以下のウイルスと血清学的に無関係であった。tobacco rattle、pea early-browning、soil-borne wheat mosaic viruses、テンサイそう根病と関係するウイルス。

概要
1969年夏、Upper Volta(現在のブルキナファソ)のSariaにある農業試験場のラッカセイに病徴が観察された(Germani and Dhery, 1973)。症状は、セネガルで記載されたように’clump(茂み)’になる。同じ場所で栽培すると再び発病が見られ、土壌消毒によって軽減されることから、土壌伝染性病害であり、peanut clump virus(PCV)による病害であるとされている。この論文では、PCVの宿主範囲、純化、特性について記載した。
汁液接種による感染は、ラッカセイからラッカセイは容易だった。C,amaranticolor(アカザ)はラッカセイおよびC.a.の汁液による接種は容易だったが、恐らく阻害物質のためC.a.からラッカセイは伝搬しなかった。宿主範囲の調査には、C.a.の汁液を用いた。

宿主:ラッカセイ(Arachis hypogaea)7~10日後に新葉にモットル(不整形な斑点)、退緑斑点が生じるが、消えて葉は濃い緑色になり生育は止まる。アカザ(Chenopodium amaranticolor)、キヌア(C.quinoa)、シロザ(C.album)接種葉に黄化斑点、のちにリングスポットとなり葉脈にいたる。6~8日後には接種葉はしおれる。全身病徴はない。和名不明(C.ackenii)接種葉のみに病徴。ケアリタソウ(C.ambrosioidesまたは Dysphania ambrosioides)無病徴・接種葉のみ感染。和名不明(C.botrysまたはDysphania botrys)無病徴。和名不明(C.hybridum)接種葉のみ病徴。ミナトアカザ(C.murale 英名nettle-leaved goosefoot)接種葉のみ病徴。ヒロハアカザ(C.opuliforum)接種葉のみ病徴。和名不明、英名manyseed goosefoot(C.polyspermum  Syn. Lipandra polysperma )接種葉に無病徴、全身感染し弱いモットル。和名不明、英名red goosefoot( Oxybasis rubra  Syn. C.rubrum)接種葉のみ病徴。羽毛ケイトウ(ヒユ科Celosia argentea cv.plumosa)幼苗に接種1ヵ月後に全身にモットル、湾曲症状。
(メモ) アカザ科Chenopodiaceaeとヒユ科Amaranthaceaeは、ヒユ科 Amaranthaceaeとして一つの科に統合された。アカザ属Chenopodiumは、アカザ亜科Chenopodioideae、Chenopodieae連に属する。Lipandra属は、アカザ亜科、Atripliceae連に属する。
参照サイト http://lab.agr.hokudai.ac.jp/ikushu/gelab/spinach/Spinach_phylogeny.html

その他、ウイルスの諸性質については省略
伝搬:ワタアブラムシ、マメアブラムシでは伝搬しなかった。1苗に20頭のアブラムシを使用した。汚染土壌にラッカセイを栽培すると病徴が見られ、ウイルスも分離された。根には多くの線虫、Pythium属菌が観察されたが、伝搬については調査中。

考察では、PCVと他の類似の棒状ウイルスとの差異を述べ、ピーナッツクランプ病の病原であり、新種であることを述べている。

 この研究では、宿主域の調査では罹病したラッカセイが無かったので、アカザC. amaranticolorの汁液を用いた。ChenopodiaceaeとAmaranthaceae以外の植物に感染しなかったのは、アカザに含まれる阻害物質が原因の可能性がある。アカザからラッカセイへの伝搬に成功していないが、PCVがピーナッツクランプの病原体である強力な証拠がある。ウイルスは汁液接種した罹病ラッカセイからは回収されるが、健全植物からは回収されない。同様に電顕によって罹病植物の汁液にのみウイルス様の粒子が観察された。さらにアカザから抽出したウイルスを用いたPCVの抗体は罹病ラッカセイの粗汁液に特異的に反応した。
 190と245nmの2種の粒子の存在は、土壌での伝搬と同様にPCVやtobravirusesと、未分類の数種のウイルスとの類似性が指摘された。


マメ科に感染するPolymyxa属菌と媒介するウイルスに関する文献リスト(1)

2021-04-20 22:22:18 | 病害文献リスト
マメ科に感染するPolymyxa属菌と媒介するウイルスに関する文献リスト(1)
literature list of Polymyxa spp. transmit viruses infected fabaceous plant

○ダイズsoybean
soybean leaf rugose mosaic virus (SbLRMV)
ダイズ縮葉モザイク病
Title: Soybean leaf rugose mosaic virus, a new soilborne virus in the family Potyviridae, isolated from soybean in Japan.
Author: Tomohisa Kuroda, Koshio Nabata, Tomohide Natsuaki et al.
Journal: J Gen Plant Pathol 76:382-388 (2010)
 新潟県内のダイズで発生したダイズ縮葉モザイク病の発生と病原ウイルスの性状について報告した。アブラムシと種子伝染は無い。Polymyxa graminisの関与を示唆しているが、実験はしていない。
成果情報:http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/seika/kanto20/13/20_13_06.html(H20年度)

○ソラマメ
Broad bean necrotic mosaic virus (BBNMV)
ソラマメえそモザイク病

Title: ソラマメに発生したBymo様ウイルスによるえそモザイク症状(講演要旨)
Author: 冨高保弘・宇杉富雄ら
Journal: 日植病報80(1):18 (2014)
 ソラマメの葉や茎にえそやモザイク症状を生じさせる新種のウイルスであった。根にPolymyxa graminisが検出された。

Title: 退緑斑症状を示すソラマメから分離されるひも状ウイルス(講演要旨)
Author: 中村茂雄ら
Journal: 日植病報82(3):253 (2016)
 ソラマメに退緑斑症状を生じさせる、ひも状のウイルスが検出された。

Title:ソラマメにえそモザイク症状を引き起こすBymovirus種の同定(講演要旨)
Author: 冨高保弘・津田新哉ら
Journal: 日植病報84(1):69  (2018)
 戻し接種によりソラマメに原病徴が再現された。新種のBymovirusとしてBroad bean necrotic mosaic virus(ソラマメネクロティックモザイクウイルス)と命名し、えそモザイク病の病原として追加した。

○ラッカセイ
peanut clump virus
Indian peanut clump virus

Title: Some properties of peanut clump, a newly discovered virus
Author: J C Thouvenel, M Dollet and Fauquet
Journal: Ann. appl. Biol. 84: 311-320 (1976)
[PCVに関する記載はThouvenelら1974が最初だが、入手できなかったのでこの論文から始める。

Title: Further properties of peanut clump virus and studies on its natural transmission
Author: J C Thouvenel and Fauquet
Journal: Ann. appl. Biol. 97: 99-107 (1981)

Title: Indian peanut clump virusに関する病害虫リスクアナリシス報告書
Author: 農林水産省横浜植物防疫所
Journal: 2020年2月17日発行

Title: Studies on transmission of Indian peanut clump virus disease by Polymyxa graminis
Author: A S Ratna et al.
Journal: Ann. app. Biol. 118: 71-78 (1991)


テンサイ採種病害文献リスト (てん菜、sugar beet、採種てん菜)

2020-12-20 22:59:47 | 病害文献リスト
採種テンサイで問題になる病害

以下に記載した病害以外に、原料テンサイで発生がある褐斑病、根腐病、葉腐病なども葉や根部に発生する可能性がある。

じゃのめ病、炭そ病、毛かび病、菌核病、Fusarium

〇じゃのめ病菌 Phoma betae Frank (Pleospora bjoerlingii
発病部位:原料用テンサイでは、葉、葉柄基部(心葉部)、冠部から根部
採種用テンサイでは、葉、葉柄、托葉、枝梗

病徴:採種畑では、抽苔期の衰弱した葉から発生し始め、開花期を境にして茎葉全体に多発する傾向がある。特に8月に多湿な日が続くと、花茎の大半が侵され、子実量が著しく減少する(内藤・杉本1993)。採種用テンサイの病斑は一般に小形で輪紋は明らかではないが、その数は多い。葉柄、托葉、枝梗などにも発生し、暗褐色、凹陥した病斑は、稜を中心として楕円形、紡錘形となって、のち拡大してこれらの組織を囲繞するに到る。種子も同じように侵害を受け、また枝梗部に発病したときは、種子の成熟に阻害を受けるのみならず、着粒数が減じ、種子は小型となって脱落し易くなる(宇井 1960)。
 一般畑(原料用)では、6月中旬から根腐れ症状が見られた(内藤・杉本 1979)。Rhizoctoniaによる根腐病と類似する場合がある。心葉部は黒色、乾腐状の病斑が認められる。地下部は縦に切断すると黒色~黒褐色、乾腐状の病斑が冠部から根部の内部組織に広がっており、しばしばそこに空洞が形成される。

伝染経路:罹病保菌種子が第一次伝染源となり、圃場に残存した罹病組織上の菌も発病源となる(成田ら1998)。採種圃では母根の病変部の越年菌が発生源となる。

内藤・杉本(1979)てん菜研究会報20:93-102.
内藤・杉本(1993)北海道農業試験場研究報告158:67-76.
成田ら(1998)北海道における農作物および鑑賞植物の病害誌P.244
宇井(1960)甜菜研究会研究報告2:26-90(北海道大学刊).

〇Stalk blight (Fusarium oxysporum f. sp. betae)
採種栽培において、導管の変色、葉のしおれ、抽苔茎のネクロシス、ついには抽苔した植物の枯死をまねく(Gross and Leach 1973)。未開花が生じ、発生がひどい圃場から採集された種子の1~3%から病原が検出された。
オレゴンのWillamette Vallamette Valleyで採種栽培のテンサイハイブリッドのUSH9とUSH10は、Fusarium oxysporum f. sp. betaeの強い侵害を受けた。1973年と74年に行われた圃場試験において、これらのハイブリッドを構成する雄性不稔系統が感受性を伝え、花粉親は相対的に抵抗性であった。Californiaの広範囲にわたって行ったハイブリッドの評価によって、それらはそれらの雄性不稔系統よりも感受性が低かった(MacDonald J D et al. 1976)。
採種テンサイでは、すべての花粉親が、発病程度と発病個体率の両者において、抵抗性であった。花粉親と古い系統は抵抗性だったが、種子親は、やや~かなりの感受性であった。
原料テンサイでは、採種栽培より発病程度は低かった。採種栽培と同様に、雄性不稔系統のいくつかは花粉親よりも感受性であった。原料テンサイのUSH9とUSH10は、その種子親よりも感受性が低かったことは、重要な情報である。

MacDonald J D et al. (1976) Plant Disease Reporter 60 (3) :192-196.
Gross D C and Leach L D (1973) phytopathology 63:1216 (abstract).


〇Stalk Rot (Fusarium solani )
 2006年にオレゴンで生産されたテンサイ根を、サリナスの温室内で採種栽培したところ、stalk blightの症状が観察された(Hanson L E and Lewellen R T 2007)。症状は、維管束と皮層の褐変、壊死、抽苔茎の枯死が見られた。抽苔茎とクラウン部からF. solaniが分離された。分離株の抽苔茎への接種により、病徴が再現された。F. oxysporumによる病斑より、有意に小さかった。苗と根部の発病については別に報告がある(Ruppel E G 1991)

Hanson L E and Lewellen R T (2007) Plant Disease 91(9): 1204 (abstract).
Ruppel E G (1991) Plant Disease 75(5):486-489.

〇テンサイ炭そ病(Colletotrichum dematium f. spinaciae)
 1981年、北海道農研で育成したテンサイの一系統「TK-76-49/2mm-CMS」に大発生した(築尾ら 1984)。分離菌株(分生胞子)を接種すると、圃場で見られた病徴が再現された。抽苔した花茎には紡錘状の病斑、開花初期に感染すると花は全体が黒褐色に変色し、結実しないで乾燥枯死する。開花後期に感染した場合でも、花の蒴蓋を中心として黒変した。さらに激しく罹病すると花茎全体が枯死した。接収後7日の古い病斑上には、黒色で隆起した斑点状の分生胞子層が形成された(築尾ら 1984)。
 感受性の品種間差が大きく、「TK-76-49/2mm-CMS」、「NK-152」、「シュガーマンゴールド」は高い発病度を示し、他の品種は低かった(築尾ら 1984)。
 本炭そ病菌の生存に関しては、罹病葉柄上に形成された分生胞子層の分生胞子形成能力は、埋没深度に関係なく少なくとも220日は保有されていた。罹病茎葉を含む土壌での苗立枯病検定では、翌年の春~夏まで発生が見られており、前年の罹病葉柄は第一次感染源になりうると考えられる。採種用の母根の貯蔵方法では、茎葉をつけたまま貯蔵した場合に発病が多かった
築尾嘉章 杉本利哉 遠藤利光(1984)日植病報50:46-52.
築尾嘉章 杉本利哉(1984)てん菜研究会報26:141-145.

〇採種テンサイのこうがい毛かび病(Choanephora cucurbitarum)
 夏期、高温かつ多雨の時、開花したテンサイの花茎とくに先端の若い茎と花器に、黒褐色、湿潤状、不定形の病斑が形成され、しばしば先端茎は軟腐、萎凋し、下垂する。多湿の時、罹病組織の表面に絹糸状、光沢のある直立した分生子柄とその先端に黒色、休憩の分生胞子塊が肉眼で観察される。分生胞子の発芽は、水中で不良だが、テンサイ花粉を加えると著しく増す。症状は、主として開花した花茎の先端部に限られることから、種子生産上の実害はじゃのめ病や炭そ病などに比較して軽いものと考えられる。下方の大きな葉は、健全であった。本菌は、シロクローバーの花器に対しても強い病原を示した。
 原料用テンサイ茎葉で明らかにされたC. cucurbitarum(西原 1968、山内・藤井 1962、宇田川ら 1986)と同一であると考えられている。(以上 内藤、杉本 1989)
内藤繁男 杉本利哉(1989) 北海道農業試験場研究報告151:1-5.
西原夏樹(1968) 日本菌学会報9:38-42.
山内己酉 藤主新太郎(1962)日植病報27(2):65(講演要旨).

〇菌核病(Sclerotinia sclerotiorum (Libert) de Bary)
テンサイ採種圃場で開花期の花、葉、茎に発生し、白色綿毛様菌糸を密生し、軟腐症状を伴う。病斑は暗緑~淡褐色、不定形を呈し、罹病組織上にしばしば黒色のネズミの糞状の菌核を外生する。開花前には発生はほとんど見られない。子のう胞子によって感染が生じていると考えられている。開花期のテンサイに子のう胞子を接種し湿室で栽培すると圃場と同様の発病を生じたことから、子のう胞子による感染が生じていると考えられる。テンサイの雄性不稔系統(花粉を作らない)の抽苔茎では花粉や約の処理の有無に関わらず、激しく発病したことから、果皮と苞葉は糸状菌の感染を容易に受ける場所であり、葉や茎に落ちる花粉粒や葯よりも重要であると考えられている。幸い本病は北海道内ではあまりひどい発生にはなっていない。本菌S.sclerotiorumとS.minorによるstorage rot(貯蔵腐敗病、病名目録にはなく国内ではあまり発生していないと思われる)、clamp rot(堆積中の腐れ、病名目録になし)、root rot(和名は菌核病で病名目録に記載)、drop(どのような病害なのか不明)なども発生すると報告されているが、低温、高湿度の条件下での貯蔵庫内の主根、苗、圃場での成熟した根での発生は少ないとされる。(以上、Naito and Sugimoto 1986)。

Naito S and Sugimoto T (1986) Ann. Phytopath. Soc. Japan 52: 217-224.




複数の植物病害に対する生物的防除のための植物生育促進根圏細菌の選抜と評価

2020-12-03 23:25:39 | 文献概要
複数の植物病害に対する生物的防除のための植物生育促進根圏細菌の選抜と評価 
 
生物的防除剤の実用化のためには、広いスペクトラムを持つ菌株を使用することが望ましい。そのため、複数の病原菌に対して効果を持つ菌株を選抜した。植物の生育促進効果についても調査し、関連する二次代謝産物の産生を直接化学分析によって検出せず、antiSMASHによって検出した。 
 
Selection and Assessment of Plant Growth-Promoting Rhizobacteria for Biological Control of Multiple plant Diseases 
Ke Liu. ら 
Phytopathology 107(8): 928-936 (2017) 
 
【要旨】 
 研究では植物病害抑制効果について広いスペクトラムを持つ植物生育促進根圏細菌(PGPR)の選抜をin vitroと植物を利用して行うことを計画した。最初の選抜ではin vitroにおいて8種の病原に対して、196菌株のうち28菌株が抑制した。2次選抜では、これらの28菌株は6属の病原に対して広いスペクトラムの拮抗活性を示し、24菌株は植物生育促進に関与するとされている5種のtraits、すなわち窒素固定能、リン酸可溶化、インドール-3-酢酸(IAA、オーキシン)産生、シデロフォア生産、バイオフィルム形成を生じさせた。さらなる選抜では、28菌株のPGPRは植物を使用して複数の植物病害すなわちXanthomonas axonopodisによるトマトbacterial spot、Pseudomonas syringaeによるトマトのbacterial speck、Rizoctonia solaniによるトウガラシの苗立枯病、Pythium ultimumによるキュウリの苗立枯病に対する生物防除効果を試験した。28菌株のうち5菌株が有意に3病害に対して発病を抑制した。他の19菌株は2種の病害に対して効果があった。観察された広いスペクトラムの生物防除能力を理解するために、antiSMASHを用いて選抜された菌株の二次代謝物クラスターを推測した。bacillibactin、bacilysin、microcinなどの二次代謝物をコードしている遺伝子クラスターがそれぞれの菌株に検出された。結論として、選抜されたPGPR菌株は複数の植物病害に対する広いスペクトラムの生物防除活性を示した。 
 
【考察】 
いくつかのPGPR菌株は広いスペクトラムの拮抗作用を示し、また複数の植物生育促進に関与する物質生産をin vitroで示した。これまでにもそのような菌株の報告はあったが、それらはすべてPseudomonasで抗糸状菌活性のみの調査であった。いくつかのPGPR菌株は、複数の植物に複数の病害に対して生物防除ができた。また、これまでに報告された菌株は、機作が全身誘導抵抗性(induced systemic resistance)であったが、今回は拮抗作用であり、拮抗作用によっても複数の病害に効果があることが示された。 
 いくつかの菌株は、根圏でも葉面でも生存できることが示された。根圏と葉面では環境が異なっており、それぞれの定着性パターンの比較が必要である。 
 将来的には、複数のPGPR菌株を組み合わせ、1菌株での効果との比較をする必要がある。 
 
★感想★ 
作物の病害防除法の一つとしての生物的防除の弱点の一つは、有効な対象病害、病原の範囲の狭さである。その解決策として、広い拮抗作用と植物生育促進効果を持つ菌株の探索と利用の可能性を調査している。この方法は、複数の菌株を組合せる方法よりも、製品化がしやすく商品価値が高いと思われる。また、本論文で選抜された細菌は、Bachillus属菌で、芽胞を作るため保存性にも優れると考えられる。