信州・佐久で、ものづくり

信州・佐久在住の「ものづくり」の裏方である生産技術一筋二十数年。一芸より多芸を求められる人間から見た「ものづくり」論。

歯科用イオン導入装置 開発苦労話 その8

2016年05月29日 19時11分34秒 | 日記

6月の「歯と口の健康週間」を前に、虫歯を予防する歯科用イオン導入装置のお話をしております。

歯科用イオン導入装置なのですが、患者様には?%のフッ化ナトリウム溶液を脱脂綿に染ました歯列型の電極を噛んでもらい、手に電極棒を持ってもらうことで回路を形成します。この構成で大体、数キロから数十キロオームの人体抵抗となります。

歯科用イオン導入装置の回路を簡単に原理説明すると、歯科用イオン導入装置は水の入った「タンク」と、その取り出し用の「蛇口」に例えることができます。歯科用イオン導入装置のパネルにはダイヤルつまみがありますが、それが「蛇口」。見たことのある人なら分かりやすい、と言いたいところですが、見たこともない、という反応もありそう。

歯科用イオン導入装置で電流値の所定値まで上がらない人がいます。それは、形成されている人体抵抗が高いから。手を濡らしてもらったり、接続を見直してもらうことで解決するのですが、歯科用イオン導入装置のパネルにはダイヤルつまみを右一杯に回す操作をされる方もいます。社員ですらやっちゃう、この行為・・・ムダな行為です。場合によっては危ない、とも言えます。何故でしょう?

人体抵抗とは蛇口につなぐホースとみなして、ホースがストローのように細い状態=人体抵抗高い、と考えてください。蛇口も締め切った状態からストローから水の出るところまでは、蛇口の開け閉めで出る量を調整できますね。でも一定量以上は蛇口を全開にしてもストローを通る水の量しか出てきません。

反対にホースが蛇口と同じ太さになったら、どうでしょうか?これは手を濡らして人体抵抗を下げた時と同じです。この時、さっき蛇口全開にしたままホース(患者)をつないだらズブ濡れ、つまり危害を発生してしまいます。

もう少し科学的に説明すると中学校で習うオームの法則で説明できます。固定である電圧を人体抵抗で割るとMAX電流値が求められます。ダイヤルつまみを右一杯に回してもMAX電流値以上は絶対に流れません。

これまでの説明だと、ズブ濡れ以上の水没の危害の可能性が潜んでいることに気づきますよね!蛇口の開け閉めだけでは危ない!と。

安心して下さい!歯科用イオン導入装置にはタンクと蛇口の間に、流れ過ぎを防止する細い管を入れてあります。

ここから、神から授かった装置という工場長、と科学的根拠の筆者との衝突問題!

ひとつめ:人体抵抗を理由に施術に必要な電流値に上げられないのは開発者として怠慢!と来た。

MAX電流はオームの法則に従うしかない。単純に電流値を上げるには前述のタンクの高さを上げる(つまり電圧を上げる)方法はあるが、ジュール熱による火傷や組織壊死のリスクも増大する。つまり下手に工場長の挑発に乗ったらリスクを抱えてしまうというトラップでもありました。

ふたつめ、みっつめ・・・と、人をオトシめるネタは尽きないのですが、開発サイドとしても大学の研究においては所定の電流を発生できる装置が必要でした。そこでトランジスタの規格表で耐電圧をみて部品を探して(国内で部品入手困難になりつつありました)、72ボルトや100ボルトの装置を作って提供しました。さすがに人間を含め生体には使えません。歯科用イオン導入装置が何ボルトなのかは企業秘密です・・・実際にテスタで測れば分かります。

歯の実験には牛の歯を利用するのですが・・・狂牛病(危険部位ですよ!)があって代替の豚でも地元の屠場から入手する許可を得るのは困難を極めましたね。屠場の人から現地で歯を抜くのはアナタですよ!と言われたり・・・!


本日も本ブログを御覧戴き、誠に有難うございます

筆者略歴
  • 食品、住宅設備、医療機器、スマホ・カーナビ部品メーカー経験(生産技術を中心に製品開発・購買・外注・品質保証・施設管理)
  • ISO9001,14001,13485管理責任者(事務局)
  • 食品衛生管理製造過程(HACCP)の承認取得(事務局)
  • 第二種医療機器製造販売業 総括製造販売責任者,安全管理責任者
  • 機械工具商許可(長野県公安委員会)
  • 第二種電気工事士
  • 第三級アマチュア無線技士
  • 技能講習修了:ガス溶接、フォークリフト、プレス機械作業主任者 (特別教育:アーク溶接、産業ロボット教示・検査、低電圧作業)
  • 特許・実用新案 30件以上


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