ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

★『都の風』 第12週 (67)

2007-12-17 07:55:58 | ★’07(本’86) 37『都の風』
★『都の風』 第12週 (67)

脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

題字:坂野雄一
考証:伊勢戸佐一郎
衣裳考証:安田守男

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女
葵   松原千明 :竹田家の長女(大阪空襲で焼け出され帰郷、立花家より離縁)
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)

智太郎 柳葉敏郎 :悠の初恋の人。沢木雅子の兄、帝大医学部を休学し入隊、戦死す。

義二  大竹修造 :桂の夫(婿養子)、暫くの暇を申し出たが、帰ってくる
忠七  渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)だった、復員後もそのまま番頭さん 
お康  未知やすえ:「竹田屋」の奉公人(悠付きの女中さん)
雅子  山本博美 :悠の女学校の同級生。結婚したが夫は戦死したとの公報が来た

      松竹芸能
      東京宝映

巴     宝生あやこ:三姉妹の祖母、静の母
市左衛門  西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
静     久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻



制作 八木雅次

美術 石村嘉孝
効果 片岡 健
技術 沼田明夫
照明 大塚邦彦
撮影 神田 茂
音声 土屋忠昭

演出 荘加 満      NHK大阪

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昭和21年 お正月

インフレと食糧難で明けた昭和21年正月、悠は家族が食べていくために
ヤミ市で働き続くたのです。


和服姿で、新年の挨拶をする一同
(‥ といっても、巴、市左衛門、静、桂、悠 そして、忠七にお康だけ )

「年頭のご挨拶をどうぞ」と言われても、市左衛門は
「メリケン粉と大根の葉っぱだけのお雑煮では、気分出ぇしませんなぁ」

「何にものうても家族揃うてお祝いできるだけでもありがたいことと思わんといけませんどす」
と静に言われても
「葵も義二もおりまへんがな」と反抗
「お父ちゃん、葵姉ちゃんはやっと自分の力で生きていく気にならはったんやし、
 元気やったらそれでいいのと違いますか」と悠
「もう、勝手なことばっかりしよってからに、帰ってきても二度と竹田屋の敷居は跨がせません!」
「市左衛門はん、竹田屋の暖簾も敷居も、もうあってないような時代になったんのと違いますか」
「そやけど、たとえ世の中がひっくり返っても、何代も続いたこの室町は必ず生き返ります」
「お父ちゃん、いつ生き返るんどすか。教えて下さい。そうしたら義二さんも必ず帰ってきはります」
「んもうみんなでよってたかってワシ責めて、ワシ1人ではどうにもなりませんのや。
 忠七、お前なんか言うてくれ、男はお前1人や」
「へ、へぇ。
 私は商売が出来ても出きんでも、ずっとここにいさしてもらいます。
 悠お嬢さんとヤミ市で羊羹売るの 楽しゅうて楽しゅうて 
「忠七  お前それでも竹田屋の番頭かっ」
「すんまへん」
「お父ちゃん、忠七どんにあたったところで、どうにもならへんのと違いますか。
 今はお商売より何より、家族が食べていくことを考えないとならん時やし、
 その時その時を精一杯生きてたら、何とかなるもんです。  
 せやし、今年は今年なりの新年のごあいさつ、竹田屋の当主として、して下さい」

「えー、あけましておめでとう。
 旧年中はなにかとおつかい立てをしましておおきに。
 えー、本年もあいかわりませず、よろしゅうお願いします。
 えー、そういうことで、今年はワシは当分、死んだふりさしてもらいます」
「う~~ん、お父ちゃ~~ん」(桂)
「市左衛門はん、死んだふりも長いと、そのまま死んでしまうのと違いますか」

巴は、祝い酒を注ぎながら言った。



そこに、雅子がお年始にと、やって来た。

座敷では、家族の話が進んでいた
「お父ちゃん、そのうちお酒もたんと買うてあげますさかい、
 羊羹つくりに文句いわんといて下さいよ」
「おおきに。こないに悠に助けてもらえるとは思わなんだ」
「それでもいつまでも羊羹つくってたら、義二さん、帰ってきてくれんしな」
「帰ってきても商売はできんのやし、しばらく好きなようにさせんかい」と市左衛門
「はい‥‥」

雅子がお康に案内されて入ってきた

「よろしいですか」と悠は、許可を得てから、中に入れた
「こっちにお入りやす」と巴
「忠七どん、おざぶ(座布団)を」と静

雅子は
「父がどうしても新年のご挨拶に行けと申しまして‥。
 悠さんのおかげで、今まで生き延びられたようなもんですから」と挨拶をし
「喪中なんですけど‥‥」と付け加えた。

それは黙って‥というように、雅子の手を押さえる悠 

「喪中てお言いやすと?」 静が訊いた
「堪忍。まだ言うてはらへんかった?」
「そんなら智太郎さんが?」
「はい」
「去年の暮れ、戦死の公報が来たんです」
「戦死の公報が来ても、私は智太郎さんが生きて帰ってきはると信じています」と悠
「たとえ、捕虜とならはったとしても‥‥」

「悠。おまえのそう思いたい気持ちはようわかります。
 でもなぁ、智太郎さんは自分で志願しはったお人どすのや。
 その人が、捕虜なんかになるう思いますか?
 それに、南方の守備隊は玉砕やと聞いています、辛いやろけど諦めるこっちゃ。
 それがお前のためどす」
「いいえ。私は智太郎さんと約束したんです。必ず生きて帰るて。
 私は智太郎さんを信じています」
「生きてリョシュウの辱めを受けず。   なぁ、忠七」
「‥‥」
「お前かて、捕虜になるぐらいなら、帝國軍人として立派に自決するなぁ」
「へぇ。戦陣訓では、そう教えられました。
 けど、戦争が終わってなんや腑抜けみたいになってしもて、そのうちに故郷に帰りたいなぁ
 好きな人ともいっぺん会いたいなぁ そない思いました」
「忠七どん‥。智太郎さんは必ず生きててくれてはります、うちのために。
 さ、お正月なんやし、みんなで八坂神社にお参りに行きましょ。な。
 桂姉ちゃん、行こ?」

誰も答えない‥‥ 悠は、たまらず退席してしまった。
一礼して、後を追う雅子、そしてお康。

「あんた、どうしたらええのどっしゃろ」静が訊いた。
「んなこと訊かれたかて、どうにもできしまへんがな」
「かわいそうに。悠だけは、好きなお人と一緒にさせてあげられると思うてましたのに」
「悠ももう二十歳どすなぁ。いつまでも一人でおいとくわけにはいきまへんなぁ」と巴
「私もそれを考えてました。
 一時は忠七と一緒にと思いましたが、
 それっちゅうのも、悠に竹田屋を継がせようと思うての事で
 今となってはもうどうしようもおへん」

聞きながら膨れ気味な桂

「そらそうどす。悠がかわいそうと思うのやったら、
 智太郎さんとおんなじように立派なお人を見つけてやることどすな」

へこんで、しぼむ忠七 (ちょっとは期待してたのね)

「うち、ちょっと義二さんの家に新年のご挨拶に行って参ります」
「桂、急にどうしたんえ?」
「静はん。桂もいつまでもおとなしいだけのお嬢さんとちがいますのや」
「それ、どういうことどす?」
「桂はな、義二さんを迎えに行きますのや。
 竹田屋を悠に取られんように、二人でがっちり主人の座を守る積もりだす」
「‥‥ あんた、もう悠に継がせるなんてこと言わはったら、私が黙ってまへん」
「あんたも強うなって‥。
 戦争が終わったら男はすか抜けになってしまうのに、女は立派なもんどす」



八坂神社(あ、見るからにセットとわかる八坂神社だ)、悠と雅子

「いつかのお正月、智太郎さんと三人で初詣に来たこと覚えてはる?
 あの時なぁ、雅子が先に帰ってくれはったおかげで、智太郎さんと初めて二人だけで湯豆腐食べたえ
 ‥
 ( その時の回想 )
 ‥
 二人だけの秘密やったのに言うてしもうた」
「悠、兄のことをそこまで思うてくれるのは嬉しいんやけど、お願い、一日も早う忘れて」
「雅子」
「グアム島の奈良の部隊が全員玉砕したのはほんまやったんや。
 兄が死んだ今、これ以上悠に迷惑はかけられへんって、父が。」
「何で?」
「悠が沢木家のお嫁さんになると思って甘えてお世話になってたけど、
 これからはできへんって」
「雅子、うちは智太郎さんと結婚の約束をしたんえ?
 なんぼお父さんがそんなこと言わはっても、うちは」
「おおきに。うちほんまはどうしよう思うててん。
 戦死したうちの主人の両親も職を失ってて、うちが面倒見んとあかんし、
 子ども母に預けて働こう思うて」
「働くっていうても」
「うち、どんなことでもする」
「何言うてんの。
 今は男の人でもちゃんとした仕事に就くのが難しいのに、女が働くところがあると思うてんの?」
「けど‥」
「買出しも闇市にも出ることのできん人が、一人前のこと言わんときよし。
 ‥‥
 うちは、何年でも智太郎さんの帰りを待つつもりえ。沢木家のお世話は、私にさして。
 な、雅子」
「‥‥(ぺこり)」



忠七とお康は、羊羹を作りながら、話をする

「忠七さん、ホンマに悠お嬢さんと結婚できるなんて思ってはったんと違いますやろ?」
「アホ~! 私はな、悠お嬢さんがかわいそうだっただけや」
「ホンマに、あんなに好きおうてたのになぁ。
 この分やと、悠お嬢さん、誰とも結婚しはらへんやろな」
「それやったらええんけどな」
「意外とあっさり他の人と結婚しはったりして」
「こら、番頭をおちょくるのと違うぞ」
「今は番頭も女衆(おなごし)もあらしません。はよ手伝ってくれやっしゃ」

悠が帰ってきた

「正月やし、いつもの三倍作っときました」と忠七
「これからは作れるだけつくって、どんどん売ろな。
 うちの家族だけやなしに仰山の人たちの生活がかかってんやし」
「へぇ! お嬢さんのためでしたら夜の寝んと働きます」
「調子のええこと言うて」


そこに桂が義二をつれて帰ってきた

「悠、義二さん、帰ってきてくれはったえ。やっと元気になって」
「良かった~。お父ちゃんもきっと喜びはります」
「悠、義二さんは竹田屋の主人やし、今日から義二さんの言わはる通りにしてもらいますえ。
 あんた、はっきりお言いやす 」
「私が帰ってきた以上、同じヤミをやるにしても竹田屋として恥ずかしくないことをします。
 したがって、羊羹つくりはやめてもらいます」
「え?」

桂の本意を知らない悠は、義二の発言を理解することはできませんでした


(つづく)


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