マメ科に感染するPolymyxa属菌と媒介するウイルスに関する文献リスト(2)
Title: Some properties of peanut clump, a newly discovered virus
Author: J C Thouvenel, M Dollet and Fauquet
Journal: Ann. appl. Biol. 84:311-320 (1976)
★コメント★
PCVに関する記載はThouvenelら1974が最初だが、入手できなかった。おそらく英文ではこれが最初。
要旨
Upper Voltaにおけるpeanut clump diseaseをもたらす汁液接種可能な土壌伝染性ウイルスについて記述した。それは主にアカザ科の種に感染し、アカザで増殖した。感染能の喪失はアカザの汁液で、64℃10分や10×-5で起こり、10×-4では感染した。純化法を記載した。粒子は棒状で190と245nmの長さが主であった。このウイルスは以下のウイルスと血清学的に無関係であった。tobacco rattle、pea early-browning、soil-borne wheat mosaic viruses、テンサイそう根病と関係するウイルス。
概要
1969年夏、Upper Volta(現在のブルキナファソ)のSariaにある農業試験場のラッカセイに病徴が観察された(Germani and Dhery, 1973)。症状は、セネガルで記載されたように’clump(茂み)’になる。同じ場所で栽培すると再び発病が見られ、土壌消毒によって軽減されることから、土壌伝染性病害であり、peanut clump virus(PCV)による病害であるとされている。この論文では、PCVの宿主範囲、純化、特性について記載した。
汁液接種による感染は、ラッカセイからラッカセイは容易だった。C,amaranticolor(アカザ)はラッカセイおよびC.a.の汁液による接種は容易だったが、恐らく阻害物質のためC.a.からラッカセイは伝搬しなかった。宿主範囲の調査には、C.a.の汁液を用いた。
宿主:ラッカセイ(Arachis hypogaea)7~10日後に新葉にモットル(不整形な斑点)、退緑斑点が生じるが、消えて葉は濃い緑色になり生育は止まる。アカザ(Chenopodium amaranticolor)、キヌア(C.quinoa)、シロザ(C.album)接種葉に黄化斑点、のちにリングスポットとなり葉脈にいたる。6~8日後には接種葉はしおれる。全身病徴はない。和名不明(C.ackenii)接種葉のみに病徴。ケアリタソウ(C.ambrosioidesまたは Dysphania ambrosioides)無病徴・接種葉のみ感染。和名不明(C.botrysまたはDysphania botrys)無病徴。和名不明(C.hybridum)接種葉のみ病徴。ミナトアカザ(C.murale 英名nettle-leaved goosefoot)接種葉のみ病徴。ヒロハアカザ(C.opuliforum)接種葉のみ病徴。和名不明、英名manyseed goosefoot(C.polyspermum Syn. Lipandra polysperma )接種葉に無病徴、全身感染し弱いモットル。和名不明、英名red goosefoot( Oxybasis rubra Syn. C.rubrum)接種葉のみ病徴。羽毛ケイトウ(ヒユ科Celosia argentea cv.plumosa)幼苗に接種1ヵ月後に全身にモットル、湾曲症状。
(メモ) アカザ科Chenopodiaceaeとヒユ科Amaranthaceaeは、ヒユ科 Amaranthaceaeとして一つの科に統合された。アカザ属Chenopodiumは、アカザ亜科Chenopodioideae、Chenopodieae連に属する。Lipandra属は、アカザ亜科、Atripliceae連に属する。
参照サイト http://lab.agr.hokudai.ac.jp/ikushu/gelab/spinach/Spinach_phylogeny.html
その他、ウイルスの諸性質については省略
伝搬:ワタアブラムシ、マメアブラムシでは伝搬しなかった。1苗に20頭のアブラムシを使用した。汚染土壌にラッカセイを栽培すると病徴が見られ、ウイルスも分離された。根には多くの線虫、Pythium属菌が観察されたが、伝搬については調査中。
考察では、PCVと他の類似の棒状ウイルスとの差異を述べ、ピーナッツクランプ病の病原であり、新種であることを述べている。
この研究では、宿主域の調査では罹病したラッカセイが無かったので、アカザC. amaranticolorの汁液を用いた。ChenopodiaceaeとAmaranthaceae以外の植物に感染しなかったのは、アカザに含まれる阻害物質が原因の可能性がある。アカザからラッカセイへの伝搬に成功していないが、PCVがピーナッツクランプの病原体である強力な証拠がある。ウイルスは汁液接種した罹病ラッカセイからは回収されるが、健全植物からは回収されない。同様に電顕によって罹病植物の汁液にのみウイルス様の粒子が観察された。さらにアカザから抽出したウイルスを用いたPCVの抗体は罹病ラッカセイの粗汁液に特異的に反応した。
190と245nmの2種の粒子の存在は、土壌での伝搬と同様にPCVやtobravirusesと、未分類の数種のウイルスとの類似性が指摘された。