
もしもあの最初の性愛の直後
に、彼が私の躰から離れ、服
を着る前にさっさとシャワー
を浴びていたら、全ては違っ
ていただろう。
もちろん、あれの後シャワー
を浴びてはいけないということ
ではない。現にたいていの男た
ちはそうしている。二人の間に
愛情とか信頼関係が存在すれば、
シャワーを浴びようと浴びまい
と、それはどちらでも良いこと
なのである。
けれども信頼関係というべき
ものが何もない場合、あのよう
な状況で彼がさっさとシャワー
を浴びていたら、それの意味す
ることは明らかである。女の体
液を躰につけたままにできるの
は、その女に対する儀礼か好意
のようなものがあるからである。
嫌な女だと思ったら、一刻も早
く洗い流して、さっぱりしたい
ところだろう。私は彼が、あの
時シャワーを浴びずに、しごく
無頓着に下着をつけたことを、
非常に好ましく感じたのだ。
そこに私たちの可能性を見たよ
うな気がしたのである。