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倭人語のすすめ

倭人の言葉が残されていた。古事記の神々の多くは、秘文とされた文書を基にしていた。一音一義の倭人語を解き明かしたいと思う。

弓前文書 第2章第3節

2025-07-29 09:24:51 | 弓前文書(神文)
2300トヨウツガモノナタマチル[充因美積母萌延成垂増育活 tou you u tu xau mou nou na ta mau tiu ru]
【原本訳】豊かに生み育てる母なるもの(それは次に示す通り)、生育完成、余剰から増加へこの一元の力の流れである。
【一音訳】[充]充分に[因]原因・世[美]生まれる[積]積み上げる[母]母体[萌]目に見えて物質が増加[延]秩序立て[成]物事が完成した[垂]力が溢れ出る[増]物質増加の最大の姿[育]力の流れ[活]~している
【文節訳】[充因]豊か。充分な原因があるということは豊ということ[美積]生み育てる[母]生命を生む母体[萌延]生物[成]物事が完成した[垂増育]溢れて増加する力の流れ[活]~ている。
[充因美積母]次々生み育てる母[萌延成]生物が完成する[垂増育活]余剰から増加への力が流れている
【解釈訳】この場合の母体とは母なる大地のことだろう。ウツ、生み積み上げるとはこの場合生み育てる、生み出すの意味。モノとは生物。この節では植物、穀物の事だろう。弥生時代の特徴である米作を当てはめると理解しやすい。
【古事記】豐宇氣毘賣(とようけびめ)の神。宇迦之御魂(うかのみたま)の神。
【祭神】伊勢神宮の外宮の祭神豊受大御神(とようけおおみかみ)。伏見稲荷大社の宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)
【意訳】豊かに次々と生み育てる母なる大地には、生物を完成させ、溢れさせ、増やす力の流れがある。(第2章第3節節題)


2301ノピレ[延霊゜舞 nou piu rai]
【原本訳】秩序を生み出す霊力。
【一音訳】[延]秩序が進行中である[霊゜]自然の意志と力の一単位[舞]集中動作
【文節訳】[延]秩序[霊゜舞]命のもと
【解釈訳】ピとは自然の意志と力の一単位である。ピ[霊゜]の集団をパ[晴゜]といい、[霊゜]が発動するのをプ[震゜]、消滅するのをペ[放゜]という。ピとは生命構成する見えない最小の単位といってよい。ピが集中すると熱が発生する。生命を維持するには熱が必要だ。よって、ピレは熱の力であり、命の素(もと)と言える。
【意訳】植物の秩序を生み出す命の素の力。


2302パモガ[晴゜萌狩 pa mou xa]
【原本訳】自然力を捕捉し活性化する。
【一音訳】[晴゜]大自然の持つ意志とその力が張り出して行く。生命力[萌]目に見えて物質が増加して行く[狩]獲得する。刈る
【解釈訳】熱によって温められると、生命力が増加し、溢れる生命力を獲得する。パモガのパからパル[晴゜活]春の言葉が派生して出来たと考えられる。
【意訳】暖かくなると植物は活性化する。


2303ズピレ[澄゛霊゜舞 zu piu rai]
【原本訳】水という媒体の霊力。
【一音訳】[澄゛]どんどん吸い取る。水。[霊゜]自然の意志と力の一単位[舞]集中動作
【文節訳】[澄゛]水[霊゜舞]命のもとの熱。
【解釈訳】水は熱を溜め込むから、生命にはどうしても必要である。
【意訳】命の素をため込む水の力。


2304スグナ[澄哈成 su xu na]
【原本訳】秩序体を捕えわが物とする。
【一音訳】[澄]自然の意志と力を吸い込む[哈]食う[成]物事が完成した
【解釈訳】生物は総て水を吸い込むようになっている。生物は水を吸って食って完成するということだろう。スグナのナから夏という言葉は派生したと考えられる。魚をすくう、漁(スナドリ)などの言葉が残っている。
【古事記】少名毘古那(すくなびこな)の神。少彦名の神、漁師のえべっさん。
【意訳】水は植物の生育に欠かせない。


2305タピレ[垂霊゜舞ta piu rai]
【原本訳】余分の力を生み出す霊力。
【文節訳】[垂]力が溢れ出る[霊゜舞]命のもと。熱の力。
【解釈訳】生物が吸収した命の素が溢れ出る。一粒の米が命の素の熱と力を吸収し溢れると、たくさんの米が出来る。生命を分化、分割するためには熱をどんどん吸収することが必要である。
【意訳】命の素の余剰をつくる力。


2306ポギヂュ[穂゜飯集゛po xiu jiu]
【原本訳】意志を分化、籠らせ、寄せ集める。
【一音訳】[穂゜]自然の持つ意志と力が分派、独立したもの。分霊。[飯]五穀そのもの[集゛]物質の無秩序な群がり
【解釈訳】分派独立した穀物の群がり。例としてたわわに実った米などの穀物等。ポギジュのギ。xiuは喉音であって、ヒともキとも聞こえる音。私は独自にⅹ行をガ行として索引仮名として扱っているので、xiuはギとしている。ポギヂュのギ(キ)から派生して秋が出来たと考えられる。
【意訳】余剰をつくる力で植物は分化したわわに稔る。


2307[マピレ増霊゜舞 mau piu rai]
【原本訳】分体を造り出す霊力。
【文節訳】[増]増加する[霊゜舞]現象の命の素。熱と力。
【解釈訳】命の素が増える。命のもとを子孫につなぐ。命のもとを移動させる。生命を維持し子孫を増やして行くためには、自らの熱力を増していかねばならない。
【意訳】命の素の分体をつくる力。


2308トミゴ[充実子 tou miu xou]
【原本訳】充実するとその雛形を分離する。
【一音訳】[充]充分に[実]物質[子]母体から生まれた二世。雛形。
【解釈訳】[子xou]は喉音であり、ホともコとも聞こえる音。私は索引仮名としてx行はガ行で表すことにしている。自ら充実し、雛型、種子を作る。子孫を作る。春夏秋と来て、冬。冬になると山の動物は冬ごもり。大地からは緑が消える。新しい生命の始まりとなる春までの充電期間。トミゴ(ホ)の語感からふゆにつながる語を考えるのは難しいが、冬は「殖ゆ(ふゆ)」が語源という説もあり、増える、子孫を残すという意味合いを考えると成り立つかも知れない。
【意訳】充実した実は子孫を残す。

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弓前文書 第2章第4節

2025-07-29 09:24:30 | 弓前文書(神文)
2400ウムツヨナコトモノピクル[美醸積因成凝充萌延日奇活 u mu tu you na kou tou mou nou pi ku ru]
【原本訳】生まれ出る秩序体の過程は(次に示す通り)物事にはすべて生命がある。
【一音訳】[美]生まれる[醸]物質がどんどん増大している状況[積]積み上げる[因]定められた通り[成]土地。物事が完成した[凝]固まる[充]極めて物事が充実している[萌]目に見えて物質が増加して行く[延]秩序立て[日]認識できるエネルギー。光と熱[奇]不思議なる変化[活]~している
【文節訳】[美醸積]生まれ出てどんどん発展してゆく[因成]定められた通り物事が完成する[凝充]事物[萌延]生物[日奇活]生きる
【解釈訳】ウムツヨナは産土(うぶすな)の語源となった。産土は生まれた土地を意味する。産土神はその者が生れた土地の守護神を指し、その者を生まれる前から死んだ後まで、たとえ他所に移住しても一生を通じて守護する神とされている。
 ウムツヨナは直訳すると、生まれて発展し完成する秩序体。つまり、生まれ育つ土地。ウムツヨナは2200アオメツチ、2300トヨウツガと同じく母なる大地の意味と捉えることができる。
 コトとは事物。事物とは一般的に目に見える物体や事象を指す。土や岩石、出来事や状況、更には抽象的な概念も含む。モノは生物。次々と秩序をつくり上げていく。普通の現象はコト[凝充]で終わってしまうが、生物は同じ現象を次々につくり上げていくのでモノ[萌延]というのは生物を意味する。
 ピクルとは不思議なる行動を取り続けている、認識できるエネルギーの不思議な働き、つまり、生きているということ。ピクは現代でもそのままピクピクしているなどと使われる。生く、行く、逝く。全てこのピクから来たものだろう。生命活動とは、生まれ、行動し、死ぬまで、更には生まれる前、死んだ後までが生命活動ということ。
 この節では事物と生物がどのように生まれ育ってゆくのかが述べられている。太陽、地球の誕生から、海、山、川、さらに生物に至るあらゆる現象(コト)の一般説明である。ただし、人の生まれ育ってゆく状況の説明として解釈した方が解釈しやすい。
【意訳】生れ出る大地によって、事物、生物、全てのものが生がされている。(第2章第4節節題)


2401クチピミ[奇育霊゜現 ku tiu piu mi]
【原本訳】妙なる力が醸し出される意志の段階。
【一音訳】[奇]不思議なる変化[育]力の流れ[霊゜]自然の意志。日本数詞の一番目[現]見えているものの姿
【文節訳】[奇育]不思議なるエネルギー変換[霊゜現]意志の段階 
【解釈訳】まずここで押さえておきたいのは日本数詞、「ひふみ」のこと。ピプミヨツムナヤコト、ユマ仮名では[霊゜震゜実因積醸成因゛凝充]となる。クチピミのピ[霊゜]は一番目の意味がある。ちなみに一番と七番でピナ[霊゜成]、一番と十番でピト[霊゜充]。それぞれ、未熟な「雛」と充分に完成した「人」の語源である。
ピミは第一段階の姿である。第一段階では肉体や物質は出てこない。意思の段階だということ。見えない世界の段階である。詳しく考えると弥生時代の宗教的な解釈が必要で、さらっと理解した方がよいと思う。
【意訳】不思議な力が現れる意志の第一段階。


2402ナポマピ[成穂゜真霊゜na po ma piu]
【原本訳】自然力から分化した真(まこと)の意志。
【一音訳】[成]物事が完成した[穂゜]自然の持つ意志と力が分派、独立したもの。分霊。[真]真の姿[霊゜]自然の意志
【文節訳】[成穂゜]独立意志が出来上がった。自然の分霊となった。[真霊゜]まことの意志
【意訳】独立した意思である自然の分霊が出来上がる。


2403サチプミ[爽育震゜現 sa tiu pu mi]
【原本訳】与えられた力が流れ出す意志行動の段階。
【一音訳】[爽]レベルのうんと低い潜在力を持つ霊性[育]力の流れ[震゜]自然の意志と力が発動する。日本数詞の二番目[現]見えているものの姿
【文節訳】[爽育]行動を起こす原因をつくる[震゜現]潜在力の発動
【解釈訳】潜在力の力の流れは行動を起こす原因となる。行動を起こす原因とは意志を持つこと。その潜在力を発動した姿とは分霊が独立した自らの意志を持つ第二段階である。
【意訳】分霊が自らの意志を持つ第二段階。


2404タルモピ[垂活基霊゜ta ru mo piu]
【原本訳】力を行使する基本意志。
【一音訳】[垂]自由エネルギーの発動[活]~している[基]大本の姿[霊゜]自然の意志
【文節訳】[垂活]潜在力を使う[基霊゜]大本の行動方針を決める
【解釈訳】潜在力を使うとはどういうことか。これは見えない世界の話であるということ。普通の人間には感知できない世界の力だ。第一段階のクチピミではクチタマ[奇育垂増]が大自然からエネルギーを受け取り、そのエネルギーを第二段階のサチプミでサチタマに受け渡す。タマ(珠)とは見えないエネルギーの袋。そこで独立した意志が出来上がり、大本の基本方針が決められてゆく。その大本の基本方針によっての行動力がタル[垂活]である。何の行動を起こすかというと、精子と卵子を結合させる大仕事。現実の世界に働きかけることができるようになったのが第二段階、潜在力を行使する段階である。
【意訳】分霊の意志は現実に行使される。


2405ニキミミ[和貴実現 niu kiu miu mi]
【原本訳】物質組織段階。
【一音訳】[和]組織体[貴]目に見えない変化[実]物質。日本数詞の三番目[現]見えているものの姿
【文節訳】[和貴]組織体をつくり上げる現象[実現]現実に顕われる段階 
【解釈訳】潜在力の第一段階から第二段階へエネルギーが受け渡され、三段階で現実のエネルギーが流れ込むことにより、組織体が出来上がる。人間で言えば卵割から胎児として肉体が形成されて行く段階。自然で言えば台風が出来る段階。クチタマのエネルギーがサチタマに受け渡されニキタマが出来上がってゆく。
【意訳】物質組織体を作り上げる第三段階。


2406ミムツムピ[実醸津霊゜miu mu tiumu piu]
【原本訳】物質形成の意志。
【一音訳】[実]物質[醸]進展する[津]意図する[霊゜]自然の意志
【解釈訳】ミムツムピは人間で言えば肉体をつくり出す意志。組織体は出来上がってくるがまだ世には出られない段階。胎児の段階。
【意訳】実体として世に出る意志が出来上がる。


2407アラヨミ[会躍因現 au ra you mi]
【原本訳】現世対応の段階。
【一音訳】[会]出合いの時期到来[躍]最大の動作を表す[因]定められた通り。世。日本数詞の四番目[現]見えているものの姿
【文節訳】[会躍]激動に会す[因現]定められた世界
【解釈訳】激動の世の中に出て、生きてゆくための準備の段階。クチタマ、サチタマ、ニキタマ、そしてアラタマ。目に見えない潜在力の世界、いわば神霊界から(第一段階)、現実のエネルギーに転換し(第二段階)、認識できる実体を得て(第三段階)、世に出て行ける準備までの(第四段階)が示されている。アラタマ[会躍垂増]は「頭」の語源。
【古事記】荒御魂
【日本書紀】奇魂(くしみたま)、幸魂(さきみたま)、和魂(にぎみたま)、荒魂(あらみたま)
【意訳】生れ出る現世に対応する準備の第四段階。


2408ピクツムピ[日奇津霊゜pi ku tiumu piu]
【原本訳】秩序現象を続けようとする意志。
【一音訳】[日]認識できるエネルギー。光と熱[奇]不思議なる変化[津]意図する[霊゜]自然の意志
【解釈訳】ピクツムピとは現象を維持させていく意志、生きようとする意志。脳というコンピュータの基本ソフトといえる。
【意訳】生き抜こうとする意志が出来上がる。

 

弓前文書 第3章第1節

2025-07-29 09:23:59 | 弓前文書(神文)
3000アマツムカムロミチトコノ[天真津威醸移現育保堅延a ma tiumu ka mu ro mi tiu to ko nou]
【原本訳】大宇は意図す、大自然変化の流れ行く道筋、永久の秩序立て。
【一音訳】[天]ああ![真]真の姿[津]意図は[威]偉大な変化力[醸]進む[移]~ている[現]ありのままの姿[育]力の流れ[保]蓄えられている意志と力[堅]変わらない[延]秩序立て
【文節訳】[天真津]大自然が意図したこと[威醸移]自然変化が進んでゆく[現育]道筋の[保堅]永久[延]秩序立て
【解釈訳】大自然の永久の秩序立てとは大自然の法則のこと。[保]という字は戸締まりの戸、ドアを意味する。戸締まりをして、おけば、中の物を保存しておける。こんなところから、[保]の字が使われたようだ。次の[堅]。堅固なものは壊れない。そこでこの二つを合わせてトコシナエ、常磐木、このような日本語が永久という意味でいまなお使われている。第3章では、現に我々が見ている自然の姿だけでなく、目に見えない世界も含めて三つの法則に従い自然は変転して行く、ことについて書かれている。
【意訳】大自然の永遠の秩序(第3章章題)


3001カムロミ[威醸移現 ka mu ro mi]
【原本訳】大自然変化現相。
【一音訳】[威]大自然の変わり行く力[醸]進展する[移]進行中の動作を表す[現]ありのままの姿。現相
【文節訳】[威醸移]自然変化が進んで行く[現]ありのままの姿 
【解釈訳】カムロ、変わりゆくものというのは現代の言葉では大自然。春夏秋冬日々変わり続けている。過去と未来の時間軸の中で刻々と移り変わって行く現世をカムロミという。カムロミとは大自然そのもの、即ち、大自然がもつポテンシャル(潜在能力)そのものである。見えない力、自然を動かす原動力。
 見えない世界というと宗教的と思うかも知れないが、生物で例えれば命。命は見えない。命がないと動けない。けれど死んだ人間の心臓を生きている人間に移植して生かすことができる。命とは何だろう。見えない世界のエネルギーを送り出す命が現実のエネルギーを生み、人間を動かしていると考えられるのではないだろうか。
【意訳】大自然の姿。(第3章副題)
3002カムロキ[威醸移岐 ka mu ro ki]
【原本訳】大自然変化現象。
【文節訳】[威醸移]自然変化は進んで行く[岐]現象。際立つ
【解釈訳】カムロミに引き起こされる現象。現実をつくり出し、過去の力を吸収する、その意志と力がカムロキ。過去から未来へパ[晴゜]が循環し渦巻く潜在力の大運気の世界をタカマパル[垂威真晴゜活]といい、その姿がカムロミであり、その運気によって引き起こされる現象をカムロキという。タカマパルについては後に3301で説明する。
※ただあまり深く理解しようとしない方がいい。古代の神学を学ぶなら別だが、弥生の言葉が書いてあるという理解でもいいのではないかと思う。
【天津祝詞(あまつのりと)】高天原(たかあまのはら)に神留坐(かむづまりま)す神漏岐(かむろぎ)神漏美(かむろみ)の命以(みことも)ちて・・・・
※弓前文書に比べると、カムロミを女神、カムロキを男神として、男女の順に並べ替えている。
【意訳】大自然の現象。(第3章副題)


第三章 第一節
3100ミキマパルトコヨ[現岐真晴゜活保堅因 mi ki ma pa ru to ko you]
【原本訳】森羅万象は、大自然保有力が起こす因果の永久輪廻(りんね)運動である(これを輪廻因の法則という)。
【一音訳】[現]現相。この世の姿[岐]現象[真]真の姿[晴゜]大自然の持つ意志とその力が張り出して行く[活]現在形。一般動作を表す[保]蓄えられている意志と力[堅]変わらない[因]世。日本数詞の4番目
【文節訳】[現岐]森羅万象[真晴゜活]輪廻する[保堅因]永久に繰り返される世
【解釈訳】ミキとはこの世の起きる様々な現象、見えない世界から流れ込んだ現実のエネルギーがつくりだしたもの、森羅万象のこと。マパルは力が張り出して循環している状況で「まわる」の語源。仏教用語を借りて再生復活を繰り返す輪廻と訳せる。トコヨとは永久に繰り返す世をいう。「常世(とこよ)」の語源である。ミキマパルトコヨとは様々な現象が回って永久に繰り返すと訳せるだろう。
 何が回る、何が輪廻するのか、それはこの節に書かれている四つの世。アパナミ、アポナミ、イザナミ、イザオミの四つの消長を繰り返すので「よ(四・世)」という。因は果を生み、果は因を生んで、次々と永久に繰り返されるのである。
 森羅万象は、さまざまな因果の果てに引き起こされた、その潜在力の消長の段階に応じて、それに向かって流れ込んだ現実エネルギーがつくり出したものである。この潜在力の消長を相といい、流れ込んで来る現実のエネルギーを象という。潜在力とは見えない力であり、見えない力が現実のエネルギーに変換され、現象を起こすという意味だろう。見えないという表現は認識できないという意味でとらえて欲しい。
 カムロミ・カムロキ(大自然の姿・現象)は必ず四つの段階を経て生まれては消えて行く。これを永久に繰り返す。
【意訳】森羅万象は大自然の見えない力が起こす現実のエネルギーによってつくり出された消長の永久の繰り返しの姿である。(第一法則、輪廻の法則、トコヨの法則)(第3章第1節節題)


3101アパナミ[会晴゜成現au pa na mi]
【原本訳】因縁結実相。
【一音訳】[会]出合いの時期到来[晴゜]大自然の持つ意志とその力[成]物事が完成した[現]見えているものの姿。現相
【文節訳】[会晴゜成]現実に現れる機会を得た[現]姿
【解釈訳】パとは大自然の意志とその力、つまり、見えない世界のエネルギー。そのパに出会って完成する姿。パのエネルギーとは生命エネルギーと考えてもよいと思う。パという大自然の持つ潜在エネルギーが物質に変わってゆく姿という意味になる。現実に現れる機会を得た姿。
 原本訳で使われている「相」は潜在力の消長、「象」は流れ込んでくる現実のエネルギー。つまり「相」とは認識できないエネルギー、見えない世界のエネルギーであり、潜在力という言葉も使われている。「象」とは現実のエネルギー、現実の力の状態。
【意訳】大自然の持つ潜在エネルギーが現実の物質に変わってゆく姿(輪廻四つの世の第一段階)。


3102アパナヨ[会晴゜成因 a pa na you]
【原本訳】自然力吸収象。
【文節訳】[会晴゜成]現実に現れる機会を得た[因]定められた通り。世
【意訳】大自然の持つ潜在エネルギーが現実の物質に変わってゆく状態。


3103アポナミ[会穂゜成現 au po na mi]
【原本訳】事物発現相。
【一音訳】[会]出会う[穂゜]自然の持つ意志と力が分派、独立したもの。分霊[成]物事が完成した。秩序が出来上がった[現]見えているものの姿。現相
【文節訳】[会穂゜成]現象という自然の中の一つの意志、独立した自然意志である分霊がつくられた[現]姿
【解釈訳】独立した自然意志が出来るということは、現実に起こる事象が出来てゆく、現象が成長して行く。そこには現実のエネルギーが流れ出している。アポナミは現世。
【古事記】沫那美(あわなみ)の神
【意訳】現実のエネルギーが流れ出して、現象が成長してゆく姿(輪廻四つの世の第二段階)。


3104アポナキ[会穂゜成岐 au po na ki]
【原本訳】自然力集中現象。
【文節訳】[会穂゜成]現象という自然の中の一つの意志、分霊がつくられた[岐]現象
【解説訳】アポナで現象という自然の中の一つの意志、分霊がつくられた、その姿がアポナミ、力の状態がアポナキ。
【古事記】沫那藝(あわなぎ)の神
【意訳】現実のエネルギーが流れ出して、現象が成長してゆく。


3105イザナミ[親陜成現 iu tsau na mi]
【原本訳】事物分解相。
【一音訳】[親]自然の親しみ。愛憎[陜]接近する[成]物事が完成した[現]見えているものの姿
【文節訳】[親陜成]現象は分解、消滅して行く。[現]姿
【解釈訳】イザナは1408でも出てきたが、親しく接することにより生命は生まれ、そして他に代えが利かない個として存在し、よって、同位体の分裂増殖、新陳代謝とは異なり、個は消滅して行く。アポナミが成長して行く姿であり、イザナミは消滅へと向かう段階を示す。アパナミとイザナミがウツヨ[美積因]の世界、現世(うつしよ、げんせい)である。生物に限らず、森羅万象の姿の一つの段階。
【古事記】伊邪那美(いざなみ)の命。但し、1407参照のこと。
【意訳】成長が止まり分解、消滅して行く姿(輪廻の第三段階)。


3106イザナキ[親陜成岐 iu tsau na ki]
【原本訳】自然力解放現象。
【文節訳】[親陜成]現象は分解、消滅して行く[岐]現象
【解説訳】現象は分解、消滅して行く力の状態。
【古事記】伊邪那岐(いざなき)の命。但し、1408参照。
【意訳】現象は分解、消滅して行く。


3107イザオミ[親陜覆現 iu tsau wo mi]
【原本訳】余韻因果相。
【単語訳】[親]自然の親しみ。愛憎[陜]接近する[覆]覆う。またその状況から影および過去も表す[現]見えているものの姿
【文節訳】[親陜]分解して行く状況[覆現]覆われた姿 
【解説訳】オミとは覆われた姿、つまり、現象が消滅し過去となってしまった姿。消滅したとは、見えない世界、認識できない世界、潜在力の世界に行ってしまった。分解した潜在力は未来社会に進んで行き、また最初に戻ってアパナミで潜在エネルギーが現実の物質に変わってゆく。
【意訳】過去のものとなった現象の姿(輪廻の第四段階)。


3108イザナヤ[親陜成因゛iu tsau na yau]
【原本訳】自然力拡散象。
【文節訳】[親陜成]現象は分解、消滅して行く[因゛]原因結果が繰り返される。益々。
【解釈訳】過去のものとなった現象はさまざまになった。ということは、分解して消滅してバラバラになって、素材になったということだろう。これも見えない世界の話。
【意訳】過去のものとなった現象はさまざまになった。


弓前文書 第3章第2節

2025-07-29 09:23:35 | 弓前文書(神文)
3200ピミマペルトコヂュ[霊゜実増放゜活保堅集゛piu miu mau pai ru to ko jiu]
【原本訳】現実その裏に潜む意志の力は、現実が積み上がって行くうちに、意志は薄れ、力を失い、現実は永久の風化物となる(これを有限集゛の法則という) 。
【一音訳】[霊゜]自然の意志[実]物質。物の本質[増]増加する[放゜]力は消費されて行く[活]現在形の終動詞[保]蓄えられている意志と力[堅]変わらない[集゛]垢。物質の無秩序な群がり。
【文節訳】[霊゜実]現象の持つ潜在力[増放゜活]物質が増せば意志の力が減る[保堅集゛]永久の無秩序となる。
【解釈訳】前節で現象は永久に続かないものであることがわかった。ではどうして現象は永久に続かないのか。必ず消滅してしまうのはどういう訳なのか。その法則を示すのがこの節題。
 ピミ。自然の意志と物の本質、物質の持つ意志と力。
 マペル。増えると減る。何が増えると何が減るのか。物質が増えると自然の意志が減る。物質が増加するなら、その潜在力は減少して行く。現象の継続とともに潜在力は減って行く。潜在力とは自然の意志、つまり、認識できない、見えないエネルギーと理解すればよい。物質が増加したら、その反面で、潜在エネルギーが消費されて減少する。物理学にエネルギー保存の法則というのがある。「ある仕切られた領域の内部でいかなる反応が生じても領域内のエネルギーの総和は変化しない」というもの。ピミマペルはエネルギー保存の法則に相当する。
 トコヂュ。トコは永久。ヂュはわが身の過去一切、垢である。すべて人間を始め如何なる自然条件にあっても、エネルギーが出入りすると必ず垢というかゴミが溜ってくる。自分の作り出したものが[集゛]であり、他人の作り出した[集゛]を汚れという。
 自然の意志と物質の関係は、物質が増えればその反対に自然の意志が減ってゆく、そして永久の垢となる。物質が増えれば物質が持つ潜在エネルギーは減少して行き、最後は無秩序な物質の集まりとなる。エネルギーがなくなってしまえば何の意志もない、無秩序な物質の固まりにすぎない。つまり現象は必ず消滅するという意味になる。エントロピーの法則というのがある。無秩序の度合いを示す物理量の事。簡単に言ってしまえば、秩序は無秩序へ向かうということのようだ。トコヂュはエントロピーの法則に相当する。
 まとめると、第二の法則[霊゜実増放゜活保堅集゛]。[霊゜]は自然意志の力、潜在力である、[実]、現実の物、一つの現象である、[増]は増加する、物が成長して行く現象が増大する。そうすると[放゜]、地の力は弱まる、潜在力はなくなって行く。これを[集゛]。有限の法則または風化物の法則と言う。この法則を説明するため掲げられたのが、以下の四言五句の日本語数詞の原形であった。
【意訳】自然の意志の力は現象を積み上げていく。その反面、力は薄れて行き、最後には必ず消滅する。(有限の法則)(第3章第2節節題)


3201ユピプミ[結霊゜震゜実you piu pu miu]
【原本訳】あるきっかけで自然力は意志として活動して現実の種となった。
【一音訳】[結]縁が出来た[霊゜]自然の意志と力[震゜]発動する[実]物質
【解釈訳】直訳すると、縁あって自然の意志と力が発動し物質となった。日本数詞の「ひーふーみー(一二三)」にあたる。弓前文書は大自然変化の道[威醸移現育]、いかに自然の意志と力に順応して行くか、が書かれている。大自然の意志の順番が日本の数調である。
【意訳】あるきっかけで、自然の意志(潜在力)は発動し現実の物質となる。


3202ヨツムナ[因積醸成 you tu mu na]
【原本訳】定められた因縁に従って発芽増殖分化して雛形となった。
【一音訳】[因]定められた通り[積]積み上げる[醸]目にはよく分からないが、物質がどんどん増大している状況[成]物事が完成した
【解釈訳】直訳すると、定められた通り積み上がって増大し完成した。日本数詞の「よーいー(いつ)むーなー(四五六七)」にあたる。1番と7番、ピ[霊゜]とナ[成]で「ピナ」、ひな(雛)となる。一つの完成形だが、まだ真の完成段階ではない。
【意訳】定めのとおり増殖を続け、雛形ができる。


3203ヤコトタ[因゛凝充垂 yau kou tou ta]
【原本訳】その結果、定められた通り形成され充実し、有り余れる力を持つものとなった。
【一音訳】[因゛]原因結果が繰り返される。その結果は定められた通りである。いよいよ[凝]固まる[充]極めて物事が充実[垂]力が溢れ出る
[文節訳][凝充]形成する
【解釈訳】増殖は繰り返され定められた通り形成されて力が溢れ出る。日本数詞の「やー、こー、とー(八九十)」。日本数詞の1番と10番でピト[霊゜充]、人の語源である。形もはっきりしてきて大人となった完成した姿であり、エネルギーに満ち溢れた状態である。
【意訳】更に増殖を続け、形も定まり、パワーに溢れた状態となる。


3204エモマチ[重萌増育 yai mou mau tiu]
【原本訳】現実の積み重ねが増すにつれて、生まれる力は流れ去る。
【一音訳】[重]原因、結果が次々と繰り返し繰り返し積み重なって行く状態[萌]目に見えて物質が増加して行く[増]物質増加の最大の姿[育]力の流れ
【解釈訳】次々現象をつくって増え、同じことを繰り返していく。その一方で力は流れ去って行く。これが物、生物ならば、子孫をつくって行かねばならない。そのため余分の力が流れ去って行く。子孫を作るために力が消費される。また、自らの維持にも力が費やされる。子孫を作るというのも維持の一貫と考えられる。モマ[萌増]は日本数詞の百(もも)の原語である。チ[育]は同様に千(ち)、千歳(ちとせ)の原語である。
【意訳】増殖を繰り返す一方、維持するため力は流れ去る。


3205ヨヂュミペ[因集゛実放゜you jiu miu pai】
【原本訳】定められた通り現実は風化し力は失せた。
【一音訳】[因]定められた通り[集゛]物質の無秩序な群がり[実]物質[放゜]自然の意志と力が失せ、意志と力は他のものに変換する
【解釈訳】定められた通りというはこの場合3200ピミマペルトコジュ、エントロピー・エネルギー保存の法則による。天の定めによって潜在力は無秩序な物質に変わり、その力、すなわち生命は失せた。ピキル[日奇活](生)には寿命がある。
 ヨジュミは万(よろず)の語源である。日本語数詞の原型となったものは、この二大自然法則の説明するための韻文であった。
【意訳】定められた法則により、物質は無秩序な物質に変り、その力である生命エネルギーは無くなってしまう。


※閑話
 日本語の母音はエネルギーの小さい順からならべるIUOAであった。
 数詞は分配の為に必要だった。一つのものを半分にして2。二つになった物を半分にして4。四つになったものを半分にして8。物を平等に分けるために必要だったのだろう。これら母音に垂直因果関係を表すy音を付けて数詞は出来た。
 一(YI)二(YU)四(YO)八(YA)
 更に、物体を表すM音を付けて
 三(MI)六(MU)
 更に、物量を表すT音を付けて
      五(TU)十(TO)
 全て母音の順に倍数となっている。
 数詞では出てこなかったが、MO(もっと)MA(まったく)TⅠ(小さい)TA(たくさん)というように母音の順に並べられる。さらに、YMTの最大を並べるとYAMATA、八岐大蛇(やまたのおろち)のヤマタになる。
 これらの数詞を吟味して大自然の意志の順番を表す文章にして完成させたのが日本数詞の原形であった。語呂合わせ的なものだろう。母音はAOUIに加えてAU,OU,IU,AIが増えて母音は八つである。
 一(YI)⇒ピ[霊゜piu]、Y音からP音へ変更された。
 二(YU)⇒プ[震゜pu]、これもY音からP音へ変更された。
 三(MI)⇒ミ[実 miu]
 四(YO)⇒ヨ[因 you]
 五(TU)⇒ツ[積 tu]
 六(MU)⇒ム[醸 mu]
 七    ⇒ナ[成 na]、七番目が付け加えられた。
 八(YA)⇒ヤ[因゛yau]
 九    ⇒コ[凝 kou]、九番目が付け加えられた。
 十(TO)⇒ト[充 tou]
 現代の略した数え方はひーふーみーよーいー(いつ)むーなー(なな)やーこーとー。


[結霊゜震゜実因積醸成因゛凝充垂重萌増育因集゛実放゜]は関連を示す字[結yu)[因you][因゛yau][重yai]の順に、次次々と引き継ぎ完成させて、最後は原因と結果を表す[因you]という字を用いて前を振り返り、結論とした巧妙な構文例である。文字の無い弥生時代のものだ・・・・。


弓前文書 第3章第3節

2025-07-29 09:23:12 | 弓前文書(神文)
3300パツウツルトコオ[晴゜積美積活保堅覆 pa tu u tu ru to ko wo]
【原本訳】始まりあれば必ず移り行くあり、その軌跡は影を永久に残す(これを無限覆の法則という) 。
【一音訳】[晴゜]大自然の持つ意志とその力が張り出して行く[積]積み上げる[美]生まれる[積]積み上げる[活]現在形。一般動作を表す[保]蓄えられている意志と力。動かぬ力の量。戸[堅]変わらない。不変[覆]覆う。またその状況から影および過去も表す
【文節訳】[晴゜積]始まり[美積活]どんどん変化して行く※移るの語源[保堅]永久[覆]過去
【解釈訳】第一の法則は輪廻の法則、事象は繰り返すということ。第二の法則は有限の法則、始まった事象は必ず消滅するということ。これだけでは輪廻とはまるでラットの回転かごを回っているように堂々巡りをしていることにもなりかねない。そこで登場するのが時間軸。世は必ず一方に進む。未来へ進む。言い替えれば、過去を積み重ねることでもある。輪廻する世界は有限であって、一方的に進んで行き、再び過去に戻ることはない。パツ、潜在力が積み上がり、現象が始まる。ウツル、生まれ積み上がって行く、つまり、どんどん変化して行く。トコオ、永久に覆われたものになる、つまり、過去になる。輪廻する世界は必ず有限であり、一方的に進んで行き再び戻ることはない。この節で述べられているのは現世変遷の具体例である。第三法則は永久に過去は残る法則。つまり、時間は進み、過去となって行き、過去となったものが再び戻ることは無い。
【古事記】底筒男(そこつつのお)・中筒男(なかつつのお)・上筒男(うわつつのお)の三柱。住吉大社の祭神、祓戸大神(はらえどのおおかみ)の構成神、4206参照
【意訳】始まる現象は時間が経てば次々と移り変り、過去は永久に残る。(第3章第3節節題)(第三法則、過去は永久に残る法則)


3301タカマパル[垂威真晴゜活 ta ka ma pa ru]
【原本訳】大自然の威大な有り余れる力が輪廻している。
【一音訳】[垂]力が溢れ出る[威]大自然の変わり行く力[真]真の姿[晴゜]大自然の持つ意志とその力が張り出して行く[活]現在形
【文節訳】[垂威]溢れ出るさまざまな驚きの潜在カ[真晴゜活]輪廻する真の姿
【解釈訳】大宇宙、自然には潜在エネルギー、ポテンシャルが満ち満ちている。それがさまざまな現象となり、人間の生死もその一環である。これらの現象はすべて遠い昔からのさまざまな因縁の結果、潜在力の状態が刻々と変化している様である。現実の世にカが張り出すという意味のマパル。これは一つの輪廻の姿である。こんなところから回転するという意味のマワルという言葉が定着した。弓前理論のタカマパル(高天原)というものは、現実の世の時間と直行する。過去から未来へと続く因は果を生み、果は因を呼ぶ、輪廻する森羅万象の潜在カの姿なのである。
 自分なりの解釈を試みてみる。見えない力、潜在力、これは何だろう。生きている人は命がある。これは疑う余地がない。でも、命を見たことがあるだろうか。心臓が動いている現象は捉えられるが命は見えない。脈拍がある時と鼓動を打たなくなったとき。命がある場合とない場合、命の存在や不存在を見いだせるだろうか。現象だけで命の有る無しを判断しているだけで、命そのものは見えない。命は見えない力、潜在力だと言えるのではないか。
 潜在力が現象化、物質化をさせたのがこの世、物質化を維持する力が無くなった潜在力のあの世。このように考えると潜在力が物質化させ維持し消滅してまた元の潜在力に戻る。潜在力が力を蓄えまた物質化をさせるという循環の渦になっていると考えると、私には納得できる気がする。命は見えない力だ、潜在力だと考えると、その潜在力の循環、偉大な力の輪廻というものが、私にはおかしな理屈には感じなくなった。
 人間は食べ物を消化して血となり肉となり身体を作っている。構成する細胞は日々新陳代謝で入れ替わっている。骨でさえも3年から5年で入れ替わるらしい。数か月前の自分と今の自分は全然違うもので出来ていると言える。それでも同じ人間であると言えるのは命、即ち見えない力、命によってはじめて成り立つのではないか。
 潜在力に力がある間は現象をおこし続け、力が無くなると現象が維持できなくなる。これが人間の生と死、この世とあの世の違いかと思う。潜在力の最小の一因子をはピ[霊゜piu]という。自然の意志と訳されている。
 自然も同じだ。春夏秋冬、季節は移り変る。太陽の熱と光によるものだろう。だが何故春は芽生え秋は実りそして枯れるのか。それを動かすものは何だ。それを弓前文書ではカ[威ka]という。恐ろしい力とか偉大な力とか大自然の変わり行く力とか訳すが、これも見えない力、潜在力だろう。人間を維持しているものは食べ物、それと同じく自然を動かしているものは太陽と言えるが、その裏で本当に動かしている根本のものを考えると、見えない力、潜在力と言えるのではないか。推し量れない力の存在を否定できない。
【古事記】高天原(たかあまのはら)。八百万の神々が集まって相談するという所になっている。前二世紀ごろの倭人の言葉が、七世紀に古事記で、高天原という三字に当てたことによって、大空というイメージを与えてしまった。倭人の言葉には天空という意味は少しもない。
【意訳】潜在力は循環する。


3302イモトポツム[厳基保穂゜津 yi mo to po tiumu]
【原本訳】因縁の原点、大本の心の意図する所は。
【一音訳】[厳]原点[基]大本の姿[保]蓄えられている意志と力[穂゜]自然の持つ意志と力が分派、独立したもの。性根、心、分霊[津]意図する
【文節訳】[基保]大本 
【解釈訳】誰の「心」かというと大自然の心
【意訳】大本の心の原点が意図するものは次のようなものだ。


3303イヌノナス[緒沼゜延成澄 yiu nu nou na su]
【原本訳】初めの緒(いとぐち)は混沌から秩序立て完成へと進んで行く。
【一音訳】[緒]始まり、糸口[沼゜]混沌[延]秩序立て[成]物事が完成した[澄]自然の意志と力を吸い込む
【解釈訳】自然の意志と力を吸い込むサ行。サ行はエネルギーの順番で小さい方からiuoaの順にシ[静si]ス[澄su]ソ[虚so]サ[爽sa]となる。小中大・最大。レベル1・2・3・4で表すことにする。
【意訳】始まりは混沌。混沌は秩序立てられて完成へと進んでゆく。自然の意志と力を吸い込む力はレベル2。


3304チキミピル[雷゜岐現日活 ti ki mi pi ru]
【原本訳】力の集積体が出来上がり、それが明らかに照らし出す現世その太陽の下(もと)。
【一音訳】[雷゜]エネルギーの塊[岐]際立つ[現]見えているものの姿[日]光と熱[活]動く
【文節訳】[日活]太陽が動く。※昼の語源
【解釈訳】前行のイヌノナス[澄su]に対応してチキミピル[活ru]。同じ母音が対応している。スウという潜在力の低密度の現象が起こったために、現実のエネルギーが流れ込むことを表すのに[活ru]という動詞がある。
【意訳】潜在力の塊が明確な姿となって太陽の下に現れる。


3305ユピプミソ[結霊゜震゜実虚 yu piu pu miu so]
【原本訳】あるきっかけで大本の意志が分化し、発動し、その現れは物質化の種となった。
【一音訳】[結]縁が出来た[霊゜]自然の意志と力[震゜]自然の意志と力が発動する[実]物質[虚]大自然の意志と力を吸い込む高いレベルの動作を表現する動詞
【解釈訳】3201と同じユピプミ。
【意訳】あるきっかけで、自然の意志(潜在力)は発動し現実の物質の種となる。レベル3。


3306メキチヨロ[芽貴育因移 mai kiu tiu you ro]
【原本訳】芽は霊妙に定められた通り育ち行く。
【一音訳】[芽]自然の力が物に変わる局面、またその動作※芽の語源[貴]目に見えない変化[育]目に見えない力が流れて物事が増大して行く[因]定められた通り[移]進行中の動作を表す
【文節訳】[因移]これも定められた現象の掟である 
【解釈訳】前行の[虚so]に対応して[移ro]、共に進行形である。
【意訳】芽は定められた通り育つ。


3307ツムクコトサ[積醸奇凝充爽 tu mu ku kou tou sa]
【原本訳】集積、増殖、分化して妙なる現象となった。
【一音訳】[積]物事が増大して行く状況[醸]目にはよく分からないが、物質がどんどん増大している状況[奇]不思議なる変化[凝]固まる[充]極めて物事が充実[爽]晴゜の自然の意志と力を吸い込む最大の動作を意味する動詞
【文節訳】[積醸]反応が進む。そのように自然は動く[凝充]形成する
【解釈訳】「いろは」は自然の意志の順番。ここには、五六[積醸]と九十[凝充]が入っている。
【意訳】さらに増殖を続け不思議な変化をしながら形は定まってゆく。レベル4。


3308ヤタポモマラ[因゛垂穂゜萌増躍 yau ta pou mou mau ra]
【原本訳】余分のカは現象の増大に変化し。
【一音訳】[因゛]いよいよ[垂]力が溢れ出る[穂゜]ますます栄える[萌]目に見えて物質が増加して行く状況[増]物質増加の最大の姿[躍]最大の動作を表す
【解釈訳】前行の[爽sa]に対応して[羅ra]。最大形である。
【意訳】いよいよ力が溢れ出て益々発展して行き、目に見えて現象は増大する。


3309エテネメニシ[重与根芽和静 yai tai nai mai niu si]
【原本訳】現象が重ねられて行くうちに、根や木の芽のような秩序体に力は転換されて行く。
【一音訳】[重]原因、結果が次々と繰り返し繰り返し積み重なって行く状態[与]力と意志の変換[根]秩序を生み出す媒体物[芽]自然の力が物に変わる局面、またその動作[和]組織体[静]自然の意志と力を吸い込んでしまった完了の動詞
【意訳】現象が重ねられて行くうちに、根や芽のような組織体に転換されて行く。レベル1。


3310ケヂュペグウリ[異集゛放゜哈゛浮座 kai jiu pai gu wu ri ]
【原本訳】現象は異物、風化物に変わり消滅し、散り行く。
【一音訳】[異]別のものに変化する[集゛]物質の無秩序な群がり[放゜]自然の意志と力が失せ、意志と力は他のものに変換する[哈゛]どんどん食べる[浮]軽いもの[座]完了形。動作が終わった
【解釈訳】前行の[静si]に対応して[座ri]。完了形である。[異集゛]無秩序な群りに変化し[放゜]力が失せる[哈゛浮座]どんどん食べて軽くなって動作が終わる。ということは風化物になり消滅、散るという事。風化とは原石や鉱物が大気や水にさらされて分解・破砕される現象をいう。それまで秩序を持って増大してきた現象が根や芽のような組織体に転換さるとともに、力を失い、バラバラになってゆくという事だろう。
【意訳】現象は風化物に変り散り散りになる。


3311ヌイワオイノイ[沼゜囲渡覆厳乃 nu wi wa wo yi noi]
【原本訳】混沌は行きわたり覆い尽くして、因縁の原点に返ってしまった。
【一音訳】[沼゜]混沌[囲]囲まれる[渡]行き渡る[覆]覆う[厳]原点[乃]~という結果である
【解釈訳】潜在力は、進行形ソ、最大形サ、完了形シ。それに応じて現実のエネルギーは、進行形ロ、最大形ラ、完了形リ、と流れ込んで密度は同じとなり、現象は終わってしまった。この現象を意図したものがツム[津]、すべての、一つの輪廻の完了、これがノイ[乃]。これこれの結果となった。[沼゜]何が渾沌とするのか。潜在力が渾沌としてしまうということだろう。[囲渡覆]囲まれ行き渡り覆われる。混沌状態に陥るということだろう。[厳乃]原点当結果になった。原点に戻ったということ。原点とは最初の状態、潜在力は潜在力の最小単位であるピ「霊゜piu]に戻ったということだろう。
【意訳】潜在力は混沌としてしまい、原点であるただの一因子に戻る。


3312トコオ[保堅覆 to ko wo]
【一音訳】その軌跡の影だけは永久にのこる。
【一音訳】[保]蓄えられている意志と力[堅]変わらない[覆]覆う。またその状況から影および過去も表す
【文節訳】[保堅]永久 
【解釈訳】「軌跡の影だけは永久に残ると」はどういう意味だろう。「軌跡」とというのは現象が起こりそれが終わる過程だろう。「影だけは永久に残る」とは現象が始まって終わったその事実が過去として残る。その事実は消えない。あったことの事実は過去としての残るという意味ではないだろうか。人間で言えば生きて死んだという事実は永久に残る。
 前行で輪廻は完結した。そしてこの行で過去になったと示している。つまり、一つの輪廻が終わったらそれは過去になる。ということは未来が始まる。過去は永久に過去のまま。輪廻は同じところをぐるぐる回るのではない未来へ進むことを示している。らせん階段のように、ばねのように時間軸を未来に進みながら輪廻を繰り返す。無限に未来へと進む四次元の世界に居るのだ。
 有限から無限への輪廻の一コマ。これを六十三字十二行の韻文にしたのが、3301から3312に至る現世変遷の具体例である。
【意訳】現象が生じそれが終わったという事実は永久に過去として残る。