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(確認訴訟の概要)
訴訟物 :亡母Bへの特定遺贈による共有持分存在の確認。
実際の争点 :確認の利益、遺言書の解釈、既判力の抵触。
判決書記載の争点:確認の利益、遺言書の解釈(9分の5)。
裁判所の判断 :確認の利益なし。不適法却下。
裁判所の蛇足判断:遺言書の解釈による9分の5は認められない。
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実際の争点から紛争解決に導くための「裁判所の判断」について、考えてみたい。
まず、確認訴訟には、紛争解決にあたり「大きな壁」が立ちはだかっている。それが、争点である「確認の利益」である。この大きな壁を超えなければ、本案の判断をすることは許されない。この壁を超えずに、いくら判断をしたところで、既判力としては認められないから当然である。
ところが、Y裁判官は「本案前の判断として、確認の利益なし」と判断しておきながら、本案の争点「遺言書の解釈(9分の5)」についても、判断を行っている。(蛇足判断)
これはどういうことかと言うと、本案の判断をした後で"やっぱり、確認の利益なし"と本案前の判断に戻っているのである。これは、相手方(弁護士)に対する「忖度の可能性」がある。というのも、紛争解決に必要な判断は、遺言書の解釈(9分の5)は認められないだけでは足りず、だったら「共有持分は何分の何か 」というところまでの判断が必要となるからである。
もし、裁判所が「確認の利益」を認めるのであれば、当然「共有持分は何分の何か」まで判断することになる。そうなると、民法250条の共有持分割合の推定(注1)が最低でも生きてくる。
どういうことかというと、少なくても、共有持分は均等である旨の結論を出さざるを得なくなるのである。
すると、一円の価値でも共有持分割合を認める訳にはいかない相手方(弁護士)の立場が危うくなるのである。
遺言書の検認に弁護士と共に立ち合って、本人の筆跡を確認した後、裁判等で権利関係を確認することもせず第三者に売却した相手方に、横領罪が成立する可能性が出てくるのです。
このような事情から、裁判所は「ほぼ紛争解決に繋がる判断をしておきながら、確認の利益なし」で、紛争解決を回避したのです。
そうでなければ、とっとと紛争解決すれば良いだけです。ついでに言うと、裁判所は「給付の訴えを提起しなければ有効適切な紛争解決に繋がらない」趣旨の説示を行っているが、給付の訴えをしなくても「母Bの共有持分割合」さえ確定すれば、根本的な紛争は解決します。まさしく、そこが究極の争点です。あとの問題は、そこが解決すれば、必然的に決まる問題です。
注1)民法250条:各共有者の持分は、相等しいものと推定する。