◆公演後の羽生さんの主な一問一答
―初日を終え、率直な感想を
「本当に今日の開場ギリギリまでみなさんで徹夜しながら、このリプレイという公演を作っていただいて、まずそこに感謝しかないですし、無事に皆さんの前でこうやって披露することができて、一つの作品としてのアイスストーリーというものをまず実行できることが本当に幸せだなということを感じております」
―どういうどういうテーマを皆さんに見ていただきたい?
「自分自身いろんなゲームだったりとか、漫画だったりとか、小説だったりとか、いろんなところから、『自分の人生ってなんだろうなあ』とか、『命って尊いものだなあ』とか、本当にざっくり皆さんが感じているようなことを僕自身もいろんな作品から受け取っていて。
改めてゲームの中っていうのは、命っていう概念が本当にある意味軽いというか、繰り返しできる、だからこそ、その好奇心のままにいろんなことをキャラっていうものを使って、好奇心のままに進んでいける。
それって、なんかすごく現実の世界に当てはめてみたら、なんだろう、まあ夢をつかみに行く原動力のある人間なのかもしれないし、逆に違う価値観というか、違う観点から見たらとても恐ろしい人間なのかもしれないし。
でも、それが繰り返しできるってなったら、『きっと人はするんだろうなあ』みたいなことをちょっと考えていて。それをじゃあ一回、自分が選んできた選択肢っていうものが人生の中であって、その選択肢の先に一回破滅っていうルートがあったとして、すべての障害を乗り越えて夢をつかんで、何か目標をつかんでっていう人生があったとして、それがもう一回繰り返されるんだったら皆さんは何を選ぶだろうか、皆さんが何を選んで何を感じるのかなということを、このアイスストーリーの中で、皆さんに考えてもらいたいっていうのが今回のテーマです。
一言でまとめるのが難しくて申し訳ないんですけど、このストーリー自体で答えを出してほしいというものではなくて、考えてもらいたい。その考えるっていうキッカケの一つであってほしいなっていうのがリプレイっていう物語であり、作品だったかなっていうのを僕は思っています」
2023年11月4日 20:55
――感極まっているようにも見えた。プロ転向後のショーとの違いは
「まあやっぱり、これまでやってきたアイスショーっていうものとは、全然違って。やっぱ、これは本当に1つのプログラムだけじゃなくて、その1つの作品の中にいろんなプログラムがあって。
もちろん、今までやってきたプログラムたちもあるんですけど、それがその物語の中に入った時に全く違う見え方があるよねって、こんな見え方もあったんだなって、そういったことを1つの流れで見せるということが趣旨なので、自分としては全然違った心意気で、このアイスストーリーというものに挑んでいますし。
何より自分がつづって自分が表現したいことを、本当に多くの方々を巻き込んで作り上げていくことに、たまに怖くもなるんですけど。でも、こうやって皆さんが作り上げてくださったものをある意味、プレッシャーを感じながら、責任を感じながら滑らせていただく機会があって。
大変だなとは思うんですけど、でも、アスリートとして限界に挑みながらも、いい演技ができるように、また頑張りたいなという気持ちにあらためてなりました」
――スピンだけの構成、無音で氷の音を響かせながらリズムをつくったり新鮮だった。それは全部のストーリーっていうものを考えた中での、本当にピースとして考え抜いて作ったのか
「そうですね。あとは原曲と原作へのリスペクトみたいなものがあって。メガロバニアというプログラムというか、楽曲なんですけど、アンダーテールという物語があって、それの中の戦いのシーンが、まず一番最初に無音で。必殺技っていうのを繰り出すんですけど、敵が。
それがすごい無音でわーって、敵の攻撃の音だけが聞こえるみたいなシーンがあって。なんかそういうのもかっこいいなとか思ったり。
ただ、そのストーリー的にこれを組み込んだら、もしかしたら今までは、そのストーリー的になんとなく皆さんが見てる中で、そのプレーヤーの羽生結弦っていうのと、ゲーム内にいる8ビットの羽生結弦っていうのと、滑ってる羽生結弦みたいなものが分離して見えてたかもしれないけれども、そこで出てきて無音でやって1つずつ作り上げていったら、ゲーム内のキャラだったのかなみたいなことが、だんだんつじつまが合ってくる、みたいなことをちょっとずつ考えながら。
どういう風にその皆さんの頭の中を整理していくかみたいなことを演出、また物語とかでも考えていたつもりです」
――試合ではできない組み合わせのジャンプもあった
「あれは、あのプログラム自体がラスボスっていうイメージでやっていて、最後クリアが出るんですけど。戦いきってやっと倒せたっていうとこなんですよね。だからなんか倒しきった、で、全部使い果たした。
セーブできる、終わらないか、できないか、また続くみたいな感じのイメージですかね。
ただ、なんかある意味では、その繰り返されるっていうのがリプレイの自分の中でのテーマなので、もちろん試合では使えないジャンプになるかもしれないんですけど、オイラーサルコーっていうのはある意味すごく繰り返されていくジャンプなので、テーマにもすごく沿っていいんじゃないかなというのと。
あと音的にもすごくハマるかなっていうことを考えました」=おわり=