2008年8月7日(木)18:30開演 東京宝塚劇場 S席 1階16列20番台 花組公演
「花組のチケット取れたよ。」友人からのお誘いメール。あぁ~、9月に星組を観に行くから、8月は我慢しようと思ってたのにぃ~。どうしよう、どうしよう~。迷いに迷って、友人を待たせに待たせた末、ようやく観に行く決心をした。しかし、一旦「観に行く」と決めてしまえば、後は早い。旅の手配も手馴れたもの(笑)。後は、急な仕事が入りませんように、と神に祈るのみ。結局、安蘭さん・水さん・大和さんに続いて、真飛さんのお披露目公演も観に行くことになってしまった。お披露目ラッシュ完全制覇(笑)。
◆宝塚ミュージカル・ロマン『愛と死のアラビア』-高潔なアラブの戦士となったイギリス人-(原作:ローズマリ・サトクリフ/脚本・演出:谷正純)
《第1場 黄金の砂漠/第2場 砂漠に舞う異国のハヤブサ/第3場 極彩色の祝祭》
第1場から第3場まではオープニングショーだ。エジプトが舞台だから、衣装にもセットにもゴールドをふんだんに使用して、舞台全体をきらびやかに演出し、会場を一気に盛り上げようという作戦。そこへ、一際豪華なキンキラキンの衣装に身を包んだ真飛聖さんが登場する。背後で燦然と輝いている太陽は、FANTASISTA大和の太陽ではないだろうか?真飛さんが「わ~たし~はホルス♪」と歌っていたので、真飛さんはホルスという役なんだなぁと思ったものの、その時は「なぜホルス?」と思っていた。しかし、今やっとそのわけが分かった。ホルス神はエジプト神話に登場する天空と太陽の神で、通常はハヤブサの頭を持つ男性として表現されるらしい。劇中でトマス・キースは、その射撃の腕前から「ハヤブサの目を持つ男」と呼ばれていた。つまり、トマス・キース→ハヤブサの目を持つ男→ハヤブサの頭を持つ男神→ホルス神という連想なのだろう。もしかしたら、トマスはホルス神の生まれ変わりという設定なのかな?
《第4場 市場の嘆き》
1807年、オスマン・トルコ帝国の支配下にあるエジプト。戦火の傷跡を残した市場には、疲弊した人々の嘆きがむなしく響いている…。
《第5場 ハヤブサの目を持つ男》
ここでようやく本日の主役トマス・キース(真飛聖)の登場となる。ここまで結構長く感じたなぁ。エジプト北部、地中海沿岸の港町ロゼッタ。イギリス軍狙撃兵トマス・キースと、同僚の軍医ドナルド・マクラウド(愛音羽麗)がエジプト軍の捕虜となってから3ヶ月が経っていた。二人の暮らしぶりはとても捕虜には見えなかった。エジプト風の素敵な衣装を着ており、広い部屋が与えられ、おまけにエジプト人兵卒メドヘッド(嶺乃一真)が世話係として付けられていた。射撃の名手と医者、二人は他の捕虜達とは区別されて、かなり優遇されていたようだ。
ある日、エジプト太守ムハンマド・アリの長男イブラヒム(大空祐飛)が、フランスの軍事顧問デジュリエ大佐(夏美よう)を従えて、トマスのところにやって来た。ヒゲの大空さん。渋い(笑)。ムハンマド・アリが、「ハヤブサの目を持つ男」との異名を取るトマスを買い取ると言い出したため、その腕前の程を確かめに来たのだ。イブラヒムの求めに応じて、トマスはライフル銃を構えようとするが、左腕の怪我がまだ完治しておらず、銃身を支えることができない。トマスはイブラヒムに肩を貸して欲しいと言った。周囲のエジプト兵達に一瞬緊張が走るが、イブラヒムは悠然と背中を向けた。トマスはイブラヒムの左肩に銃身を置き、標的に狙いを定めた。バン!見事命中した模様。イブラヒムの口から「ハヤブサの目を持つ男!」という言葉が漏れた。イブラヒムは、トマスを「砂漠に舞う異国のハヤブサ」と称し、エジプト南部のヌビア地方で、ムハンマド・アリの次男トゥスンと共にベドウィン騎馬隊を訓練するよう命じた。
イギリス軍人である自分が、敵軍に銃の使い方を教える!?いくら捕虜とはいえ、命じられても、そんなことは絶対にできない。なんだってそんな無茶苦茶な命令をするんだ!?困惑するトマスに、デジュリエ大佐がアドバイスを送る。敵に加担するのではない。エジプトの独立を助けるためだと思えばいい。言葉や信仰を学ぶのだ。
《第6場 悠久のナイル》
女豹!獣とそれを追いかける人、たぶんそういった設定のダンスなのだろうとは思っていたが、まさか女豹だったとは…。なんかセクシー(笑)。ベドウィンの野営地のあるアスワンまでは、ナイル川を上る1ヶ月以上の船旅となった。
《第7場 ベドウィン騎馬隊》
ベドウィン騎馬隊の面々は元気一杯。素朴で荒々しいダンスは訓練の様子を表しているのか。それとも単にいつもお祭り騒ぎ状態なのか(笑)。ムハンマドの次男トゥスン(壮一帆)登場。トゥスンは明るく素直な青年といった感じ。トマスが野営地に来てから、だいぶ時が経っているようで、トマスと騎馬隊の面々はすっかり打ち解け、信頼感も生まれている様子。
突然、砂漠のオアシスを荒らし回っている盗賊の一団が、野営地を襲撃してきた。盗賊団に怨みを持っていたアブ・サラン(未涼亜希)は自分に行かせてくれと懇願したが、トマスはそれを許さなかった。トマスは、ベドウィン騎馬隊として組織的に戦うことを提案し、皆はそれに従うことにした。トゥスンは銃に弾を込めるのにかなり苦戦していた(笑)が、トマスの作戦は見事的中し、騎馬隊は快勝した。敗者の持ち物を戦利品として持ち帰るという掟になかなか馴染めないトマスは、人間までもが戦利品とされることを知り、驚愕した。アル・マリク(華形ひかる)も女を戦利品にしようと追い詰めていくが、逆に怪我を負わされたため、怒りに任せて殺そうとした。トマスは思わず割って入り、自分に与えられた戦利品(確か馬だったような…)と引き換えにして、その女を救い出すのだった。
《第8場 ヴェールを剥ぎ取られた女》
トマスは助けた女をテントの中へ運び込み、怪我の手当てをしてやった。イスラムの女性は家族以外の男性の前では顔を見せないもの。激痛で気を失っている彼女に、トマスはそっとヴェールを被せてやるのだった。細やかな気遣いのできる男、ジェントルマン・トマス。
《第9場 砂漠の蜃気楼》
トマスは夜の砂漠で物思いに耽っていた。砂漠の民を理解しようと努めてはいるものの、習慣・文化の違いにどうしようもない違和感・疑問を感じてしまう毎日。どうすればこの壁を越えることができるのか?答えは意外な人からもたらされた。「神様は一人さ。」トマスを探しに来たヤシム(望海風斗)が何気なく言ったその一言が、トマスの目の前をぱっと明るく照らした。そうだ!神は一人なのだ!人間が勝手に様々な名前を付けて崇め奉り、勝手に心の壁を作り上げているだけなのだ!心のモヤモヤが晴れたような清々しい気分になったトマスは、自分のテントに戻ることにした。
《第10場 アノウドとの別離》
目を覚ました女はアノウド(桜乃彩音)と名乗った。もう一人の女性は侍女のサミーラ(白華れみ)。白華さんは新人公演でアノウド役を演じたそうなので、桜乃さんの演技を常に間近で見られるという意味では、いい役だったのかも。盗賊団に襲われ、父親という後ろ盾を失い、天涯孤独の身となってしまったアノウド。家族や仲間と離れて、遠い異国の地で一人暮らすトマスは、自身の境遇と重ねてアノウドに同情する。「私を兄と思ってほしい。」思いがけない優しい言葉に感動するアノウド。「私を妹にしてください!」
《第11場 ラクス・シャルキー》
突然、幕前でセクシーなベリー・ダンスが始まる。花組経験の浅い私でも、中央にいる人が桜一花さんだということは分かった。
《第12場 後宮の宴》
カイロの後宮に連れてこられたトマス。なんとトゥスンの結婚式が行われるのだという。相手には結婚式当日まで会わないのがエジプト流。相手の姿形はもちろん、人柄も家柄も何も知らない、というか興味がないという感じ。といって、結婚を嫌がっている風でもない。全てを大らかに受け入れるトゥスンなのだった。
トゥスンは、ムハンマド・アリの第一夫人であり、イブラヒム・トゥスン兄弟の生母でもあるアミナ(邦なつき)にトマスを紹介した。アミナは思慮深く、とっても優しいお母さんだった。トマスはアミナと話すうちに、故郷の母を思い出した。トマスはアミナの求めに応じて故郷の歌を披露する。一座の者は皆トマスの歌声に聞き惚れた。特に、トゥスンの妹ナイリ(桜一花)がトマスにものすごーく興味を示した。しかし、ワガママお嬢様気質のナイリは、お願いするということを知らない。全てが命令口調なのだ。長男イブラヒムは厳しく、次男トゥスンは優しく、末娘ナイリは甘やかして育ててしまったのだという。あぁ、かくも難しきは子育てなり。
一方、オスマン帝国に忠誠を誓っているマムルーク達は、エジプトにおけるトマスの力に脅威を感じ、仲間のアジズを焚き付け、トマスを亡き者にしようと画策する。
《第13場 エジプト正規軍の訓練将校》
トマスはエジプト太守ムハンマド・アリ(星原美沙緒)に謁見した。ムハンマド・アリは、トマスの射撃の腕前とベドウィン騎馬隊での功績を評価して、トマスをエジプト正規軍の訓練将校に任命した。今度は正規軍の訓練将校だって!?それにベドウィン・キャンプにアノウドを残してきたままだ。しかし、トマスに選択の余地はなかった。トマスのカイロ行きは決定事項なのだ。
《第14場 インシャアッラー(神の思し召しがあれば)》
トマスはカイロでドナルドと再会した。ドナルドも医者として忙しく働いていたらしい。再会と互いの無事を喜び合う二人。インシャラ~インシャラ~インシャラインシャラ~♪ トゥスン・トマス・ドナルドの3人による、インシャラー・ダンス。
《第15場 アノウドとの再会》
イブラヒムは、トマスの身の回りの世話係としてアノウドを招き寄せていた。あんな難しそうな顔をしているのに、そんなところにまで気が回るなんて。父親という後ろ盾がいなくなったアノウドに残された道は、イスラムの男性と結婚するか、奴隷として生きるかの二者択一。アノウドはトマスの奴隷として生きる道を選んだのだ。奴隷という言葉をどうしても受け入れられないトマスは、アノウドに妹としてここにいてほしいと頼んだ。
《第16場 スーダン遠征~ナイリの涙》
トゥスンが総大将としてスーダン遠征に赴くことになった。トマスはムハンマド・アリに、スーダン遠征への同行を願い出た。すると、トマスに敵意を抱くアジズ(眉月凰)が、異教徒だ脱走兵だとトマスを罵った。トマスは名誉を傷付けられたとして、決闘の許可を願い出た。ムハンマド・アリはそれを許可し、トマスはアジズに決闘を申し込んだ。
ムハンマド・アリは、エジプトとイギリスとの和平交渉を成功させるため、ナイリにイギリス人との結婚を命じた。アノウドとナイリ。身分の差こそあれ、結局は抗い難い運命に翻弄される二人の女性。
《第17場 アジズとの決闘》
トマスとアジズの決闘シーン。トマスの勝利。もう勝負はついていた。にもかかわらず、執拗に反撃を繰り返すアジズ。とうとうトマスはアジズを刺し殺してしまった。名誉を守るためとはいえ、人殺しは人殺し。決して気分がいいはずがない。しかし、この決闘がきっかけとなり、イブラヒムを始めとする仲間達はトマスを認め、讃えることになった。
《第18場 死刑の宣告》
オスマン帝国のアッバス長官(大伴れいか)は、ムハンマド・アリにトマス処刑命令を下した。ムハンマド・アリはこの命令に背くことができなかった。自分で雇ったくせに、自分で許可したくせに、あまりにも無責任、あまりにも非情という感じが否めない。しかし、「エジプト太守」という立場にあり、「エジプトの独立」という大目標の前では、非情にならざるをえないのか。でも、心情的には絶対納得できない。トゥスンもイブラヒムも、それぞれの言い方でトマスの助命嘆願をしたが、ムハンマド・アリの決定は覆らなかった…。それにしても、大伴さんの悪役ぶりが圧巻だった。芝居が上手い!
《第19場 高潔なアラブの戦士》
独居房のトマスのもとへ、ドナルドがやってきた。人質交換により、他の捕虜達と共に故郷イギリスへ帰ることになったのだ。処刑命令の下ったトマスをエジプトに置いたまま、自分だけのうのうとイギリスに帰っていいのか!?そんなドナルドの苦悩を察したトマスは、優しく別れを告げた。トゥスンやイブラヒムらが、トマスを助け出そうと命がけで駆けつけてくれた。異国の友人達の熱い思いに感動するトマス。しかし、トマスはエジプト独立のために自分の命を捧げるつもりだと静かに告げた。トマスの決意は揺るがない。やりきれない思いを胸に去っていく仲間達。
そこへアノウドがやってきた。トマスはいつしか心からアノウドを愛するようになっていた。アノウドはおそらく初めて会ったその時から。死を覚悟したトマスは、言うべきか言わざるべきか、一瞬考え、そして言った。一夜限りの夫婦になってしまうけれども、私と結婚してくれませんか?アノウドの答えはもちろんイエス!純白の衣装に身を包んだ二人は、二人だけの結婚式を挙げる。原作を読まずに観劇に突入した私は、トマスとアノウドは最後は結ばれてハッピーエンドで終わるのかと思っていたので、ラストにはうっかり泣いた。だって…切なすぎる。
◆グラン・ファンタジー『Red Hot Sea』(作・演出:草野旦)
《第1場 序章》
[夕暮時、ボロ船から一人の少年(野々すみ花)が飛び出してくる。「ペドロ!帰って来なさい!」と少年の母マルタの声がするが、少年はそのまま逃げ去る。舞台下手では南国の3人の男、ウノ(夏見よう)、ドス(大伴れいか)、トレス(悠真倫)が釣竿を海にたらしてのんびりと釣りを楽しんでいる。ボロ船に住みついている海の妖精シェル(愛音羽麗)が目覚める。]
上手花道から音もなくスルスルと超小型船が現れ目を奪われる(笑)。愛音さんは不思議なヘアスタイルと衣装で、他の登場人物たちには見えていないようだったので、妖精の類なのだろうと推測。
《第2場~第4場 プロローグ》
[色鮮やかな熱帯魚がむれる南国の海底。一人の男が熱帯魚達と遊ぶ。/真赤な夕日を背に5組の男女が踊る。オンブレ(真飛聖)とムヘール(桜乃彩音)が歌い踊る。/青海波のセット。出演者全員が主題歌に乗って激しく踊る。]
熱帯魚達の衣装が超カラフル!宝塚の衣装の色使いには、いつも度肝を抜かれる。私の想像を遥かに超えるカラー・コーディネートの連続(笑)。レ~ッドホ~ットシ~♪ 赤く熱い海のショーの始まりだ。ところで、このショーはスペインをイメージしたショーなのだろうか?
《第5場~第7場 カモメの海》
[停泊するボロ船でシェルがカモメの玩具を片手に遊んでいる。そこへウノ・ドス・トレスの3人組がラテン楽器を叩きながら登場。同時にアミーゴの3人(大空祐飛、未涼亜希、華形ひかる)が現れる。シェルからサングラスを渡され、海へ遊びに行こうと歌い始める。/3人のアミーゴが海へやってくる。そこはカモメ飛ぶ海だった。/白いカモメは青い海に変わる。海と戯れるアミーゴA(大空祐飛)。]
桜一花さん率いる白い鳥組対、大空さん率いる白いスーツ組のダンス競演。男はカモメの群れの中に突っ込み、カモメと共に海風を感じながら踊る。すると今度は、壮一帆さん率いる青い波組が押し寄せてくる。男は寄せては返す波と戯れるように踊る。この場面は大空さん最大の見せ場だったと思う。すんごくカッコよかった。
《第8場~第10場 幽霊船》
[燈台から一人の男が現れる。燈台守(真飛聖)である彼は、いつか海の彼方からやってくる愛を夢見て歌う。海の彼方に一艘の帆船が通る。/燈台守の前に豪華客船が現れる。彼は待ち続けた幻の女(桜乃彩音)にめぐり会う。甲板上では、紳士淑女によるパーティーが展開される。/ふと気付くと、船には誰も居ない。幻の女も消えて居ない。船は幽霊船だったのだ。]
私は真飛さんの役を冴えない船乗りだと思っていた(苦笑)。セットのシャンデリア(?)を強制的に振り子のように動かすことで、船が荒波に揉まれている様子を表現しているのが可笑しかった。真飛さんがウェイター(?)に話しかける場面がアドリブ場面のようだった。「今日は友の会の皆さんがいるから怖くないよぉ~」みたいなことを言っていた。そう、本日は友の会貸切公演。わたくし初参加です。ここにいる全員が宝塚ファンなのだと思うと、妙な一体感が…(笑)。
《第11場~第16場 真珠の城》
[3人のトロピカーナ(壮一帆、真野すがた、朝夏まなと)がやってくる。シェルは3人に、海の底には美しいお城があると告げる。3人はそこへ行こうと歌う。/明かりが入ると、そこは光まばゆい海底の真珠のお城である。めくるめくお城の宴は次から次へと繰り広げられていく。/お城の王マール・レイ(真飛聖)と王妃マール・レイナ(桜乃彩音)によるゴールデン・デュエット。/ペルラの歌手(壮一帆)が歌い、続いてロケットへと発展していく。]
トロピカーナの衣装がこれまた奇抜(笑)。全体としては水玉模様のサンバ衣装(?)なのだが、体の中心を境にして左右の色使いが全く異なる。別な作品でもこれと似たような衣装を見たことがあるような気がする…CS放送か?
《第17場 ひき潮》
[砂浜が続く海辺。空にかかる雲が美しい。大空の下、海辺で踊る若い男女3人組。引き潮の青年A(大空祐飛)、引き潮の乙女A(舞城のどか)。]
裸足で踊っていた場面。メンズは「カモメの海」と同じメンバー。「カモメの海」は、冷たく、ピーンと張り詰めたような空気を感じたが、「引き潮」は、ゆったりした衣装に素足ということもあって、自由でのびのびとした空気を感じた。
《第18場~第19場 海が燃える》
[ボロ船上でシェルが釣りをしている。一人の娘が浜辺を駆け抜けていく。シェルは娘の後を追う。同時に3人組の一人・ドスが投網を担いで通りかかるが、目の前の娘に興味を持って後を追う。その時、マルタが現れる。マルタに一目惚れしたシェルは、マルタの足元にそっと大切な貝殻を置く。マルタはそれを拾い上げ耳にあてて、やがて産まれてくる子供のことを思って、歌い始める。マルタの夫マリオ(真飛聖)が現れる。二人の愛の姿。/真赤に染まる夕暮時の浜辺。不良男セラ(壮一帆)がマルタにちょっかいをかける。怒りをあらわにするマリオ。セラは一旦逃げるが、大勢の仲間を連れて再び現れる。同じく仲間と共に現れたマリオ。二つのグループの争いとなり、マリオはセラによって刺される。生まれてくる子供の名前はペドロに…と言い残して、マリオはマルタの腕の中で息絶える。]
実は私は序章の意味が全く分かっていなかった。しかし、貝殻を耳に当てた桜乃さんが、右手をそっとお腹に当てた瞬間、ビビビ!と来た(笑)。お腹に手を当てる=妊娠している=序章の子供=父親は真飛さんか!そうか、そういうことだったのか。事ここに至って初めて分かった。私はこのショーを、『Red Hot Sea』という言葉から連想する様々な場面を繋ぎ合わせたものだと思っていたのだが、実はストーリー性のあるものだったんですね。ん?でも、このストーリーがあるようでないようなこの感じ、以前にも観たことがあるぞ?あれはそう…『レビュー・オルキス』!どれどれ…とプログラムを引っ張り出してきて確認したところ、作・演出はやっぱり草野旦氏だった。ビンゴ!
《第20場~第21場 海風》
[マリオの死を悼むように、葬列の一団が通り過ぎる。/マリオの魂だけが風になり、大海原を駆け抜けていく。]
下手から上手に向かって、空中をフワフワと移動していく物体が棺桶であると認識するのに、若干の時間を要した。一瞬、水葬(棺桶を海に流す)を表しているのかな、とも思ったのだが、あれは棺桶を墓地へ運ぶ葬列を象徴的に表しているのだろう。「空飛ぶ棺桶」に続く場面は、ズバリ「千の風になって」。舞台上には何もない空間が広がり、細長い大きな布が4本(?)天井からぶら下げられている。どこからともなく風が吹き始め、その布が揺れだす。その様子を見た瞬間、あ!これは絶対「千の風になって」だ!と思った(笑)。真飛さんの姿は生きている人には見えないようで、あぁ、風になって見守っているよという意味なんだろうなぁ、と思った。布を垂らしただけのセットがとても良かった。風を感じた。
《第22場 終章》
[ウノ、ドス、トレスがペドロを連れて戻ってくる。その様子をシェルが見ている。シェルは母なる海を歌う。/大勢の熱帯魚が飛び出してきて再び南の海となる。世界はカラフルで熱い海底となる。]
実は私は序章の意味が全く分かっていなかった(リピート)。あの小型船…家だったんですね!?いわゆるボートハウス?言われてみれば、洗濯物が干してあったような…。でも…親子二人で住むには絶対に狭すぎると思う(笑)。
《第23場 フィナーレ》
[一組のカップルによる大階段でのデュエット・ダンス。アモールの男女(真飛聖、桜乃彩音)。/波が押し寄せるように、次から次へと繰り返される踊りの波。そして、全員による感動的な大コーラスにて幕。]
フィナーレの衣装が全員デニム(ジーパン)というのが、宝塚的には斬新だったのではないだろうか。階段降りの仕方もちょっと変わっていた。一列になって順番に降りてくるというのではなく、固まりになって続々と降りてくるという感じ。しかも、斜めに降りていたような…。後からプログラムを読んで、次から次へと押し寄せる波を表していたのだということが分かった。
◇おまけ
真飛さん、トップお披露目おめでとうー!友の会貸切公演ということで、出演者の挨拶もあり、ちょっと得した気分の観劇でした(笑)。今年の全国ツアー仙台公演には、花組『外伝ベルサイユのばら-アラン編-/エンター・ザ・レビュー』がやって来る。どんな「ベルばら」に仕上がっているのか、とーっても楽しみです(笑)。