下記の記事は日刊ゲンダイデジタルからの借用(コピー)です
健康のためには「朝食」が大切だという知見はこれまでたくさん報告されています。そして、心臓疾患にも朝食は大きく関わっているといわれています。
米国心臓病学会の医学誌には、「まったく朝食を取らない人は、毎日朝食を食べる人と比べて心血管疾患による死亡リスクが増加する」という研究結果が発表されています。88~94年にかけて40~75歳の米国人6550人を対象に平均18・8年の追跡調査を実施。一度も朝食を取らなかった人は、毎日朝食を取る人と比べて心血管疾患による死亡率が87%も高かったことがわかりました。
この研究ではどんな内容の朝食を取っていたかまではわからず、「朝食を抜くと寿命を縮める」とまでは言えません。しかし、朝食が心臓疾患に対する何らかのリスクと関連していると考えてもいいでしょう。
これまで報告されている朝食の効果のひとつに「太りにくくなる」というものがあります。朝、食事をすると胃腸が活動を始めて体温が上昇します。その状態を維持するためにエネルギーが消費されるので基礎代謝がアップし、太りにくくなるのです。
肥満は心臓疾患にとって代表的なリスク因子ですから、朝食は心臓疾患のリスクを減らすことにつながるのです。
また、朝食は人の「体内時計のリズムを整える」役割もあります。人の体内時計は24・5時間周期で、1日=24時間ですから、毎日少しずつリズムがズレていきます。このズレをリセットしているのが朝食です。厳密にいえば、最も長い絶食時間の後に取った食事を“朝食”と認識してリズムを整えています。ですから、毎朝規則正しく朝食を取ることがリズムを維持するうえで大切です。
■まったく食べないと心血管疾患のリスクがアップ
人は体内時計のリズムによって、体温、血圧、ホルモン分泌などを調節しています。リズムが乱れると睡眠障害や肥満のリスクを高めます。いずれも、心臓にとって大きなストレス因子ですから、やはり朝食は重要といえます。
朝食には「血糖値の急上昇を防ぐ」働きもあります。朝食を抜くと昼食後の血糖値が上がりやすいという報告もあるように、糖尿病の予防では「まとめてドカ食いは避けて1日3食に分けて食べる」ことが基本です。糖尿病はもちろん、血糖値の急上昇は血管に大きな負担をかけるので動脈硬化を招きやすくなり、心臓疾患の大きなリスクになります。
さらに、朝食は1日の早い時間から胃腸を活発化するため、「快便」にもつながります。便秘になってどうにか排便しようとトイレでいきむと、心臓には想像以上に大きな負担がかかりますから、この点でも朝食は心臓を守るのです。
食生活による健康管理を考えた場合、自分が主体となって生活習慣病の改善に“攻めの姿勢”で臨めるのは、朝食だけといってもいいでしょう。
現代の社会生活では、夕食は仕事や対人関係のためのお付き合いに使われるケースも少なくないので、自分できちんとコントロールするのは難しいといえます。昼食は職場の近所で済ませたり、時間の制約に縛られる場合がほとんどで、やはり主体的に管理するのはハードルが高くなります。
つまり、朝食を取らない人は、生活習慣病を予防して心臓を守るための手続きをひとつ放棄しているということです。現代人の健康管理において、朝食を活用しない手はないのです。
ただし、朝食の栄養バランスが偏っていると、逆に生活習慣病を悪化させることもわかっています。たとえば塩分がすごく多いと血圧を上昇させますし、肥満にもつながります。糖分過多であれば糖尿病リスクを上げてしまいます。
栄養バランスを考えた朝食を毎日きちんと取ることが大切で、それが心臓の健康維持につながるのです。
天野篤
順天堂大学医学部心臓血管外科教授
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