信州・佐久で、ものづくり

信州・佐久在住の「ものづくり」の裏方である生産技術一筋二十数年。一芸より多芸を求められる人間から見た「ものづくり」論。

歯科用イオン導入装置 開発苦労話 その25

2016年06月27日 20時10分30秒 | 日記

歯科用イオン導入装置で使用するフッ化ナトリウム溶液は取り扱いの難しいことを御説明致しました。

いわゆるプロフェッショナルケアですね。医療機器と言えばプロフェッショナル用の機器となるということです。商品開発において非常に重要なキーワードとなります。

例えば記念写真を撮影する時・・・ポケットカメラで撮影しても、プロ用一眼レフカメラで撮影しても実はあんまり変わらない、って知っていますか?画素数が違うだろう、レンズが・・・と言ったところで実際に、その差をチェックしていますか?プロが撮影するからにはプロ用の一眼レフを使わないとお客様が納得しないのですよ!成果物が同じだとしても!

患者様から見えるような機器はプロフェッショナル用の雰囲気が必要ってことですね。見た目は大事ですね!筆者が中身の検討用の試作品を見せるとデザインばかり評論されて、さんざん悪口を言われましたが、最終的な商品はデザインが重要です。しかし中身を準備できない、調達できない会社にとってデザインばかり議論してもムダです。

中身と安全性と信頼性を備えてデザインの良いこと・・・プロフェッショナルケアたる医療機器の具備すべきポイントですね。さらに重要なキーワードがあるのですが、これを話すと筆者の商売に影響が出るので、やめておきます。中身とか法令とか、じゃないですよ!

記念撮影ついでに言っておきますと、医師が患者に対して説明する際の説得力のある情報のアウトプット、つまり図表や写真、3Dグラフィックなどは喜ばれますので、セールスも楽です。もっと詳しく言うと、意味の分からない数字やグラフではなく、良い方向へ向かっているのか、悪い方向へ向かっているのか、具体的に何が悪いのか、治療で何をどうするのか、などなどをグラフィカルな表現も開発対象ですね。


歯科用イオン導入装置 開発苦労話 その24

2016年06月22日 21時13分40秒 | 日記

次はクリーンルームについての話です。筆者は食品製造、医療機器製造、有名スマホや高級カーナビ部品製造メーカーを転々とし(させられ?)た中で、現在、最大規模のクリーンルームの中にいます。

その前に重要なことと言えば・・・医療機器製造なら『薬局等構造設備規則 (昭和36年2月1日厚生省令第2号)』に則った建屋が必要になります。ついでに食品製造なら食品営業許可の施設基準ですね。これだけ見ていると大したことは書いてありません。というより程度問題になります。多分、行政担当者によっても大きな差はあると思いますが・・・指導に対して行政担当者を怒らせる一言「ヨソ(他の行政区)ならOKなのに!」。おとなしく是正して下さいませ。

クラスいくつかやクリーンルームなんて書いてないやEverything OK!なんて思っているアナタは甘い!自分が何を作っていて、それは患者に対してどう使われるのか、皮膚、口腔を含む体内、血液・汗等の体液との接触・反応、注射・点滴・飲用・外用、微生物・ウイルス・化学物質による汚染・人体への感染・中毒などなど考えていくと自ずから必要な清浄度が決まって来るのではないですか!

ヨソさんが、あのレベルだからウチは、この位でいいや、みたいな考え方は・・・よく見てきました!

ここで、なんちゃってクリーンルームでもクラス1000を出す方法を御紹介!(役に立たない情報です)

風のない湿った日が良いですね。朝から総出で、

  1. 椅子・座布団・タオル・ふきん等の繊維・スポンジを含むもの、段ボール・紙箱・記録紙等の紙類、木製品、カーテンやブラインドを全て外に出す
  2. エアコンを強送風にしたままフィルターを外し本体とフィルターを高圧エアで掃除!フィルターが劣化していたら外に出す
  3. 窓や扉は全て外し水洗い、枠も水拭き。乾燥したら取り付け、以降、窓は開けない
  4. 天井・壁・備品棚・机など全ての面を高圧エアで掃除、濡れ雑巾で拭き上げる
  5. 真空掃除機で床を掃除し水拭きを行う
  6. 4~5を3回以上繰り返す。
  7. エアコンや換気扇は止める。
  8. よく拭き上げた座面にクッションのない椅子を一脚だけ置いて、掃除用具を含め退出後、扉を閉める

必ず深夜に一人で来てね!必ず一人で~!

  1. 頭からズボンまであるクリーンスーツ(防塵服)とクリーンブーツを着用する。着用したら部屋の入口前で粘着ローラーで全身のホコリをとる
  2. パーティクルカウンタを持って部屋に入り椅子に座って30分待つ(この間、窓の外からタヌキやキツネ、鹿の目が光ったり、青白い顔や白いのっぺらぼうが覗いてきますが、声を出したり、動いてはなりません)
  3. パーティクルカウンタで測定!

何ということでしょう!パーティクル数が3ケタしか出ない。クラス1000達成!(天井や壁、床の汚れ、劣化状態、仕上状態でも変わります)

ウチの(なんちゃって)クリーンルームはクラス1000だ!と喜ぶ・・・おじさま方って結構見てきました。実際には深夜ではなく休日にパーティクル測定して喜んでいます。空気の動きがない、人や物も動いていない状況だとクリーンルームでなくてもクラス1000達成しちゃう時があるんです。でも生産状態でないのでダメですね!


歯科用イオン導入装置 開発苦労話 その23

2016年06月21日 21時05分02秒 | 日記

こんなんじゃ歯科用イオン導入器が売れないよ!と考える方は筆者の上司と同じ・・・ですね。

今、私たちはリスクマネジメントを行い、リスクを抽出し、リスクコントロールする術を探しているのではありませんか?

優れた薬品でも使い方次第では毒にもなるし、副作用だってある。X線や放射線、レーザー、磁界、電気、ガスでも使い方を誤れば身体を傷つけ、死に至る。反対に麻薬やサリドマイドだって、うまく使えば患者に大きな恩恵をもたらします。そういう議論をしている最中に「思考停止」して、頭の中は「御身大事」で一杯となり、相手をテロリストみたいに悪者呼ばわりする・・・方が問題ですよね。

インフォームドコンセントしていない、正しい使い方をしていない、毒性を理解していない・・・などなどについて断罪的な見解を挙げてきましたが、フッ化物の齲蝕予防(虫歯予防)効果も説明していますし、そもそも一言も「フッ素(塗布や洗口)がダメ!」なんて言っていません。賢明な読者の皆様は御承知と思いますが。今までの投稿で頭に血が上っている方がおられたら、それは・・・何か別の問題でしょうね。

ウチは厚生労働大臣様から御墨付きをもらっているんだぞ!と言っても薬機法上の業許可であり、他の営業許可と意味的に変わりません。自動車運転免許と同じで、自動車を運転しても良い、という程度の感覚が普通ではないでしょうか。安全運転できるかどうかは、今後のお楽しみ!(リスクマネジメントの話は続きます)


歯科用イオン導入装置 開発苦労話 その22

2016年06月20日 21時30分33秒 | 日記

歯科用イオン導入装置において使用されるフッ化ナトリウム溶液のハザードについて述べてきましたが、実感できない方が多いようですので、外部リンクも利用しながら説明して参ります。下記情報をどのように捉えるかは読者にお任せ致します。かなりショッキングな内容もありますので、御注意下さい。またリンク先の内容について筆者は一切の責任を負いません。

先にフッ化水素(フッ化水素酸、フッ酸)のネット情報です。

フッ素塗布やフッ化ナトリウムのネット情報です。多数ありましたが、根拠の乏しいものは除外しています。

現時点で、子供が、%オーダーのフッ化ナトリウム溶液を数十cc以上、「誤飲」した場合のリスクは許容できない、と判断せざるを得ません。フッ化ナトリウムだから大丈夫と言っても、前回説明しました通り、酸と混ざるとフッ化水素酸が生成される、つまり体内の胃酸で危険なフッ化水素酸となるリスクも懸念されます。

数十ccの誤飲事故や、八王子のフッ化水素酸誤塗布事故にイオン導入装置が介在していたとしたら、どう責任を取るのか?どう予防するのか?「発売以来、何十年間事故がないから安全」と言い切る偉いさんにとっちゃ、筆者は余程邪魔だったようで・・・


歯科用イオン導入装置 開発苦労話 その21

2016年06月19日 18時33分04秒 | 日記

歯科用イオン導入装置において、虫歯に強い歯・・・フルオロアパタイト形成に必要なフッ素の供給源は?%のフッ化ナトリウム溶液であることを前回、お話ししました。数%オーダーのフッ化ナトリウム溶液と言えども扱い方を誤れば事故につながります。ですからリスクマネジメント上では「(そのハザードを理解した)歯科医のみ施術できる」ということとしています。

しかしながらリスクを歯科医に押し付けて終わり、というのでは医療機器メーカーとして無責任と言わざるを得ませんので、リスクマネジメントを行い、求めに応じて公開できるようにしておくのがメーカーの義務と言うものです。というのもフッ化ナトリウムNaFは中性から、ややアルカリ性(pH7~8)で安全なのですが、硫酸H2SO4や塩酸HCl等の酸と混ざると、フッ化水素酸(フッ酸)HFというフッ化ナトリウムとは桁違いに危険なフッ化物に化けます。

フッ化水素酸(フッ酸、フッ化水素)は液体でもガスでも非常に危険です。工業的に使用されることが多いのですが、歯科技工所でも使用されており、歯科医院において「フッ素持って来て」なんて頼むのは危険だ、ということですね。実際に、こういう間違いで女の子が死亡という破局的な事故は発生しています。

筆者は現在、フッ素等の有害物質を含むガスを分解する工程の技術スタッフをしています。地球温暖化・オゾンホールの原因となる安定したフロンガスでも分解するとフッ化水素ガスとなります。このガスを水シャワーに通すと水に溶けてフッ化水素酸水溶液になり、ガスは大気に放出可能となります。このままでは水シャワー側が危険なので、水を水酸化ナトリウムNaOH水溶液とすれば、安全(?)なフッ化ナトリウム水溶液となる訳ですね。(ここに来て、フッ化ナトリウム溶液の作り方が分かったような気がしました。)

筆者が来る前は恐ろしい量の水酸化ナトリウム水溶液を使っていましたが、筆者が来て装置の改造を進めた結果、ほとんど使わなくなりました。それでもpH9以上保つようにしています。実際に分解ガスを水シャワーに通すと、みるみるうちにpHは下がっていきます。水酸化ナトリウム溶液を添加しないと酸性となり、シャワー水が凶悪なフッ化水素酸水溶液となっていることが分かります。

工業的な事故としては韓国で亀尾フッ化水素酸漏出事故というのがあり、作業員ら5人が死亡、住民ら四千人あまりが健康被害にあっています。日本でも人知れず・・・あるようです。(ネット上には犯罪に用いられた事案もあります)

「発売以来、何十年間事故がありません」で済ませた偉いさんがいた訳ですが、色々と調べ、また自分でも、その危険な現場に立ってみると、本当に医療機器のリスクマネジメントは重要と感じますね。フッ化ナトリウムについて筆者の記述以上の意見もネット上に存在しますが、公知の情報としては以上とさせて戴きます。リスクマネジメントの話は続きます。


本日も本ブログを御覧戴き、誠に有難うございます

筆者略歴
  • 食品、住宅設備、医療機器、スマホ・カーナビ部品メーカー経験(生産技術を中心に製品開発・購買・外注・品質保証・施設管理)
  • ISO9001,14001,13485管理責任者(事務局)
  • 食品衛生管理製造過程(HACCP)の承認取得(事務局)
  • 第二種医療機器製造販売業 総括製造販売責任者,安全管理責任者
  • 機械工具商許可(長野県公安委員会)
  • 第二種電気工事士
  • 第三級アマチュア無線技士
  • 技能講習修了:ガス溶接、フォークリフト、プレス機械作業主任者 (特別教育:アーク溶接、産業ロボット教示・検査、低電圧作業)
  • 特許・実用新案 30件以上


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