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休日は観劇に

さくの観劇メモランダム

レ・ミゼラブル

2013年07月21日 | ミュージカル

2013年5月5日(日祝)12:00開演 帝国劇場 S席 1階K列30番台

 【映画版『レ・ミゼラブル』】

 映画版レミゼを見に行った人達から立て続けに「良かった!泣いた!」という感想を聞き、ミュージカルファンの血が騒ぎ出した(笑)。思い立ったが吉日、正月休みに映画を見に行ってきた。まず、オープニングの壮大な海のシーンに驚く。レミゼのオープニングってこんな感じだったっけ?舞台版レミゼは8年前に1回観ただけなので、細かい部分は忘れてしまったが、船上シーンはなかったような気がする。海での労役が新演出なのか?などと思っているうちにも物語はどんどん進行。オープニング以外で新演出だと思ったのは、ジャベールの最期のシーン。橋の欄干と思しきところから、滝つぼのようなところ(ダム?下水処理場?)に身を投げるのだが、これまた映像ならではの迫力あるシーンとなっていた。病室の場面(ファンテーヌの死)、バリケードの場面(エポニーヌ、ガブローシュ、学生たちの死)、教会の場面(ジャン・バルジャンの死)では涙が溢れた。一緒に観に行った友人は終始号泣だった(笑)。映画版レミゼは予想以上に良かった。制作サイドが拘ったのは、歌声の録音と芝居の撮影を同時に行うという点だったらしい。やはり元はミュージカルだから、そこは譲れないポイントだったのだろう。そしてそれは大正解だった。空前の大ヒットとなっているのもうなずける。

 今後は舞台版レミゼも新演出版になるとのこと。映画版が良かったので、舞台版もいつか観に行こうと思っていた矢先、ジャン・バルジャン役の一人としてキャスティングされていた山口祐一郎さんが突如降板を発表した。山祐ファンの私としては、少なからず衝撃を受けた。山祐バルジャンはもう観れないのか。そう思うと無性に山祐バルジャンの歌声が聴きたくなってしまい、思わず山祐版レミゼCDを買ってしまった(笑)。8年前の朧げな観劇の記憶と、まだ鮮明な映画版の感動と、山祐の歌声、それらが渾然一体となって「私のレミゼ」はできあがった(笑)。

 【『レ・ミゼラブル』5月4日夜の部・5月5日夜の部公演中止のお知らせ】

 出演予定でしたジャン・バルジャン役キム・ジュンヒョンは、怪我の為に出演が叶わず、上記の2公演を公演中止とさせて戴きます。お客様には、ご迷惑とご心配をお掛け致しまして、誠に申し訳ございません。……

 東宝から「お詫び」と題したメールが届いたのは5月1日のこと。そのメールを見た瞬間、ドキッとした。なぜなら、5月5日はまさにレミゼ観劇を予定していた日だったからだ!心を落ち着けて冷静に考える。私が手配したのは5月5日昼の部のチケットだったはず。手帳を開いて確認する。うん、間違いない。大丈夫だ。それで少しホッとした。帰宅後にチケットの現物を確認して、心の底からホッとした。そして、「こども店長、ありがとう!」と心の中で叫んだ(笑)。なぜなら、役替わりキャスト表を眺めながら、昼の部と夜の部のどちらにしようか迷っていた時、決め手となったのはガブローシュ役の加藤清史郎くんだったからだ。山祐なき今(死んでませんよ。笑)、次に観てみたい人は…こども店長!というわけ。それにしても、GWの最中の突然の公演中止は、観る側にとっても、演じる側にとっても、主催者側にとっても、相当イタイに違いない。自分が観劇できることの幸運に心の底から感謝した。

◆ミュージカル『レ・ミゼラブル』(新演出版)

THE CREATIVE TEAM

  • 作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
  • 原作:ヴィクトル・ユゴー
  • 作詞:ハーバート・クレッツマー
  • オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
  • 演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル

Cast(※カッコ内は2005年5月4日(水祝)昼の部キャスト/映画版キャスト)

  • ジャン・バルジャン…吉原光夫(今井清隆/ヒュー・ジャックマン)
  • ジャベール…川口竜也(岡幸二郎/ラッセル・クロウ)
  • エポニーヌ…笹本玲奈(笹本玲奈/サマンサ・バークス)
  • ファンテーヌ…里アンナ(シルビア・グラブ/アン・ハサウェイ)
  • マリウス…原田優一(岡田浩暉/エディ・レッドメイン)
  • コゼット…磯貝レイナ(知念里奈/アマンダ・セイフライト)
  • テナルディエ…KENTARO(徳井優/サシャ・バロン・コーエン)
  • マダム・テナルディエ…谷口ゆうな(森公美子/ヘレナ・ボナム=カーター)
  • アンジョルラス…野島直人(坂元健児/アーロン・トヴェイト)
  • ガブローシュ…加藤清史郎(?/ダニエル・ハトルストーン)
  • リトル・コゼット…北川真衣(?/イザベル・アレン)
  • リトル・エポニーヌ…清水詩音(?/ナタリア・エンジェル・ウォレス)

 プロローグの船のシーン。この中にバルジャンがいるのだろうと思いながら観ていたのだが、初めは誰がバルジャンなのか分からなかった。そして、吉原バルジャンが立ち上がった瞬間、ガタイの良さに驚いた。公式HPで扮装顔写真は確認していたのだが、身長・体格までは分からなかった。坊主頭だったこともあり、何となく西郷どんみたいだなと思ってしまった。確かに、バルジャンは怪力の持ち主という設定だから、バルジャン役にはガタイの良さが求められるのかもしれない。その怪力が発揮される下水道のシーン。吉原バルジャンは、銃撃戦で負傷して意識不明の原田マリウスをバリケードから連れ出し、担いだり引きずったりしながら、下水道の中を進んでいく。この場面の背景は、セットではなく、プロジェクション映像が用いられていた。空ろな舞台空間がそのまま下水道を表していて、バルジャンの歩みに従って映像も動き、照明の効果とあいまって、どこまでも延々と続くフランスの下水道がうまく表現されていたと思う。

 映画版で印象的だった場面の一つが、ジャベールの自殺の場面。舞台版では一体どんな風に表現されるのだろうと興味津々だった。バリケードでは敵であるはずのバルジャンに命を救われ、下水道では敵であるはずのバルジャンを通過させてしまった。何が善で、何が悪なのか。法律は絶対。法を犯す者には罰を。それがジャベールの信条だった。しかし、本当にそうなのか?もしかしたら、自分は間違っていたのではないか?ジャベールという人間を支えていた信念の土台が音を立てて崩れ始めた。川口ジャベールは橋の欄干に立った。私はこの時、川口ジャベールは奈落に落ちるのだろうと予想した。ところが、正解はまさかのワイヤーアクション!プロジェクションを使って落下していく状況を表現し、宙吊り状態の川口ジャベールは手足をバタつかせて落下している様子を表現。う~ん、この場面は改善の余地アリと感じたが如何に?

 あの雲の上に~お城があるのよ~お掃除なんかもしなくてもいいの~♪本日のリトル・コゼットは北川真衣ちゃん。ほうきを手に登場した北川コゼットちゃんは、舞台前方に出てきて、一生懸命に「♪雲の上の城」を歌った。可哀想なコゼットは空想の世界に救いを見出し、辛い現実に耐えていたのだ。健気…。ファンテーヌの人生を狂わせてしまったバルジャンは、罪滅ぼしのためにファンテーヌの遺児コゼットを引き取り、育てることにする。バルジャンは精一杯の愛情をコゼットに注いだ。もともとはファンテーヌのために始めたことだが、結果的にバルジャン自身も救われたのだと思う。孤独だったバルジャンの人生に、家族(娘)という存在ができたのだ。やがてコゼットは美しい女性へと成長する。

 革命の実現を目指す学生たちVS軍隊。悪巧みを企むテナルディエ一家VSバルジャン父娘。追いかけるジャベールVS逃げるバルジャン。マリウスに恋するエポニーヌVSエポニーヌの乙女心に全く気づかない鈍感マリウス。さまざまな思いが交錯する騒然とした街中で、偶然出会ったマリウスとコゼットは一瞬にして互いに恋に落ちる。ここから革命の失敗までは怒涛の流れだ。マリウスはコゼットと革命の二者択一を迫られて革命を選択するが、コゼットへの愛を手紙にしたためエポニーヌに託す。エポニーヌからコゼット宛の手紙を渡されたバルジャンは、手紙の中身を読んでしまい、娘の恋を知る。エポニーヌは革命の最初の犠牲者となり、マリウスの腕の中で息を引き取った。バルジャンはバリケードに赴き、学生たちと共に革命軍として戦う。若い命が空しく散っていくさまをバルジャンはどんな思いで見ていたのだろうか?マリウスの息がまだあることを確認したバルジャンは、コゼットのためにもこの若者の命を助けなければならないという思いに突き動かされた。

 小さな革命闘士ガブローシュ役は加藤清史郎くん。たぶん街の浮浪児たちのリーダー的存在なのだろう。こどもネットワークを駆使して、時に大人顔負けの重要情報をもたらしたりする。加藤ガブローシュくんは2011年公演に続いての登板ということで、なかなかどうして堂々たる演技と歌だった。ガブローシュは学生たちに交じってバリケードの中に立てこもる。革命軍には武器が足りない。すぐに弾薬も尽きてしまった。そこで、バリケードの向こう側に出て行って、死体から弾薬を盗ってこようという話になる。すると、体が小さくてすばしっこい俺がやると言って、ガブローシュがバリケードの外に出て行ってしまった。そして、銃声が響き渡る…。旧演出版では客席側がバリケードの外側で、ガブローシュが舞台手前に出てきて撃たれたような気がしたのだが、新演出版では客席側がバリケードの内側で、ガブローシュは舞台奥で後ろ向きで撃たれる演出になっていたため、表情を見ることはできなかった。

 テナルディエ夫妻の陰険さ・ずる賢さ・図太さは、新演出版で更にパワーアップしたように思う。あの宿屋には絶対に泊まりたくない。コゼットは下働きとしてさぞかしこき使われたに違いない。コゼットのためにと、身を売ってまで金を工面し、テナルディエ夫妻に送金していたファンテーヌが可哀想過ぎる…。テナルディエの妻役は、映画版ではヘレナ・ボナム=カーターさんが演じて強烈な印象を残したが、舞台版では「ふくよか女優さん枠」のようだ。コゼットとマリウスの結婚式に紛れ込んで、一儲けしようと企むテナルディエ夫妻。テナルディエ扮する「テナルド男爵」の変なパンツが映画と一緒だった。(いや、正確には映画版が舞台と同じなのか。)あの太ももが妙に誇張された白パンツは、当時の男性がコルセットを使って筋骨隆々に見せていたことを参考にデザインされたものらしい。ただし、テナルディエの「マッドさ」がでるように多少誇張したと衣装デザイナーさんが語っている。なるほど。

 マリウスに真実を告げ、コゼットの前から姿を消したバルジャン。バルジャンの寿命は尽きかけていた。神の国に召される時が来たのだ。ファンテーヌの魂がバルジャンの魂を迎えに来る。ファンテーヌの魂は穏やかな表情をしている。バルジャンは最期の時に何を思うのか?パンを一つ盗んだだけで19年も投獄した警察への怨みか、出獄後の自分を前科者としてまともに扱ってくれなかった世間への怨みか。いや、怨み・ねたみ・そねみといった負の感情は、ミリエル司教の慈悲深い心に触れた時に、バルジャンの心の中から消え去ったのだ。最期の時を迎えたバルジャンの心に浮かんだのは、コゼットと二人まるで本物の親子のように過ごした日々の記憶だろう。そして、そのコゼットがマリウスという未来ある青年と末永く幸福に暮らしてほしいという希望だ。そこへ、コゼットとマリウスが駆けつけてくる。コゼットの人生を救ったのもバルジャンなら、マリウスの命を救ったのもバルジャンだった。あなたは私達の本当の父親だ!どうか私達と一緒に暮らしてください!バルジャンはどんなに嬉しかったことだろう。その言葉でバルジャンの人生は肯定されたのだ。しかし、コゼットとマリウスの祈りも空しく、バルジャンは神の国に召されてしまうのだった…。


ミス・サイゴン

2013年03月01日 | ミュージカル

2013年1月16日(水)18:00開演 岩手県民会館 大ホール SS席 1階20列20番台

◆いわぎんスペシャル ミュージカル『ミス・サイゴン』(作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク/オリジナル・プロデューサー:キャメロン・マッキントッシュ)

キャスト(カッコ内は2008年8月のキャスト)

  • エンジニア…市村正親(橋本さとし)
  • キム…新妻聖子(ソニン)
  • クリス…山崎育三郎(井上芳雄)
  • ジョン…岡幸二郎(同じ)
  • エレン…木村花代(鈴木ほのか)
  • トゥイ…泉見洋平(石井一彰)
  • ジジ…池谷祐子(菅谷真理恵)
  • タム…寺崎杏珠(寺井大治)

 『ミス・サイゴン』が岩手に来るぅ!?マ、マジデスカ!?銀行でチラシを見つけたときは驚いてしまった。新演出版を東京でやっているのは知っていたけれど、まさか全国ツアーが岩手にまで来るとは。しかも岩手公演の最終日が全国ツアーの大千秋楽になっているではないか!これはなんとしても観に行かねばなるまい。それにしても、やはりこれは大事件だ。全世界でロングラン公演されているミュージカルが岩手にやって来るなんて。『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』が岩手に来る、なんてことも、夢ではないのかもしれない。あぁ、来て欲しい。そうしたら絶対観に行くっ!!!!

 初めて『ミス・サイゴン』を観たのは2008年8月だから、もう4年半前になるのか。早いなぁ。平日の場合、仕事もあるので夜公演のほうが都合がいい。というわけで、1月16日(水)18:00公演のチケットを手配した。キャストの中で前回と同じなのはジョン役の岡幸二郎さん。岡さんのトークが面白かったことを思い出す(笑)。

 オリジナル演出版は、本物のヘリコプターやキャデラック、巨大なホーチミン像などの巨大で豪華なセットが一つの「売り」だった。しかし、その結果として上演できる劇場が限られてしまっていた。その点、新演出版は映像を駆使したものに変更されており、全国ツアーに持って行きやすくなったということのようだ。

 米軍がベトナムから撤退する場面で登場するヘリコプターが、実物から映像に変わっていた。スクリーンに映し出されているヘリコプターの映像と、現実の舞台で動いている役者さんたちとの境目が分からないぐらい自然な演出で、爆音の音響効果とあいまって、むしろ以前より迫力が増したような気さえした。そして、エンジニアのワンマンショー「♪アメリカン・ドリーム」の場面でも、スクリーン映像が使われていた。これまた解りやすくていいのではないだろうか。

 どこがどう違うのか上手く説明できないのだが、トゥイが死ぬ場面で前回ほど泣けなかった。トゥイの描かれ方(登場の仕方、登場している時間、台詞など)が変わったのかなぁ?プログラムを読むと、新演出版は「よりリアル」を追求したものになっているらしい。「これから歌いますよ~」的なフリを一切排除して、芝居の中で自然に歌が出てくるように演出を変えたのだという。リアルの追求は、当然トゥイの登場場面でもなされているだろうから、前のように泣けなかった理由はきっとそのあたりにあるのだろう。

 戦争という混乱状態の中で、何が本当に正しいかなんて誰にもわからない。トゥイにはトゥイの正義があって行動している。トゥイは、キムが自分と結婚することが、キムにとっても祖国ベトナムにとっても正しいことだと思っている。だから、執拗にキムを探すのだ。そして、アメリカ兵クリスとの間に産まれた息子タムをキムが密かに育てていたことを知り、激怒する。敵国アメリカの血を半分引くタムが、自分の血を引いていないタムが、トゥイには許せなかった。その時のトゥイの目には、タムは自分とキムの結婚を妨げる邪魔者としか映らなかったのだろう。怒りで我を忘れたトゥイは、タムを抹殺しようとする。そして、息子を守りたい一心で、キムはトゥイに向かって引き金をひいてしまう。キムはトゥイを殺したくなんかなかったのに…。

 クリスがアメリカで結婚した妻エレンの楽曲「♪メイビー」が第2幕に加わっていた。実は、『ミス・サイゴン』は4年半前に生舞台を観たっきりだったので、忘れていることも多かった。第1幕が終わった時には、どうしてヘリコプターが出てこないのだろう??と思ってしまった(笑)。第2幕を観て、キムの悪夢のシーンでヘリコプターが登場することを思い出した。そんな調子なので、「♪メイビー」が新しく追加された楽曲だということも、観ていた時には全く気づいていなかった。逆に言うと、「♪メイビー」はまるで初めからそこにあったかのように、とても自然に聞こえてきた、ということでもある。キムも辛いが、エレンだって辛い。クリスは罪作りな男だ。

 山崎クリスは弱い男で、新妻キムは強い女だった。いや、美輪様のお言葉を借りるならば、「この世に強い男と弱い女は存在しない」。つまり、男は弱く、女は強いものなのだ。アメリカにもベトナムにも自分の居場所がなく、生きる意味を見失いかけていたクリス。家も家族も戦争に奪われ、天涯孤独の身となりながらも必死に生きようとするキム。そんな二人が客と娼婦として出会い、やがて本当の恋に落ちる。恋が一気に燃え上がり結婚式に至るまでのシーンも演出が変わっていたと思う。これまたどこがどうと説明できないのだが、キムの部屋の位置とかベッドシーンのやり方とか結婚式の祭壇の向きとか…が違うような気がした。

 市村エンジニアを観ることが、今回の観劇の目的の一つだった。還暦を過ぎた人とは思えない軽やかな動きだった。やっぱり日頃から鍛えている人は違うんだなぁと感心した。エンジニアはアメリカン・ドリームを夢見て、混乱した世の中をしたたかに生き抜く男だ。エンジニアはキムとタムの母子をアメリカに渡るための「パスポート」だと思っていたようだが、あの幕切れの感じでは、エンジニアはタムと共にアメリカに渡ることはできなかっただろうと思われる。しかし、エンジニアはアメリカ行きを諦めないだろう。次の手を考え、もがき続けて最終的にはアメリカに渡ったと私は思う。アメリカン・ドリームが実現したかどうかは分からないが。

◇カーテンコール

 フィナーレで最後に登場したのも、カーテンコールで出演者を代表して挨拶したのも、エンジニア役の市村正親さんだった。『ミス・サイゴン』の主役はキムだと思うのだが、座長はエンジニアなのだろうか?それとも『ミス・サイゴン』出演歴の長さ?

 「岩手県民会館には今までに何度も公演に来ていますが、満員御礼になったのは今回が初めてです!」市村さんは満面の笑みでそう言った。さもありなん(笑)。私の岩手県民会館観劇歴を振り返ってみても、満席だったことはない。そんな岩手県民をして満員御礼にさせてしまう『ミス・サイゴン』は、やはりスゴイ作品だ。最後はスタンディングオベーションになった。岩手県民会館でこんな光景を見るのは初めてかもしれない。

 この公演が個人的千秋楽となる山崎育三郎さんと、タム役の寺崎杏珠ちゃんの挨拶もあった。男の子だとばかり思っていたら、タム役をやっていたのは女の子だった。プログラムのプロフィール欄には、どうしてもこの役がやりたくて長かった髪の毛を短く切ってオーディションに臨んだと書いてある。プロだねぇ~。

 悲劇的な幕切れで心が重くなってしまう作品ではあるけれど、大作を観た、という充実感があった。これからも大作ミュージカルがどんどん岩手に来て欲しい。そして、できれば土日に公演して欲しい。それが私の希望です(笑)。


ロミオ&ジュリエット

2011年11月23日 | ミュージカル

①2011年10月1日(土)12:30開演 赤坂ACTシアター S席 1階O列1桁番台

②2011年10月1日(土)17:30開演 赤坂ACTシアター S席 2階C列10番台

 次は『ロミオ&ジュリエット』と『アントニーとクレオパトラ』の2本立てで観劇ツアーを組もう。ロミジュリはWキャストなので、できればどちらのパターンも観てみたい。役替わり表をチェックしてみたところ、10月1日の昼公演と夜公演の両方を観ると、Wキャストのほぼ全員を観ることができると分かった(残念ながら良知真次マーキューシオだけは観られない)。よし、これだ!私は、ロミジュリ(10/1昼夜)&アンクレ(10/2)に狙いを定めてチケット戦線に参戦し、欲望の赴くまま3公演分のチケットをゲットしてしまった。

 赤坂ACTシアターに行くのは初めてだったので、ちょっと早めに行って、赤坂サカス内を探検。ランチは赤坂Bizタワー内の「げんまい食堂 SMILE KITCHEN」で。鰆の竜田揚げ定食が美味しかった。チケット提示サービス品の特製プリンもしっかりといただいた(笑)。赤坂ACTシアターへ移動するため外に出てみると、あちらこちらに警備員の姿が。足場が組まれ、テレビカメラらしきものも見える。一体何事?と思ってキョロキョロしていると、「オールスター感謝祭」の文字が目に入った。え!?今日は「オールスター感謝祭」当日だったの!?あの生放送で延々クイズをし、芸能人が赤坂をマラソンするやつ!?そうか、だからこんなに物々しい雰囲気なんだな!!今日は夜公演も観る予定なのに、なんだかマズイ日に来てしまったなぁ…などと思いながら、赤坂ACTシアターに入場。プログラムは舞台写真入りの黒版をチョイスした。公演時間は、第1幕75分、休憩20分、第2幕75分の合計2時間50分とのこと。ドキドキワクワク♪

◆ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(原作:ウィリアム・シェークスピア/作:ジェラール・プレスギュルヴィック/潤色・演出:小池修一郎/振付:TETSUHARU(増田哲治))

《固定CAST》

  • モンタギュー卿…ひのあらた
  • モンタギュー夫人…大鳥れい
  • ベンヴォーリオ…浦井健治
  • キャピュレット卿…石川禅
  • キャピュレット夫人…涼風真世
  • 乳母…未来優希
  • ヴェローナ大公…中山昇
  • ロレンス神父…安崎求
  • パリス…岡田亮輔

《MUSICAL MUNBERS》

 ACT1

  • 序 序曲
  • 第1場 ヴェローナの市庁前広場(「♪ヴェローナ」)
  • 第2場 ヴェローナ市街A(「♪憎しみ」)
  • 第3場 キャピュレット家の内外(「♪いつか」)
  • 第4場 キャピュレット家のホール(「♪結婚の申し込み」「♪ティボルト」)
  • 第5場 ジュリエットの居室(「♪結婚のすすめ」「♪涙の谷」「♪結婚だけは」)
  • 第6場 ヴェローナ市街(「♪STREET MUSIC」「♪世界の王」「♪マブの女王」「♪僕は怖い」)
  • 第7場 舞踏会(「♪舞踏会A」「♪天使の歌が聞こえる」「♪舞踏会B」「♪本当の俺じゃない」)
  • 第8場 バルコニー(「♪バルコニー」)
  • 第9場 ロレンス神父の庵(「♪愛の為に」)
  • 第10場 ヴェローナ街頭(「♪綺麗は汚い」「♪あの子はあなたを愛している」)
  • 第11場 キャピュレット家の裏口
  • 第12場 礼拝堂(「♪エメ」)

 ACT2

  • 第1場 ヴェローナの市街[モンタギュー組の居住区](「♪街に噂が」)
  • 第2場 ヴェローナ市街[キャピュレット組の居住区](「♪今日こそその日」)
  • 第3場 ヴェローナの市街[広場](「♪決闘」「♪マーキューシオの死」「♪代償」「♪ヴェローナ2」)
  • 第4場 ロミオの葛藤(「♪憎しみ~エメ【リプライズ】」)
  • 第5場A ジュリエットの居室
  • 第5場B ロレンス神父の庵(「♪神はまだお見捨てにはならない」)
  • 第6場 ジュリエットの寝室(「♪ひばりの歌声」)
  • 第7場 キャピュレット家内(「♪明日には式を」「♪娘よ」)
  • 第8場 マントヴァの街~ロレンス神父の庵(「♪彼女なしの人生」)
  • 第9場 ヴェローナ市街あちこち(「♪狂気~服毒」)
  • 第10場 マントヴァへの道(「♪どうやって伝えよう」「♪ロミオの嘆き」)
  • 第11場 ヴェローナ~キャピュレット家霊廟(「♪ロミオの死」「♪ジュリエットの死」「♪何故」「♪罪びと~エメ」)
  • カーテンコール

◇昼公演(山崎ロミオ前楽)

《役替わりCAST》

  • ロミオ…山崎育三郎
  • ジュリエット…昆夏美
  • ティボルト…上原理生
  • マーキューシオ…石井一彰
  • 死のダンサー…中島周

 なんといっても衝撃的だったのは、「死のダンサー」中島周さん。少し首を前に出した猫背気味の立ち姿、蛇のようにしなやかな体、ねっとりした絡みつくような動き。中島さんが発する暗さ冷たさ不気味さのオーラが半端なかった!ジャンプや連続回転などのバレエダンサーならではの踊りも圧巻で、感動した。演出的にヒットだったのは、死のダンサーの「宙吊り」。マントヴァ追放の朝、ロミオとジュリエットはまだ眠りの中にいた。目が覚めれば、別れが待っている。すると、ロミオの様子を窺うように、天井から死がすーっと下りて来る。何かの気配を感じたのか、ロミオは目を覚ます。ナイス演出だと思った。最後の霊廟の場面で、ワイヤー使い再び。今度はロミオとジュリエットの亡骸が横たわる台座の後ろから現れ、静かに天上に昇っていった。空中に浮かぶ死のダンサーは、キリストの十字架のようでもあり、昇天する恋人達の魂のようでもあり、とても厳かな感じだった。

 山崎ロミオと昆ジュリエットのコンビは、とてもイイ感じだった。親友マーキューシオを殺され逆上してティボルトを殺してしまったロミオは、マントヴァへ追放処分になるのだが、その辿り着いた先がまさか「クラブ・マントヴァ」とは(笑)。携帯電話やパソコンが登場することにも驚いたが、私としては「クラブ・マントヴァ」が一番ウケた。浦井ベンヴォーリオは、昆ジュリエットが服毒自殺を図ったことを山崎ロミオに伝えるため、マントヴァまでやって来る。そして、ジュリエット死亡の報を聞いたロミオは、後を追うため薬売りから毒薬を買い…。そこまで考えたところで私はハッとした。しまった!死のダンサーのことをすっかり忘れていた!死のダンサーが薬売りに扮しているはず!慌ててクラブ・マントヴァのカウンターの中にいた男に目をやると、ああ、やっぱり死のダンサー中島さんではありませんか!あぁ、あなたは最初からそこにいたのに、私は全く気づいていなかった…。私は心密かに夜公演でのリベンジ誓った(笑)。

 ジュリエットが、キャピュレット卿の実の娘ではなく、キャピュレット夫人の不倫相手の子供だったという衝撃の事実が、涼風キャピュレット夫人の口から語られる。これは本家フランス版のオリジナルの設定らしく、小池修一郎氏は宝塚版を演出する際にはこの設定をカットしていたようだ。キャピュレット卿は、若き日のキャピュレット夫人の体目当てに結婚を申し込んだらしい。愛のない結婚生活の中で、夫人は夫以外の男性と恋に落ちる。世間的には不倫と呼ばれるものだったが、夫人にとってはそれが初恋だった。そして、ジュリエットが生まれたのだという。あまりのことに私もジュリエットと同じくらい驚いてしまったのだが、ある意味納得がいった。なぜなら、宝塚版を観た時、キャピュレット夫人の冷めた結婚観や、キャピュレット卿の娘を想う歌に、何か違和感のような、不自然なものを感じていたのだ。しかし、今回の日本版を観て、疑問が解決したような気がした。キャピュレット夫人は夫への仕返しで不義の子を産み、キャピュレット卿の娘としてそしらぬ顔で育てている。キャピュレット卿は、ある時点でジュリエットが自分の本当の子供ではないことに気づいたが、無邪気な笑顔を向ける小さなジュリエットを殺すことはできなかった。すでに娘として愛してしまっていたから。

 荒みきったキャピュレット家とは対照的に、モンタギュー家は夫婦円満、親子関係も良好な感じ。大鳥モンタギュー夫人の衣装(ファー素材)やヘアスタイル(大きな丸型)も、そんな感じを表現しているのではないかなと思った。『ロミオ&ジュリエット』の楽曲はどれも好きなのだが、キャピュレット夫人とモンタギュー夫人が掛け合いで歌う「♪憎しみ」も大好きな楽曲の一つ。宝塚版とは少し歌詞が違っていた、というか追加されていた。こちらが本家フランス版に近い形なのかな?

 乳母役は未来優希さん。優しくて頼りがいのある肝っ玉母さんのような乳母で、とても良かった。モンタギューの若者たちと戯れる「♪綺麗は汚い」で、工事現場セットの2階から鉄パイプを伝って滑り降りてきたのには驚いた(笑)。圧倒的な声量で感情豊かに歌い上げる「♪あの子はあなたを愛している」は素晴らしかった!キャピュレット側の若者たちは「ヒョウ柄」、モンタギュー側の若者たちは「ゼブラ柄」をあしらった衣装を着ているのだが、乳母は「ホルスタイン柄」のエプロンを着ていた(笑)。

 様々な諍いがありながらも、ロミオとジュリエットが仮面舞踏会で出会い、恋に落ち、結婚するまでを描いた第1幕はとーっても楽しい!しかし、第2幕に入ると、事態はどんどん良くない方向へと転がりだし、誰にも止められなくなる。長年に渡る両家の争いの歴史が、マーキューシオを殺し、ティボルトを殺し、ロミオを殺し、ジュリエットを殺してしまう。4人の若者たちの死を前にして、大人たちは自分たちの過ちにようやく気づく。ロミオとジュリエットは本当に愛し合っていたのよ…。キャピュレット夫人が娘の亡骸を前に泣き崩れる。モンタギュー夫人はキャピュレット夫人に手を差し伸べ、両家の争いの歴史に終止符を打つ。ストーリーを知っていても、最後は涙なしでは観られなかった。

◇Tea Time

 ふぅ~。休憩休憩。メルマガ読者限定プレゼントの「R&Jチケットホルダー」もしっかりもらってきましたよ(笑)。Tea Time はチョコレートケーキとともに。

◇夜公演(城田ロミオ千秋楽)

《役替わりCAST》

  • ロミオ…城田優
  • ジュリエット…フランク莉奈
  • ティボルト…平方元基
  • マーキューシオ…石井一彰
  • 死のダンサー…大貫勇輔

 夜公演を観て初めて、役替わりキャストの個性の違い(解釈の違い)が分かって、面白かった!例えば、バルコニーの場面。山崎ロミオは、最初はバルコニーの外側から昆ジュリエットに話しかけていた。突然目の前にロミオが現れて驚いているであろうジュリエットの気持ちを思いやっての行動だと思う。最初の驚きから再会の喜びに昆ジュリエットの心が変化すると、山崎ロミオはバルコニーの内側に入り、お互いの愛を確かめ合い、変わらぬ愛を誓い合う。一方、城田ロミオは、最初からいきなりバルコニーの中に飛び込んでいって、驚く莉奈ジュリエットに普通に話しかけていた。その後先考えない大胆な行動や、あまりにも自然な話しぶりに、思わず笑ってしまった。また、山崎ロミオ&昆ジュリエット、城田ロミオ&莉奈ジュリエット、という組み合わせは、身長差もちょうどイイ感じで、見た目のバランスもとても良かった。

 死のダンサーも、中島さんと大貫さんでは印象が全く違った。中島さんよりも大貫さんのほうが、少しだけ人間的なにおいがした。ダンスの振りも、それぞれの特技を活かした形になっていて、楽しめた。上原ティボルトはとても激しい(感情を外側に出す)人物で、平方ティボルトは少しクールな(感情を内に秘める)人物だった。マーキューシオ役は、昼夜ともに石井さんだった。石井マーキューシオは、ちょっとクネクネした感じの軽い男だった。そんなところがティボルトの癇に障ったんだと思う。マーキューシオは、死の間際に、モンタギュー家とキャピュレット家に対する怨み辛みをぶちまける。憎しみという名の逃れられない宿命に絡めとられて苦悩していたマーキューシオの悲しみが伝わってきて、ジーンとした。

 夜の部は城田ロミオの千秋楽ということで、カーテンコールの最後に挨拶があった。中でも印象的だったのは、ジュリエット役のフランク莉奈さんの挨拶。デビュー作にして、『ロミオ&ジュリエット』日本版初演のジュリエット役に大抜擢。相当な緊張感の中、千秋楽まで駆け抜けてきて、話したいことが山のようにあったのだろう。しかし、まとまらない(笑)。延々と続きそうな莉奈ちゃんの挨拶に割って入り、なんとか終わらせたのは、座長・城田ロミオだった(笑)。

◇終演後

 ふぅ~。終わった終わった。どうらや感謝祭マラソンのほうも無事終わったようで、赤坂Bizタワー側にすんなり渡ることができた。赤坂の夜。ロミジュリな一日にビールで乾杯!


愛と青春の宝塚

2011年02月20日 | ミュージカル

2011年2月11日(金祝)17:00開演 青山劇場 S席 1階S列30番台

 2011年の観劇始め。狙うは2月の3連休。柱は安蘭けいさん主演のミュージカル『エディット・ピアフ』だ。それに絡めて3本立てツアーにしてしまおう!『愛と青春の宝塚』が再演されるらしい。初演を見逃していたので、これはぜひ観ておきたい。しかも、新キャストに陽月華さんの名前がある!宝塚退団後の生・陽月華をまだ観ていない私としては、これは何が何でも観に行きたい。というわけで、2本目は『愛と青春の宝塚』に決定!3本目は四季にしよう。『サウンド・オブ・ミュージック』?『美女と野獣』?『マンマ・ミーア!』?う~ん、どれにしようかなぁ~。迷った末、3連休の締めは、明るく弾けて楽しい気分で帰れそうな『マンマ・ミーア!』に大決定!うん、素晴らしい3連休になりそうだ!

 3連休の天気予報は雪。東京でも5㎝の積雪が予想されるとニュースでは大騒ぎしていた。しかし、そんなことで観劇予定を変更するわけにはいかない。予定の新幹線に乗り込み、意気揚々と東京へ向かった。東京は予報どおりの雪模様。ふわふわと舞い散る雪ではなく、びちょびちょな雪(みぞれ)で、しかも寒風が吹き荒れて、外を歩くのはちょっと辛い一日だった。今回はチケットを当日劇場受け取りにしていたので、早めに青山劇場へ行った。劇場スタッフの方々が劇場前の雪かきをしていた。東京では珍しい光景だったのかもしれない。窓口で受け取ったチケットを見て、軽く衝撃を受けた。座席番号が手書きだった。なんか…地味(笑)。青山劇場に来るのは2回目。今回の座席に座った時、『ワンダフルタウン』の時の座席は本当に良席だったんだなぁと改めて実感した。

◆LLADRO presents『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~』(原作・脚本・原詞:大石静/演出:鈴木裕美/作曲:三木たかし)

【第1幕】

  1. 宝塚大劇場舞台の上~客席(「♪恋よりも生命よりも」)
  2. 宝塚音楽学校稽古場(「♪入学試験[インストルメンタル]」)
  3. 宝塚の河原(「♪逃げ出したくて」)
  4. 宝塚音楽学校の生活~初舞台まで(「♪学校生活」)
  5. 劇場の廊下(「♪学校生活スキヤキの歌パート1」)
  6. スキヤキ屋(「♪スキヤキの歌パート1」「♪スキヤキの歌パート2」)
  7. 稽古場(「♪紳士と花売り娘[インストルメンタル]」「♪届かぬ想い」)
  8. 宝塚の河原(「♪あなたは太陽」「♪わからない」)
  9. 舞台の上(「♪心は一つ」)
  10. 劇場舞台・袖中の小道具置場(「♪心は一つ[リプライズ]」)
  11. 舞台
  12. 劇場舞台・袖中の小道具置場
  13. 終演後の舞台(「♪恋よりも生命よりも[リプライズ]」)
  14. 舞台

【第2幕】

  1. モンゴルと満州の国境付近(「♪慰問メドレー(すみれの花咲く頃/九段の母/赤とんぼ)」)
  2. 宿舎
  3. 宿舎の外(「♪今だけは」)
  4. 宿舎・部屋の中(「♪スキヤキの歌パート3」)
  5. 日本に帰る船の甲板(「♪踊ってあなたらしく」「♪腰抜けと呼ばれても」)
  6. 宝塚の河原(「♪あなたは太陽[リプライズ]」)
  7. 影山の下宿先(「♪ふたりならば」)
  8. 寮(「♪恋よりも生命よりも[リプライズ]」「♪今だけは[レクイエム]」)
  9. 軍需工場(「♪別れ」)
  10. 宝塚の河原
  11. 軍需工場(「♪どうなるの宝塚」)
  12. 道(「♪ふたりならば」)
  13. 焼け野原(「♪恋よりも生命よりも[リプライズ]」)

【Wキャストのチーム分け】

  • 花チーム(真琴つばさ、貴城けい、星奈優里、紫城るい)
  • 月チーム(真琴つばさ、彩輝なお、星奈優里、彩乃かなみ)
  • 雪チーム(湖月わたる、彩輝なお、陽月華、彩乃かなみ)
  • 星チーム(湖月わたる、貴城けい、陽月華、紫城るい)★

【本日のキャスト】

  • 嶺野白雪(リュータン):宝塚歌劇団雪組男役トップスター…湖月わたる
  • 橘伊吹(タッチー):男役。没落した橘家の令嬢…貴城けい
  • 星風鈴子(トモ):男役から娘役へ転身。トップの座を目指す…陽月華
  • 紅花ほのか(ベニ):娘役。リュータンに憧れている…紫城るい
  • 影山航:宝塚歌劇団の脚本・演出家…岡田浩暉
  • 速水悠介:海軍中尉…坂元健児
  • オサム:漫画家を目指す少年…松下洸平
  • タカラジェンヌ…美郷真也、叶千佳、涼麻とも、日向燦、他

 この公演は、主要4役がWキャストになっていて、その組み合わせにより、4通りのパターンが存在する。私は「星チーム」の初日を観劇した。テレビドラマをリアルタイムで見ていたので、ストーリーは知っている。しかし、テレビと舞台は別物だ。舞台化するとどんな風になるのか、とーっても楽しみだった。舞台が始まってからしばらくした時、薄暗がりの客席通路を小走りに降りていく人影が見えた。遅刻してきたお客さんにしては、ずいぶん早足だなぁ、などと思っていると、その人影はその勢いのまま舞台前まで行ってしまった。挙動不審なその人影は、突然、舞台に向かって何かを投げつけた。一瞬、「ええっ!?」と思ったが、すぐに思い出した。確か、タッチーが舞台上のリュータンに向かって靴を投げつけるシーンがあったはず。ということは、あの人影は貴城さんだな。舞台ならではの演出ですねー。

 リュータン役の湖月さんがカッコよくて、可愛くて、面白かった!あの大羽根を自然に着こなせる(背負いこなせる)のは、トップスター経験者だけだと思う。他を圧倒するオーラがあった。「♪スキヤキの歌」がかなり長く感じられた。後でプログラムを見たところ、第1幕の第5場から第6場までが「♪スキヤキの歌」で構成されていた。スキヤキ用の牛肉がきれいに並べられた大皿が、リュータンの周りを取り囲み、まるで宝塚の羽根扇のようにくるくると回りだしたときは感動した(笑)。原作の大石静氏のアイディアなのか、それとも演出の鈴木裕美氏のアイディアなのか。いずれにしろ回る羽根扇ファンの私の心を確実に捉えた(笑)。第1幕第10場。舞台の評判があまり良くない事に腹を立てたリュータンは、影山先生にアドバイスを求める。そこで、影山先生がリュータンの役を演じ、リュータンが相手役を演じることになる。トップスターとしてのプライド。より良い芝居を追求するプロ根性。そして影山先生に徐々に惹かれていく乙女心(笑)。リュータンの気持ちが手に取るように分かった。湖月さん、上手い!

 トモ役の陽月さんは最初から最後までカッコよかった!まず、入学試験でキリリと踊って、他の受験生たちを圧倒。入団後は男役として常にトップを目指して生活していた。ある日、リュータンの相手役を務めていた娘役が舞台に出られなくなり、急遽代役を選ぶことになった。トモは自ら立候補した。トモは男役だったのだが、娘役のダンスも練習して覚えていたのだ。リュータンもトモの実力を認め、トモは見事相手役の座を勝ち取った。トモが娘役に転向してまでトップの座を目指すのには訳があった。トモは不治の病を抱えていたのだ。静かに、しかし確実に迫り来る死の時。平静でいられるはずがない。「宝塚でトップになる」ということを残された人生の目標とすることで、自暴自棄になりそうな自分自身との孤独な戦いを続けていたのだ。トモが自分の病気のことを皆に告白する慰問先の宿舎の場面と、意識朦朧となったトモが自分は宝塚の舞台で歌い踊っていると思いながら息を引き取る場面は、涙なしでは観られなかった(泣)。

 浮浪児タッチーは生きるために全寮制の宝塚音楽学校に入学する道を選ぶ。タカラジェンヌとしての資質を最も持ち合わせていながら、宝塚に憧れを抱いていない唯一の生徒。しかし、時が経つにつれて、本人も無意識のうちに、宝塚を愛する心が育まれていく。戦争のために宝塚大劇場が閉鎖されることになった時、速水中尉に食い下がって、宝塚の存続を願い出たのはタッチーだった。速水中尉はそんなタッチーに興味を覚える。慰問先から日本へ帰る船の中で二人は再会する。坂元さん演じる速水中尉は非常に熱い男で、積極的にタッチーにアタックしていた。ドラマの速水中尉はクールなイメージだったので、ちょっと面食らった(笑)。坂元さんの独特な台詞回しには聞き覚えがある。後でプログラムを見たところ、やはり劇団四季出身だった。初代シンバだったのかー。意外にもダンスが得意な速水中尉は、タッチーをダンスに誘う。速水中尉とタッチーの船上デュエットダンス。初めて自然な笑顔のタッチーを観た気がした。

 天然系娘役ベニ。紫城ベニは、ほのぼのとしていて可愛かったー。ベニは、宝塚が大好きで、リュータンさんが大好きで、干し芋や羊羹が大好きな女の子。ベニはリュータンさんが好き過ぎて、相手役オーディションの時は緊張してしまい、上手に踊ることができなかったが、影山先生が一番最初に声をかけたのがベニだったということは、期待の新人娘役だったのかな?どこか暗い影の漂うタッチーやトモとは全く違う、底抜けに明るいキャラクターだ。同期3人の個性が全く違うことで、それぞれの役が引き立っていると思う。慰問先で戦争の現実と友人トモの病を知り、人の生死について深く考えるようになったベニ。「戦争で人がたくさん死んでいるような時に、宝塚歌劇団なんて必要なのかな!?」と泣く。あの能天気キャラのベニが言うからこそ、余計に観ているものの心を打つ。生きる道を見失い途方に暮れるベニを励ましたのは、オサムくんだった。いつも武庫川の河原で絵を描いていたオサムくんのモデルは、漫画家の手塚治虫さんだ。

 戦争は激しさを増し、追い詰められた日本軍は、捨て身の戦法に打って出る以外、道がなくなってしまう。速水中尉も、決して生きて帰ることのできない人間魚雷に乗って出撃していった。軍需工場での作業中、速水中尉戦死の知らせがラジオニュースから流れてくる。あまりのショックから夢遊病者のように工場の外へと出て行くタッチー。突然、空襲警報が鳴り響く。逃げ遅れたタッチーを探すため外に出たリュータン。まさにその時、敵機が現れる。リュータンは咄嗟にタッチーを庇うように前に出た。そして…

 タッチーもリュータンも命に別状はなかった。しかし、リュータンは顔に大怪我を負ってしまった。リュータンは退団を決意し、すみれ寮を出て行くことになる。リュータンとの別れを惜しむ生徒達。責任を感じて蒼白になっているタッチーに、リュータンは「あんたが次のトップやで!」と明るくエールを送る。リュータンは実家に戻る道中で影山先生と再会する。リュータンが空襲の被害にあったことをニュースで知った影山先生が、リュータンを探しに来たのだ。影山先生は有無を言わせぬ勢いでリュータンにプロポーズする。なんか…いいカップルだなぁ(笑)。カカア天下だけど、実はお互いにベタ惚れ、みたいな。

 リュータンの実家の辺りが空襲を受けたというニュースを聞いたタッチー達は、リュータンを心配して探しに来た。しかし、一面の焼け野原で見つけたものは、リュータンのものと思われる防空頭巾ただ一つ。リュータンは死んでしまったのか!?不吉な予感にうち沈む皆の前に、影山先生とリュータンが現れる。太陽のように元気いっぱいのリュータンは健在だった。奇跡の再会を喜ぶ一同。戦争は終わった。宝塚は復活する。もんぺ姿のタカラジェンヌ達が、焼け野原のステージでレビューを繰り広げる。プロローグと同じ振付なので、華やかな衣装を身につけて宝塚大劇場で踊っていた姿と、もんぺ姿で焼け野原で踊る姿が、二重写しのように観えた。バトンはリュータンからタッチーに引き継がれた。宝塚は続いていく。

 芝居の後にフィナーレが付いていた!ナイス!さすが宝塚を題材にしたミュージカル。宝塚ファンの気持ちをよく分かっている。全員、黒の衣装で統一した、大人っぽいクールなダンスショーだった。振付はもちろん、ライティングとかもカッコよかった。星チームの初日ということで、最後に湖月さんの挨拶があった。これからどんどん芝居が深まっていくんだろうなぁ。別パターンも観てみたいけど、ちょっと無理だろうなぁ。全国ツアーもあるけど、やっぱり無理だろうなぁ(笑)。


エリザベート

2010年08月30日 | ミュージカル

2010年8月15日(日)13:30開演 帝国劇場 A席 1階T列40番台

◆ミュージカル『エリザベート』

【瀬奈じゅんさんが東宝『エリザベート』で女優デビュー!】

 そうか。そうだよな。私、どうして今まで思いつかなかったんだろう?(笑)瀬奈さんは宝塚時代に、ルキーニ、エリザベート、トートの主要3役を演じた唯一人の人。宝塚退団後の第1作目に『エリザベート』をもってくるのは、話題性から言っても申し分ない。東宝シシィは初演からずっと一路真輝さんが務めてきたが、前回から涼風真世さんと朝海ひかるさんのWキャストとなった。そして今回は朝海さんと瀬奈さんのWキャスト。よって東宝シシィは瀬奈さんで4人目となる。しかし、宝塚版・東宝版の両方でシシィを演じるのは、歴史上瀬奈さん唯一人。やはり、瀬奈さんと『エリザベート』は深い縁で結ばれているようだ。瀬奈シシィ、観に行こう!

 今回のトートはトリプルキャスト。初演から演じている山口祐一郎さんに加えて、新たに石丸幹二さんと城田優さんの2人がキャスティングされた。初演Wキャストの内野聖陽さん、3人目の武田真治さんと合わせると、トートは5人になった。今回のトート役の中では、私は城田トートに興味津々!(笑)以前、観劇を終えて東京宝塚劇場から外に出ようとした時に、扉付近でとても背の高い男性に追い越されたことがあった。うわっ、すごく背が高い男の人だなーと思って、思わず顔を見上げてしまった。どこかで見たことがある顔だなーとは思ったものの、誰なのかまでは分からなかった。「今通った人、城田優さんじゃない?」最初に気づいたのは友人だった。「城田…優?」すみません、その時の私はまだ城田さんの名前を知りませんでした。ただ、『ROOKIES』の番宣CMか何かで顔を見て記憶していたものと思われます。それ以来、「宝塚を観に来る芸能人」として、城田さんに勝手に親近感を抱いていたのでした(笑)。だから、今回のトート役抜擢は嬉しいニュースでしたね。

 私の東宝エリザ歴は3回。①一路シシィ×山口トート、②涼風シシィ×武田トート、③朝海シシィ×山口トート。一路さんと内野さんが結婚してしまった今となっては、一路シシィ×内野トートバージョンはもう観られないのでしょうか?いつかスペシャル企画で実現してくれないかなぁ。そして今回は、瀬奈シシィ×城田トートが第1希望(笑)だったのだが、こちらの都合の良い日にその組み合わせはなかった。残念無念。しかし瀬奈シシィは絶対に外せない。とすると組み合わせは…瀬奈シシィ×山口トートだ!やっぱり山祐(笑)。

 暑い!暑い!暑い!今年の夏は暑すぎるーっ!朝、一歩外へ出た瞬間から、「むんっ」とした熱気が襲ってきた。照りつける真夏の太陽。アスファルトからの強烈な照り返し。劇場に着く頃には既に汗だく。窓口でチケットを受け取り、開場を待っている間も、汗が滝のように流れて、ヤバイことになっていた(笑)。やがて係の方が扉を開けてくれた。す、涼しい!中に入った瞬間、生き返った(笑)。とりあえず公演プログラムをゲットしてから、ロビーのソファーで一休み。ふぅー。汗が引いたところで、劇場内散策。今回は開演まで十分すぎるほど時間があったので、じっくりと売店を見て歩いた(笑)。ちょっと高いなぁとは思ったけど、おみやげにシシィチョコレートとシシィクッキーを買ってみた。

【主なキャスト】

  • エリザベート…瀬奈じゅん
  • トート…山口祐一郎
  • フランツ・ヨーゼフ…石川禅
  • ルイジ・ルキーニ…高嶋政宏
  • マックス…村井国夫
  • ゾフィー…寿ひずる
  • ルドルフ…田代万里生
  • ルドヴィカ…阿知波悟美
  • マダム・ヴォルフ…伊藤弘美
  • エルマー…岸祐二
  • グリュンネ伯爵…治田敦
  • シュヴァルツェンベルク侯爵…阿部裕
  • ツェップス…広瀬彰勇
  • リヒテンシュタイン伯爵夫人…小笠原みち子
  • ヴィンデッシュ/家庭教師…河合篤子
  • ヘレネ/娼婦/侍女…南海まり
  • 少年ルドルフ…坂口湧久

【やっぱり…宝塚版のほうが好き(笑)】

 分かっていても観に行ってしまう、『エリザベート』ファンの悲しい性(笑)。しかし東宝版のほうが好きなところもある。それは子役が演じる少年ルドルフ。「♪ママ、何処なの?」を一生懸命歌っている姿を観ていると、目がうるうるしちゃう(笑)。坂口くん、いい芝居してたなぁ。トート閣下も少年ルドルフが可愛くて仕方ないんじゃないだろうか(笑)。

 瀬奈シシィについて。宝塚月組版はCSで見たので、生の瀬奈シシィを観るのは今回が初。デカイ山祐トートと並ぶと、瀬奈さんも華奢に見えた。「♪私だけに」もとても良かった。無邪気な少女シシィも可愛かったのだが、私は精神病院訪問のあたりからの苦悩する大人シシィのほうが好きだ。目には見えない何かから逃れるように旅を続ける瀬奈シシィ。瀬奈シシィは一見強そうなんだけど、ちょんとつついたらガラガラと音を立てて崩れてしまいそうな精神的な脆さを抱えているように観えた。わざわざ会いに来た石川フランツには可哀想だが、「♪夜のボート」のあたりでは、瀬奈シシィの目にはフランツの姿は映っていなかったと思う。瀬奈シシィの精神の半分は、もう黄泉の世界を漂っていたのではないだろうか。

 山祐トートについて。プログラムのトート閣下扮装全身写真が「山祐トート」の全てを物語っている(笑)。そう、あのポーズなんですよ。あれが山祐トートの基本姿勢なんです。あの恍惚とした表情は、エリザベートの魂を黄泉の世界に迎え入れることに成功した時のものと推察いたします。「♪最後のダンス」では大音量ド迫力ボイスを思う存分披露してくださいましたが、わざと囁くように弱々しく歌うところは聴いていて非常にこそばゆいのであります(笑)。初演トートとして、既に確立されたスタイルが存在するのだと思いますが、激しく踊る山祐トートを観ることが私の密かな夢です(笑)。

 ルドルフ役も、田代万里生さん、伊礼彼方さん、浦井健治さんのトリプルキャスト。田代さんと伊礼さんは今回がエリザ初参加。ルドルフは、シシィやトートとは異なって、約1ヶ月毎の役替わりシステム。8月のルドルフは田代さん。田代さんの舞台を観るのは『マルグリット』以来だ。ルドルフは第2幕にならないと出てこないが、一旦出てくると死ぬまで出ずっぱり。「♪闇が広がる」「♪独立運動」「♪僕はママの鏡だから」「マイヤーリンク」。大熱演だった。

 阿知波悟美さんが初演ルドヴィカだったとは知らなかったなぁ~。今回、私は阿知波ルドヴィカを初めて観た。好きだ!(笑)声の感じとか、台詞の間とか、娘の自慢の仕方とかが、とてもイイ!貴族なんだろうけど、とても庶民的な感じがした。ルドヴィカといえば、娘のヘレネ。ヘレネ役は前回に続いて南海まりさん。やっぱりカワイイ!侍女役と娼婦役もオペラなしでもすぐに分かった。しかし帰ってきてから南海さんのブログを見て、ヘレネ・侍女・娼婦の他に、実は男役でも登場していたということを知った。あぁ、そこまではチェックできなかったよぉ~。

 ルキーニ役は、初演からずーっと高嶋政宏さん唯一人。『エリザベート』は今回の公演中に800回、900回を迎えるとのことなので、高嶋さんはそれと同じ回数、ルキーニ役を演じてきたことになるわけだ。すごいなぁ~。小池修一郎氏は高嶋さんに絶大な信頼を寄せているようなので、今後も高嶋さんの一人ルキーニが続きそうな気がする。このまま記録を積み重ねていってほしいという思いと、他の人が演じるルキーニも観てみたいという思いと、両方ある。一体どうなるんでしょうかねぇ。


ダンス・オブ・ヴァンパイア

2009年09月13日 | ミュージカル

2009年8月7日(金)13:00開演 帝国劇場 A席 1階S列10番台

◆ミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』(音楽・追補:ジム・スタインマン/脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ/演出:山田和也)

  • クロロック伯爵(ヴァンパイア)…山口祐一郎
  • サラ(宿屋の娘)…知念里奈
  • アルフレート(アブロンシウス教授の助手)…泉見洋平
  • シャガール(宿屋の亭主)…安崎求
  • レベッカ(シャガールの女房)…阿知波悟美
  • マグダ(宿屋の女中)…シルビア・グラブ
  • ヘルベルト(クロロック伯爵の息子)…吉野圭吾
  • クコール(せむし男。クロロック伯爵に仕えている)…駒田一
  • アブロンシウス教授(ヴァンパイアを研究している)…石川禅
  • ヴァンパイア・ダンサー…森山開次

【ACT1】 「♪オーヴァーチュア」「♪プロローグ」「♪ニンニク」「♪きれいな娘を持ったなら」「♪初めてだから」「♪神は死んだ」「♪すべて順調~人類のために」「♪あんたは素敵」「♪お前を招待しよう」「♪外は自由」「♪ヴシャ ブシャ」「♪死んじゃうなんて」「♪荒野1」「♪ACT1フィナーレ」

【ACT2】 「♪愛のデュエット」「♪夜を感じろ」「♪今日は完璧」「♪霊廟」「♪本だ!」「♪恋をしているのなら」「♪ワルツ」「♪永遠」「♪抑えがたい欲望」「♪舞踏の間」「♪メヌエット」「♪荒野2」「♪外は自由(リプライズ)」「♪フィナーレ」

 私は思い違いをしていた。私は『ダンス・オブ・ヴァンパイア』はシリアスなミュージカルだと思い込んでいたのだ。でも…なんか違う…。その思いはミュージカルが進むにしたがって、どんどんどんどん私の心の中で膨れ上がっていった。しかし、途中でそのモヤモヤはふっきることにした。これはヴァンパイアの名を借りたコメディーに違いない。楽な気持ちで観て、ただ楽しめばいいんだ!そんなふうに観劇スタンスを変えたら、割と楽しめた(笑)。観劇後、プログラムの中に答えを見つけた。阿知波さんは「レベッカより、皆様へ一言」の欄にこう書いている。「おバカな物語を、大汗流して真剣に演る私達が見所でしょう。」やっぱり、そうか!

 山祐節炸裂!あの声、あの声量、あのクレッシェンドは、いつ聴いても感動的(笑)。クロロック伯爵に激しい動きは無し。両手を広げてゆっくり動いているイメージが強い。天空にクロロック伯爵の大羽根がぶわっと広がるシーンは見世物的に単純に面白かった。

 サラは風呂好きな美しい娘(笑)。父親は、美しい娘に変な虫がつかないように、常に見張っているらしい。サラはそんな親の干渉から逃れて、自由に生きたいと望んでいる。そこへアルフレートがやってきて、二人は恋に落ちる…と。知念さんの舞台を観たのは今回が初。何しろお風呂好きなので、入浴シーンが多く、ちょっとドキドキ(笑)。クロロック城での、赤いブーツを履いたダンスシーンが良かった!知念さんって、ダンスが上手いんですね!

 アルフレートは気が弱い青年。冬の森で冷凍人間になってしまったアブロンシウス教授を背負って、シャガールの宿屋に辿り着く。そこで入浴中のサラと出逢い、恋に落ちる…と。泉見さんの舞台を観るのも今回が初。『レ・ミゼラブル』のマリウス役や、『ミス・サイゴン』のトゥイ役もやっているんですね~。泉見アルフレートは、見るからに気が弱そうだった(笑)。クロロック城でヴァンパイアに止めを刺せないところとか、見ていて本当にイライラした(笑)。

 禅さんは本当に役者ですねぇ~。役に合わせて、毎回キャラがガラッと変わる。ファンです(笑)。アブロンシウス教授はヴァンパイアの研究をしていて、「ガーリック、ガーリック~♪」と歌う村人達の姿を見て、ヴァンパイアがいることを確信する。クロロック伯爵に操られて、クロロック城に行ってしまったと思われるサラを救出するため、アルフレートと教授はクロロック城に乗り込む。教授は本が大好き。サラ救出もそっちのけで、図書館探検におおはしゃぎ(笑)。教授が好きな言葉ベスト5は「真実」「論理」「動機」「根拠」「証拠」!

 ヘルベルトは風呂好きなヴァンパイア(笑)。父親であるクロロック伯爵は女の子(サラ)がお好きなようだが、息子のヘルベルトは明らかに男の子(アルフレート)がお好きらしい(笑)。アルフレートは、サラを探して、間違えてヘルベルトのお風呂場に迷い込んでしまう。ヘルベルトの不必要なまでのセクシー衣装に衝撃を受ける(笑)。そして、その透け透け衣装のまま、バレエやら側転やらのダンスを繰り広げる。目のやり場に困るんですけどー!(笑)。吉野さんの新境地を見た思いがした。

 南海まりさんが、女性アンサンブルとして参加し、村人・先祖・死者を演じていた。南海さんが出演するということで、星組ファンの私としては、とても楽しみにしていたのだが、舞台上で南海さんを探すのは至難の業だった(苦笑)。最後の最後で、下手側にいるすらっとした人が南海さんだと判別できた。あ~、見つけられて良かった~。

 フィナーレは客席参加型。基本スタンディング。ヴァンパイア初観劇の私は、いまひとつ事情が飲み込めなかったものの、雰囲気に合わせてとりあえずスタンディングで拍手をしてみた。しかし、どうやらフィナーレで行うお決まりの手振りがあるらしい。明らかにリピーターと思われる隣の席のお姉さんは、フィナーレになった途端に迷わず立ち上がり、フィナーレソングを口ずさみながら、その手振りをしていた。さすがだ!舞台上では、吉野ヘルベルトが客席に同じ手振りをするように強要(笑)していたので、私も山祐クロロックの真似をして、手振りに参加してみた(笑)。こういう祭りには参加しないとね。

 上演中、目の前の通路をたくさんのヴァンパイア達が通り過ぎた。ヴァンパイアのマントが私の足に触れるほどの至近距離だった。通路を駆け抜けるアブロンシウス教授と両手でハイタッチができた!A席最前列は、とてもオイシイ席だった。


COCO

2009年08月11日 | ミュージカル

2009年7月30日(木)18:30 岩手県民会館 SS席 2階中側1列20番台

◆Broadway Musical 『COCO』(脚本・作詞:アラン・ジェイ・ラーナー/作曲:アンドレ・プレヴィン/演出・翻訳・訳詞:G2)

  • ココ・シャネル(70歳。15年の沈黙を破りカムバックを決意)…鳳蘭
  • ノエル(モデル志望。ココの自立した生き方に心酔していく)…湖月わたる
  • セバスチャン・ベアール(新進気鋭のデザイナー。アシスタント)…岡幸二郎
  • ジョルジュ(若い新聞記者。ノエルの恋人)…大澄賢也
  • ピグノル(ココの長年の仕事仲間。アシスタント)…今陽子
  • ルイス・グレフ(ココの長年の仕事仲間。代理人)…鈴木綜馬

【Act1】 「♪それが君」「♪世界をこの手に」「♪夜に揺れて」「♪パリの女」「♪カンボン通り」「♪人生を着飾ろう」「♪新しいドレス」「♪愛こそすべて」「♪ガブリエル」「♪ココ」「♪前夜祭」

【Act2】 「♪大失敗」「♪失いの教訓」「♪ココ(リプライズ)」「♪五番街から買いつけに」「♪いつまでもマドモアゼル」

 観に行くか行かないかずーっと迷っていて、決心したときには前売券の発売がすでに終了していたという(笑)。そういうわけで、初の当日券観劇。結論から言うと、すっごく面白かったー!観に行ってよかったー!当日でもSS席が残っているということから分かるように、残念ながら満員御礼ではなかった。岩手の人、もっと観に行くべきだったよー。面白い舞台だったのにー。もったいないー。

 鳳さんは宝塚イベントにOGとしてよく出演なさるので、CSではお馴染みの存在。しかし、鳳さんの舞台を生で観るのは今回が初。やっぱり存在感がありますねー。シャネルスーツをビシッと着こなして、自分の信じた生き方を貫くココを演じる鳳さんは本当にカッコよかった。パンチのある歌声が最高。

 宝塚退団後の湖月さんの舞台を観るのも初。すーっごく楽しみにしていた。メゾン・シャネルのモデルオーディション会場に現れた田舎娘ノエル。湖月さんは、ノエルをとってもキュートに演じていた。好感度大。そしてなにより、高い声がきれいに出ていて驚いた。すごいなー。とてもラダメスを演じていた人とは思えない(笑)。

 セバスチャン!この物語の登場人物の中で最もインパクト大なキャラです(笑)。アシンメトリーなヘンな髪型といい、ド派手な服装といい、オカマっぽい話し方といい、もう岡さんどうしちゃったの!?ってな感じで、大好きです(笑)。一緒に観劇した友人も大ウケ。観劇後の食事中もセバスチャン話で大いに盛り上がりました。

 大澄さん演じるジョルジュは、「恋人(女房)には外で仕事をせず、家庭の中にいてもらいたい」と考えている保守的な男。ジョルジュはノエルの自立の足を引っぱっているようにしか見えないので共感し難いが、決して悪い男ではない。ジョルジュの台詞の中にも、なるほどと思わされる台詞がたくさんあった。

 ピグノルとグレフは、ココの良い所も悪い所も全て知り尽くした、長年の仕事仲間。だからこそココのカムバックに反対するのだが、私は最初、なぜそんなに反対するのだろう?と思っていた。だって、あの「シャネル」でしょ?しかし、観劇後にプログラムを読んで、ココがカムバックを決意したときの年齢が70歳だったと知って、ものすごく驚いた。鳳さんは70歳のココを演じていたのか!それなら周囲の大反対も納得できる。

 この舞台を観て、私はココ・シャネルという人について全く知らなかったということを思い知らされた。女性のファッションにパンツスタイルを初めて取り入れたのも、ボブヘアーを初めてしたのも、ガラスのジュエリーを初めて作ったのも、全てココだったとは!そして70歳でのカムバック、大失敗の後の大逆転。ココの生き方がすごくカッコよく思えてきた。ココは働く女性の味方。私もいつかシャネルスーツを着れるかなぁ。


マルグリット

2009年04月19日 | ミュージカル

2009年3月29日(日)12:00開演 日生劇場 A席 2階J列10番台

◆『マルグリット』Marguerite(脚本:アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルク、ジョナサン・ケント/作曲:ミシェル・ルグラン/演出:ジョナサン・ケント)

 春野寿美礼さんがミュージカル『マルグリット』のタイトルロールを演じるらしい。宝塚退団後、初の舞台作品。しかもミュージカル。これはぜひ観に行きたいものだ。星組公演と抱き合わせで観に行くことはできないだろうか。3月29日がいいかなぁ。…ん?千秋楽!?あー、これは無理無理。当たるわけがない。と思いつつ、一応先行抽選に申し込んでみる。後日。…え?当選!?うっそー!千秋楽、当たっちゃったよー!びっくりー!しかし、物事はいつもそううまくいくとはかぎらない。3月28日の星組公演のチケットが取れなかったのだ。えー、どうしようー、予定が狂ったー。ええい、こうなったら『マルグリット』観劇のみの日帰りツアー決行だー!

【Act1】

♪さあ見てごらん ♪世界がどうなろうと ♪ジャズ・タイム ♪チャイナ・ドール ♪チャイナ・ドール(リプライズ) ♪鏡よ ♪あの頃は ♪世界は今始まる ♪待ちわびて ♪酔いしれて ♪デイ・バイ・デイ1 ♪今ここで ♪どうか無事で

 席に座ってみると、2階最後列だけど意外と舞台は近く感じられた。ただし、足元が異常に狭いのが難点。もう少し広くてもいいと思うんだけどなぁ。「あ、春野さんが瞬きした!」 え?友人の声に私は驚いた。開演前、舞台の幕には春野マルグリットの顔が大写しになっていた。それは知っていたのだが、その後オペラグラスの調整などしていて、「瞬き」には全然気づいていなかった。春野マルグリットの顔を見つめることしばし。「…あ!本当に瞬きした!」(笑)

 オープニング。薄暗いステージの中央を、アルマン(田代万里生)らしき人影が、ぐったりとした人間を抱きかかえて、ゆっくりと歩いてくる。逆光のためシルエットしか見えない。その抱きかかえられている人影があまりにも細かったので、最初は人形なのではないかと思った。その人形のようなものがマルグリット(春野寿美礼)であると認識するまでに、しばし時間を要した。布切れのような白い服(下着?)を身に纏っただけのマルグリットは、人々に罵られ、殴られ、蹴られ、引きずられ、散々にいたぶられる。

 一転して、華やかなパーティー会場。ゴージャスなエンジ色のドレスに早替わりしたマルグリットが華麗に登場。今夜はマルグリットの40歳のバースデーパーティーなのだ。舞台は第二次世界大戦下のパリ。街はナチスの占領下に置かれていた。そんな状況下にもかかわらず、かつてコンサートホールを沸かせた歌姫マルグリットは、今はドイツ将校オットー(寺脇康文)の愛人として、贅沢三昧の暮らしを送っている。かつてのマネージャー・ジョルジュ(横内正)の手配で、パーティーにはスウィング・バンドが雇われていた。そこで運命の出会いが。バンドでピアノを弾くアルマンは、かつてコンサートで「♪チャイナ・ドール」を歌うマルグリットの姿を見て、以来彼女に密かに想いを寄せていたのだ。その時、突然の空襲が。パーティー会場の窓ガラスも爆風で吹っ飛んでしまった。アルマンはマルグリットに告白する。初めは相手にしなかったマルグリットも、アルマンの真剣な眼差しと若い情熱に、次第に押し流されていく。爆音が響く中、二人は激しい恋に落ちていく。

 パリでは次第にナチスによるユダヤ人への迫害が強まっていた。バンドで歌手を務めるアネット(飯野めぐみ)はアルマンの姉であり、ベース奏者ルシアン(tekkan)とは恋人同士。ルシアンはユダヤ人であることを隠して生活し、ナチスに抵抗するレジスタンスとして活動していた。しかし、バンドのドラマー・ピエロ(山崎裕太)の不注意から身分がばれ、ナチスに追われる身となってしまう。ルシアンはアネットと一緒にパリを脱出しようとするが、アネットは弟アルマンの身を心配し、後から追いかけることを約束して一人パリに残る。

【Act2】

♪デイ・バイ・デイ2 ♪愚かな夢 ♪どうか無事で(リプライズ) ♪女なんて ♪手紙 ♪愛しても何が残る? ♪パリ ♪デイ・バイデイ3 ♪なぜこんなことに ♪デイ・バイ・デイ4 ♪さあ見てごらん(リプライズ) ♪フィナーレ

 マルグリットとアルマンは、オットーに隠れてアルマンの部屋で密会を重ねていた。しかし、アルマンは次にいつ会えるかも分からずに、ただ部屋で待ち続けるだけの生活に我慢ができなくなっていた。二人でどこかに逃げよう。マルグリットには、今の生活を変えることは不可能に思えた。しかし、アルマンと出会って再び知った恋する気持ち。恋なんて、もうこれが最後かもしれない…。マルグリットはアルマンとの逃避行を決意する。

 オットーは、マルグリットの監視を部下に命じた。部下達はアルマンの部屋の前で、アルマンを心配して訪ねてきたアネットと出くわす。レジスタンスとして活動していたアネットは、その時、運悪くもナチス関係の重要文書を運んでいる最中だったため、オットーの部下達に捕まってしまう。一方、アルマンは不在だったが、部屋にはマルグリットからアルマンに宛てたラブレターが残されていた…。

 オットーが帰ってくる前に荷物を持って出よう。マルグリットは急いで邸に戻った。しかし、そこにはいないはずのオットーがいた。オットーは、マルグリットがアルマン宛に書いたラブレターを手に、マルグリットを問い詰めた。なんとかその場を取り繕おうとするマルグリット。しかし、オットーは、すでにひどい拷問を受けた様子のアネットを連れてきて、言うことをきかなければアネットをさらに拷問すると言って、マルグリットを脅した。マルグリットは観念した。短い夢だった…。新しい人生を生きるなんて、所詮無理な話だったんだわ…。オットーはマルグリットにアルマン宛の別れの手紙を無理やり書かせるのだった。

 マルグリットから一方的に別れを告げられ、自暴自棄の生活を送るアルマン。しかし、自分がマルグリットと付き合っていたことが原因で姉がナチスに捕らえられてしまったことを、アネットを助け出すために再びパリに戻ってきたルシアンから聞かされたアルマンは、ルシアンやピエロと共にレジスタンス活動に没頭していくのだった。

 オットーはマルグリットを愛していたが、マルグリットはオットーを愛してはいなかった。それが悲劇の原因。マルグリットを囲ってはいても、一番欲しいもの(マルグリットの心)は手に入らない。愛しているからこそ憎い。けれども手放したくない。オットーの心の中では愛情と憎悪が渦巻き、オットー自身を苦しめていた。ある日、オットーとマルグリットは連れ立ってパーティーへと出かけた。会場のバンドメンバーの中にはアルマンがいた。1発の銃声。アルマンが放った銃弾がオットーに命中した。

 やがてドイツは降伏し、パリは開放された。戦争は終わったのだ。オットーが死に、マルグリットは自由になった。しかし、自由になると同時に無一文になってしまった。生きていくためには働かなければならない。マルグリットは、かつてのマネージャー・ジョルジュを頼って事務所を訪ねた。しかし、ジョルジュは掌を返したような冷たい態度を示すだけだった。

 オープニングと同じセット。街では、戦時中ドイツにすり寄って利益を得ていた「対独協力者」を糾弾する声が上がり始める。マルグリットのような娼婦にこそ制裁を加えなければならない。マルグリットは、人々に罵られ、殴られ、蹴られ、引きずられ、ボロボロの人形のようになってしまう。アルマンは、オットー暗殺計画が成功したのは、実はマルグリットの協力があったからだということを知り衝撃を受ける。さらにマルグリットがアルマンへ別れの手紙を書いたのは、実はアネットを助けるためだったということも知る。マルグリットの本心を知ったアルマンはマルグリットのもとに駆けつけた。しかし、リンチを受けボロボロになったマルグリットは、アルマンの腕の中で静かに息絶えた。慟哭するアルマン。アルマンはマルグリットを抱きかかえ、静かに去っていった…。

【カーテンコール】

 「千秋楽」というものを観劇するのは初めてだったので、観劇前から終演後がとーっても楽しみだった(笑)。何度も何度も繰り返されるカーテンコール。もちろんスタンディングオベーションだ。そして何度目かのカーテンコールの後、出演者からのご挨拶があった。どうやら司会進行はいつも寺脇さんの担当らしい(笑)。春野さんは、宝塚退団後の初ミュージカル作品を無事終えて感無量、という感じだった。田代さんは、意外とよく話をする人なんだなぁ、と思った。寺脇さんと山崎さんは漫才コンビのようだった(笑)。その後も何度も何度も繰り返されるカーテンコールに、寿美礼様(笑)は話のネタが尽きてしまったようで、最後はもうグダグダだったけれど、それもご愛嬌。最後は寺脇さんの「同じメンバーで再演したいです!」で締め。アフタートークショー(笑)非常に楽しかったです!キャスト&スタッフのみなさん、お疲れ様でした!

◇おまけ

  • マルグリット(春野寿美礼)…さすが春野寿美礼。やっぱり歌が上手かった!
  • アルマン(田代万里生)…さすがオペラ歌手。やっぱり歌が上手かった!
  • オットー(寺脇康文)…芝居ではクールな男、アフタートークショーでは…(笑)。
  • ピエロ(山崎裕太)…シリアスな芝居の中で、ちょっとした笑いを提供。
  • ルシアン(tekkan)…「tekkan」という芸名が気になって仕方ない。
  • アネット(飯野めぐみ)…劇団四季出身なんですねー。好演!
  • ジョルジュ(横内正)…最高に憎たらしい男だと思ったら、「格さん」じゃないですか!

エリザベート

2009年02月05日 | ミュージカル

①2008年11月30日(日)12:00開演 帝国劇場 A席 1階V列30番台

②2008年11月30日(日)17:00開演 帝国劇場 S席 2階B列40番台

◆ミュージカル『エリザベート』

 横浜で迎えた朝。本当に楽しかったよねぇ~。もう1回観たいよねぇ~。朝食の間も、話題は当然、昨夜の星組公演について(笑)。隣の席に座っていた女性がツアーバックを持っていることに、友人が気づいた。どうやら隣のグループもお仲間だったらしい(笑)。

 今回の遠征最大の目的を果たし、すでに「やり遂げた感」漂う私達(笑)。だがしかし、2日目の予定も超ハード。『エリザベート』のWを入れてしまったのだ!最初の予定では昼の部(涼風エリザ&武田トート)のみ観劇する予定だったのだが、観劇日が近づくにつれて、やっぱり朝海エリザも観たい!やっぱり山口トートも観たい!ということになり、直前に夜の部(朝海エリザ&山口トート)のチケットも手配してしまったのだ。2日で4本!しかも後の2本はエリザのW!勢いで手配してしまったものの、私、本当に大丈夫なのだろうか…。

 結果は…大丈夫じゃなかった(苦笑)。『エリザベート』という作品自体は大好きなのだが、やはり「重い」作品なので、いくらWキャストとはいえ、1日2回は私にはちょっとキツかった…。しかし、2パターン観劇できたのは大満足!大正解!残りの2パターンも観てみたいけど、さすがにそれは無理なので、またの機会の楽しみに。

【エリザベート:涼風真世】

 少女時代も演じちゃえるんですねぇ~。側転にはビックリ。涼風エリザは意外と激しかった。皇后教育の場面で、あれもダメこれもダメと言われた後に、取り囲む女官達を振り払うところなどはマジギレっぽかった。武田トートとは身長差があまりないので、見ため的にも気迫・オーラ的にも対等に感じた。(いや、むしろ勝ってる?笑)。涼風エリザは美しい。しかし、ちょっとした仕草や歌い方の中に、なぜか「男っぽさ」のようなものも感じてしまった。シシィの心の奥底に父親(男性)の自由な生き方に対する強い憧れがあったからかなぁ…などと深読み。

【トート:武田真治】

 武田トートは、歌い方やシャウトの仕方がロッカー(ロック歌手)だと思った。実はウィーン版トート(CDで聴いた)の雰囲気にかなり近いのではないだろうか?武田トートは、動きが機敏で、小回りが利く。死神たちを統べる「黄泉の帝王」というよりは、「死神の一人」または「死神界のアウトサイダー的存在(なんだそりゃ。笑)」のように感じた。涼風エリザが相手役だったからかもしれないが、高みからエリザベートを見下ろし翻弄するというよりは、不思議な生き物に自ら近づき、力づくで振り向かせようとしているように見えた。

【エリザベート:朝海ひかる】

 とってもキュートだった。朝海シシィも見事に側転をキメめたので、「側転ができないとシシィ役はできないんだ!」とヘンなところに興味関心がいってしまった(苦笑)。バートイシュル行きの場面では、朝海シシィと高嶋ルキーニが、かなり楽しそうに遊んでいた。宝塚時代の太い男役声に慣れていたので、高音で歌う朝海さんが新鮮だった。山祐トートと並ぶと身長差がかなりある。山祐は背が高いんですねぇ。山祐トートと朝海シシィの対決は、一見すると朝海エリザが自分の力で自分の道を切り開いているように見えるのだが、実のところは冥界の山祐トートが影で全てを操っている…と、そんなふうに見えた。それにしても、朝海さんは宝塚退団後も休むことなく舞台で大活躍ですねぇ。

【トート:山口祐一郎】

 さすが山祐!感動いたしました!(笑)声量が違う。声の厚みが違う。あの劇場全体を揺さぶるような、ど迫力ボイスは一体どこから出てくるのでしょう?あのクレッシェンドでフォルテッシモな感じがたまりません。思わず幕間に売店で2004年版ハイライトCDを買ってしまった(笑)。山祐トートは泰然自若として、まさに「黄泉の帝王」。ベテランの風格さえ漂っておりました。掴んだ手を朝海エリザが振りほどいても、全く動じない。フッ、いずれおまえは私のものになるのだ…。そんな声が聞こえてくるような気がした(笑)。良いとか悪いとか、そういうことではなく、武田トートとは全く別物でした。そう、違うといえば、最後通告の場面での登場の仕方が違った。武田トートは机の上に妖しく寝そべるスタイルだったのに対して、山祐トートはごく普通に椅子に座っているスタイル。普通なのが逆に怖くてイイのかも(笑)。そして、怒りの感情は羽根ペンを床に投げつけることで表す。その羽根ペンは見事に床に突き刺さっていた。

【アンサンブル:南海まり】

 メインキャストと同じくらい大注目だったのが、南海まりさん。いきなりヘレネで登場したときは、驚くやら嬉しいやらで大興奮(笑)。ヘレネはアンサンブルの役の中ではヒロインのようなものですよね?やったね、南海さん!ヘレネの髪型が本当に変な髪形で、髪飾りのお花をおでこの辺りにつけたりしていて、本当に可笑しかった。その後も私のオペラはアンサンブルの人達の中から南海さんを探すので大忙し(笑)。エステの場面では女官役で登場。上手側のセンター寄り。タオルを手に持って女官ダンス。マダム・ヴォルフのコレクションの場面では娼婦役で登場。2階の中央窓に現れたかと思うと、棒を伝ってスルスルーっと1階に降りてきて、中央奥の椅子でセクシーダンス。ボリュームのある長い髪を両耳の上辺りで二つに結んだヘアスタイルが印象的。宝塚退団後、初の女優業、大成功ですね!

【その他の主なキャスト】(昼の部、夜の部とも同じ。)

 役替わりメンバー:フランツ・ヨーゼフ(鈴木綜馬)、ルドルフ(浦井健治)、ゾフィー(寿ひずる)、少年ルドルフ(田川颯眞)。固定メンバー:リヒテンシュタイン(小笠原みち子)、ヴィンディッシュ(河合篤子)、ルドヴィカ(春風ひとみ)、マダム・ヴォルフ(伊東弘美)、マックス(村井国夫)、ルイジ・ルキーニ(高嶋政宏)。

【私の記憶が如何に曖昧なものであったかに関する件】

 友人:「パラプリもそうだったけど、最近、映像を使った舞台多いよねー。」 私:「そうだねー。でも、私が前回(2004年)東宝エリザを観たときは、今回みたいな映像の演出はなかったよー。」 観劇後、プログラムの中に次のような文章を発見。「この公演(2004年)から、演出、美術、振付が一新。トートダンサーを中心とするダンスを島崎徹が新たに振付け、映像(奥秀太郎)も使用されることに。」 ……………。私は一体何を観ていたんだあぁぁぁーーーーー!

【最後に一つ】

 エリザベートといえば、プロローグが見所の一つ。夜の部は2階席から観劇したため、棺の中から死者達が出てくるシーンがよく見えた。そのとき初めて知った事実。ルドルフの棺の中には、少年ルドルフと成年ルドルフの二人のルドルフが入っている!確かに一人の人間だしね…当然と言えば当然か(笑)。


ミス・サイゴン

2008年10月26日 | ミュージカル

2008年8月8日(金)13:30開演 帝国劇場 A席 1階V列30番台

 『モーツァルト!』以来、1年8ヶ月振りの帝国劇場。今日の目的は『ミス・サイゴン』観劇。これまた一度は観ておきたかった作品。今は亡き本田美奈子さんのミュージカル初挑戦の役が『ミス・サイゴン』のキム役だったそうだ。観劇前に公式サイトであらすじをチェックした。私としては軽くあらすじをチェックするだけのつもりだったのだが、非常に詳細に書かれていて全然「あらすじ」ではなかった(笑)。でも、そのおかげでストーリーは完璧に把握。あとは音楽が入れば完成だ。そう、それこそがミュージカル!どんな曲なんだろうなー、楽しみだなー。それにしても…なんて悲しい話なんだ。絶対に泣く。ハンカチ必携。

◆ミュージカル『ミス・サイゴン』

 スタッフ

  • プロデューサー:キャメロン・マッキントッシュ(「現代において最も成功を収めた、影響力のある大物プロデューサー」)
  • オリジナル脚本・作詞:アラン・ブーブリル(『レ・ミゼラブル』の作詞)
  • 作曲:クロード=ミッシェル・シェーンブルク(『レ・ミゼラブル』の作曲)
  • 作詞:リチャード・モルトビー・ジュニア(作詞作曲家コンビであるブーブリル&シェーンブルクと共に『ミス・サイゴン』の作詞を手がけた)
  • 演出:ニコラス・ハイトナー(英国ナショナル・シアターの芸術監督)
  • 日本版演出:フレッド・ハンソン(2004年『ミス・サイゴン』東京公演の演出を務め、ニコラス・ハイトナーによる演出を再現)
  • 翻訳:信子アルベリー(ニューヨーク大学舞台芸術科卒業後に東宝演劇部のニューヨーク駐在員となり、東宝ミュージカル上演に関係)
  • 訳詞:岩谷時子(宝塚歌劇団出版部に勤務し、「歌劇」「宝塚グラフ」の編集に携わる。東宝文芸部に転じてからは、「愛の讃歌」等のシャンソンの訳詞も手がけた。加山雄三のヒット曲『君といつまでも』等の作詞、『王様と私』等のミュージカルの訳詞も手がけた)

 キャスト

  • エンジニア:橋本さとし(大阪府出身。2004年からエンジニア役)
  • キム:ソニン(高知県出身。『ミス・サイゴン』初参加!)
  • クリス:井上芳雄(福岡県出身。2004年からクリス役)
  • ジョン:岡幸二郎(福岡県出身。2004年からジョン役)
  • エレン:鈴木ほのか(愛知県出身。1992年初演のエレン役。再登板!)
  • トゥイ:石井一彰(東京都出身。『ミス・サイゴン』初参加!)
  • ジジ:菅谷真理恵(東京都出身。『ミス・サイゴン』初参加!)
  • タム:(たぶん)寺井大治(茨城県出身。『ミス・サイゴン』初参加!)

【ACT1】

《1975年4月 サイゴン》

 GIに抱かれて/逃げよう今を/遠くの世界/遥かな人生/映画は夢~♪ 厭戦と倦怠に満ちた陥落直前のサイゴン。通称エンジニアが、アメリカのGIたちをキャバレーに呼び込んでいる。男たちはキャバレーの女たち相手に「ミス・サイゴン」選びの乱痴気騒ぎ。一方、女たちはこの生き地獄のようなサイゴンから自分を連れ出してくれるGIを捕まえようと必死に媚を売る。そのキャバレーにやって来たキムは、真っ白なアオザイが眩しい17歳。爆撃で故郷の村は焼かれ、両親は惨殺された。生き抜くためには身を売るしかない。悲壮な決意でエンジニアの店に出たキムは、見よう見まねで踊りを披露し、今夜の「ミス・サイゴン」に選ばれた。キムはエンジニアに若きGIクリスを引き合わされる。私は最初、題名である『ミス・サイゴン』の意味を、「サイゴンの未婚の女性」という意味だと思っていたのだが、「ミスコン」の「ミス」が正解だったんですね?でも、両方の意味が掛けられていると解してもいいような気がする。

 国の為に戦ったが/帰国したら白い目で見られた/戻ってきた再びサイゴン~♪ クリスは一度は本国アメリカに帰還したものの、激しい反戦運動から逃れるようにサイゴンに舞い戻ってきたのだ。今は大使館のドライバーという立場。しかし、戦争に対する疑問と虚無感は拭い去れない。キムは今夜身を売る覚悟を決めていた。エンジニアに引き合わされた男クリスは、他のGIたちとはどこか違っていた。女なんかいらない。余計なおせっかいはやめてくれ。クリスは最初、キムを拒絶した。しかしクリスは、他の客に絡まれているキムを見かねて、思わず割って入ってしまう。その時キムは、クリスに何かを感じたのかもしれない。私を抱いて。キムは最初の客にクリスを選んだ。

 主よ/どうして今さらここで俺にくれたのだ/どうして今夜を~♪ 主よ/どうして心が燃える/初めて娼婦と過ごした訳じゃない~♪ 一夜を共にしたキムとクリスはお互いの心に救いを見出し、急速に惹かれあっていく。極限状態のサイゴンで、真実の愛に巡り会った二人。一緒に暮らそう。二人はクリスの家で、キャバレーの女たちが見守る中、かりそめの結婚式を挙げた。そこに突然、男が乱入。その男の名はトゥイ。キムの許婚だった男だ。トゥイはキムを探してここにたどり着いたらしい。トゥイは、キムが自分のことを待っているものと頭から信じて疑っていない様子。一方のキムは、ベトコンに入っていなくなってしまったトゥイは、もはや死んでしまったものと思っていたらしい。それに親同士が決めた婚約であり、親が死んでしまった以上、婚約自体が無効だと主張した。どちらの言い分にも一理あるような気がする。トゥイはトゥイなりにキムを愛していたのだろう。しかしキムはクリスに出会ってしまっていた。過去に戻ることはできないのだ。トゥイは自分が失恋してしまったこと、そしてこともあろうに恋敵は敵国のGIであることを知って逆上。しかし、キムの気持ちは変わらなかった。トゥイは大暴れして出て行った。

《1978年4月 ホー・チ・ミン(旧サイゴン)》

 巨大ホー・チ・ミン像にビックリ!ドラゴン・ダンサーのアクロバットがスゴすぎてビックリ!私は中国雑技団か何かを観に来てしまったのだろうか!?と自分を疑うくらいに(笑)。これはモーニング・ドラゴンというベトナム戦争を表現した場面なのだそうで、タイガーの仮面を被った人達はアメリカの象徴、ドラゴン・ダンサー達はベトナムの象徴らしい。ベトナムの底知れぬパワーを感じた。

 サイゴン陥落から3年。街はホー・チ・ミンと名を変えていた。エンジニアはしたたかに生き延びていた。政権側の人間として権力を手に入れたトゥイは、エンジニアにキム探しを命じた。エンジニアは探した。そして見つけた。キムも生きていたのだ。早速トゥイはキムに会いに行くのだが、そこにいたのはキム一人ではなかった。なんとキムには息子がいたのだ。もちろん父親はクリスだ。キムはクリスが必ず迎えに来てくれると信じて、息子のタムを大切に守り育ててきたのだ。キムは、クリスがいなくなった後で妊娠に気づいたに違いない。クリスと自分を繋ぐ命の絆。サイゴン陥落の混乱の中、クリスとの突然の別れに呆然自失の状態であったろうキム。もしタムの存在がなかったら、キムは自ら命を絶ってしまっていたかもしれない。タムがいたからこそ生きる勇気が生まれたのだと思う。

 一方のトゥイは、キムがGIとの間に生まれた子供を育てていることを知り大激怒。このままではタムが殺されてしまう。そう思った瞬間、キムは拳銃を構え、トゥイに向けて発射していた。トゥイは死んでしまった。キムが殺したのだ。どうしてこんなことになってしまったのか?自分はなぜトゥイを、元婚約者を殺さなければならなかったのか?何かが狂っている。あの戦争さえなければ…。トゥイの死を、運命の皮肉を、残酷な現実を嘆き悲しむキム。この場面で、涙がぼろぼろこぼれてきた。結果的に一番泣けたシーンだ。予想外。(泣きポイント その1)

 生まれたくないのに生まれ出たお前が/苦しまないように命をあげるよ~♪ 神の心のまま望むもの選ぶの/つかまえなさいチャンス/命もあげるよ~♪ キムは、エンジニアに救いを求めた。アメリカ人の血が流れるタムをパスポート代わりにと考えたエンジニアは、二人を連れてバンコクに流れてゆく。

【ACT2】

《1978年9月 アトランタ》

 名はブイ・ドイ/地獄で生まれた/ゴミクズ/我々のすべての罪の証拠だ/忘れない彼らはみんな我らの子~♪ アメリカ兵とベトナム女性との間に生まれた私生児ブイ・ドイ。クリスのベトナムでの戦友ジョンは、アメリカにいる父親達を探し出して、ブイ・ドイ達をアメリカに呼び寄せる組織を運営していた。ある日、ジョンはキムがバンコクで生きていて、クリスとの子供を育てていることを知った。ジョンは直ちにその事実をクリスに伝えた。不本意ながらもキムをベトナムに置き去りにする形でアメリカに帰国してしまったクリス。一日たりともキムのことを忘れた日はなかった。現実を受け入れることができず、自分の無力さを嘆く毎日。そんな苦しい日々の中で、クリスはエレンという女性に出会い、慰めと安らぎ、そして現実世界を生きる力を得たのだろう。やがてクリスはエレンと結婚した。しかし、クリスは毎夜、ベトナムの悪夢にうなされていた。そんなクリスのかたわらで、心を閉ざす夫に胸を痛める妻エレン。そんな時、ジョンからもたらされた衝撃の事実。クリスはすぐにでもキムと息子に会いに行きたいと思った。クリスは、エレンと共にバンコクを訪れる決心をする。

《1978年10月 バンコク》

 キムとエンジニアは安キャバレーで働いていた。エンジニアが客引きをしているところへ、ジョンが訪ねてくる。エンジニアは、ブイ・ドイに関する申請書はオレが書いたんだぜーと猛烈アピール。ジョンからクリスがバンコクに来ていることを聞いたキムは大喜び。ついにクリスが迎えに来てくれた。信じて待っていて本当に良かった。これでタムが幸せになれる!

《1975年4月 サイゴン》

 キムの心に、3年前のサイゴン陥落の悪夢が蘇る。

 悪夢①「トゥイの亡霊」:キムが信仰している宗教が何なのか分からないのだが、その祭壇の上にトゥイの亡霊がぬぅ~っと現れる。ライティングの妙なのか、本当に亡霊にしか見えなくて、ゾゾッ。トゥイの亡霊が祭壇を踏みつけるようにして降りてくるのが、まるでキムの心を破壊していくようで、見ていて心が痛かった。

 悪夢②「大使館」:混乱と喧騒の中、クリスは身分の証として拳銃をキムに渡し、大使館での再会を約束して基地へ向かった。殺気だった群衆に阻まれて、二人はお互いを見つけ出すことができない。キムはクリスに言われたとおり、拳銃を示して、自分はGIクリスの妻だと力説したが、門を通過することは許されなかった。

 悪夢③「大使館の門」:轟音と共に最後のヘリコプターが到着し、ジョンはキムの名を叫び続けるクリスを引きずるようにヘリコプターに乗せた。キムは飛び去ってゆく最後のヘリを呆然と見つめ続けていた…。このヘリコプターは本物(原寸大)らしい。耳をつんざく轟音といい、本物のヘリコプターといい、テーマパークのアトラクション並みにスゴかった。『ミス・サイゴン』のポスターの筆文字のようなデザインは、このヘリコプターをイメージしてるんですよね?

《1978年10月 バンコク》

 ジョンは一度ホテルに戻り、クリスを連れて再びキムのいるキャバレーに向かった。クリスとの再会を待ちきれないキムは、大切にしまっておいた結婚式のときに着た服に着替えて、ホテルに走った。クリスとキムはすれ違ってしまった。

 キムが飛び込んだ部屋には、見知らぬ女性が居た。あなた…もしかして「キム」さん?エレンは、悪夢にうなされるクリスがうわ言で「キム」という名を呼ぶのを聞いていた。クリスがアメリカで結婚していたことを知らないキムは、初めのうちエレンのことをジョンの妻だと思っていた。しかし、エレンは、自分はクリスの妻であると説明した。愕然とするキム。どうして!?そんなことがあるはずない!私達は結婚したのよ!キムにとっては、まさに青天の霹靂。にわかには信じられない。エレンもまた、この時初めて、夫の心の奥深くに隠されていた秘密を知った。彼は出直したかったのよ。クリスのアメリカでの苦しみを説明するエレン。混乱する頭でキムは必死に考えた。せめてタムを引き取って!そういい残してキムは去って行った。この場面は、完全にキムに感情移入しているので、悲しくて悔しくてぼろぼろ泣いた。(泣きポイント その2)

 居たわ/叫びたいこれは嘘/だけど真実/心には嵐が~♪ エレンはキムと出会い、キムが今でも心の底からクリスを愛していることを知ってしまった。キムが憎めるような嫌な女性だったらよかったのに…。でも、私だってクリスを愛している。奪われるならば、闘うわ。エレンもつらい立場だ。エレンからこの話を聞かされたクリスは、今まで閉ざしていた心の扉を初めて妻に開いた。クリスとエレンは話し合った。クリスはエレンと離婚するつもりはない。エレンは自分とクリスの子供が欲しい。タムをアメリカに引き取ることはできないし、そもそもキムからタムを引き離すことなんてできない。タムが学校に通えるように、養育費をキムに送金するというのはどうだろう?それを聞いていたジョンは言った。それでは問題の解決にならない。とにかく皆でキムとタムに会いに行こう。

 やるぜ俺!大成功!絶対つかむぞ/おお/アメリカンドリーム~♪ エンジニアのビッグナンバー。熱い!激しい!長い!この歌でエンジニアの生い立ちが語られる。父親は刺青師で、母親は娼婦。エンジニア少年は、母の客引きをさせられていたらしい。エンジニアの人生もまた厳しい。しかし、エンジニアはどんな境遇にあっても、アメリカンドリームを夢見て、疾走し続ける。ミス・チャイナタウンを乗せたキャデラック(アメリカンドリームの象徴。だと思う)が登場したあたりで、ナンバーは最高潮に達する。橋本エンジニアは、クドくてしたたかで胡散臭いけど、どこか憎めない人物。シリアスなストーリーの合間に、何度も客席の笑いを誘っていた。橋本さんって面白い人ですね(笑)。

 キムは、タムを幸せにする方法は、もはや一つしかないと思いつめていた。タムに可愛らしいよそゆきの服を着せるキム。そこへクリス達が訪ねてくる。3年振りの再会。見て、あなたの息子よ。タムをアメリカに連れて行って。キムはカーテンの後ろへと消えた。そして…銃声が響く。タムの幸福(=アメリカ行き)の妨げになっているのは、自分の存在。自分さえいなければ、クリスはタムを引き取って、アメリカで自分の子供として大切に育ててくれる。キムはそう思い、自ら命を絶つ道を選んだのだろう。大きな大きな母の愛。クリスは自分の不甲斐なさに、きっと歯噛みをしたことだろう。クリスは瀕死のキムを胸に抱いて泣き叫ぶ。キムは、タムの幸福を信じて死んでいった。キムの一生があまりにも悲しくて、涙が溢れた。(泣きポイント その3)

◇おまけ

 終演後にミニ・トークショーがあった。事前に知らなかったので、ちょっと得した気分(笑)。参加者は、岡幸二郎さん、鈴木ほのかさん、ソニンさん、井上芳雄さんの4人。ソニンさんは緊張ぎみだった。直前まで全身全霊でキムになりきっていたので、まだその余韻が残っていて、半分キム・半分ソニンという状態だったみたい。ソニンさんのキムは、小さな身体の中に溢れんばかりの大きなエネルギーを秘めていて、とても良かった。トークは岡さんと井上さんがリードしていた。普通にしゃべっているところを初めて見ましたが、岡さんも井上さんも超面白い!ヨッシー(『モーツァルト!』観劇以来、私の中では「ヨッシー」呼びが定着)がこんなにしゃべる人だとは思わなかった。二人は同郷のようなので、それで気が合うのでしょうか?

 ジョン(岡さん)&エレン(鈴木さん)で「♪サン・アンド・ムーン」を披露してくれるということだったのだが、直前にピアノの音が出なくなるというトラブルが発生し、急遽トークで間を繋ぐことに。ここで再びヨッシーの出番。自らネタを提供し、トークを繋いで、観客を厭きさせなかった。やるなー、ヨッシー。ファンになったかも(笑)。かなり長い時間待たされたが、なんとかピアノの音がでるようになり、「♪サン・アンド・ムーン」を聴くことができた。確かボサノバ・バージョンで歌ってくれたような気がする。

 『ミス・サイゴン』のプログラムは、今まで買ったプログラムの中で一番読み応えがあって面白かった。一冊の本としても十分に楽しめる内容だと思う。


レベッカ

2008年09月01日 | ミュージカル

2008年6月15日(日)13:30開演 シアタークリエ 22列10番台

◆シアタークリエ オープニングシリーズ ミュージカル『レベッカ』(脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ/音楽:シルヴェスター・リーヴァイ)

【Act1】

《プロローグ ♪夢に見るマンダレイ》

 大きな鉄の門扉が描かれた紗幕。門扉の向こうは鬱蒼とした茂みで、その奥にあるであろうお屋敷は見えない。コートを着て、頭にスカーフを巻いた「わたし」(大塚ちひろ)が現れ、在りし日のマンダレイを回想する。

《♪レディなんて柄じゃない》

 舞台はモンテカルロのホテル。「わたし」はヴァン・ホッパー夫人(寿ひずる)の付き添いとして、このホテルに滞在していた。内気で上流階級の振る舞いに不慣れな「わたし」は、夫人から無作法さや無愛想さを怒られてばかり。そんなある日、イギリスのコーンウォールに大邸宅マンダレイを構える上流紳士のマキシム・ド・ウィンター(山口祐一郎)がやってくる。でたー、山祐!(笑)でも、なんか違う。声が高く、ヘンに爽やか。優雅で上品なマキシムに「わたし」は目を奪われるのだが、私はどうやらもっと濃いぃ役を演じる山祐に惹かれるらしい(笑)。

《♪その名はレベッカ》

 ホテルの客達は、マキシムの亡き妻、才色兼備の誉れも高いレベッカの噂でもちきりだった。レベッカはヨット事故で亡くなったのだという。ヴァン・ホッパー夫人が風邪で寝込んでしまったため、「わたし」は一人で朝食を食べることにした。すると、隣のテーブルにいたマキシムが一緒に食べませんかと誘ってきた。意外な2ショットにホテルの客達は興味津々。

《♪崖の上で》

 それから数日間二人は共に過ごし、互いに惹かれあっていく。「わたし」がマキシムに惹かれるのは分かる。でも、マキシムが「わたし」に惹かれるわけは?「わたし」は特に美人でもなく、何か特技があるわけでもない。しかし、マキシムは「わたし」に惹かれていく。「わたし」の魅力は、素朴さ・優しさ・一生懸命さ、などだと思う。「わたし」の飾らない表情や言葉にマキシムは癒されたんだろう。そこで疑問が。マキシムは、なぜ「癒され」なければならないのか?

《♪永遠の瞬間》

 ヴァン・ホッパー夫人が、アメリカへ帰ると言い出した。折角マキシムといい感じになることができたのに。でも、仕方がない。お別れを言いに行かなくちゃ。「わたし」は意を決してマキシムの部屋を訪ねた。その話を聞いたマキシムは、なんと「わたし」に結婚を申し込んだ。驚きの展開に、信じられない思いの「わたし」。でも、プロポーズがうれしくないわけがない。もちろんOKよ!早速ヴァン・ホッパー夫人に報告だ。寝耳に水の話に驚くやら妬むやらのヴァン・ホッパー夫人だったが、わりと冷静な感想も。あなたにマンダレイの女主人は務まらない。これは皮肉ではないと思う。大邸宅マンダレイを切り盛りするのは、並大抵のことではない。当然、評判が高かった先妻レベッカと比較されるだろうし。地味な「わたし」には、そんなの無理、と誰もが思っただろう。いいえ、愛するマキシムのために、わたし、張ります!

《♪新しいミセス・ド・ウィンター》

 舞台はマンダレイに移る。お屋敷の召使たちは、ご主人様のお帰りを、新しい女主人ミセス・ド・ウィンターの到着を待ちわびていた。そこへ、マキシムと「わたし」が到着する。召使たちは、新しいミセス・ド・ウィンターに当惑を隠せない。前のミセス・ド・ウィンターと違いすぎるからだ。

《♪何者にも負けない》

 お屋敷の中を取り仕切っているのは、家政婦頭のダンヴァース夫人(シルビア・グラブ)。真っ黒の衣装、後ろにひっつめたヘアスタイル、赤みを抑えたメイク、そしてあの低い声!シルビアさん、マジで怖い!本当にこれがあのシルビアさんなのかと疑りたくなるほどの変貌ぶり。怖い怖い。あの方はここにいる/今もそう私にはわかる/たとえその姿見えなくても/生きるここにこのマンダレイ/見つめてる永遠に永遠に~♪ ダンヴァース夫人は、レベッカが生前使用していたものを、全てそのままの状態で保存していた。怖い怖い。

《♪親愛なる親戚!》

 「わたし」はミセス・ド・ウィンターの部屋にいた。その時、誰かがやってきたので、咄嗟に机の下に隠れた。やって来たのは、マキシムの姉・ベアトリス(伊東弘美)と、その夫のジャイルズ(KENTARO)だった。二人はマキシムと「わたし」のことを話している。出るタイミングを逸していまい、出るに出られない「わたし」。やがて、二人は「わたし」の存在に気づいた。一瞬の気まずいムード(笑)。気を取り直して、親戚同士のご挨拶。ベアトリスはわりと気さくな人で、「わたし」に対しても、どちらかと言えば好意的だ。実の姉から見ても、弟マキシムには分からない部分が多いらしい。何か大きな悩みを抱えているようなのだが、それが何なのか分からない。

《♪愛されていただけ》

 マキシムに隠れて屋敷に出入りする不審な男、ジャック・ファヴェル(吉野圭吾)。レベッカの従兄弟であり、なんと生前のレベッカとは不倫関係にあったらしい。その手引きをしていたのはダンヴァース夫人。しかし、ダンヴァース夫人はファヴェルのことをあまり好きではなさそう。どうやらファヴェルは、たくさんいたレベッカの愛人のうちの一人に過ぎないらしい。レベッカ様はそれだけの魅力に溢れた素晴らしいお方。多くの男達に愛され、かしずかれていただけ。愛していたのではなく、愛されていただけ…。ただ、よく分からないのは、レベッカが亡くなった後も、ファヴェルがこの屋敷に出入りしているということ。ひょっとして、ファヴェルとダンヴァース夫人も…そういう関係?

《♪レベッカⅠ》

 この曲スゴイ!シルビア・グラブ怖い!!さすが、クンツェ&リーヴァイ。全ての曲がイイのだが、特にこの主題歌が印象的。このミュージカルの中で何度も繰り返されるのだが、一度聞いたら絶対に忘れない。観劇後暫くの間は、「レーベーーッカーーーー!」のフレーズが頭の中でリピート再生されていた。レベッカ愛されてた/忘れられるはずなどない/波は呼び続ける/レベッカもう一度/息づくあなたを見せて~♪ ダンヴァース夫人の強烈な歌声に、「影たち」のコーラスが重なる。「影たち」とは、カーテンでもあり、鏡台でもあり、カトレアでもある。つまり、在りし日のレベッカを知るマンダレイという屋敷全体が「影たち」なのである。マンダレイこそレベッカの象徴。マンダレイが待ち望んでいるのは、新しいミセス・ド・ウィンターではなく、レベッカの復活なのだ。

《♪行っちゃった》

 気詰まりな屋敷を抜け出し、海岸を歩いていた「わたし」は、ボートハウスの近くでベン(治田敦)という男に出会う。ベンは少し知的な障害があるようだ。ボートが行っちゃった…。ぶつぶつと独り言を繰り返している。そんなベンに「わたし」は優しく語り掛ける。ベンは「わたし」を好意的な人物として受け入れた感じ。ボートハウスには入っちゃダメ!ベンはそれだけは語気を強めて言った。

《♪神よ なぜ》

 はい、いよいよ、山祐の本領発揮(笑)。どうして舞い戻ったこの呪われた海/ひとり問いかける神よなぜ~♪ もう救われるとそう信じたあの日よ/彼女の愛に賭けてみようとした/けなげな瞳が希望に見えた~♪ やはり、レベッカのボート事故死には裏がありそうだ。それにマキシムが深く関わっている。マキシムがレベッカを殺したのか?それとも、マキシムは被害者なのか?

《♪誠実さと信頼》

 マキシムの親友でありマンダレイの管理をしているフランク・クロウリー(石川禅)。マンダレイの中でただ一人まともな人物。フランクにもマキシムの苦悩の本当の理由は分からない。しかし、マキシムが「わたし」を連れてきた。今のマキシムには「わたし」が必要だということだ。レベッカとは正反対の「わたし」が。フランクは、マキシムを苦悩から救い出すのは、君の優しさだけだと「わたし」を励ます。

《♪今宵 マンダレイで》

 「わたし」は、マンダレイの女主人の初仕事として仮装舞踏会を開きたいと、マキシムにお願いした。マキシムはそれを許した。「わたし」は喜んで仮装舞踏会の準備を始める。「わたし」はアメリカにいるヴァン・ホッパー夫人にも招待状を送った。舞踏会当日、思い思いの衣装に身を包んだ招待客たちが、続々とマンダレイにやってきた。招待客たちは、本日の主役、新しいミセス・ド・ウィンターの登場を待ちわびていた。

《♪アメリカン・ウーマン》

 新しいミセス・ド・ウィンター!ではなく、ハイテンションのアメリカン・ウーマン、ヴァン・ホッパー夫人が到着した。このミュージカルの登場人物の中で、この人だけ異色だ(笑)。ヴァン・ホッパー夫人は、招待客の中にいたジュリアン大佐(阿部裕)に目を付け、強烈アプローチを開始する(笑)。この人の明るさが、逆にマンダレイの暗さを強調している感じ。

《♪夢の主役》

 「わたし」がどんな仮装をするかを考えていたとき、ダンヴァース夫人がアイデアを提供した。屋敷に飾ってある額縁の中の女性が着ているドレスを再現してはどうか、というのである。きっとマキシムが喜ぶだろうという言葉に、「わたし」もその気になった。しかし、あのダンヴァース夫人が、親切でそんなアドバイスをするとは、とても思えない。これは絶対ヤバイ。止めたほうがいいのに…。舞踏会当日、できあがってきたのは純白のドレスと純白の帽子。綺麗に着飾り、メイクも完璧。見事に変身した「わたし」は、招待客の待つ広間へ移動した。ジャジャーン!が、「わたし」が登場した瞬間、広間の空気が一瞬にして凍りついた。わけがわからず戸惑う「わたし」。ほくそえむダンヴァース夫人。不快感を露にするマキシム。そう、その衣装は、かつてレベッカが着ていたものだったのだ。古くからいる召使たちは当然その服を知っている。だからこそ、ダンヴァース夫人は、わざわざ新入りの召使を「わたし」付きにしたのだ。完全にハメられた。

【Act2】

《♪流れ着いたもの》

 沈んでいたレベッカのボートが見つかった。海岸はニュースを聞きつけた野次馬でいっぱいだ。ファヴェルもいる。ボートが見つかったことで、レベッカの死に関して新たな疑惑が持ち上がった。

《♪あなたが愛している限り》

 マキシムはついに、「わたし」にありのままの事実を打ち明けた。レベッカは、マンダレイの女主人としての役目だけはキッチリと果たすが、それ以外のことは一切好きなようにすると主張し、実際そのように振舞っていたらしい。対外的には才色兼備の理想的な妻、しかし実際は浮気で自分勝手な妻。つまり、マキシムとレベッカの結婚生活は、結婚当初から破綻していたのだ。レベッカがファヴェルとボートハウスで浮気していることも、マキシムは知っていた。レベッカの浮気に心を痛めていたということは、少なくともマキシムはレベッカのことを愛していたということか。そんなある日、ボートハウスでレベッカとマキシムが言い合いになり、はずみでマキシムがレベッカを突き倒してしまう。打ち所が悪かったのか、レベッカはそのまま死んでしまった。恐ろしくなったマキシムは、レベッカの遺体をボートに乗せ、沖へ行ってボートごと沈めたのだという。「わたし」は、マキシムが抱えていた闇をやっと理解し、全てを受け入れた。あなたを愛している。あなたの言うことを信じる。

《♪新しいミセス・ド・ウィンター(リプライズ)》

 新しいミセス・ド・ウィンターが変わった。以前の「わたし」とはまるで別人。堂々として、自分の意見をはっきり言う。まずは、マンダレイの中からレベッカの影を消すべく、レベッカが生前使用していたものを全て処分させた。今までは押され気味だったダンヴァース夫人に対しても一歩も引かない。マンダレイの女主人はこの「わたし」。マキシムが自分を愛し、頼ってくれている。今まではマキシムが自分を守ってくれた。今度は自分がマキシムを守る番だ。愛は女を強くする。

《♪審問会》

 マキシムの審問会。レベッカのボートが引き上げられたことにより、新たな事実が浮かび上がってきた。ボートの扉は外側から鍵が掛けられていたのだ。もちろんマキシムがそうしたのだが。レベッカ自殺説は翻された。マキシム犯人説を裏付ける証拠が次々に明らかにされ、傍聴席はどよめいた。緊張と不安が頂点に達した「わたし」は気を失い、その場に倒れてしまった。もしかしたらそれは「わたし」の演技だったのかもしれない。なぜなら「わたし」は、それまでの自分に自身を持てないおどおどした「わたし」ではなく、マキシムの愛を確信し強い女へと生まれ変わった「わたし」だから。

《♪持ちつ持たれつ》

 審問会から帰宅すると、ファヴェルがやってきた。ファヴェルは、ある情報をネタにマキシムを強請ろうと企んでいたのだ。しかし、マキシムは応じなかった。公にしたいのなら勝手にするがいい、というのだ。おいおい、そんなこと言って大丈夫なのかマキシム、と思ってしまった。だって、レベッカの死は事故だったかもしれないけれど、マキシムがレベッカの死体を遺棄したのは事実だ。しかし、マキシムは腹をくくったらしい。ここでファヴェルの強請りに応じたら、一生強請られ続けるのは必至。マキシムにどんな勝算があったのかは謎だが、とにかくファヴェルの申し出はきっぱり断った。まさか断られるとは思っていなかったファヴェルは動揺を隠せない。

《♪彼女の真実》

 「レベッカ様は病気を恐れていた。」(byダンヴァース夫人) え?何だか意外な展開になってきたぞ。どんな結末になるのか、ちょっと分からなくなってきた。美貌と知性を兼ね備え天下無敵に思われたレベッカが最も恐れていたのは「病気」。レベッカの日記に書き留められていた病院にフランクが電話をしてみると、そこは「産婦人科」だった。レベッカはなぜ人目を避けるようにわざわざ遠くの病院へ通っていたのか?たとえファヴェルの子を妊娠していたとしても、表向きは夫婦円満を装っているのだから、堂々と近くの病院へ通えばいいのではないだろうか?フランクと電話の向こうの医師との話は続いていた。レベッカは「病気」を患っていた。しかも、治る見込みのない…「ガン」。衝撃の事実が明らかになった。マキシムは、死の直前のレベッカの表情を思い出した。そして、レベッカは自分に「殺させた」のだと悟った。レベッカは「死」を恐れた。いや、それまでの人生を自分の思う通りに生きてきたレベッカは、自分の思い通りにコントロールできない「死の訪れ」を恐れていたのかもしれない。レベッカは病気のことをダンヴァース夫人にさえひた隠しにしていた。悶々としながらボートハウスでファヴェルを待っているところへ、マキシムがやってきたのだろう。嫉妬と怒りに震えるマキシムを見たとき、レベッカは不意に閃いたのではないだろうか。今なら死をコントロールできるかもしれない…と。そして、マキシムはレベッカを突き倒し、レベッカは打ち所が悪く、その場で死んでしまった。

《♪夜を越えて》

 一件落着!とはいかないまでも、レベッカ側にも隠されていた事実があり、マキシムが一方的に悪いというわけではないことが明らかになった。痛手も恐れも乗り越え二人/夢見た明日を生きる/愛とは何か見つけた/今こそ自由~♪

《♪炎のマンダレイ》

 マンダレイ炎上!もう手が付けられない状態だ。逃げ出した人々は、屋敷が崩れ落ちるのをただ見守るしかない。火を付けたのはダンヴァース夫人だ。ダンヴァース夫人は、なぜ屋敷に火を付けたのだろう?レベッカの苦しみに気づけなかった自分自身を責めたのか。世間にレベッカの真実が明らかにされることに耐えられなかったのか。とにかく、ダンヴァース夫人の「レーベーーッカーーーー!」の絶唱は迫力満点だった。マンダレイに残るレベッカの面影と共に、ダンヴァース夫人は散った。

◇おまけ

 『レベッカ』の主役はダンヴァース夫人だった(と私は思った)。レベッカは台詞の中に出てくるだけで、役者という形では登場しない。このミュージカルにタイトルロールは存在しないのだが、レベッカを崇拝(溺愛?)するダンヴァース夫人が、劇中で何度も何度も「♪レベッカ」を歌うので、ダンヴァース夫人=レベッカ=タイトルロールという図式が私の頭の中に自然と思い浮かんできた。だから、ダンヴァース夫人役は大役だと思う。シルビアさんのダンヴァース夫人は、見た目の不気味さ・怖さといい、台詞を言うときの声の低さ・太さといい、パンチの効いた歌声といい、迫力満点でスゴかった。高嶋兄に続いて、シルビアさんも大好きになった。濃いぃ役者、万歳!(笑)


モーツァルト!

2007年12月30日 | ミュージカル

2007年12月8日(土)17:15開演 帝国劇場 S席 2階E列1桁番台

◆ミュージカル『モーツァルト!』(脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ/音楽:シルヴェスター・リーヴァイ/演出・訳詞:小池修一郎)

  • 友人が12/8の『モーツァルト!』カード会社貸切公演チケットを当てる。
  • お誘いのメールが届く。
  • 当然OKの返事をする(笑)
  • 花組も観たいんだけど…
  • 友会先行で見事12/8の花組チケットを当てる友人!すごいー!やったー!
  • 12/9はどうする♪どうする♪
  • 十二月大歌舞伎に海老蔵でるよ?
  • それに決定だー!

 というわけで、本日は花組と『モーツァルト!』の2本立て。シャンテの地下でランチ…といっても14:00過ぎてたけど。シャンテ地下のお店は宝塚の上演時間に合わせてランチタイムを遅くまで設定してるんだね~。知らなかった。食事を済ませて外へ出ると、寒さが身にしみた。東京といえども12月は寒い。寒風吹きすさぶ中、ウィンドゥ・ショッピングをしながら帝国劇場へと移動した。帝国劇場に来るのは、『マリー・アントワネット』以来だから、ほぼ1年ぶり。今回の座席は2階下手か。うん、舞台もよく見えるぞ。例によってプログラムはチラ見(笑)。客席も徐々に埋まってきた。開演が待ち遠しい~!

  • ヴォルフガング・モーツァルト(中川晃教)
  • アマデ(たぶん田澤有里朱)…“奇跡の子”と呼ばれたころのままの分身
  • レオポルト・モーツァルト(市村正親)…ヴォルフガングの父
  • ナンネール・モーツァルト(高橋由美子)…ヴォルフガングの姉
  • セシリア・ウェーバー(阿知波悟美)…コンスタンツェの母
  • コンスタンツェ・ウェーバー(hiro) …ヴォルフガングの妻
  • コロレド大司教(山口祐一郎)…ザルツブルクの領主
  • アルコ伯爵(武岡淳一)…コロレドの部下
  • ヴァルトシュテッテン男爵夫人(涼風真世)…ヴォルフガングの良き理解者
  • エマヌエル・シカネーダー(吉野圭吾)…劇作家・プロデューサー

【♪僕こそ音楽】

 ヴォルフガングのナンバー。見かけ通りの奴だよ/この僕/ありのままなんだ/このままの僕を/愛して欲しい~♪ ヴォルフガングの見た目は、ジーパンにシャツという非常にラフなスタイルで、本当にどこにでもいそうな普通の青年だ。ただし、普通の青年と違うところは、側にいつもアマデがいること。どうやらアマデはヴォルフガングにしか見えていない存在らしい。観ているとアマデは常に楽譜を持ち、羽根ペンを走らせている。アマデはヴォルフガングの作曲の才能を目に見える形で表現したもの。つまり“奇跡の子”そのものなのだ。僕こそ/ミュージック/ミュージックだけが/生きがい~♪ 中川さんの歌は体当たりだ。手をぎゅっと固く握りしめ、こめかみに血管を浮き上がらせながら、身体全体で一生懸命に歌う。ヴォルフガングの真っ直ぐさが伝わってくる。

【♪心に鉄を閉じ込めて】

 レオポルトのナンバー。さまよう旅路/許したことを/今尚悔やむ/未熟ゆえ/危険知らぬ/いつまでも我が子~♪ わずか5歳で作曲の才能を開花させ、“奇跡の子”と呼ばれた息子。ザルツブルクの外へ出て、自分の力を試したいと言う。確かに音楽の才能はずば抜けている。しかし人間的にはまだまだ未熟だ。レオポルトは息子の将来を思って、ザルツブルクで音楽活動を続けるように諭した。運命は/私には味方しなかった/お前は勝てる/運命に/私は賭けよう~♪ レオポルトはザルツブルクの宮廷楽士であったが、音楽家としての栄光を掴むことはできなかった。だから、息子に自分の夢を託したのだ。「託す」と言えば聞こえはいいが、実際は息子を自分自身の一部と捉えてしまっていたのではないだろうか。それが父子のすれ違いの原点…だと思う。第2幕第14場。ヴォルフガングにレクイエムの作曲を依頼しに来た謎の人物は、レオポルトの亡霊(もしくはヴォルフガングの夢の中に現れた父親)…ですよね?それにしても市村さん、かなり抑えた(内に秘めた)演技でしたね。本当はもっと弾けたかったんだ!という思いがフィナーレで伝わってきました(笑)。市村さんのコロレド大司教も面白そうだな。

【♪星から降る金】

 ヴァルトシュテッテン男爵夫人のナンバー。このミュージカルの中で一番好きな曲だ~。素敵なメロディと涼風さんの綺麗な歌声が耳から離れない…。夜空の星から降る/金を探しに/知らない国へ/なりたいものになるため/星からの金を求め/一人旅に出るのよ~♪ 第1幕第11場。ヴォルフガングをザルツブルクの外へ出したがらないレオポルトに向かって、「愛とは解き放つことよ」と息子の独立を促すのだ。あ~、名曲だ(笑)。ヴァルトシュテッテン男爵夫人はヴォルフガングの才能に純粋に惚れ込んでいて、音楽の都ウィーンに活動の場を移すことを提案しているのだと思う。レオポルトもまた、息子の才能を誰よりも信じ、誰よりも誇らしく思っている。ただ、息子の才能は発展途上であり、まだまだ自分の保護下に置いてレッスンを続ける必要がある、とも感じているのだ。そして、モーツァルト家の前に立ちはだかる、貴族と平民という超えられない身分の壁を、レオポルトは強く意識していた。その点が男爵夫人とは決定的に違うんだなぁ…。

【♪影を逃がれて】

 ヴォルフガングのナンバー。第1幕第16場。不安で一杯/のしかかる重り/何を聞いても/答えてはくれないのに/何処かで見てる/息がつまりそう/いつかアイツに/殺されてしまうだろう~♪ お前の影に/潜んだ悪魔/子供の姿で/お前の全て支配しようとする/お前は生きる/その子の為に/生命捧げて~♪ 泉から湧き出す水のように、次から次へと頭の中に思い浮かぶメロディ。音楽は好きだ。でも、音楽に人生を支配されるのではなく、自分自身の意志で人生をコントロールしたい。自分の将来に「ぼんやりした不安」を感じ、自ら命を絶ってしまったという芥川龍之介のことをふと思い出した。やはり天才ゆえの悩みか?

【♪プリンスは出て行った】

 ナンネールのナンバー。高橋由美子さん、可愛いよ!少女時代も演じてたけど、普通に可愛かった。ナンネールにとっては、レオポルトに連れられてウィーンへ演奏旅行に出かけ、天才姉弟として喝采を浴びていた少女時代が幸福の絶頂だったんだなぁ…。プリンスは出て行った/残されたプリンセス/微笑みも忘れて/お城に一人~♪ 第2幕第3場。結婚したい相手がいるけど、貧乏人との結婚は絶対に許さないとパパが反対するの…。お金がないのよ…。私達家族を救えるのはあなただけ…。ヴォルフガング、帰ってきて!悲しい…なんて悲しい歌なんだ。そしてちょっぴり卑しい…とも感じてしまった。ゴメン。

【♪ダンスはやめられない】

 コンスタンツェのナンバー。hiroは…hiroだった。マンハイムでヴォルフガングに初めて会ったときは、まるで興味ないって感じに見えた。でも、ウィーンで再会したときは、素直に好きっていう気持ちを出していた。ヴォルフガングもそんなコンスタンツェに惹かれたのだろう。2人は結婚した。コンスタンツェもいい妻になろうとそれなりに努力はしたらしい。でも、ダンスはやめられないの…。まぁ、芸術家の妻というのも大変なのだろう。超最悪母親セシリアに比べたら、コンスタンツェなんかまだ可愛いほうだ。もし彼が神に召され/天国へ行っても/泣いたりなんかしないわ/私流に弔うの~♪ 第1幕も第2幕もプロローグはウィーンの聖マルクス墓地。舞台は真っ暗で、照明はろうそくの灯のみ。第1幕のときはよく分からなかったが、第2幕のときは何が行われているのか、はっきり分かった。ヴォルフガングの遺骨を欲しがっている男が2人いて、コンスタンツェはその男達に遺骨が埋まっている場所を教えているのだ。やがて遺骨が発見されると、コンスタンツェは男達から金を受け取り、逃げるように去っていった。これがコンスタンツェ流の弔い方なの?…やっぱり好きになれない。

【♪神よ、何故許される】

 コロレド大司教のナンバー。「山祐」と呼ばせてください(笑)。山祐…最高です!山祐の世界。一人だけ変です(いい意味で)。まず、見た目。かなり恰幅がいいです。(贅沢三昧の生活でちょっと太り気味…という設定ですね?)次に、声。かなり甲高いです。(神の摂理を学びすぎてちょっといっちゃっている…という設定ですか?)そして、身体全体から醸し出す雰囲気。かなり傲慢で威圧的です。(ねらいどおり…ですよね!)第1幕第12場。ヴォルフガングの邪魔をするため、馬車でウィーンへ向かうコロレド大司教とアルコ伯爵。揺れてる…(大笑)。そして背景に風景の映像が流れる…。この感覚は…『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』の「♪行けフェルゼン」だ!(正しくは「♪駆けろペガサスの如く」)そうか、演出は宝塚の小池修一郎氏じゃないか…と妙に納得(笑)。馬車の旅の途中で、コロレドの様子がおかしくなる。なんだなんだ?馬車を降り、内股でふるふると小刻みに震えながら歩くコロレド。まさか…。御者達が衝立を用意する。コロレドが衝立の後ろに入ると、御者が高い位置から水を落としてわざと音をたてる。…「音姫」かよっ!(笑)当然、衝立から出てきたときのコロレドはすっきりした顔をしていた(苦笑)。コロレドはヴォルフガングの音楽家人生を滅茶苦茶にしたけど、ヴォルフガングの音楽的才能に対する認知度は、レオポルト以上だったんじゃないかな。だってコロレドは、ヴォルフガングの生み出す音楽を、神の摂理をも超える音楽の魔術、と言っているんだから。

【♪モーツァルト!モーツァルト!】

 神がつかわした/奇跡の人/世界果てる日まで/奇跡は終わらない/神の子/モーツァルト~♪ 第2幕第15場。人々が熱狂的に歌う。私には「モザ!モザ!」って聞こえた(苦笑)。第2幕第16場。ヴォルフガングは謎の人物に依頼されたレクイエムを作曲している。誰のためのレクイエムなのか?レクイエムを作ることに対して何となく抵抗感を覚えるヴォルフガング。一方、ヴォルフガングの分身である“奇跡の子”アマデは、ひたすら作曲を続ける。アマデはヴォルフガングに対して、レクイエムを完成させることを強要する。自分と自分の衝突。発狂の一歩手前か?ついには自分の腕に羽根ペンを突き刺し、血をインク替わりにして作曲を続ける。まさに命を削っての作業。張り詰めた緊張感。それが極限に達したとき、ヴォルフガングは羽根ペンを胸に突き刺し自殺した。アマデも折り重なるように倒れ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、死んだ。

【以下、思い出した順に…】

  • 『マリー・アントワネット』のときより衣装が豪華でいい!涼風さんのドレスも今回のほうが素敵だった。
  • 貴族の女性達の鬘がすごいことになってた!頭の上に船が乗っかっている人が2~3人はいた。さすが宝塚歌劇団小池氏演出。
  • セットは全体的に地味だった。箱型の可動式セットが、場面毎に前後に出たり入ったりしていた。盆回りとかセリ上がりとか花道とかが欲しかったな~。
  • エマヌエル・シカネーダーは、ただの盛り上げ役かと思っていた。『魔笛』の脚本を書いた人だったんですね?自分の無知を反省…。
  • 何度目かのカーテンコールの後で、主演の中川さんからご挨拶があった!貸切公演万歳!最初のほうは、話が途切れ途切れで、挨拶は苦手なのかなぁ~と思った。ところがどっこい、話しているうちにどんどん舌が滑らかになり、話が終わらない終わらない(笑)。Wキャストの井上芳雄さんとは、「あっきー」「よっしー」と呼び合う仲だそうで(笑)。
  • よっしーのヴォルフガングも観てみたい。
  • 小池氏は、『アデュー・マルセイユ』と『モーツァルト!』の演出かけもちだったんですね。大変だ~。でも、両方とも面白かったですよ~。
  • モーツァルトは本当に天才だよ。今回、改めてそう思った。

マリー・アントワネット

2007年02月05日 | ミュージカル

2006年11月4日(土)13:00開演 帝国劇場 A席 1階W列10番台

◆ミュージカル『マリー・アントワネット』~遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より~(脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ/音楽:シルヴェスター・リーヴァイ/演出:栗山民也)

 マリー・アントワネット=涼風真世、マルグリット・アルノー=笹本玲奈、アニエス・デュシャン=土居裕子、アクセル・フェルセン=井上芳雄、ルイ16世=石川禅、ボーマルシェ=山路和弘、オルレアン公=高嶋政宏、カリオストロ=山口祐一郎

 『マリー・アントワネット』が観たい!湖月わたるさんの退団公演が観たい!というわけで、第2回目の2本立て観劇ツアーを敢行。この頃から、上京するついでに観劇、ではなく、観劇のために上京、になったなぁ…。

 開演までのしばしの間、プログラムを購入したり、パンフレットを集めたりしながら、ロビーをぶらぶらしていると、向こうの方にちょっとした人だかりが。何事かと近づいてみると、中心にいるのは外国人。なんと、作家のミヒャエル・クンツェさんと作曲家のシルベスター・リーバイさんでした。なんてラッキー!しかし、サインをもらおうとする人や、写メを撮ろうとする人が群がっていたので、私は遠巻きに尊顔を拝しました(笑)。

 座席は1階W列10番台。2人のMAということでしたが、私の見る限り、マルグリットが主役という感じがしたなぁ。アントワネットは、物語の終盤、かなり魅力的な人物になります。石川さんの、ぽわんとした雰囲気のルイ16世が、それらしくてすごくよかった。ボーマルシェは、『エリザベート』のルキーニですね。高嶋さんのオルレアン公は、女装してベルサイユ行進に紛れ込んでいたけど、背が高いし、胸の詰め物がかなり大きいので、目立っていた。カリオストロは、もっと他の登場人物と絡むのかと思っていたのですが…。何はともあれ、日本から世界に向けて発信するオリジナル・ミュージカルを観劇することができたので、満足でした。

 後日、遠藤周作の原作『王妃マリー・アントワネット』を読みました。とても面白い作品でした。そして、「ミュージカルとは、かなり違うぞ!」と思いました。特に、アニエスの扱いについて。確かに、ミュージカルには時間的制約もあるので、原作と全く同じに制作することができないのは、当然と言えば当然なのですが。一緒に観劇した友人が、後日、2回目のMA観劇に行き、新妻聖子さんのマルグリットを観てきました。その友人によると、1回目とは違っていた部分がいろいろあったらしい。1つの演目を複数回観劇して、比較する。私もいつかやってみたいです。


ジキル&ハイド

2007年02月01日 | ミュージカル

2005年12月18日(日)13:30開演 日生劇場 S席 1階Q列1桁番台

◆ミュージカル『ジキル&ハイド』

 ヘンリー・ジキル&エドワード・ハイド=鹿賀丈史、ルーシー・ハリス=マルシア、エマ・カルー=鈴木蘭々、ガブリエル・ジョン・アターソン=石川禅、ダンヴァース・カルー卿=浜畑賢吉

 2本立て観劇ツアーの2日目は『ジキル&ハイド』。原作『ジキル博士とハイド氏』は中学時代に読んだと記憶しています。子供の頃から本を読むのは好きでしたが、特に熱中したのは中学時代です。学校の図書室からたくさん本を借りました。コナン・ドイル、モーリス・ルブラン、江戸川乱歩などの推理小説から世界文学全集まで。とにかく次々読みました。

 日生劇場の内装はちょっと変わっています。壁が岩のようにゴツゴツした感じになっていて、まるで洞窟の中にいるような感じがしました。座席は1階Q列1桁番台。一番後ろからの観劇です。印象に残っているのは、やはり加賀さんのジキルとハイドの演じ分け。ジキルは声も高めに若々しく。ハイドは暗く重く激しく。照明の効果と相まって、一瞬にして人格が変貌するさまは見所だと思います。マルシアさんの絶唱も凄かった。


レ・ミゼラブル

2007年01月30日 | ミュージカル

2005年5月4日(水)12:00開演 帝国劇場 S席 2階D列40番台

◆『レ・ミゼラブル』

 ジャン・バルジャン=今井清隆、ジャベール=岡幸二郎、エポニーヌ=笹本玲奈、ファンテーヌ=シルビア・グラブ、コゼット=知念里奈、マリウス=岡田浩暉、テナルディエ=徳井優、テナルディエの妻=森公美子、アンジョルラス=坂元健児

 ゴールデンウィークは東京見物。最大のイベントは『レ・ミゼラブル』観劇。この頃から「連休は東京で観劇」というスタイルが定着したなぁ。

 「貧しさに耐えかねて1斤のパンを盗み19年を牢獄で過ごさねばならなかったジャン・バルジャン。出獄した彼は、ミリエル司教の館から銀の食器を盗み出すが、神のように慈悲深い司教の温情は翻然として彼を目覚めさせるのだった…」ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』。不朽の名作。たしか中学時代に少年少女向けの世界文学全集で読んだような記憶があります。大学時代には岩波文庫版を買ったものの、途中で挫折。結局、有名な銀の食器のエピソードの部分しか覚えていませんでした(苦笑)。

 座席は2階D列40番台。観劇してみて、ジャン・バルジャンが主役ではなく、ミゼラブルな人たちの集団ドラマであることがわかりました。気になった人物は、テナルディエ夫妻(徳井さんと森さん)。でこぼこコンビで、どちらも味がある。また、主要な役は2~4人の役者さんが交替で演じられているようなので、いろいろなバージョンで観てみたいと思いました。