日記

日々のあれこれ
前のはこちら→https://blog.goo.ne.jp/kawashima134

「つるかめ助産院」 小川糸

2012年08月19日 | 読書

写真は三男が描く私の姿。お腹がつかえるのは妊婦だからではなくて・・・


不幸な生い立ちで肉親の縁の薄い主人公は、夫が突然いなくなった後、沖縄らしい南の島へやってきて、つるかめ助産院の人たちと知り合いになり、働きながら出産を待つ。

南の島は食べ物がおいしく、人情は深く、自給自足に近い生活で、主人公は少しずつ都会での疲れた心を癒し、自己を肯定し、新しい命を待ち望むようになる。

作者は出産を経験してないそうだが、出産の身体的な感覚は、産んだ経験のあるものには胎生動物としてのあまりに当たり前の体験だし、そうでない人には言葉では届かない未知の領域であるらしい。それを丁寧に書いているところがなかなか良かった。ありそうでなかった分野の表現。

でも子供を産んだことのあるものから言うと、わざわざ表現し、それを読んだところで、実際の出産には全然届いてないのではないかと思う。じゃ、あんたが書けよと言われそうだけど、お産というのは表現するものではなくて、やってみるもの。

産んで育てるのが幸福かというと、うーーーん、若かった私は責任感と閉塞感に押しつぶされそうだった。幸福を感じる余裕もなかった。

この本ほどには一直線に肯定できなかった。でもまあ、そういってしまうと身も蓋もない。やっぱりお産はした方がいいかな。自分が動物だって、一瞬にして分かる貴重な体験。長い歴史も社会の制度も、女性が安心して赤ちゃんを産んで育てて行けるような方向で整備されてきたってよくわかる。太宰治の斜陽じゃないけれど。

赤ちゃんが好きな女性には面白いかも。ストーリーはかなり無理がありますが、メルヘンだと楽しめばいいのでは。

今月初め、四国へ行くときに読むつもりだったけど、一時間しか寝てなくて頭が痛くて読めず。そのあとも忙しくてやっと本日読了。

 

コメント    この記事についてブログを書く
« 高砂百合 | トップ | 「さがしもの」 門田光代 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書」カテゴリの最新記事