裁判太郎がみた絶望の裁判所/ http://akisan7.web.fc2.com

訴訟物をでっち上げて既判力を捏造しても裁判官の裁量の範囲内であると言い切った福岡高裁とそれを容認した最高裁。

第2 裁判所は、既判力の捏造行為(被疑事実)を誤魔化した。

2017年06月06日 | 裁判

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裁判官による既判力の捏造が、職権濫用行為であることは明らかである。

   既判力の捏造行為は、前訴の訴訟物を読み替えて既判力を認定する行為であって、前訴の訴訟物を読み替えるだけでは、成立しない。
   ところが、裁判所は、前訴の訴訟物を読み替える行為だけを取り上げて、訴訟物をどのように捉えるかという問題は裁判官の職務執行上の裁量の範囲内であるとの理由だけで、職権濫用行為には当たらないと結論づけている。
   常識的に言って、既判力の捏造が、職権濫用行為に当たることは明らかであるから、既判力の捏造に関わる問題を故意に避けたのである。
   それを裏付けるかの如く、福岡地裁の決定書に記載された「被疑事実の要旨」には、既判力の捏造に関する事項が、キレイに抜け落ちている。

福岡地裁の決定書(棄却理由の1の⑵)
⑵ 被疑事実の要旨(抜け落ちている部分:青文字)
   被疑者◯◯◯◯、同◯◯◯◯及び同◯◯◯◯は、福岡市中央区城内所在の福岡高等裁判所裁判官であったものであるが、被疑者らは、共謀の上、平成26年6月24日、請求人の実母が提起した不動産の共有持分に基づく不当利得返還請求訴訟の控訴審判決において、前訴訴訟物が「『単独所有権』に基づく不当利得返還請求権」であったのに、前訴訴訟物が「『所有権』に基づく不当利得返還請求権」であったと判断した上、前訴の既判力は「『所有権』に基づく不当利得返還請求権は存在しない」旨の判断であったと認定した上、共有持分は所有権の一部であることを理由に、本訴の共有持分は、前訴の所有権に含まれ、前訴の既判力により、本訴の不当利得返還請求は認められない旨判断し、もって職権を濫用して、同人の不当利得返還請求権の行使を妨害した。


第1 福岡高裁 平成29年(く)134号

2017年06月06日 | 裁判

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H29.5.22 福岡高裁決定

    「既判力のでっち上げは、裁判官の裁量の範囲内である」

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福岡高裁の裁判官による公務員職権濫用罪の付審判請求事件の棄却決定に対する抗告申立事件
(平成29年5月22日 福岡高等裁判所第3刑事部 決定 棄却)


   福岡地方検察庁の検察官がした不起訴処分を不服とする公務員職権濫用罪の付審判請求事件について、福岡地方裁判所がした請求棄却決定に対する抗告申立てに対して、福岡高等裁判所第3刑事部が「既判力の捏造は、裁判官の職務執行上の裁量の範囲内であるから、被疑者ら(福岡高等裁判所の裁判官)が行ったとする既判力の捏造による権利行使の妨害行為(被疑事実)は、事実であったとしても罪にはならない」旨の決定をしていたことが分かった。
   決定は、要するに、前訴の訴訟物をどのように捉えるかは裁判官の職務執行上の裁量の範囲内であるから、前訴の訴訟物を読み替えて既判力を捏造したとしても、同じく裁量の範囲内であり、それによって権利行使が妨害されたとしても、何ら問題がないことは明白であるから、罪に問われることはないというのである。
   申立人(請求人)は、憲法違反を理由に、最高裁判所に特別抗告を申立中である。
(平成29年6月5日 裁判太郎)

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被疑事実の要旨
1.特定遺贈の場合に、所有権不存在を確定させるには、単独所有権不存
   在の判断だけでは足りず、共有持分不存在の判断が必要不可欠である。
2.前訴第一審は、単独所有権不存在の判断だけを行っており、共有持分
   不存在の判断は行っていない。所有権不存在は確定していない。
3.被疑者ら(福岡高裁の裁判官)は、前訴第一審において所有権不存在
   が確定していることを前提に既判力を認定している。(既判力の捏造)
4.被疑者らは、公文書(前訴第一審の確定判決書)に記載された単独所
   有権の文言を故意に"所有権"に読み替えて、前訴第一審における所有
   権不存在の判断をでっち上げた。(捏造の手段)
5.被疑者らは、「既判力に抵触する」旨の判断を下すことで、共有持分
   権を不当売却された者の権利(訴訟物)の行使を妨害した。(権利行使
   の妨害)
6.被疑者らは、共有持分存在の可能性があった"要件具備の検認済遺言
   書"を単独所有権不存在の判断だけで、一方的に反故にした。

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福岡地方裁判所第3刑事部の判断(付審判請求事件の棄却決定)
(当裁判所の判断)
   刑法193条の「職権を濫用」するとは、公務員が、その一般的職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して実質的、具体的に違法、不当な行為をすることをいう(最決昭和57年1月28日刑集36巻1号1頁)。
   請求人は、要するに、被疑者らが福岡高等裁判所の裁判官として言い渡した判決の内容を論難するものであるが、当該訴訟における訴訟物をどのように捉えるかという問題は、裁判官の職務執行上の裁量の範囲内の事項というべきであって、職権濫用行為に当たらないことは明白である(なお、一件記録を精査しても、被疑者らの判断内容に違法・不当な点は認められない。)。
   以上の次第で、本件付審判請求の被疑事実について、公務員職権濫用罪は成立せず、罪とならずとして公訴を提起しないこととした検察官の処分は正当である。
   よって、本件請求はいずれも理由がないから、刑訴法266条1号によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
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福岡高等裁判所第3刑事部の判断(抗告の棄却決定)
(棄却の理由)
   本件各抗告の趣意は、申立人が提出した抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用するが、要するに、福岡地方裁判所は、申立人がした付審判請求について、理由がないとしていずれも棄却する旨の決定をしたが、同決定には不服があるので抗告を申し立てる、というものである。
   そこで検討するに、記録によれば、本件付審判請求の趣旨及び被疑事実の要旨は、原決定が摘示しているとおりであるが、被疑者らに公務員職権濫用罪が成立せず、本件付審判請求にいずれも理由がないことは、原決定が適切に説示するとおりであって、原決定に何ら違法、不当な点はない。

   よって、本件各抗告はいずれも理由がないから、刑訴法426条1項によりこれらをいずれも棄却することとし、主文のとおり決定する。

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問題の核心(既判力の捏造と言えるには)
  この問題の核心は、前訴の訴訟物である「単独所有権に基づく不当利得返還請求権」を「所有権に基づく不当利得返還請求権」に読み替えて既判力を認定する行為が、果たして「既判力の捏造」と言えるのか否かである。
   確かに、訴訟物に対する判断が「認容判決」であった場合、単独所有権の存在も所有権の存在も同じことであって、この場合「既判力の捏造」とは言えない。単独所有権も所有権の一形態であり、単独所有権が存在する場合は共有持分権は存在しないのであるから、この場合、単独所有権イコール所有権である。
   ところが、本事案は「棄却判決」である。単独所有権の不存在と所有権の不存在はイコールではない。なぜなら、単独所有権が不存在であっても、共有持分権が存在する可能性はあるのであって、この場合、単独所有権イコール所有権とはならない。
   つまり、本事案において、単独所有権イコール所有権ではないのであるから、読み替えて既判力を認定する行為は、明らかに「既判力の捏造」である。
(裁判太郎)
注)不当利得返還請求権は、不当売却されたことで所有権が転化したもの

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証拠となる文書。
1.不起訴の処分通知書(福岡地方検察庁の検察官の処分)
2.付審判請求書(被疑事実の要旨)
3.付審判請求の棄却決定書(福岡地裁第3刑事部の判断)
4.棄却決定に対する抗告申立書
5.抗告申立の棄却決定書(福岡高裁第3刑事部の判断)
以上
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