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休日は観劇に

さくの観劇メモランダム

虞美人

2010年05月15日 | 宝塚花組2(真飛聖)

2010年5月1日(土)16:00開演 東京宝塚劇場 S席 1階14列30番台 花組公演

◆ミュージカル『虞美人-新たなる伝説-』~長与善郎作「項羽と劉邦」より~(原作:長与善郎/脚本・演出:木村信司)

【第1幕】

  • 第1場 高祖(劉邦)の寝室 〔劉邦の最期〕
  • 第2場 虞美人草の咲く丘(項羽と虞美人) 〔「♪赤いけしの花」〕
  • 第3場 会稽 〔項羽殷通殺害〕
  • 第4場 銀橋(閲兵) 〔「♪私には羽根がある」〕
  • 第5場 沛県 〔劉邦仲間と酒を飲む〕
  • 第6場 虞美人の実家 〔愛を誓う〕
  • 第7場 大道 〔韓信と桃娘〕
  • 第8場 彭城 楚の陣営 〔義兄弟の契り〕
  • 第9場 彭城 楚の陣営周辺 〔虎だぞぉ~ガオォ~〕
  • 第10場 安陽 楚の陣営 〔項羽軍:兵糧が尽きる〕
  • 第11場 安陽 宋義の部屋 〔「♪愛愛愛」〕
  • 第12場 鉅鹿 秦の陣営 〔項羽軍:背水の陣〕
  • 第13場 咸陽 〔劉邦軍:咸陽入城〕
  • 第14場 鴻門の会 〔劉邦暗殺未遂〕

【第2幕】

  • 第1場 咸陽 〔咸陽炎上〕
  • 第2場 漢 〔韓信引き抜き〕
  • 第3場 虞・凱旋~虞(虞美人の故郷) 〔覇王凱旋〕
  • 第4場 彭城 〔劉邦再び咸陽を落とすも、怒れる覇王を恐れて敗走すの巻〕
  • 第5場 荒れ地 〔劉邦と戚〕
  • 第6場 牢獄 〔呂妃vs虞美人〕
  • 第7場 河内 〔劉邦再起を誓う〕
  • 第8場 彭城 〔帳良の謀略〕
  • 第9場 荒れ地 〔范増先生の最期〕
  • 第10場 広武 〔ザ・ダンス対決(決戦)〕
  • 第11場 講和 〔戦い疲れて…〕
  • 第12場 垓下 〔項羽軍:四面楚歌〕
  • 第13場 烏江 〔項王自刎して死す〕
  • 第14場 花道 〔劉邦覇王を忍ぶ〕
  • 第15場 虞美人草の咲く丘(項羽と虞美人) 〔天国の二人〕
  • 第16場~第20場 フィナーレ

 原作は読まずに観劇した。理由は二つ。一つは時間がなかったから(笑)。もう一つは『史記』(の一部)を読んだことがあったから。項羽と劉邦の戦いについては大体分かっているつもりだったが、虞美人については項羽の寵姫であったということと、「虞や虞や若を何奈せん」という項羽の歌ぐらいしか知らなかった。過去に大ヒットしたという初演版『虞美人』の映像も見たことがないし、原作本も読んでいない。よって今回は、項羽と劉邦の話が宝塚的にどのような演出になっているのか全く分からないまま観劇の日を迎えるという、ワクワクパターンだった(笑)。

 「虞美人草の咲く丘」の赤い羽根扇を使った演出がとても綺麗だった。全国ツアーの『レ・ビジュー・ブリアン』を観て以来、羽根扇が出てくると、スターさんの周りをぐるっと取り囲んで、羽根扇をわずかに揺らしながら、円を描くように動く、例の振りを期待してしまうようになった(笑)。今回はそれが一度に3個も登場した。綺麗だったな~。

 韓信(愛音羽麗)が何だか凄くカッコよかった!鬘も似合っていたし、化粧も男役の色気が漂っていて素敵だった。物静かな佇まい、憂いを含んだ瞳、穏かな話し方。信念を内に秘めた男を淡々と演じている風情がとても良かった。しかも第2幕では桃娘(望海風斗)に突然愛を告白するという場面もある。観ていてキャーと思う(もしくはキュンとする)ところだ(笑)。

 プログラムに載っていた演出家の木村信司氏の文章によると、桃娘のエピソードは原作者の長与善郎氏の創作らしい。桃娘は物語開始早々項羽によって父親・殷通(扇めぐむ)を殺害され、その後も劉邦の妻・呂(花野じゅりあ)や殷通の元臣下・衛布(華形ひかる)などによって運命を翻弄されるという可哀想な娘だったが、最終的には韓信様と結ばれたので、良かった良かった(笑)。

 アイ~アイ~アイ~アイ~♪おかっぱ頭の子供が将軍・宋義(悠真倫)の周りを楽しげに歌い踊っている。この子供は誰?この歌は何?しかもこの子供のソロ歌場面は結構長かった。私はちょっぴり困惑したが、やがて理解した。要するに、項羽(真飛聖)が虞美人(桜乃彩音)を戦場に伴ってきたように、宋義は稚児・紅林を連れてきた、ということなんですね?実は紅林が桜一花さんだったということに後で気づいた(笑)。それでソロパートを任されていた訳も納得。(桜さんは今回エトワールも務めている。)しかも、私が「何?」と思ってしまったこの歌は、「♪愛愛愛」という歌で、「♪赤いけしの花」同様、初演時に白井鐡造さんが作詞した歌なのだそうです。大変失礼致しました。

 項羽(真飛聖)軍と劉邦(壮一帆)軍の決戦。今回は各軍の色(項羽=青、劉邦=赤)の旗を持っての戦闘ダンス。こういうダンスシーン大好き!皆それぞれのチームカラーの軍服を着ているのだが、スター武将の軍服には水玉模様が施されている(笑)。青水玉スターは、季布(真野すがた)、項荘(祐澄しゅん)、鍾離昧(輝良まさと)。赤水玉スターは、樊噲(夕霧らい)、蕭何(瀬戸かずや)、曹参(鳳真由)。ちなみに韓信も当然赤水玉スターだが、別の戦場で足止めされていて、この場にはいない。両軍入り乱れての激しい戦闘の末、大地は戦死した兵士で埋め尽くされた(ように私の目には見えた)。ところで、戦闘ダンスシーンに使われていた曲が、『太王四神記』の戦闘ダンスシーンの曲と同じように感じたのだが、私の気のせいだろうか?

 今公演では、兵士達が客席通路を駆け抜けて舞台に上がるという客席降りの場面が2回あった。全く知らなかったのでビックリした(笑)。青軍、赤軍それぞれ1回ずつあったのだが、どちらかの時に私の席の側を朝夏まなとさんが通った。行きつ戻りつしながら「項王はどこだ!」と言っていたような気がするので、たぶん烏江の最後の戦いの場面(つまり赤軍)だったんじゃないかなぁ…と思う(自信なし)。ちなみに朝夏さんは虞美人の兄・子期役。子期が登場しない場面では様々な役で活躍していた模様。

 知っているエピソードや故事成語が出てくると、心密かにうれしかった(笑)。項羽も劉邦もどちらも乱世の英雄に間違いないけれど、性格的には全く違っていたのではないだろうか。私の勝手なイメージで二人を分析すると、項羽はカリスマ将軍タイプ。残忍な一面も優しい一面もどちらも本物で嘘が無い。他人に有無を言わせない迫力と実力を兼ね備えていた。だから、自分を過信して道を誤った。一方の劉邦はフーテンの寅さんタイプ(笑)。飄々として何を考えているのかよく分からないが、周囲の人々はとにかく放っておけない。だから、どんどん仲間が集まってくる。カリスマの元に集まってくるのは、何かをしてもらいたい人。寅さんの元に集まってくるのは、何かをしてあげたい人。そこが違いかな、と思う。

 『虞美人』は花組主演娘役である桜乃彩音さんの退団公演でもあった。マリアンヌ、アノウド、ディアンヌ(全ツ)、キハ、マリーズ、虞美人。春野寿美礼さんの退団公演、そして真飛聖さん主演男役就任以降の花組の本公演を全て観劇していたという事実に今改めて気づいた(笑)。桜乃さんは透明感のある娘役さんだと思う。桜乃虞美人は清らかで美しくて、どこまでも幸せそうだった。物語の最後、幕が上がると大階段が現れ、赤い羽根扇を持ったけしの花の乙女達が円を描くように座っていて、その中央に純白の衣装に身包んだ桜乃さんがいた。凛とした輝きに満ち溢れていた。真飛さんとのデュエットダンスも、今日ばかりは桜乃さんに視線集中。幸せ一杯の千秋楽が目に浮かぶようだった。

 宝塚友の会優先公演だったため、幕間には抽選会(番号発表のみ)、終演後には組長(夏美よう)挨拶・主演男役(真飛聖)挨拶があった。抽選には一度も当たったことが無い。そして今回も当たらなかった。当たらないと分かっていても、少しだけ期待してしまう自分が悲しい(笑)。


外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-/EXCITER!!

2010年01月10日 | 宝塚花組2(真飛聖)

2009年11月14日(土)11:00開演 東京宝塚劇場 S席 1階3列10番台 花組公演

 まさかまさかの外伝ベルばらシリーズ第5弾!またやるの!?とは思ったものの、大和&陽月コンビの中日劇場公演を観に行けなかった者としては、やはり気になるところ。念のため、中日劇場公演を観に行った友人に声をかけてみたが、やんわりと断られた(笑)。大和アンドレが予想以上にハマリ役で、いたく感動したらしく、もはや大和さん以外のアンドレ編は考えられないとのこと。さて、どうしたものか…。いやいや、やはりショー『EXCITER!!』のほうも非常に気になる。やっぱりコレは観ておくべきでしょう!よし、チケット取っちゃうぞー!ええい!と取ってみたら、なんと1階3列の下手端席だった!おお、ここは下手花道スッポン席!フィナーレでセリ上がってくる壮さんを最も間近で観られる席ではありませんか!なんか楽しみになってきたぞぉ~。

◆宝塚ロマン『外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-』(原作・外伝原案:池田理代子/脚本・演出:植田紳爾)

  • 第1場 故郷の追想 【プロバンス訛り?】
  • 第2場 明と暗 【20年後】
  • 第3場 「アジール」の店 【行き倒れの女】
  • 第4場 愛のかたち 【オスカル一筋】
  • 第5場 パレ・ロワイヤル 【黒い騎士登場】
  • 第6場 ユリカーテン 【ジャルジェ将軍怒る】
  • 第7場 「アジール」の店 【荒くれオスカル】
  • 第8場 ユリカーテン 【貴婦人達の立ち話①】
  • 第9場 ベルサイユ宮殿の廊下 【王妃一筋】
  • 第10場 「アジール」の店 【アンドレは何処】
  • 第11場 ベルサイユ宮(ユリカーテン) 【フェルゼン帰国】
  • 第12場 ブイエ将軍の屋敷 【養女に!】
  • 第13場 練兵場の広場 【アンドレの秘密】
  • 第14場 ベルサイユ宮(ユリカーテン) 【貴婦人達の立ち話②】
  • 第15場 ジャルジェ家の広間に続く階段 【全てが見えなくなる前に】
  • 第16場 練兵場の広場 【涙】
  • 第17場 ユリカーテン 【ジャルジェ将軍の苦悩】
  • 第18場 ブイエ将軍の屋敷の広間 【再会】
  • 第19場 ジェルジェ邸の庭園 【今宵一夜】
  • 第20場 革命 【愛する者のために】
  • 第21場 ブイエ将軍の広間 【想い出は永遠に】
  • 第22場 天国 【神に召されて】

 噂には聞いていたが、少年アンドレ(大河凛)と少女マリーズ(天咲千華)の方言合戦には参った(笑)。でも、演じている二人は真剣そのもので、初々しくて可愛かった。長じてあんなに素敵な男性になるアンドレなのだから、彼に恋する女性の一人や二人、いや、もっとたくさんいたっておかしくない。そういう意味では、アンドレを巡る女性達の話を外伝として創作することは、いくらでも可能な気がする。しかし、何と言ってもアンドレは「オスカル一筋」。オスカル以外のどんな女性を相手役にもってきても絶対にハッピーエンドにはならない。それにアンドレの「オスカル一筋」なところに乙女達はグッとくるわけで、他の女性に夢中になっているアンドレなんか見たくないのである(笑)。

 20年前の結婚の約束を信じて、アンドレ(真飛聖)を探しにベルサイユへやって来たマリーズ(桜乃彩音)。疲労と空腹のあまり気を失ってしまったマリーズを、居酒屋「アジール」の客達が助けた。意識を取り戻したマリーズは、女主人シモーヌ(夏美よう)に、ここで働かせて欲しいと懇願する。同じプロバンス出身ということもあり、シモーヌはマリーズを雇ってやることにする。マリーズはアジールで働きながら、休みの日にはアンドレを捜し歩いていたようだ。でも、なかなか見つからない。おそらくマリーズはアンドレから「ベルサイユに行く」ということしか聞いていなかったのだろう。実はアンドレも客としてアジールにやってきているのだが、微妙なすれ違いでマリーズは気づかない。やっぱり無理だったのかな…。挫けそうになるマリーズ。絶対見つかるよ!あきらめちゃだめだよ!アジールで働く女達が励ました。

 「アジールで暴れるオスカルの巻」。このアンドレ編の中で私が一番好きな場面だ。愛音さんは伝説のアラン編でもオスカル役を演じていたが、今回のアンドレ編でも再びオスカル役。前回はどちらかというと女っぽいオスカルだった。今回はオスカルの男っぽい(喧嘩っ早い)一面も描かれていてイイと思う。男と女。平民と貴族。貧困と贅沢。戦争と平和。自分は何のために生きているのか?自分は何をすべきなのか?オスカルの心に渦巻く疑念と葛藤。飲まずにはいられない。オスカルが貴族だと気づき、アジールの客達がオスカルに喧嘩をふっかける。売られた喧嘩は買ってやるぞ!酒に酔って暴れるオスカル。愛音オスカルはここぞとばかりに暴れまわる。そこへ真飛アンドレが駆けつけて、喧嘩を止めさせ、酔いつぶれたオスカルを抱いて帰るのだった。夜空を見上げたアンドレの目からは一筋の涙が…って、それは漫画の読みすぎ(笑)。

 マリーズのシンデレラストーリー(ってことですよね?)には驚いた。始めからブイエ将軍(星原美沙緒)はプロバンス出身で、妻を亡くして寂しいやもめ生活を送っている…という設定ではなかったはず。今回マリーズという女性を登場させるにあたって、池田先生が新たに考え出した設定だろう。それにしても、よりにもよってブイエ将軍の養女にするとは。私のような凡人には絶対思いつかない設定だ。本編ではブイエ将軍はどちらかというと悪役扱いなので、なんでそんな人の養女に…と、つい思ってしまう。しかし、人間は多面的な存在だ。ジャルジェ将軍の子供、しかも女の身で軍人をしているということで、ブイエ将軍はオスカルに対しては冷たい態度を示していたが、家族に対してはどうだったのであろうか?たぶん違った態度を示していただろう。そう考えると、同郷のマリーズに親しみを感じ、家族に対するのと同じような態度を示すということも、ありえないことではない…とも思えてくる。それにしても、革命の後、貴族の養女になったマリーズは無事に生き延びることができたのだろうか?それが少し心配だ。あ、マリーズのその後を描いた新たな外伝「マリーズ編」ができるかもしれない。外伝ってエンドレスだ…(笑)。

 黒い騎士(未涼亜希)から受けた傷が原因で眼が見えなくなりつつあることをアラン(壮一帆)に知られたアンドレは、周囲の人達には黙っていてほしいと頼む。しかし、パリ出動を前にして、アランはアンドレの秘密を他の衛兵隊士達の前で明らかにしてしまう。俺達を騙していたのか!俺達は仲間ではなかったのか!目が見えない者が戦場に行っても足手まといになるだけだ!次々と発せられる衛兵隊士達の糾弾の声。アンドレは跪き、額を地に着けるようにして、涙ながらに懇願した。俺を連れて行ってくれ!俺はどうしても行かなければならないんだ!その恥も外聞も忘れた必死な様子が、あまりにも惨めで哀れで悲しかった。分かった。連れて行ってやるよ。その代わり俺達の声をよく聞くんだぞ。敵がどの方向にいるか、誰かが見ていて、必ず指示を出してやる。練習だ。アンドレ前だ!アンドレ右だ!アンドレ左…だ…(泣)。この場面は絶対に泣く。

 オスカルの身を案じたマロングラッセ(邦なつき)が孫のアンドレに頼んで、ブイエ将軍にオスカルのパリ出動命令の撤回をお願いしに行くという件。これはちょっと無理があると思うなぁ。オスカル自身が絶対にそれを望まないだろうし(ブイエ将軍もそう言っている)、オスカルの性格をよく知っているアンドレだってそれを望まないだろうし(アンドレはどこまでもオスカルと行動を共にし、盾となって護ることを自分の役目と考えている)、平民アンドレの意見をブイエ将軍が聞き届けるはずがない。でも、この場面はアンドレとマリーズが再会するために必要な設定だったんだろうなぁ。アンドレが自発的にそういう行動に出るとは考えにくいからこそ、マロングラッセがアンドレに頼む…というステップを踏んだんだろうなぁ。そんなこんなで、美しい貴婦人に変身したマリーズと、精悍な男性に成長したアンドレが20数年ぶりの再会を果たす。マリーズは幼い日の約束を信じて今日まで生きてきたと告げるが、アンドレの人生は既にオスカルの上に定められていた。そこで、マリーズは意外にも権力(ブイエ将軍の養女という立場)を利用して、アンドレを繋ぎとめようとする。そんな脅しにアンドレが屈するはずもなく、マリーズは人生の支えを失ってしまった。マリーズのそれまでの人物像からは、その言動はちょっと意外な気がしたけれども、なりふり構わないところがまさに本気の恋ということなのかなとも思った。

 「今宵一夜」は場所が「オスカルの居間」から「ジャルジェ邸の庭園」に変わっていたので、「俺は今日まで生きてきて…良かった!」で終わり。アニメ編はもっとアウトドアで衝撃的だったのを思い出した(笑)。「革命」の場面では、私の目の前で踊る市民の顔に見覚えがあった。あれは…フェルゼン様(真野すがた)ではありませんか!後でプログラムを確認したところ、「革命」の場面には貴族の方々も市民として多数参加していた。踊る市民が真野さんだと認識した時点で、私の視線は真野さんにロックオン(笑)。いけないいけない、アンドレ編なのにアンドレを見失ってしまった。慌てて上手側を観た瞬間、アンドレが撃たれた。私の座席からは、ショックに顔を歪めるアルマン(華形ひかる)の様子が真正面から観えた。アルマンの表情を観て、思わずもらい泣きした。最後は白い軍服に身を包んだアンドレが一人大階段を上って天に召されていった。  

 ◆スパークリング・ショー『EXCITER!!』(作・演出:藤井大介)

  • 第1章 Dream Exciter!!-夢の革命- 【夢王子→EXCITER】
  • 第2章 Beautiful Exciter!!-美の革命- 【デザイナー】
  • 第3章 Men's Exciter!!-男の革命- 【Mr.YU】
  • 第4章 Love Exciter!!-愛の革命- 【クラブの夜】
  • 第5章 Life Exciter!!-命の革命- 【ハバナ】
  • 第6章 Tomorrow Exciter!!-明日への革命- 【3組のデュエットダンス】

 真飛さんに「夢王子」という役名が付いていたとは知らなかった(笑)。水色の夢王子から真紅のEXCITERに変身した真飛さんを中心に、花組生が熱いステージを繰り広げる。「Ah 火傷するようなエキサイトラブ/Um 気絶するようなエキサイトキッス/Ai! 火花散らし生きてゆけば/永遠に枯れない 花が咲く~♪」

 夏美組長演じるピンク男(女?)は天才デザイナー。その天才デザイナーがデザインした5点のドレスを、5人の美人モデルが着用し、5人の美男子がそれをエスコートして銀橋を渡る。愛音羽麗&白華れみ、真野すがた&花野じゅりあ、未涼亜希&華耀きらり、朝夏まなと&実咲凛音、華形ひかる&華月由舞。それぞれの服のテーマに合った見せ方(踊り方)をしていて面白かった。とにかく今回の席は銀橋に近いので、銀橋を多用してくれるショーは大興奮だ(笑)。

 全くイケてない独身サラリーマンMr.YU(真飛)が、Mr.SO(壮)開発の「チェンジBOX」に入って出てきたら究極のイケメンに変身していた!というお話。起床。まず髪型がイケてないし、洋服のチョイスが変(笑)。家から会社までの通勤ルートが盆回りで展開。満員列車の中で憧れの女性チェリーちゃん(桜乃)から痴漢に間違われた挙句、会社に遅刻して怒られてしまうというダメダメぶり。見かねた掃除婦のおばちゃん3人組がMr.YUを「チェンジBOX」の中に押し込める。するとおばちゃん達はドリームガールズに変身した。これならMr.YUも期待できるかもしれない、と観客が思い始めた頃に、ジャジャーン!とイケメンMr.YUが登場。めでたし、めでたし(笑)。

 「超都会的なクラブ」を舞台に繰り広げられる「華やかなめくるめく一夜」。クラブミックスメドレーが終わった後、3人のアダルトな男達(真飛・壮・愛音)が銀橋に出てきて、己のセクシーさを強烈アピール!こういう熱くてクサイのが、宝塚男役の醍醐味だよね。嫌いじゃないです(笑)。

 キューバのハバナ。愛音さんと桜乃さんの仲を壮さんが邪魔している…ということは観ていて分かった。プログラムには「ハバナキング(愛音)の恋人、ハバナクィーン(桜乃)にハバナダンディ(壮)が横恋慕していさかいとなる。そこへ、命の意味を求めて旅を続ける放浪の旅人(真飛)が現れる。いさかいを止めようとする旅人。」とある。なるほど、なるほど。「ああ 生きてゆくことは辛い/でも明日こそは 新しい人生が/輝きに満ちている 信じて~♪」最後、旅人はEXCITERに変身。

 黒鳥達によるアダルトなロケット。9人の男役達によるカッコイイダンス。3組のデュエットダンスは、真飛聖&桜乃彩音、壮一帆&天咲千華、愛音羽麗&月野姫花。贅沢なデュエットダンスだった。そして、パレードでフィナーレとなる。

 今回の席は、どうやら「日向燦」席でもあったらしく、芝居でもショーでも、日向さんが近くに来ることがとても多かった。日向さんはこの公演で退団してしまうということが分かっていたので、日向さんが近くに来たときは、舞台中央そっちのけで、思わずガン観してしまった(笑)。でも、一度も目線は合わなかったような気がする。観すぎたか!?(笑)


太王四神記

2009年04月18日 | 宝塚花組2(真飛聖)

①2009年2月14日(土)15:30開演 東京宝塚劇場 S席 1階12列50番台 花組公演

②2009年2月15日(日)11:00開演 東京宝塚劇場 S席 2階4列40番台 花組公演

◆NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター 幻想歌舞劇『太王四神記』-チュシンの星の下に- ~韓国ドラマ『太王四神記』より~ (脚本・演出:小池修一郎)

 14日のチケットは私が、15日のチケットは友人が、それぞれ友の会抽選で当てた!完璧なコンビネーション!(笑) 原作ドラマがとても面白かったので、宝塚での舞台化が決まった時から、絶対観に行こうと決めていた。2008年の観劇納めは11月。2009年の観劇始めは2月。この2ヶ月間が長かった…。観劇切れの禁断症状に苦しんだ2ヶ月間に、たまっていた観劇メモを書きあげ、すっきりした気分で、いざ東京へ!天気予報によると、東京の予想最高気温は20℃。まっさかぁ~と思いながらも、春仕様の格好で出かけた。コレ正解。本当に暑くてビックリした~。

【第1幕】

第1場 神の子ファヌン

 上手花道にコムル村の村長であり玄武の神器の護り主であるヒョンゴ(未涼亜希)がセリ上がり、偉大なる王タムドクの物語を語り始める。神話の時代。虎族VS熊族。虎族の暴虐を見かねて地上に降りた神の子ファヌン(真飛聖)は、虎族の女王カジン(桜乃彩音)の火を操る力を紅玉に封じ込め、その紅玉を熊族の乙女セオ(愛音羽麗)に託す。ファヌンとセオは愛し合い、やがて子供が生れる。火の力を奪われ、怒りと嫉妬に駆られたカジンは、セオの子供を奪い去り、深い谷底へと投げ落としてしまう。目の前で我が子を殺されたセオは、衝撃と怒りのあまり、憎悪の炎の化身・黒朱雀へと変身してしまう。この場面の演出がすごく上手いと思った。舞台中央のセリの上では燃え盛る炎の映像をバックに、黒朱雀が羽根を大きく広げてバッサバッサしている。その下では、銀色(?)の大きな布が舞台全体を覆い、その波打つ布に赤い照明が当てられると、本当に黒朱雀の炎が世界を焼き尽くしているように見える。ファヌンは青龍(真野すがた)・白虎(朝夏まなと)・玄武(望海風斗)を呼んで炎を消そうとしたが、黒朱雀の炎は凄まじく消すことはできない。ファヌンは最後の手段を使うしかなかった。憎悪の源を絶つ。すなわちセオを殺すことだった。ファヌンは天弓でセオの心臓を射抜き、世界は救われた。ファヌンは四神の力を神器の中に封じ込め、いつの日かチュシンの星が輝く時、愛に満ちた世界を創る王を遣わすと告げて、地上を後にするのだった…。

第2場 チュシンの星~王の誕生

 二千年の時が巡り、チュシンの星が輝く時、高句麗に二人の男児が誕生した。一人はヤン王(星原美沙緒)の妃チャピ(初姫さあや)が産んだタムドク王子。もう一人は大貴族ヨン・ガリョ(夏美よう)の妻でありヤン王の妹であるセーム(花野じゅりあ)が産んだヨン・ホゲ。天地神堂の大神官は王妃が産む子こそチュシンの王であると予言していた。ヤン王はチュシンの王を守るため予言の内容を公にせず、王妃は人里離れた山奥でタムドクを産んだ。

第3場 神器の行方

 チュシンの王が目覚める時、四種の神器も目覚める。虎族の魔術師プルキル(壮一帆)は秘密結社・火天会を結成し、二千年間この時を待ち続けていた。第2場から第3場にかけての展開が非常にめまぐるしい。盆がぐるぐるぐるぐる回転して、四種の神器を巡る攻防を描き出す。まずは東百済のサビ城。火天会士は朱雀の神器と王女キハ(月野姫花)を連れ去った。遅れて辿り着いたコムルの民は、キハが床下に隠した妹スジニを発見した。スジニの額には不吉な黒朱雀の影が浮かび上がったが、ヒョンゴ(梅咲衣舞)の嘆願でコムル村に連れ帰ることにする。続いて西百済の関彌城。火天会士に追い詰められた城主(眉月凰)は、青龍の神器を息子チョロ(華耀きらり)の心臓に突き刺し、息子の命を神器に託した。続いて北国靺鞨の鍛冶村。パソン(桜一花)は兄から白虎の神器を預けられた。兄は妹を逃がすため、自ら火天会士の前に飛び出し、命を奪われた。あぁ、忙しい忙しい。

第4場 成長

 タムドクとヨン・ホゲの少年時代を演じるのは、野々すみ花さんと白華れみさん。タムドクは生れてすぐに母親を失った。父王は、やがてチュシンの王となる息子のためを思って、頭も身体も弱い王子を演じて敵の目を欺くよう命じていた。タムドクは孤独だったに違いない。一方、両親の期待を一身に背負ってすくすくと成長したヨン・ホゲは、明るく社交的で武芸にも秀でた人気者。しかし、大人達の思惑とは裏腹に、二人は友情を育くんでいく。やがて、成長したタムドク(真飛聖)とヨン・ホゲ(大空祐飛)が現れ、銀橋を歩きながら歌う。心許し合い/痛み分かち合える/誰にも汚せぬ/二人の絆/どちらが王でも/切れることなど無い~♪ 真飛さんも大空さんも楽しそうだ(笑)。

第5場 国内城下~ポンファ通り

 別れ別れになっていた姉妹、キハ(桜乃彩音)とスジニ(愛音羽麗)が、そうとは知らずにすれ違う場面。キハの付き人サリャン(華形ひかる)が、「キハ様は、体調が思わしくないヤン王の病気平癒の祈祷に向かわれるのだ!」みたいなことを言っていて、通りすがりの見ず知らずの他人になぜそこまで説明する?と思ってしまったのだが、あれはたぶんスジニに言っているのではなく、城下の人々に聞かせるためにわざと言ったんだな。「ヤン王が死にそうだ」という噂が広まるように。

第6場 王宮の回廊~書庫

 タムドクは王宮の書庫でキハと出会う。火天会に操られているキハは、神器の行方を知る手がかりを探すため、巫女見習いとして王宮内に送り込まれていたのだ。キハが火を操る力を披露するシーンが凄くて、素直に驚いた(笑)。今回の公演は、炎の演出がとても重要。「音響」「照明」「映像」、どれも本当に大事ですよね~。舞台は総合芸術だと改めて実感。

第7場 ヤン王の寝室

 タムドクは、薬草の知識があるというキハに、父・ヤン王の症状を診てほしいと頼む。キハは薬の臭いを嗅ぎ、毒草・トリカブトが混ざっていることを見抜く。誰かがヤン王を暗殺しようとしている。寝室に衝撃が走った。

第8場 ヨン・ガリョ邸

 ヨン・ガリョ邸では部族長達が集まって酒宴が催されていた。そこには西域の商人を名乗るプルキル(壮一帆)も参加していた。ヤン王亡き後は、ヨン・ホゲ様こそ次の王に相応しい。ヨン・ホゲの母・セームは、超ゴキゲンだ。そこへタムドクが訪ねて来て、セームと二人だけで話がしたいと言う。ヤン王に毒草を盛った犯人がセームだと見破ったためだ。この件に関しては公にしない。そのかわり二度とこのような考えを持たないように。タムドクは冷静に話を進めた。そこには「バカでのろまなタムドク王子」はいなかった。タムドクに騙されていた。タムドクがチュシンの王だなんて信じたくない。自分のせいでヨン・ホゲに迷惑がかかるかもしれない。様々な思いが交錯し怒り狂ったセームは、ヤン王に盛った毒薬を自らあおり、ヨン・ホゲに「チュシンの王になれ」という遺言を遺して死ぬ。セームを演じた花野さん、迫真の演技だった。

第9場 運命

 セームの死を知り自責の念に駆られるタムドクをキハが慰める。タムドクとキハは互いに好意を抱き始めていた。しかし、幼い頃、プルキルに火天会の烙印を捺されたキハは、火天会から逃れられないのだった…。

第10場 ヨン家・セームの通夜

 母の自殺の理由について何も知らないヨン・ホゲは、母の棺を前に慟哭する。そこへヨン・ホゲを担ぎ上げて神器を集めようとするプルキルが、キハを伴って現れる。プルキルに操られているキハは、「ヨン・ホゲ様こそチュシンの王である」と朱雀の神器の護り主として宣託を告げる。ヨン・ガリョは覚悟を決めた。プルキルの力を借りてでも、ホゲを王座に就けると。しかし、ホゲ自身は納得がいかない。自分自身の力で正々堂々と王座を掴みたいんだ!宣託を信じたい気持ちと、信じ切れない気持ちの狭間で揺れ動くホゲ。もう一度朱雀の神器に聞いてくれ!ホゲがキハを急き立てる気持ち、よく分かるなー。『太王四神記』を花組で舞台化すると知った時点で、ヨン・ホゲ=大空祐飛、だと思った。そして、大空さんに惚れる、と思った(笑)。

第11場 ヤン王の寝室

 ヤン王はタムドクを枕元に呼び、己の聡明さをヨン・ガリョに明かしてしまったことを咎め、用心を促した。さらに、キハの素性をも疑い、それが王たる者の宿命だと諭す。しかし、タムドクは、人を疑うことなく、人々の喜びや悲しみを理解し、共に笑い、共に泣くことのできる王になりたいと告げるのだった。

第12場 ポンファ通り

 「タムタム」の場面(大笑)。ヤン王の快気祝いと称して、高句麗の五部族を集めた武道大会が、ヨン家主催で開催されることになった。城下ではスジニ達が武道くじを売って大盛り上がり。そこへお忍び中のタムドクが現れる。「お兄さん、名前なんていうの?」「タム…タム…(本名言えないしなぁ…どうしよう…)」「あぁ!タムタムっていうのか!」(大笑)。これ、小池修一郎氏のアイディアなのかなぁ?すっごく…ナイス!!(大笑) タムタムは、チョルロ部族のセドル(月央和沙)やシウ部族のチュムチ(朝夏まなと)達と知り合い、親交を深める。

第13場 高句麗一武道会

 青軍・東のソノ部族。黄軍・南のスンノ部族。緑軍・西のカンノ部族。黒軍・北のチョルロ部族。赤軍・国内のケマ部族。「高句麗一武道会」の振付は若央りさ氏、「試合」の振付は桜木涼介氏。この場面は1階席から観たときよりも、2階席から観たときの方が、フォーメーションがよく分かって断然面白かった!やっぱり戦いのダンスシーンはカッコイイなぁ!ヨン・ホゲ率いる赤軍が武器に細工をするという卑怯な手を使っていることを知ったタムタムは、スジニと共に黒軍の助っ人として武道会に参戦。ヨン・ホゲとタムタムの一騎打ちは、タムタムが見事勝利したが、タムタムの正体がタムドク王子だとバレてしまった。王子が特定の部族に加担したことを批判する声が上がり、ヤン王はタムドクに謹慎を命じた。そして、謹慎が解けた暁には、タムドクに王位を譲ると宣言した。強い者が王ならば、自分でなくてもいいはずだ。タムドクはキハを連れて逃げ出した。

第14場 謀略

 この謀略は酷すぎる。各部族長の息子達を誘拐して殺し、それをタムドクの犯行にして、ヨン・ホゲを王座に就けよう、という計画。もちろん発案者はプルキル。それにヨン・ガリョが乗った形。

第15場 タムドクの生誕地

 逃げるタムドクとキハ。プルキルが捺した火天会の烙印が痛み出し、歩けなくなってしまうキハ。その烙印にタムドクが触れると、不思議と痛みが和らぐのだった。やがて二人は、タムドクが生れた場所へと辿り着く。何もかも捨てて、ごく普通の一人の男と一人の女として愛し合いたい。それだけが二人の願いだった。

第16場 高句麗内あちらこちら

 翌朝、ヨン・ホゲの軍隊が、タムドクとキハが一晩過ごした場所に現れた。各部族長の息子達が火天会に誘拐されたと知らされたタムドクは、ヨン・ホゲの軍隊と共にテジャ城へ向かうことに。ここでヨン・ホゲの迷台詞。「別れの儀式を…」。そう言われたタムドクはキハに別れのキスをする。ヨン・ホゲだってキハのことを愛しているのに、この台詞はあまりにも痛すぎるのでは…(それが狙い?)。一方、スジニ達もタムドクを心配して、ヨン家の軍隊の後を追っていた。

第17場 王家の大殿

 ヤン王はキハを王家の大殿に呼び出した。キハが火天会の一味であることを知ったヤン王は、タムドクにキハを諦めさせるために、そしてチュシンの王になるべき者であるということを思い出させるために、自らをチュモ神剣で刺した。驚いたキハは、咄嗟にヤン王の手からチュモ神剣を奪い取った。そこへ近衛隊のカクダン(望月理世)が飛び込んでくる。カクダンの目には、キハがヤン王を刺し殺したようにしか見えなかった。

第18場 テジャ城

 タムドクがテジャ城に到着してみると、各部族長の息子達は既に殺されていた。この場面は本当にゾッとした。プルキルとヨン・ガリョの奸計に陥り、犯人の汚名を着せられそうになるタムドク。そこへ傷つき息も絶え絶えなカクダンが、スジニ達に支えられながら、チュモ神剣を握り締めてやって来た。驚くダムドクにカクダンは、キハがヤン王を殺害したこと、ヤン王がタムドクに「チュシンの王になれ」という遺言を遺して死んだことを告げ、息絶えた。キハがなぜ!?タムドクの激しい怒りと悲しみに呼応するように、ヒョンゴの持つ杖が光を放った。ついに玄武の神器が目覚めたのだ。

【第2幕】

第1場 コムル村~阿沸蘭寺~ヨン・ガリョ邸

 チュシンの王として覚醒したタムドクは、玄武の神器を護り続けてきたコムル村にいた。なぜキハがヤン王を殺したのか?本当にキハがヤン王を殺したのか?タムドクは真実が知りたかった。キハは阿沸蘭寺にいた。自分の愛が、タムドクがチュシンの王になることの妨げになっている。愛するタムドクを想って、キハは悩み苦しんでいた。玄武の神器が目覚める瞬間をヨン・ホゲは見た。自分はチュシンの王ではないのかもしれない…。でも、朱雀の護り主・キハが自分こそチュシンの王だと告げたのだ。しかし、その朱雀の護り主はタムドクと愛し合っている。そして自分は…キハを愛している。何もかもうまくいかない。運命の皮肉に、ヨン・ホゲもまた苦しんでいた。

第2場 天地神堂

 ヨン・ガリョ達の吹聴により、各部族長の息子達を殺害したのも、ヤン王を殺害したのも、全てはタムドクの仕業という話になっていた。真実を明らかにするため、刺されても死ななければ無実が証明されるという「カウリ剣」が提案された。そこへタムドクがやってくる。タムドクはカウリ剣を受けることを了承した。ヨン・ホゲが今まさにタムドクの胸を貫こうとしたその時、ヤン王の声を聞いたキハは、ヨン・ホゲから剣を奪い取り、タムドクの胸を刺し貫いた。一瞬の沈黙。タムドクは生きていた。無実が証明されたのだ。大神官は、青龍の神器・白虎の神器を先に見つけたほうが真のチュシンの王である、と告げた。

第3場 青龍・白虎

 タムドク軍は青龍の神器を求めて関彌城へと出立した。一方、ヨン・ホゲ軍は白虎の神器を求めて靺鞨へと出立した。いまだかつて誰も生還したことのない伝説の儀式「カウリ剣」で、タムドクは生き残った。ヨン・ホゲは、もはや自分がチュシンの王ではないことを認めざるをえなかっただろう。しかし、もう後には引けないのだ…。

第4場 関彌城へ(出立準備)~関彌城

 「あんた、案外イイ男だねぇ~」の場面(笑)。関彌城主チョロ(真野すがた)は仮面で顔を覆った恐ろしく強い男。しかしタムドクには勝てなかった。その時、カグン将軍(高翔みず希)がタムドクの前に進み出た。実はこの時が来るのをずっと待っていました。青龍の神器はチョロ様の心臓の中に隠されています。神器を取り出すことができるのは真のチュシンの王のみ。どうかチョロ様をお助けください。皆が見守る中、タムドクはチョロの心臓に剣を突き刺した。すると、青龍の神器が現れ、チョロの顔を覆っていたかさぶたがはがれ落ち、その下から本来の美しい顔が現れた。この場面、結構好きなんだよなぁ~。盆回りで水煙草を吸いながらの登場とか、なんだか気だるい雰囲気で、とってもチョロらしい(笑)。

第5場 靺鞨

 白虎の神器が見つからない。皆殺しにしてでも白虎の神器を見つけ出せ。靺鞨に行ったヨン・ホゲは味方が凍りつくほど容赦なかった。完全に歯車が狂いだした。自分でももう止められない。ヨン・ホゲは破滅の道を突き進んでいた。

第6場 阿沸蘭寺~王宮内

 キハはタムドクの子を身籠っていた。プルキルは、子供の命を助けたければ、ヨン・ホゲと結婚するよう、キハに命じた。一方、タムドクは、青龍の神器と護り主・チョロを従え無事帰還。すると、フッケ将軍(悠真倫)が、タムドクにスジニとの結婚を勧めた。驚いたヒョンゴがスジニを見つけたときのいきさつを説明した。スジニは自分が黒朱雀の転生かもしれないという事実を初めて知る。黒朱雀の転生ではチュシンの王の妃にはなれないし、タムドクが今でもキハを愛していることを知っていたスジニは、自分の恋心を封印するしかなかった。

第7場 ヨン・ホゲの帰還

 ヨン・ホゲは、キハがタム・ドクの子を身籠っていることを承知の上で、キハとの結婚を承諾した。表向きはチュシンの王と朱雀の護り主の結婚であり、めでたいことこの上ない。しかし実際は、愛しているのに愛のない、見せかけだけの乾いた仮面夫婦。寒い…寒すぎる(泣)。スジニは密かにキハのもとを訪れ、タムドクに会ってほしいと告げた。キハはスジニと話をしているうちに、生き別れになっていた姉妹であることに気づく。運命の悪戯に驚く二人。

第8場 大殿

 スジニの手引きにより、タムドクとキハは再会を果たした。キハは、ヨン・ホゲの子を身籠っていると嘘をつく。タムドクに自分を諦めさせ、決別するためだ。タムドクはショックを受けながらも、キハとやがて生まれてくる子供の幸せを祈るのだった。

第9場 国内城内

 プルキルは、キハが生む子供、チュシンの王の血を引く子供の血で、神器を目覚めさせようとしているのだ。幼いキハをさらって火天会に連れてきたことを後悔していたサリャンは、ヨン・ホゲにキハを助けて欲しいと頼んだ。しかし、その現場をプルキルに見咎められ、サリャンは殺されてしまう。ヨン・ホゲはクールに、子供の命と引き換えに、朱雀の神器をくれとプルキルに言った。自らをどんどんダークサイドに落としていく男ヨン・ホゲ。

第10場 戦場

 ヨン・ホゲ軍VSタムドク軍。数では圧倒的に優勢なヨン・ホゲ軍。大きな盾を構えての進軍は圧巻。強そう。戦いが始まった。チュムチがやられそうになった瞬間、光が放たれた。チュムチの命を救ったのは、パソンがチュムチにあげたお守りだった。実はそれこそが白虎の神器であり、その護り主がチュムチだったというわけ。その時、火天会士がタムドクを狙って放った矢が、ヨン・ホゲに刺さってしまう。どこまでも不運な男ヨン・ホゲ。タムドクはヨン・ホゲのもとに駆け寄り、抱きかかえた。ヨン・ホゲは、キハが身籠っている子供はタムドクの子供であると告げ、朱雀の神器をタムドクに手渡した。死の間際、ヨン・ホゲは昔のヨン・ホゲに戻っていた…(泣)。タムドクは大切な友人を一人、永遠に失ってしまったのだ。あぁ、なぜこんなことになってしまったんだ。神器なんか…神器なんか!

第11場 阿沸蘭寺

 阿沸蘭寺ではキハがタムドクの子を出産。タムドクはプルキルに、四つの神器と引き換えに、キハと子供を返すように言った。それを聞いたキハは、神器をプルキルに渡したら世界が破滅すると訴えた。プルキルはキハが産んだ子の血で天の力を手に入れようとする。それを見たキハは、怒りの化身・黒朱雀へと変貌してしまう。世界を焼き尽くす黒朱雀の炎。タムドクは神器を投げ捨て、炎の中へ飛び込んだ。愛するキハ一人救えない自分に、世界を救えるはずがない。キハと運命を共にしよう(一緒に死のう)。おそらくそういうことだったんだと思う。すると不思議なことが起こった。黒朱雀の炎が鎮まっていったのだ。

第12場 天空

 「あのクレーン再び!」の場面(笑)。タムドクとキハを乗せた愛のクレーンが、客席に向かってズンズンズンズン進んでくる。1階席から観劇した1日目は、クレーンを下から見上げる感じになり、2階席から観劇した2日目は、タムドクとキハが近づいてきてくれて、こんにちは、という感じだった。いろんな意味でドキドキした。私は結構好きです、このクレーン(笑)。結果的にタムドクは神器を拒絶した。しかし、それは咄嗟の判断ではなく、神器探しをしている最中から、無意識のうちに考えていたことだと思う。タムドクは王として、神の力に頼るのではなく、人間の力だけで平和な世界を築くことを誓うのだった。

第13場~第18場 フィナーレ

 大空さんが銀橋で主題歌を熱唱して、フィナーレが始まる。今回のフィナーレナンバーには四神の名前が付けられている。「朱雀・ロケット」「青龍・CLUBMIX」「玄武・ファイターズ」「白虎・ボレロ」といった具合。それぞれの衣装の色も四神のテーマカラーになっている。朱雀はロケット。衣装は色も形もまさに朱雀のイメージでピッタリ。青龍は「らっしゃい、らっしゃい、オソオセヨ~♪」というフレーズが印象的な、どちらかというと年齢若めの、爽やかでカッコイイダンスナンバー。私の目は真野さんに釘付けだった(笑)。玄武はどちらかというと年齢高めの、男役達による力強くてカッコイイダンスナンバー。途中で音が止まったような感じになって、不意にまた踊り始めるところが凄くカッコイイ。ここでは私の目は大空さんに釘付け(笑)。白虎は主演コンビによるデュエットダンス。そして華やかなパレードにて幕。フィナーレの振付は全て御織ゆみ乃氏。う~ん、どれもカッコよかった。

◇おまけ

 宝塚版『太王四神記』、すんごく面白かった!舞台化、大成功でしょう。あれだけ長い話をよくまとめたなぁと素直に感心。エンディングも宝塚版の方がハッピーな気がするし。そして、役としては、やはり「ヨン・ホゲ」と「プルキル(大長老)」がオイシイ。大空さんと壮さんのファンが増えたことは間違いないと思う(笑)。早くも星組での再演が決定していたので、花組版を観る前から、星組版の配役を考えたりして楽しんでしまった。気になるのは星組版が『Ver.Ⅱ』と銘打っているところ。ストーリーや演出に変更点があるのだろうか?う~ん、気になる。そういえば、休憩時間に君島十和子さん一家とすれ違った。十和子さんと目が合った、と思ったんだけどなー(笑)。


外伝ベルサイユのばら-アラン編-/エンター・ザ・レビュー

2008年12月27日 | 宝塚花組2(真飛聖)

2008年9月27日(土)14:00開演 イズミティ21 A席 30列40番台 宝塚歌劇花組全国ツアー仙台公演

 年に一度の宝塚母娘観劇デー。我が家の恒例行事としてすっかり定着。母も毎年この日を楽しみにしているようで、連れて行き甲斐があるというもの(笑)。それにしても、なかなかイイ席が当たらないんだよなぁ~。仙台公演観劇は今年で3回目になるのだが、なぜかいつも上手後方席(笑)。いいんですけどね、別に。舞台を観られるだけで幸せですから!

◆宝塚ロマン『外伝ベルサイユのばら-アラン編-』(原作・外伝原案:池田理代子/脚本・演出:植田神爾)

《第1場 荒廃した練兵場の広場①》

 な、何っ!?この荒涼とした寒々しいセットは!?私はベルばらを観に来たんですけど!?ベルばらと言えば、ライトが点いた瞬間にピンクがパーッじゃないんですか!?アラン(真飛聖)登場。アランは重たそうなマントを羽織っていて、表情も何だか疲れた感じ。やんちゃな「荒くれアラン」ではなく、大人の「アラン将軍」だった。妹ディアンヌ(桜乃彩音)登場。ディアンヌの衣装は灰色っぽい地味な色。兄アランに向ける眼差しは優しいが、生気が感じられない。あぁ、ディアンヌちゃんはもう死んじゃってるんだなぁ…(オープニングそうそう…)(泣)。どうやらバスティーユの戦闘から10年経っているらしい。非常に怪しい男が登場。声で星原美沙緒さんだと分かったが、専科の星原さんがただの墓堀りのわけがない。一体何者?

《第2場 プロローグ》

 ベルサ~イユ~、ベルサ~イユ~、あーあーあー、ベルサ~イユにばらが咲~く~♪ はいっ!待ってましたー!これですよ、これ。ピンクとフリルの洪水!これでこそベルばらです(笑)。この新テーマソングについても、初めて生で聴いたはずなのに、ベルばらテーマソングとして素直に受け入れてしまった。恐るべしCSの刷り込み効果(笑)。プロローグの紳士S(真飛聖)、プロローグの淑女S(桜乃彩音)、プロローグの紳士A(壮一帆・愛音羽麗)、カゲソロ(絵莉千晶)。ディアンヌちゃんがきれいなドレスを着ていて良かった(笑)。

《第3場 ユリカーテン① ~ 第4場 練兵場の広場① ~ 第5場 ユリカーテン②》

 「やってくれるじゃないか、威勢のいい女の隊長さんよぉ~!」の場面。ベルばらお馴染みの場面に心が和む(笑)。真飛さんは以前にもアラン役をやっているだけあって、芝居に安定感が感じられる。オスカル役は愛音さん。どちらかといえば、女っぽいオスカルかな?「女の下では働けない!」(byアラン) オスカルという人間の真の姿をまだ知らないアランは、オスカルに徹底的に抵抗する。

《第6場 荒廃した練兵場の広場②》

 再び廃墟。つまり、前場はアランの回想シーンだったというわけ。「あの頃からお兄さんはオスカル隊長さんを愛していたのよ」(byディアンヌの亡霊) 神に召されたディアンヌちゃんは何でもお見通しなのだ。

 

《第7場 面会室》

 衛兵隊士の家族達が面会にやって来る。面会を待つ間の女達の会話の中で、ディアンヌの婚約から相手の男(貴族)の裏切り、そして自殺に至るまでの経緯が一気に語られる。ええっ!?「ディアンヌの自殺」って、ものすごく重要なエピソードじゃないの?こんなにあっさり片付けちゃうの??

 私の初宝塚は、1991年月組『ベルサイユのばら-オスカル編-』(テレビ)。無断欠勤が続くアランを不審に思ったオスカル(涼風真世)がアランの家を訪ねる。するとそこには、最愛の妹ディアンヌを失ったショックから、気が狂い、我を忘れ、廃人のようになってしまったアラン(久世星佳)の姿があった。事情を知ったオスカルは、ディアンヌが憧れていた自分のブロンドの髪を一束切り、ディアンヌの亡骸に供えて欲しいと告げる。死人のようだったアランの目に徐々に生気が戻り、やがてオスカルの姿をその目に捉える。こらえてきたものが一気に溢れ出す。アランはオスカルにすがりついて号泣する。久世アランの泣き方は、本当に悲痛な泣き方なのだ。何度見ても、そのシーンは涙せずには見られない。バスティーユにも劣らない名シーンだと私は思っている。その出来事を境にして、アランの中でオスカルに対する思い(尊敬・忠誠心・恋心など)が明らかに変わるのだ。…やはり、ぜひとも入れて欲しかった…。

 女達は息子や兄弟や恋人に会うためにやって来るのだが、実は食料や武器をこっそり持ち帰るためでもあった。それほどまでにパリ市民は飢えに苦しんでいたのだ。それらに薄々気づいていたオスカルは、女達を問い詰め事実を白状させる。しかし、オスカルは隊士やその家族達を罰したりはしない。そうせざるを得ないフランスの現状を憂うのだった。

《第8場 ユリカーテン③ ~ 第9場 ベルサイユの宮殿①》

 アンドレ役は壮さん。壮さんは、組替え前の雪組全国ツアーで、すでにアンドレ役を経験済み。あぁ、やっぱり観に行きたかったなー、雪全ツベルばら(笑)。貴族で近衛隊士のジェローデル(未涼亜希)がやって来て、ジャルジェ将軍にオスカルとの結婚を申し込んできたとアンドレに告げる。アンドレもジェローデルもアランも、オスカルのことを心の底から愛している。オスカルはモテモテなのだ。逆に言えば、そういうイイ男達が皆好きになってしまうほど、オスカルという人物は、人間的魅力に溢れていたということですよね。自分にも貴族の身分さえあれば…と嘆くアンドレ。そこへアランがやってくる。身分違いの恋に悩んでいるのか?からかうアランに対して、アンドレは大人の対応で余裕を示す。お前もオスカルのことが好きなくせに。好きな人に意地悪な態度を取るなんて、お前子供だな~。喧嘩の最中、アランはアンドレの視力が失われつつあることを知った。皆には黙っていてくれ。アンドレはアランに懇願した。

《第10場 ユリカーテン④ ~ 第11場 ベルサイユの宮殿②》

 パリの国民議会会議場に居座っている平民議員を力づくで立ち退かせるように、との命令が衛兵隊に下る。「衛兵隊は国民を守るためのもの。平民に銃を向けることはできない!」(byオスカル) オスカルの意見はブイエ将軍(星原美沙緒)に一蹴され、オスカルに賛同したアランもまた激しい怒りを買った。ブイエ将軍を追いかけようとするアランと、それを止めようとするオスカル。そのどさくさの中で、アランは衝動的にオスカルを抱きしめ、キスしてしまう。その後、私の脳内劇場では、「違う違う!私の知っている唇は…もっとふっくらとしていて…そして…(と、アンドレにキスされたときのことを思い出し、そんな自分に衝撃を受けるオスカル)」という原作の場面が展開されました(笑)。

《第12場 荒廃した練兵場の広場③》

 またまたまた廃墟。オスカルのことを愛していたと告白するアラン。パリ進駐の頃には、もうこの世にはいなかったディアンヌ。魂となって、オスカル率いる衛兵隊を見守っていたのでしょう。

《第13場 練兵場の広場②》

 練兵場の広場。アランはアンドレの目に剣を向けた。しかし、目が見えていないアンドレは異変に全く気づかない。驚く衛兵隊士達。やがて、アンドレの目が見えていないことを皆が知る。「アラン!裏切ったなー!」(byアンドレ) 目が見えないヤツをパリに連れて行くことはできない!足手まといなだけだ!ここに残れ!自分はどうしてもパリに行かなければならない。たとえ死んでも。頼む、行かせてくれ。アンドレの悲壮な決意を知った隊士達は、アンドレのパリ行きを許した。敵がどこにいるかは自分達が声で指示を出すから、ちゃんと聞いていろよ。よし練習だ。左!右!…下…。跪くアンドレ。皆が泣いていた。オスカルだけでなく、アンドレもまた、衛兵隊の皆と堅い絆で結ばれていたのだ。ココ、泣ける場面だった。

《第14場 革命A ~ 第15場 革命B ~ 第16場 ユリカーテン⑤》

 この外伝ベルばらシリーズの「革命」は市民中心で、オスカルやアンドレは出てこないらしい。(つまり、バスティーユの戦闘と同時刻に別の場所で繰り広げられていた戦闘シーンが描かれているらしい。)市民達の中心で旗を振っていたのは、未涼さんだったと思う。(ジェローデルと市民の二役ですね。)激しい戦闘の末、民衆は勝利を得た。

《第17場 荒廃した練兵場の広場④》

 またまたまたまた廃墟。フランス革命初期を回想するアラン。オスカルとアンドレは、あのときの戦闘で死に、アランは片腕を失った。ここまでアランの片腕がなかったことに気づかなかったマヌケな私(苦笑)。「自由・平等・友愛」の旗印のもと始まった革命だったが、次第に混乱の様相を呈してきた。アランはオスカルの遺志を引き継ぎ、貴族も平民もない平等な社会を目指そうとするのだが…。

 

《第18場 ナポレオンの執務室 ~ 第19場 ユリカーテン⑥》

 組長の夏美ようさんは、ダグー大佐とナポレオンの二役。専科の星原美沙緒さんは、ブイエ将軍とデスマズの二役。民衆は、革命後の混乱をまとめあげたナポレオンを強い指導者として歓迎した。しかし、ナポレオンの野心を見抜いたアラン将軍は、ナポレオンと決別する。ナポレオンは、強いフランスを実現するために自ら皇帝となって国をまとめようと考えていた。不穏分子は早々に消さなければならない。ナポレオンとデスマズは策謀をめぐらせる。ということは、第1場に出てきた墓守りは、変装したデスマズで、アラン将軍を暗殺するために後をつけていたのかな?

 

《第20場 荒廃した練兵場の広場⑤》

 またまたまたまたまた廃墟。ナポレオンの放った刺客が隻腕のアラン将軍に襲いかかる。アランはオスカルの遺志を継いで、最期まで雄々しく戦った。剣を高く掲げたまま絶命したアランの上に、雪がしんしんと降り積もる…完!

 ディアンヌは最初から死んでいるという設定なので、「荒廃した練兵場の広場」の場面にしか出られないのが苦しい。(ディアンヌを登場させるためには、必然的に時間を行ったり来たりしなければならない。)衛兵隊士達のアイドルだった頃の生き生きとした可愛いディアンヌちゃんも登場させてあげたかったな…。

◆グランド・レビュー『エンター・ザ・レビュー』(作・演出:酒井澄夫)

《第1場 プロローグ(エンター・ザ・レビュー)》

 美しいアールデコのセット。中心の階段に歌う紳士S(真飛聖)が登場し、主題歌を歌う。左右には黒燕尾の紳士が並び、踊る。夢の世界、レビューの世界へといざなう。主題歌名は「♪エンター・ザ・レビュー」だとばかり思っていたのですが、実は「♪夢を見れば…」だったのですね。

《第2場 シャンソン・ド・パリ》

 「♪パリはシャンパン」(歌う淑女S:桜乃彩音)、「♪パリに帰りて」(歌う紳士B:愛音羽麗)、 「♪パリのタンゴ」(歌う淑女A:桜一花、歌う紳士B:未涼亜希)、「♪行かないで」(歌う紳士A:壮一帆)、「♪パリ・パナム」(エトワール:真飛聖)、「♪じらさないで」(エトワール:真飛聖)。エトワールの美女として、歌いながら客席の間を練り歩く真飛さん。男役メイクのせいか、女装していても、どこか男らしさが残るから不思議です(笑)。観劇後に母が開口一番私に質問したことは、「あの客席に降りてきて歌った人は、男役(アラン)の人?」でした(笑)。

《第3場 ノスタルジー》

 一人のコメディアン(壮一帆)が現れて客を呼び込み、歌う。コメディアン用の帽子はなぜあんなヘンな形をしているんだろう?客席に降りてきて、手品のように何かを出して見せてから舞台に戻る、という予定だったようだが、ちょっとトラブルが発生したらしく(なかなか出なかった挙句、落とした、みたいな?)、舞台に戻るのが遅れてしまった壮さん。あ~歌詞が分かんなくなっちゃったよ~みたいなことを言って客席の笑いを取っていた。もともと笑わせる場面だし、それはそれでアリかな、と思った。(母も同意見)

《第4場 ラ・ムール》

 花祭りの夜。旅回りのサーカス小屋の中。旅芸人一座のスター、コロンビーヌ(ルイーズ:桜乃彩音)が華やかに歌い踊っている。ルイーズに恋しているピエロS(真飛聖)はテントのすき間から熱い眼差しで見ている。やがて彼は赤いバラの花をやっとの思いでルイーズに渡し、二人は幸せそうに踊るのだが…。結局、ルイーズはピエロではなく、アレキン(愛音羽麗)と行ってしまったような気がするのだが…違ったかな?(うろ覚え)

《第5場 Cirque(チルク)猛獣使い!》

 サーカスの舞台。一人の猛獣使いの男(壮一帆)がいる。6匹の黒豹の女(ベルシャルマン)は猛獣使いの男と激しく妖しく踊る。実はこの場面が一番楽しみだった(笑)。鞭を激しく打って黒豹の女達を操り、満足げな笑みを浮かべる壮さんが素敵です(笑)。ベルシャルマンA(桜一花)と激しく妖しく踊る壮さんが素敵です(笑)。あ~、やっぱり楽しい場面だった!満足!

《第6場 ボワイヤージュ》

 飛行機の音。三人の青年(愛音羽麗・未涼亜希・望月理世)が小さな旅行カバンを持って歌ってゆく。三人のパリジャンはニューヨークの街へと向かう。

《第7場 ニューヨーク・シティ》

 光り輝く摩天楼。昼下がりの街角。街の男女が行き交い、歌い踊る。歌うアメリカ娘(桜乃彩音)。

《第8場 ミッドナイト・シティ》

 「大都会の夕暮れ」(マヌカンA:花野じゅりあ)、「ミッド・ナイト(プリミティブな夜)」(アフロの男S:真飛聖)、「ニュー・オリンズ」(ニューリズムの男女S:壮一帆、桜一花)、「ジャズのリズム(シカゴ・ニューヨーク)」(摩天楼の男女S:真飛聖、桜乃彩音)。

《第9場 ジプシーのかがり火》

 ジプシーの青年(愛音羽麗)が歌い、3人のジプシーの女(花野じゅりあ、天宮菜生、華月由舞)が絡む。他の場面とは全然違ったテイストのダンスで面白かった。野生的で土着的な感じ。とにかく腰の位置が低い。うまく説明できないなぁ(苦笑)。ちなみに、この場面の振付は若央りさ先生。

《第10場 ウナモール》

 朽ちかけた修道院のある丘。一人の若者(真飛聖)が恋の苦しみを祈り歌う。彼の心の影(シャドーの男達)が、彼の心の中の情景、苦しみを、祈るように踊る。シャドーの男A(壮一帆)。

《第11場~第14場 フィナーレ》

 ロケットボーイは朝夏まなとさん。「グランエスカリエ」。一人の青年(真飛聖)が現れ歌う。周りを女達が囲む。→女達は男達と入れ替わり、「♪愛しかない時」にのせて男達が踊る。→「♪愛しかない時」にのって、4組の男女が踊る。エトワールは絵莉千晶さん。

◇おまけ

 今回は後ろの列のおばさん(おばあちゃん?)集団の観劇マナーの悪さにガッカリしました。①芝居の最中に話をしたり、ガサゴソ物音をたてるのはやめてください。②幕が下りる前に帰るなら、静かに速やかに帰ってください。他の観客に迷惑だし、舞台上の役者さん達に対しても失礼だと思います。来年の全国ツアー仙台公演は、もうちょっと前方の良席で、心穏やかに舞台に集中して観劇したいものだと、強く強く思いました。

 来年の観劇始めは、花組さんの『太王四神記』の予定です。原作の韓国ドラマがとっても面白かったので、宝塚版も大いに期待しています!


愛と死のアラビア/Red Hot Sea

2008年09月23日 | 宝塚花組2(真飛聖)

2008年8月7日(木)18:30開演 東京宝塚劇場 S席 1階16列20番台 花組公演

 「花組のチケット取れたよ。」友人からのお誘いメール。あぁ~、9月に星組を観に行くから、8月は我慢しようと思ってたのにぃ~。どうしよう、どうしよう~。迷いに迷って、友人を待たせに待たせた末、ようやく観に行く決心をした。しかし、一旦「観に行く」と決めてしまえば、後は早い。旅の手配も手馴れたもの(笑)。後は、急な仕事が入りませんように、と神に祈るのみ。結局、安蘭さん・水さん・大和さんに続いて、真飛さんのお披露目公演も観に行くことになってしまった。お披露目ラッシュ完全制覇(笑)。

◆宝塚ミュージカル・ロマン『愛と死のアラビア』-高潔なアラブの戦士となったイギリス人-(原作:ローズマリ・サトクリフ/脚本・演出:谷正純)

《第1場 黄金の砂漠/第2場 砂漠に舞う異国のハヤブサ/第3場 極彩色の祝祭》

 第1場から第3場まではオープニングショーだ。エジプトが舞台だから、衣装にもセットにもゴールドをふんだんに使用して、舞台全体をきらびやかに演出し、会場を一気に盛り上げようという作戦。そこへ、一際豪華なキンキラキンの衣装に身を包んだ真飛聖さんが登場する。背後で燦然と輝いている太陽は、FANTASISTA大和の太陽ではないだろうか?真飛さんが「わ~たし~はホルス♪」と歌っていたので、真飛さんはホルスという役なんだなぁと思ったものの、その時は「なぜホルス?」と思っていた。しかし、今やっとそのわけが分かった。ホルス神はエジプト神話に登場する天空と太陽の神で、通常はハヤブサの頭を持つ男性として表現されるらしい。劇中でトマス・キースは、その射撃の腕前から「ハヤブサの目を持つ男」と呼ばれていた。つまり、トマス・キース→ハヤブサの目を持つ男→ハヤブサの頭を持つ男神→ホルス神という連想なのだろう。もしかしたら、トマスはホルス神の生まれ変わりという設定なのかな?

《第4場 市場の嘆き》

 1807年、オスマン・トルコ帝国の支配下にあるエジプト。戦火の傷跡を残した市場には、疲弊した人々の嘆きがむなしく響いている…。

《第5場 ハヤブサの目を持つ男》

 ここでようやく本日の主役トマス・キース(真飛聖)の登場となる。ここまで結構長く感じたなぁ。エジプト北部、地中海沿岸の港町ロゼッタ。イギリス軍狙撃兵トマス・キースと、同僚の軍医ドナルド・マクラウド(愛音羽麗)がエジプト軍の捕虜となってから3ヶ月が経っていた。二人の暮らしぶりはとても捕虜には見えなかった。エジプト風の素敵な衣装を着ており、広い部屋が与えられ、おまけにエジプト人兵卒メドヘッド(嶺乃一真)が世話係として付けられていた。射撃の名手と医者、二人は他の捕虜達とは区別されて、かなり優遇されていたようだ。

 ある日、エジプト太守ムハンマド・アリの長男イブラヒム(大空祐飛)が、フランスの軍事顧問デジュリエ大佐(夏美よう)を従えて、トマスのところにやって来た。ヒゲの大空さん。渋い(笑)。ムハンマド・アリが、「ハヤブサの目を持つ男」との異名を取るトマスを買い取ると言い出したため、その腕前の程を確かめに来たのだ。イブラヒムの求めに応じて、トマスはライフル銃を構えようとするが、左腕の怪我がまだ完治しておらず、銃身を支えることができない。トマスはイブラヒムに肩を貸して欲しいと言った。周囲のエジプト兵達に一瞬緊張が走るが、イブラヒムは悠然と背中を向けた。トマスはイブラヒムの左肩に銃身を置き、標的に狙いを定めた。バン!見事命中した模様。イブラヒムの口から「ハヤブサの目を持つ男!」という言葉が漏れた。イブラヒムは、トマスを「砂漠に舞う異国のハヤブサ」と称し、エジプト南部のヌビア地方で、ムハンマド・アリの次男トゥスンと共にベドウィン騎馬隊を訓練するよう命じた。

 イギリス軍人である自分が、敵軍に銃の使い方を教える!?いくら捕虜とはいえ、命じられても、そんなことは絶対にできない。なんだってそんな無茶苦茶な命令をするんだ!?困惑するトマスに、デジュリエ大佐がアドバイスを送る。敵に加担するのではない。エジプトの独立を助けるためだと思えばいい。言葉や信仰を学ぶのだ。

《第6場 悠久のナイル》

 女豹!獣とそれを追いかける人、たぶんそういった設定のダンスなのだろうとは思っていたが、まさか女豹だったとは…。なんかセクシー(笑)。ベドウィンの野営地のあるアスワンまでは、ナイル川を上る1ヶ月以上の船旅となった。

《第7場 ベドウィン騎馬隊》

 ベドウィン騎馬隊の面々は元気一杯。素朴で荒々しいダンスは訓練の様子を表しているのか。それとも単にいつもお祭り騒ぎ状態なのか(笑)。ムハンマドの次男トゥスン(壮一帆)登場。トゥスンは明るく素直な青年といった感じ。トマスが野営地に来てから、だいぶ時が経っているようで、トマスと騎馬隊の面々はすっかり打ち解け、信頼感も生まれている様子。

 突然、砂漠のオアシスを荒らし回っている盗賊の一団が、野営地を襲撃してきた。盗賊団に怨みを持っていたアブ・サラン(未涼亜希)は自分に行かせてくれと懇願したが、トマスはそれを許さなかった。トマスは、ベドウィン騎馬隊として組織的に戦うことを提案し、皆はそれに従うことにした。トゥスンは銃に弾を込めるのにかなり苦戦していた(笑)が、トマスの作戦は見事的中し、騎馬隊は快勝した。敗者の持ち物を戦利品として持ち帰るという掟になかなか馴染めないトマスは、人間までもが戦利品とされることを知り、驚愕した。アル・マリク(華形ひかる)も女を戦利品にしようと追い詰めていくが、逆に怪我を負わされたため、怒りに任せて殺そうとした。トマスは思わず割って入り、自分に与えられた戦利品(確か馬だったような…)と引き換えにして、その女を救い出すのだった。

《第8場 ヴェールを剥ぎ取られた女》

 トマスは助けた女をテントの中へ運び込み、怪我の手当てをしてやった。イスラムの女性は家族以外の男性の前では顔を見せないもの。激痛で気を失っている彼女に、トマスはそっとヴェールを被せてやるのだった。細やかな気遣いのできる男、ジェントルマン・トマス。

《第9場 砂漠の蜃気楼》

 トマスは夜の砂漠で物思いに耽っていた。砂漠の民を理解しようと努めてはいるものの、習慣・文化の違いにどうしようもない違和感・疑問を感じてしまう毎日。どうすればこの壁を越えることができるのか?答えは意外な人からもたらされた。「神様は一人さ。」トマスを探しに来たヤシム(望海風斗)が何気なく言ったその一言が、トマスの目の前をぱっと明るく照らした。そうだ!神は一人なのだ!人間が勝手に様々な名前を付けて崇め奉り、勝手に心の壁を作り上げているだけなのだ!心のモヤモヤが晴れたような清々しい気分になったトマスは、自分のテントに戻ることにした。

《第10場 アノウドとの別離》

 目を覚ました女はアノウド(桜乃彩音)と名乗った。もう一人の女性は侍女のサミーラ(白華れみ)。白華さんは新人公演でアノウド役を演じたそうなので、桜乃さんの演技を常に間近で見られるという意味では、いい役だったのかも。盗賊団に襲われ、父親という後ろ盾を失い、天涯孤独の身となってしまったアノウド。家族や仲間と離れて、遠い異国の地で一人暮らすトマスは、自身の境遇と重ねてアノウドに同情する。「私を兄と思ってほしい。」思いがけない優しい言葉に感動するアノウド。「私を妹にしてください!」

《第11場 ラクス・シャルキー》

 突然、幕前でセクシーなベリー・ダンスが始まる。花組経験の浅い私でも、中央にいる人が桜一花さんだということは分かった。

《第12場 後宮の宴》

 カイロの後宮に連れてこられたトマス。なんとトゥスンの結婚式が行われるのだという。相手には結婚式当日まで会わないのがエジプト流。相手の姿形はもちろん、人柄も家柄も何も知らない、というか興味がないという感じ。といって、結婚を嫌がっている風でもない。全てを大らかに受け入れるトゥスンなのだった。

 トゥスンは、ムハンマド・アリの第一夫人であり、イブラヒム・トゥスン兄弟の生母でもあるアミナ(邦なつき)にトマスを紹介した。アミナは思慮深く、とっても優しいお母さんだった。トマスはアミナと話すうちに、故郷の母を思い出した。トマスはアミナの求めに応じて故郷の歌を披露する。一座の者は皆トマスの歌声に聞き惚れた。特に、トゥスンの妹ナイリ(桜一花)がトマスにものすごーく興味を示した。しかし、ワガママお嬢様気質のナイリは、お願いするということを知らない。全てが命令口調なのだ。長男イブラヒムは厳しく、次男トゥスンは優しく、末娘ナイリは甘やかして育ててしまったのだという。あぁ、かくも難しきは子育てなり。

 一方、オスマン帝国に忠誠を誓っているマムルーク達は、エジプトにおけるトマスの力に脅威を感じ、仲間のアジズを焚き付け、トマスを亡き者にしようと画策する。 

《第13場 エジプト正規軍の訓練将校》

 トマスはエジプト太守ムハンマド・アリ(星原美沙緒)に謁見した。ムハンマド・アリは、トマスの射撃の腕前とベドウィン騎馬隊での功績を評価して、トマスをエジプト正規軍の訓練将校に任命した。今度は正規軍の訓練将校だって!?それにベドウィン・キャンプにアノウドを残してきたままだ。しかし、トマスに選択の余地はなかった。トマスのカイロ行きは決定事項なのだ。

《第14場 インシャアッラー(神の思し召しがあれば)》

 トマスはカイロでドナルドと再会した。ドナルドも医者として忙しく働いていたらしい。再会と互いの無事を喜び合う二人。インシャラ~インシャラ~インシャラインシャラ~♪ トゥスン・トマス・ドナルドの3人による、インシャラー・ダンス。

《第15場 アノウドとの再会》

 イブラヒムは、トマスの身の回りの世話係としてアノウドを招き寄せていた。あんな難しそうな顔をしているのに、そんなところにまで気が回るなんて。父親という後ろ盾がいなくなったアノウドに残された道は、イスラムの男性と結婚するか、奴隷として生きるかの二者択一。アノウドはトマスの奴隷として生きる道を選んだのだ。奴隷という言葉をどうしても受け入れられないトマスは、アノウドに妹としてここにいてほしいと頼んだ。

《第16場 スーダン遠征~ナイリの涙》

 トゥスンが総大将としてスーダン遠征に赴くことになった。トマスはムハンマド・アリに、スーダン遠征への同行を願い出た。すると、トマスに敵意を抱くアジズ(眉月凰)が、異教徒だ脱走兵だとトマスを罵った。トマスは名誉を傷付けられたとして、決闘の許可を願い出た。ムハンマド・アリはそれを許可し、トマスはアジズに決闘を申し込んだ。

 ムハンマド・アリは、エジプトとイギリスとの和平交渉を成功させるため、ナイリにイギリス人との結婚を命じた。アノウドとナイリ。身分の差こそあれ、結局は抗い難い運命に翻弄される二人の女性。

《第17場 アジズとの決闘》

 トマスとアジズの決闘シーン。トマスの勝利。もう勝負はついていた。にもかかわらず、執拗に反撃を繰り返すアジズ。とうとうトマスはアジズを刺し殺してしまった。名誉を守るためとはいえ、人殺しは人殺し。決して気分がいいはずがない。しかし、この決闘がきっかけとなり、イブラヒムを始めとする仲間達はトマスを認め、讃えることになった。

《第18場 死刑の宣告》

 オスマン帝国のアッバス長官(大伴れいか)は、ムハンマド・アリにトマス処刑命令を下した。ムハンマド・アリはこの命令に背くことができなかった。自分で雇ったくせに、自分で許可したくせに、あまりにも無責任、あまりにも非情という感じが否めない。しかし、「エジプト太守」という立場にあり、「エジプトの独立」という大目標の前では、非情にならざるをえないのか。でも、心情的には絶対納得できない。トゥスンもイブラヒムも、それぞれの言い方でトマスの助命嘆願をしたが、ムハンマド・アリの決定は覆らなかった…。それにしても、大伴さんの悪役ぶりが圧巻だった。芝居が上手い!

《第19場 高潔なアラブの戦士》

 独居房のトマスのもとへ、ドナルドがやってきた。人質交換により、他の捕虜達と共に故郷イギリスへ帰ることになったのだ。処刑命令の下ったトマスをエジプトに置いたまま、自分だけのうのうとイギリスに帰っていいのか!?そんなドナルドの苦悩を察したトマスは、優しく別れを告げた。トゥスンやイブラヒムらが、トマスを助け出そうと命がけで駆けつけてくれた。異国の友人達の熱い思いに感動するトマス。しかし、トマスはエジプト独立のために自分の命を捧げるつもりだと静かに告げた。トマスの決意は揺るがない。やりきれない思いを胸に去っていく仲間達。

 そこへアノウドがやってきた。トマスはいつしか心からアノウドを愛するようになっていた。アノウドはおそらく初めて会ったその時から。死を覚悟したトマスは、言うべきか言わざるべきか、一瞬考え、そして言った。一夜限りの夫婦になってしまうけれども、私と結婚してくれませんか?アノウドの答えはもちろんイエス!純白の衣装に身を包んだ二人は、二人だけの結婚式を挙げる。原作を読まずに観劇に突入した私は、トマスとアノウドは最後は結ばれてハッピーエンドで終わるのかと思っていたので、ラストにはうっかり泣いた。だって…切なすぎる。

◆グラン・ファンタジー『Red Hot Sea』(作・演出:草野旦)

《第1場 序章》

 [夕暮時、ボロ船から一人の少年(野々すみ花)が飛び出してくる。「ペドロ!帰って来なさい!」と少年の母マルタの声がするが、少年はそのまま逃げ去る。舞台下手では南国の3人の男、ウノ(夏見よう)、ドス(大伴れいか)、トレス(悠真倫)が釣竿を海にたらしてのんびりと釣りを楽しんでいる。ボロ船に住みついている海の妖精シェル(愛音羽麗)が目覚める。]

 上手花道から音もなくスルスルと超小型船が現れ目を奪われる(笑)。愛音さんは不思議なヘアスタイルと衣装で、他の登場人物たちには見えていないようだったので、妖精の類なのだろうと推測。

《第2場~第4場 プロローグ》

 [色鮮やかな熱帯魚がむれる南国の海底。一人の男が熱帯魚達と遊ぶ。/真赤な夕日を背に5組の男女が踊る。オンブレ(真飛聖)とムヘール(桜乃彩音)が歌い踊る。/青海波のセット。出演者全員が主題歌に乗って激しく踊る。]

 熱帯魚達の衣装が超カラフル!宝塚の衣装の色使いには、いつも度肝を抜かれる。私の想像を遥かに超えるカラー・コーディネートの連続(笑)。レ~ッドホ~ットシ~♪ 赤く熱い海のショーの始まりだ。ところで、このショーはスペインをイメージしたショーなのだろうか? 

《第5場~第7場 カモメの海》

 [停泊するボロ船でシェルがカモメの玩具を片手に遊んでいる。そこへウノ・ドス・トレスの3人組がラテン楽器を叩きながら登場。同時にアミーゴの3人(大空祐飛、未涼亜希、華形ひかる)が現れる。シェルからサングラスを渡され、海へ遊びに行こうと歌い始める。/3人のアミーゴが海へやってくる。そこはカモメ飛ぶ海だった。/白いカモメは青い海に変わる。海と戯れるアミーゴA(大空祐飛)。]

 桜一花さん率いる白い鳥組対、大空さん率いる白いスーツ組のダンス競演。男はカモメの群れの中に突っ込み、カモメと共に海風を感じながら踊る。すると今度は、壮一帆さん率いる青い波組が押し寄せてくる。男は寄せては返す波と戯れるように踊る。この場面は大空さん最大の見せ場だったと思う。すんごくカッコよかった。

《第8場~第10場 幽霊船》

 [燈台から一人の男が現れる。燈台守(真飛聖)である彼は、いつか海の彼方からやってくる愛を夢見て歌う。海の彼方に一艘の帆船が通る。/燈台守の前に豪華客船が現れる。彼は待ち続けた幻の女(桜乃彩音)にめぐり会う。甲板上では、紳士淑女によるパーティーが展開される。/ふと気付くと、船には誰も居ない。幻の女も消えて居ない。船は幽霊船だったのだ。]

 私は真飛さんの役を冴えない船乗りだと思っていた(苦笑)。セットのシャンデリア(?)を強制的に振り子のように動かすことで、船が荒波に揉まれている様子を表現しているのが可笑しかった。真飛さんがウェイター(?)に話しかける場面がアドリブ場面のようだった。「今日は友の会の皆さんがいるから怖くないよぉ~」みたいなことを言っていた。そう、本日は友の会貸切公演。わたくし初参加です。ここにいる全員が宝塚ファンなのだと思うと、妙な一体感が…(笑)。

《第11場~第16場 真珠の城》

 [3人のトロピカーナ(壮一帆、真野すがた、朝夏まなと)がやってくる。シェルは3人に、海の底には美しいお城があると告げる。3人はそこへ行こうと歌う。/明かりが入ると、そこは光まばゆい海底の真珠のお城である。めくるめくお城の宴は次から次へと繰り広げられていく。/お城の王マール・レイ(真飛聖)と王妃マール・レイナ(桜乃彩音)によるゴールデン・デュエット。/ペルラの歌手(壮一帆)が歌い、続いてロケットへと発展していく。]

 トロピカーナの衣装がこれまた奇抜(笑)。全体としては水玉模様のサンバ衣装(?)なのだが、体の中心を境にして左右の色使いが全く異なる。別な作品でもこれと似たような衣装を見たことがあるような気がする…CS放送か?

《第17場 ひき潮》

 [砂浜が続く海辺。空にかかる雲が美しい。大空の下、海辺で踊る若い男女3人組。引き潮の青年A(大空祐飛)、引き潮の乙女A(舞城のどか)。]

 裸足で踊っていた場面。メンズは「カモメの海」と同じメンバー。「カモメの海」は、冷たく、ピーンと張り詰めたような空気を感じたが、「引き潮」は、ゆったりした衣装に素足ということもあって、自由でのびのびとした空気を感じた。

《第18場~第19場 海が燃える》

 [ボロ船上でシェルが釣りをしている。一人の娘が浜辺を駆け抜けていく。シェルは娘の後を追う。同時に3人組の一人・ドスが投網を担いで通りかかるが、目の前の娘に興味を持って後を追う。その時、マルタが現れる。マルタに一目惚れしたシェルは、マルタの足元にそっと大切な貝殻を置く。マルタはそれを拾い上げ耳にあてて、やがて産まれてくる子供のことを思って、歌い始める。マルタの夫マリオ(真飛聖)が現れる。二人の愛の姿。/真赤に染まる夕暮時の浜辺。不良男セラ(壮一帆)がマルタにちょっかいをかける。怒りをあらわにするマリオ。セラは一旦逃げるが、大勢の仲間を連れて再び現れる。同じく仲間と共に現れたマリオ。二つのグループの争いとなり、マリオはセラによって刺される。生まれてくる子供の名前はペドロに…と言い残して、マリオはマルタの腕の中で息絶える。]

 実は私は序章の意味が全く分かっていなかった。しかし、貝殻を耳に当てた桜乃さんが、右手をそっとお腹に当てた瞬間、ビビビ!と来た(笑)。お腹に手を当てる=妊娠している=序章の子供=父親は真飛さんか!そうか、そういうことだったのか。事ここに至って初めて分かった。私はこのショーを、『Red Hot Sea』という言葉から連想する様々な場面を繋ぎ合わせたものだと思っていたのだが、実はストーリー性のあるものだったんですね。ん?でも、このストーリーがあるようでないようなこの感じ、以前にも観たことがあるぞ?あれはそう…『レビュー・オルキス』!どれどれ…とプログラムを引っ張り出してきて確認したところ、作・演出はやっぱり草野旦氏だった。ビンゴ!

《第20場~第21場 海風》

 [マリオの死を悼むように、葬列の一団が通り過ぎる。/マリオの魂だけが風になり、大海原を駆け抜けていく。]

 下手から上手に向かって、空中をフワフワと移動していく物体が棺桶であると認識するのに、若干の時間を要した。一瞬、水葬(棺桶を海に流す)を表しているのかな、とも思ったのだが、あれは棺桶を墓地へ運ぶ葬列を象徴的に表しているのだろう。「空飛ぶ棺桶」に続く場面は、ズバリ「千の風になって」。舞台上には何もない空間が広がり、細長い大きな布が4本(?)天井からぶら下げられている。どこからともなく風が吹き始め、その布が揺れだす。その様子を見た瞬間、あ!これは絶対「千の風になって」だ!と思った(笑)。真飛さんの姿は生きている人には見えないようで、あぁ、風になって見守っているよという意味なんだろうなぁ、と思った。布を垂らしただけのセットがとても良かった。風を感じた。

《第22場 終章》

 [ウノ、ドス、トレスがペドロを連れて戻ってくる。その様子をシェルが見ている。シェルは母なる海を歌う。/大勢の熱帯魚が飛び出してきて再び南の海となる。世界はカラフルで熱い海底となる。]

 実は私は序章の意味が全く分かっていなかった(リピート)。あの小型船…家だったんですね!?いわゆるボートハウス?言われてみれば、洗濯物が干してあったような…。でも…親子二人で住むには絶対に狭すぎると思う(笑)。

《第23場 フィナーレ》

 [一組のカップルによる大階段でのデュエット・ダンス。アモールの男女(真飛聖、桜乃彩音)。/波が押し寄せるように、次から次へと繰り返される踊りの波。そして、全員による感動的な大コーラスにて幕。]

 フィナーレの衣装が全員デニム(ジーパン)というのが、宝塚的には斬新だったのではないだろうか。階段降りの仕方もちょっと変わっていた。一列になって順番に降りてくるというのではなく、固まりになって続々と降りてくるという感じ。しかも、斜めに降りていたような…。後からプログラムを読んで、次から次へと押し寄せる波を表していたのだということが分かった。

◇おまけ

 真飛さん、トップお披露目おめでとうー!友の会貸切公演ということで、出演者の挨拶もあり、ちょっと得した気分の観劇でした(笑)。今年の全国ツアー仙台公演には、花組『外伝ベルサイユのばら-アラン編-/エンター・ザ・レビュー』がやって来る。どんな「ベルばら」に仕上がっているのか、とーっても楽しみです(笑)。