不定記

ここはsagittaが書きたい時に書きたいことを書くスペースである。更新は不定期。そのため日記ではなく不定記なのである。

川口雅幸『からくり夢時計』

2009-08-28 | 批評のようなもの:小説
ジャンル:児童文学 ☆☆☆☆★(4/5)

アルファポリスから児童文学を出されている方の作品。
僕の目標――というか、先輩だと思いたい!
そういう作品だけど、レビューは一歩引いて冷静に。

良くできた児童文学だと思う。
出てくるキャラクターはみんな愛すべき存在だし、
ストーリーもありがちと言えばありがちだけど、
そういうありがちな、ファンタジー的な仕掛けに対する、
主人公の現代的なツッコミが面白いので、
何かの焼き直しというイメージはほとんどない。
プロットもしっかりとしていて、
「タイムスリップして死んじゃったお母さんに会う」という部分を核として、
その周囲の、主人公とコウちゃんとの他愛のないやりとりが、
全体の中できちんと生きてくるあたりなんかがうまい。

あえて言えば、プロットがしっかりしすぎているのと、
それに文章力が追いついていない部分が少しあって、
地の文での状況説明や台詞での説明がちょっとわざとらしくて、
「あ、この状況を説明したいんだな」
「あ、ここでこの描写を入れることであとにつなげようとしているんだな」
といった作者の意図が透けて見えてしまったところが少し残念だけど、
そこはベテランの児童文学作家さんではないから、
これからどんどんと変わってくる部分だろう。

この作者さんの本ではデビュー作の「虹色ほたる」が
ものすごく売れているみたいだから、
そちらも読んでみようと思う。

京極夏彦『嗤う伊右衛門』

2009-08-27 | 批評のようなもの:小説
ジャンル:妖怪小説・時代物 おすすめ度:☆☆☆☆☆(5/5)

初京極夏彦。
正確には、前に短編集をちょっと読んだことがあったんだけど、
その時はいまいち面白いと思えなくて途中までで挫折。
やはりこの人は長編の人なんだろうなぁ。

とにかく巧い小説。もう唖然とするしかない感じ。
古文じみた文章はそりゃあ読みにくいんだけど、
とてもリズムが良くて言葉選びも巧みなせいか、
少し読むと慣れてきてしまうから不思議。
歌舞伎とかの感覚に近いのかもしれない。
むしろ日本語好きの僕としては、
今使われている言葉の語源のようなものがたびたび出てきて、
感心しながら読み進める感じだった。

そして、とにかくも構成が巧い。
絶対、前から思いつくままに書いたりしないで、
ものすごく綿密なプロットを立てて書いているんだろうなぁ。
各章ごとに人の名前がつけられていて、その人が視点保持者となって進む。
いわゆる「キャラクター寄り三人称」というやつで、
視点保持者に限っては心情も描写する、一人称に近い形だから、
いわゆる「それぞれの思惑が複雑に絡み合って云々」というのが、
まさに目の前で繰り広げられる。
そのおかげで探偵もいないのに読者には全てがきちんと明かされるという、
神業的な構成を、この作品は持っているのだ。

僕は本を読むときに、登場人物に感情移入したい、という気持ちがとても強い。
だから自分とあまりに違う環境に生きている人物が主人公の作品はちょっと苦手だったりする。
だけど、この作品は僕に新しい読み方を示してくれたように思う。

舞台が江戸時代だから、いわゆる善悪の考え方も今とはまったく違うから、
登場人物に感情移入するのがちょっと難しい。
家を断絶させないために見たこともない人物と結婚するとか、
まぁ、僕らにとっては意味が分からないもんだ。
だから作品では「この時代はそういうもんだった」
みたいな説明をして納得させなくちゃならないんだけど、
視点保持者がどんどんと入れ替わる構成のおかげか、
あるいは、作品全体をしっかりと捕まえている本当の主人公が、
物語の当事者ではない、いわば狂言回し的な人物の又市であったせいか、
「この人はそういうふうに思ってしまう人なんだな」
とそれぞれのキャラを冷静に見ることができ、
感情移入を必要とせずとも十二分に面白いのだ。

そういう読み方のせいか、読み終わったあとはひどく冷静で、興奮はない。
けれど、とにかく巧い、すごい、という思考が頭の中をぐるぐると巡っていて、
なんだか悔しいが、それがとても快感なのだ。
まんまとしてやられた、という感じ。

で、読み終わったあとに作者のプロフィールを見て余計に悔しくなった(笑)。
広告代理店やらデザイン会社でそれなりに認められながら働いていて、
仕事の合間に初めて書いた小説を、なんの賞でもないのに出版社に持ち込んだら、
すぐに出版されて大人気になった、ってどんだけ天才なんだ(笑)。
悔しいから、「好きな作家は京極夏彦です」なんて、ぜーったい言わないんだから!
さて、次はどれ読もうかな……。

上橋菜穂子「守り人」シリーズ

2009-08-27 | 批評のようなもの:小説
まだ『神の守り人』までしか読んでいないが、
現時点での感想を書いておこう。

この作品はすごい。
ジャンルで言えばファンタジー、
それも、完全な異世界を一から創造した
ハイ・ファンタジーということになるのだろうが、
今まで日本で作られていたような、
あるいは日本人が「ファンタジー」と聞いて思い浮かべるような
華やかで優雅で美しい「妖精の国」のような世界とは
一線を画している。

その世界はあくまでも土臭く、華やかさとは無縁だ。
いわゆるファンタジーらしい要素としては、
人間達の住む世界と重なる、精霊や神の住む異界
(ナユグやノユークと呼ばれる)が存在するが、
それらはあくまでも人間達の生活に直接に関わる、
極めて現世的な物である。

『守り人シリーズ』は、いわゆる続き物ではなく、
各タイトルごとに話が完結する、いわば「連作」ものだ。
そして特徴的なのは、ひとつの話ごとにひとつの国が舞台となり、
その国の成り立ちから政治体制、民族のあり方や文化までが
詳細に語られることだ。
各国の詳細な描写こそがこのシリーズの大きな魅力、と言っても
過言ではないだろう。

それはファンタジーと言うより、まるで歴史の授業のようだ。
歴史の授業で僕らは教わる。

「ローマ帝国は遥か遠くまで遠征に行き、
そこに戦争を仕掛けて植民地にした」
「エジプトは王を神の化身として祭り、
死後にはその墓として巨大なピラミッドを建てたと言われている」
「バラモン教では神官を最高位とした厳格な身分制度が作られていた」
「中国の都市にはシルクロードを通って様々な民族が入り交じり、
複雑な様相を呈していた」――。

だがこのような授業では、
本当にそこに生きていた人がいること、
そこにひとりひとりの人生があったことなど、
実感どころか、想像すらできない。

「守り人」のすごいところは、
そういった様々な異文化を疑似体験できるところにあるだろう。

旅の凄腕の用心棒であるバルサが各地を渡り歩きながら、
それぞれの国で重要な人物を護り、あるいは自らを護るために戦う。
それが「守り人」シリーズに共通するあらすじだ。
大抵の場合、王族などの権力者が登場し、
国を支える権力構造や問題点などが明らかにされる。
民族問題、宗教の問題、貧富の差――それらは創作だというのに、
いや創作であるからこそ、鮮やかに赤裸々に描き出される。

重要なのは、バルサは「正義」ではないということだ。
国の陰にある、人間の黒い部分を目の当たりにして、
バルサは正義の味方としてそれを糺すようなことはしないし、
彼女にそんな力はない。
バルサの目的はあくまで生きることだ。
そう、この作品は「生きること」にこだわるものだと言える。
登場人物達は、僕ら現代に生きる人間には及びも付かないような、
過酷な状況下に生きている。
そして大抵の場合、命を狙われることになる。
あまりに巨大な困難に、
「生きること」そのものを放棄しかける登場人物に対し、
バルサは決してあきらめず、とにかく生きることを選択する。

おそらく、守り人のテーマはそこにある。
厳しい状況がある。絶望するのは簡単だが、それではそこで終わりだ。
だがその中であきらめずに「生きること」を選択する。
それは困難だが、それでもその先には『何か』がある。
言葉にしてしまうとそれだけのこと。
でもそれが本当の実感を伴って訴えかけてくる作品は、
なかなかないのではないだろうか。

おそらくは文化人類学に裏打ちされた、
この設定力の高さがうらやましくて仕方ない。

一日一冊。

2009-08-27 | 批評のようなもの:小説
ふと思い立ったので宣言。
これからしばらく、一日一冊本を読むことにしよう。
そしてなるべく、ここでレビューを書く。

ちょっと強制的にでも、たくさんインプットした方がいいような、そんな気がしたので。
目標があった方が日々に張りが出るしね。

着々発送。

2009-08-26 | 執筆
通信販売中の「ちっちゃな王子さま」ですが、
着々と発送作業が進んでいます。
今までに発送したのは四冊。入金確認待ちがあと一件です。
自分の作品がみんなの手元に行くと思うと、いやー、にやにやしちゃいますね。
一番最初に発送した方は、今日あたり届く頃かな?

ほしいけどまだ注文してない!という方。
すぐに入金ができなくても構わないので、注文のメールだけでも早めにくださると助かります。
ぜひぜひ!
あ、「近くに住んでいるからor会う機会がありそうだから、
直接手渡しがいいです」という方は、
その旨僕に連絡下さいねー。ちゃんと取っておきますから!

覆面Fブロック感想・推理

2009-08-24 | 執筆
知っている人があまりいないDとEを飛ばして次はFブロック。
真珠さんと楠さん、瑞沢さんを探さねば~。

F01 より道

 とてもうまいラブストーリー。
 つかず離れずな距離がすごく心地いい。主人公も高村も、とってもいい子なので応援してあげたくなっちゃう。
 読み終わって頬が緩みました。
 いいお話だったな~。

F02 ばみゅーだ☆とらいあんぐる

 うぉー、なんちゅードタバタだ(笑)。
 前半は「お馬鹿な中学生ども」のリアルなお話だったのに、何でいきなりヒーローもの(笑)。
 でも前半のノリノリな感じがものすごく好きだったから、せっかくならそのままリアルな話だったら良かったのになぁ、と思ってしまった。
 お馬鹿な中学生、好物。
 ちなみに、小学校だか中学校だかの時に「大豆生田」ってひとが本当にいたなぁ。すごく珍しい名字。

F03 魂に著作権はない

 ちょっと無理矢理なところもあるけれど、全体としてとても面白いSF。
 まるで星新一のショートショートのようだけど、確かにこういうことも起こりえそう、と思わせる説得力がある。
 離婚して親権を得られなかったから、クローンを作る、って、恐ろしいなぁ。
 人気アイドルのクローンと結婚している人もきっと無数にいたりするんだろう。
 「バディ」の存在がいまいち理解しにくかったような気がするけど。人格だけの存在、ってことかな。

→瑞沢さん。な、なんとなく。

F04 境界線上の魔王

 なかなか面白い設定と文章。
 ラスト付近でパッと雰囲気が変わる部分なんかは、前半が堅苦しい文だった分、とてもいい味が出ている。
 でも、結末が弱い気がするなぁ。
 境界線上の魔王の意味も、その周りの国も、そこに来る人たちも、いまいちよく分からない感じで、種明かしされてもすっきりしないのが残ってしまう。

F05 宙の道しるべ
 良質のSF。これはいい話だなぁ。
 SFだけど、ストーリーの構成がしっかりしていて、また、扱っているものもすっきりしているから、少しも分かりづらくないのがすごい。
 オープニングとエンディングでごく普通の大学生(かな?)の女の子を出して、その間に「伝記」という劇中劇としてストーリーを挟み込んでいるのも、必要以上に感動や共感をあおらないためにより親しみやすくなる、という効果を生んでいると思う。
 「今当たり前だと思っていること、でも昔は命がけだった」みたいなことはきっと、実際に色々あるだろうし、そういう感じが卒業旅行とコールドスリープとの対比でリアルに現れていて、すごく面白かった。

F06 落とし物
 か、かわいい。
 素敵なお話です。チャロ君と、博士のキャラクターがいいですね。
 誰も悪いわけではない、だけど少しだけ寂しいお話。
 でもそれも含めて人生(猫生?)で、それはそれで穏やかで幸せな気もする。
 そんなお話でした。

F07 偽りだらけの道筋
 おお、西部劇もの。はじめて読んだかもしれない。
 それぞれのキャラクターがいい感じに気取ってかっこつけているあたりなんかがそれらしくて、ほほえましかった。
 決闘のシーンなど、ちょっと描写が説明的で、それなのに分かりづらかったりして、何度か引っかかってしまった。
 確かにああいうシーンの描写はすごく難しいと思うけれど。

F08 からたちの歌
 不思議な作品だなぁ。
 まったく、何を言っているのか分からない。
 分からないんだけど、すごく引き込まれる。
 前半のやりとりがすごく日常的でリアルで、だから突然ぐらりと揺らいだ感じに心底不安になる。
 よくわからないけれど、心に残った。そんな作品。

F09  シーキング☆ザ・プリンセス
 途中で話が怪しくなってきたな、と思ったら、なんとムー的な話。ぼくたま??
 でもこの話、すごく斬新な作りで、とても興味深かった。
 ありがちな感じのファンタジー物語を、痛快にこき下ろす語り口は、同僚と仕事の愚痴を言い合っている時のような黒い爽快感があったりなかったり。
 新鮮で面白かった!

F10  ひとつの道からはじまる
 えーと、ごめんなさい……。話がよく分からなかった。
 いくつかの視点があるようなのだけど、それがいまいちはっきりしないし、たくさん出てくる「死」の描写もずいぶんとあっさりしちゃっててあまり入り込めなかった。

F11  あわい物語
 うおー、なんだか怖い話だ。
 善とか悪、とかって難しいよなぁ。
 ちっちゃい頃に女の子をいじめたことまで『罪』にカウントされちゃうのかぁ、と、自分を振り返ってなんだかどきどき。
 よく引き合いに出されるけど、猫を助けて車にひかれることが『善』なのだろうか、とひねくれた僕なんかは思っちゃうけど。(そういえば、幽白もそんな話だったな~)
 「道」というテーマをとてもうまく丁寧に使っていたと思う。

→楠さん。何となく、言葉の選び方、とかが。 

F12 誰そ彼は
 怖い! 怖いのに綺麗。
 最初の「以来、私はずっと赤い空を描き続けている。」からしてものすごく心に残った。
 そしてそのあとはいつの間にか話の世界にとらわれてしまって。
 すごく素敵な作品だった。怖いけど素敵。

→真珠さん。描写の美しさが真珠さんらしいような。
 

覆面Cブロック感想・推理

2009-08-23 | 執筆
三つ目。
ここで探すのは、透夜さん、恵陽さん、和さん、天菜真祭さん。見つけられる気がしないぜ!

C01  迷い人の道標
 大変詩的な文章。短いセンテンスを続けて、雰囲気を作っている。
 ストーリーはほぼ皆無。雰囲気だけの作品。
 書いているのは、若い女の子な気がするなぁ。文章が特徴的だから推理できるかも。

 →というわけで千里さん。

C02 峠越え
 重厚ファンタジー。20枚でこれを書いてしまうのがすごい。
 華やかなファンタジーではなくて、緻密な政治戦が新鮮で興味深い。
 少なくともざっと読んだ感じでは、戦略に矛盾はなさそうなところが、作者の相当な自信を感じさせる。こういうの書くのってハードル高いと思うよ!
 たぶん、歴史小説好きの作者さん。もしかすると、三国志とか戦国大名とか好きなのかも。

 →松原冬夜さん。サイトをのぞいた雰囲気が何となく。

C03  来客御礼
 面白い、可愛い。
 ほのぼのというかどたばたというか。でもそういう中でも特に悪意がなくて、ほんわかと読めましたよ。
 リーファのぼけっぷりが可愛い(笑)。
 しかもロッカーって(笑)。かっこわるいなぁ(笑)。
 ラストの日常っぷりがなんだか恥ずかしくていいっすね。
 「何やってるんだ」って、こっちが聞きたい!みたいな。

C04 選ぶべき道
 うん、なかなかいい雰囲気だ。
 ハーフエルフの無敵ぶりと無邪気さに、頼もしいながら背筋が冷たくなる、そんな感じ。
 ストーリー展開はシンプルだけど、主人公二人の関係性を見せるためだけの演出、と考えれば構わない。
 たぶん、作者が書きたかったのはこの二人の、ちょっと妖しい関係(笑)のはず。

C05 sai-ai
 面白かった。雰囲気の作り方が秀逸。
 長野まゆみの影響を受けている気がするけど、ドイツ文学のような雰囲気もある。
 タイトルは、最愛、ではなく再愛、か。
 質のいい外国文学の短編を読んだ気分です。
 「殺人未遂の現行犯で逮捕する!」の意味が分からなかった。
 どの辺が殺人未遂? シモンがマァリアを殺そうとした、のかな?

 →和さん? 自信はなし。
 
C06  ワン・ラスト・キス
 恋愛ファンタジーの1ページ。
 これだけで作品が完結しているとは言い難いけど、色々と起こりそうな雰囲気はよくでている。
 たぶん、普段はファンタジーを書かないひとだからこの企画であえて書いたんだろうな、と思う。
 書き慣れているひとには普通すぎる展開であるような気もするし。
 普段はきっと、現代恋愛ものを書いているひと。

 →透夜さん?? 自信なし。

C07  おばけの道案内
 すごく、好き。
 構成がめちゃくちゃうまいなぁ、と思う。
 結構びっくりな設定、うまくやらなきゃ『変わったお話』で終わっちゃうところを、ちょっと幼い感じの主人公の限定された視点でうまく紐解いていくから、頭の中に順序よく状況が入ってくる。
 最後に裕人さんが現れた時、「ああ、やっと来てくれた」って主人公と一緒に思ったし、なんだか一緒に泣きたくなった。
 これは素敵な作品だなぁ。

→恵陽さん、かなぁ……。

C08  変化妖怪花火道
 短いけどわかりやすくてすっきりする作品。
 妖怪どもがかわいらしいぜ! 姉さんのなんかかっこいい感じとか、お馬鹿な鬼火が調子に乗っちゃうところとかがいかにも祭、って感じでいいですよねー。

C09 この道の終わり
 ※すみません。辛口注意。

 うーん、正直、読みづらかったです。
 一文の言葉がいまいち呼応していないところや、描写の順序が読む側の思考の順に沿っていないところが問題だろうか。
 そもそも、「絶対に外れない」という結末を先にばらしてしまっているから、話の展開に期待することも出来ないし、主人公以外の登場人物が存在しないから(強いて言えば死体だけ)、主人公の偏った思考が、客観的にどうなのか判別できない。
 そしてその唯一の登場人物の主人公が「間違いない未来を見る巫女」だとすると、あまりに特殊すぎて読者は共感の糸口をつかめない。それだけに、ラストの「恋に殉じた彼のために……」という言葉が相当な独りよがりに見えてしまう。

C10 ラブストーリー
 最初、主人公は人形か何かなのかと思ってました(笑)。
 真ん中あたりで正体はうすうす分かったけれど、読み返してもまったく破綻のない構成で、完成度の高い作品。
 正体が分からなかった時は、変な表現だなぁとか思っていたところも、分かってから読めばかわいらしい感じで。

→天菜真祭さん。なんとなく。

C11 ある冒険者夫婦の帰郷
 ※辛口注意。

 なるほどー。お話のネタそのものはなかなか面白いですね。
 ただ、もしこのネタで書くならばそのプロポーズのシーンを書いた方がずっと面白かったような……。
 もうすでに終わった出来事、として書かれているので、アデルがどんなふうに「魔王」だったのかとかがさっぱり分からないし。
「元魔王であっても、そこにいるのは一人の女で、ウォレンの大切な妻。それ以外の何者でもなかった。」とか言われても、魔王ってのっがどれほど悪いのかわかんなければ共感も出来ないですよね。
「魔王」とか「勇者」に現実味がないと、この話は成立しない、と思います。

C12 八月の空蝉
 うまいなぁ。相当頭のいい人じゃないと書けない作品。
 二転三転する展開。でもそれぞれがそれなりに筋が通っていて、その場では、「なるほど」と思ってしまうので何度もだまされてしまう。
 ラストが非常に鮮やかだったから、逆に言えば「子供の頃にすり替えていたから都のふりをしていた路子は実は都」という設定はあんまりいらなかったんじゃないかなぁ。ちょっとそこがリアリティに欠けるというか、ご都合主義的な違和感がありました。
 兄が知らずに自分と血のつながった妹を……ということで罪の意識を感じさせたかったのかもしれないけど、そういう薄情な兄だったら気にするのはどちらかというと「世間的にどうか」ってことじゃないのかなぁ。血がつながっていないと思っていたとは言え、世間的には「妹」に手を出していたんだとしたら、どこかでもはや倫理観は狂っているのであまり関係ないような。
 でも、面白かったのは間違いない。


駄目です! 推理にほんの少しも自信がありません!

ちっちゃな王子さま。

2009-08-18 | 執筆
本日、Le Petit Princeの翻訳、「ちっちゃな王子さま」が完成しました!
なかなか勤勉に訳し続けられなかったのが原因なんですが、
結局のところ、二年と二ヶ月もかかってしまいました。
いやー、長い道のりだった。その分感無量です。

自分で言うのもなんですが、相当いい作品になっていると思います。
さすがに出版してくれるところはないだろうから、
自分でカラー印刷&製本をして、希望者に実費でお譲りしたいなぁなどということまで考えています。
本当に、是非みんなに読んでもらいたい!

まだまだ話したいことはたくさんあるんですが、
今はうまくまとまらないのでまた改めて。

とにかく。
やったー! 終わったーー!!

覆面Bブロック推理・感想

2009-08-17 | 執筆
次はBブロック。
ネジ子さんと、津季さん、紅和花さん、それに夏祭り企画で作品を読ませてもらった中井かづきさんを探せるといいなぁ。


B01 夢追い人の系譜
 おお、素敵な冒険の雰囲気。この作品は冒険ものではないけれど、普段は冒険ものやファンタジーを書いている人なのかな。
 大陸の設定や、ふっと出てくる精霊、という存在なんかに世界全体の広さを感じさせる。
 アリアのキャラクターからして、普段からこういうかわいらしいキャラクターを書き慣れていそうだ。
 
 →中井かづきさん、が書きそうかな?


B02  a Fairy tale, a Fair liar
 全編語りかけ式の、ファンタジー。これがどれだけ難しいか、というのは物書きならすぐにわかる。
 この作品は、非常に高い技術で書かれている。こんなに難しい手法なのに破綻がないどころか、目の前で展開している昔話や、この世界の仕組みまで、目に見えるように鮮やかにわかる。
 少し寂しげな雰囲気も、ラストのオチのスマートで。
 とても面白かった。

 →津季さん、かなぁ? 前に読ませてもらった「小さな世界で」に少し似ているような。


B03 地に降る
 かっこいいー! これはすごい。
 革命の話。中心は恋愛ものだが、きちんと革命のリアリティがある。
 ファンタジーと言うより、歴史小説の趣がある。
 「道」というテーマを一番誠実に使いこなしている気もする。

 →紅和花さん? 三国志とか中国ファンタジーの小説書いているみたいだし、この雰囲気はそういうの書き慣れていないと。まぁ、漢字名がフェイクだとすると、普段は西洋風ファンタジーを書いている人、という可能性もあるのだけど……。


B04 坂を下る
 うーむ、何とも救いのない話だなぁ。
 アンハッピーエンドには、因果応報の陰があるのかと思えば、それすらない。
 平凡だったはずの家族が、怪奇現象だかなんだかにかき乱されて崩壊してしまう様は、ホラーなのかどうかもよくわからない。
 あえて言うならば、無関心の夫と、はじめからあきらめて話そうともしない妻が悪い、ということになるのかもしれないけれど……。
 最後は救いなのか、とも見えるけれど、夫の立場に共感してしまう僕には全く救いには思えず。


B05  暗い道を照らすのは……
 おお!一転して後味のいい、優しいお話。
 あー、ほっとした。
 かわいらしいお話だなぁ。
 ほとんどひらがななのに、きちんと読みやすいのは童話の基本(空白の開け方)がちゃんとしているから。
 これってたぶんやろうと思うと相当難しいはず。
 素敵な話でした!


B06 in ruins
 ふむむ。難解な話。
 邪神を討ちに行く、とか案内人の方が実は本当の神様だった、とかそういう仕掛けは神話っぽくて素敵。
 しかし、シミュクララが人間に作られ、「人間の繁栄」だけを願ったが故に世界が荒廃した、という流れがわかりにくい。ペティーシャの昔語りも、読者の疑問を解決してくれない。創世神を逆恨みした人間が刃向かってこれを封印し、自分たちの思い通りになる神を祭り上げた、だけど人工神は所詮は力のない神であり、創世神に背を向けられた人間は荒廃してしまった、というところなのか?
 状況が理解できないので、結末もどうも。希望の始まりっぽい語り口だけども、とりあえずはすがっていた人工の神を殺しちゃって、あとは創世神様がお優しくも人間を許してくれたからもう大丈夫、ってことかしら?
 結局オフェリアは存在意義がなかった、ってな結論っぽくもあるし。
 ちと消化不良。


B07  俺は不良
 好きです(告白)。
 不良君が可愛すぎるぜ。
 「道を外れた不良」がテーマなのか。
 余計な言葉はいらない。
 好きです(告白)。


B08  分岐エゴイズム
 ほのぼのとしたかわいらしい話、と思ったら。うーん。
 でも、後味は良くないけど、これってすごくリアルな話だよなぁ。
 高校生の時は仕方ない、と思う。
 だけど作者さんには是非、5年後か10年後かに二人がまた出逢って……という話を書いて欲しいなぁ。


B09 我往此道
 本当にある競技なのかよっ!って、読み終わったあと誰もが突っ込んだはず。間違いない。
 一回しか使えないネタだけど、確かにこりゃ、小説にしたくなるよなぁ。
 エクストリームアイロニングのばかばかしさに負けない、文章のばかばかしさが素敵だった。


B10 夢の中、水の彼方、道の果て
 「門番」の一言で、ひげもじゃの大男を想像した僕は、なんだかとっても混乱してしまったが、いや、なるほど。そういうことね。
 綺麗なビジュアルと、二人しか登場しないどこか寂しい世界の静謐な会話。
 雰囲気が一貫していてとても読みやすかった。

 →ネジ子さん、じゃないかなぁ。タイトルの付け方とか。全体のどこか優美な雰囲気とか。


B11 本とキム子とスイカバー
 これいい! 面白い!
 ごく普通の田舎の子供の日常、というストーリーに、冒頭の「あったら便利だけどなくても別に困らない」特殊能力を備えた村人たち、という設定がすごーくいい感じにスパイスになっている。
 貴司の素直じゃなくて小ずるいところとか、キム子のミーハーなところとかがいかにもそれっぽくて愛らしい。
 わー、こういうの書きたい!


B12 光の道標
 ただ純粋に描写だけの作品。描写が抽象的で踏み込まないところや、空行が多いところなんかは若い書き手さんを想像させる。描写も、耽美的というか(BLという意味ではないよ)、綺麗なものが好き、な感じ。

 →というわけで漠然と、雪之達磨さんと推理しておこう。サイトの雰囲気が似ている気がした。

覆面Aブロック感想・推理

2009-08-14 | 執筆
細かい推理はとても無理なので、知っている方だけ探すような読み方に挑戦。

ここでは、いつもお世話になっているぷよ夫さん、K.Sさん、それに前回の覆面で虜になった歩く猫さんをさがします。あと、出来れば並木空さんも。
どの方もすごく特徴ある文章書かれる方だから、見つけられそう!
「→」から先が、一応推理です。いくつかだけ。


A01 締切直前における特定の覆面作家企画4参加希望者の漸近線的記録あるいはマグネシウム燃焼時的アイデア

 タイトルからして、よしよし、もうわかったから、と言いたくなりますね(笑)。
 テンポのいい会話は相当巧みだし、なにより、色々な「小説案」を端から聞いてるって楽しいもんですねぇ。
 読んでいて純粋に面白い作品でした。
 ちなみに、これを書いたのって「理系の」「大学生の」「女の子」ではない気がするなぁ。
 こんなのを書く人はむしろ、自分がそうなりきったように書くのが楽しくて仕方ないんじゃないだろうか。
 と思うとむしろ、「文系の」「社会人の」「男の人」だったりして。


A02 □□■□□   □□□■□

 タイトルの意味がわかった! あの信号ですね。
 っていうか、この作品めちゃくちゃ好き。
 童話のような書き方をしながら、世界設定はものすごく緻密なSFってあたりが、作者の技量を感じさせます。
 ハードなSFって、なんというか傾向的にキャラクターの感情が極端だったり、大雑把だったりして感情移入しにくいものが多いんだけど、こんなふうにキャラクターの心に寄り添いやすい展開と描写の詰まったSFだったらいくらでも読んでみたい、と思う。
 世界設定、説明の仕方、キャラクターの性格付け、その他色々と細々とした小道具。全部好きです!

→これ、たぶん歩く猫さん、じゃないかなぁ? 全体の雰囲気と、文章力と、きちんとしたSFの世界観。書けるのはこの人しかいない、と思う。


A03 アガトの巡礼

 淡々とした文章。
 感情の起伏が少なく、しゃべることが出来ない語り手を持ってくることで、あえて周囲のめまぐるしい激動を冷静に描くという手法。
 全体の展開にも破綻がなく、主張したいテーマがはっきりと浮かび上がっている。その主張もすっと共感できるもので、とても読みやすかった。
 書いている人は、普段から「論理的な文章」を書き慣れている人だろうな。おそらくは大人の人。


A04 クロランドの流れ矢

 いやー、これまた、うまいです。
 途中から覆面作品を読んでいる、ってことをすっかり忘れてしまうくらいのめり込みました。
 世界の書き込みと、生き生きしたキャラクターと。
 登場人物が、ファンタジー世界に場所だけ借りた現代人の引き写しではなく、きちんとあの世界で生活しているにおいがあるのがすごくいいですね。
 身分についてとか、結婚観とか、僕らにとってはすごく新鮮に見えるけれど、それが全然わざとらしくなくてリアリティがある。
 ライトノベル書きではなくて、きちんとした歴史小説なんかも書けるような、相当熟練した人だと思います。見習いたい。

→上記の点が、並木空さんに当てはまるような……。


A05 狼は邪心を知る

 これはまた別のうまさ。
 漢語バリバリの耽美な文章は下手をやるとものすごくかっこわるくなってしまうものだけど、この作品はちゃんと使いこなしている。
 しかし、首だけの美女と蛇ってのは、すごいビジュアルだなぁ。
 これは本当に天孫降臨神話の一部なら、原典が見てみたいなぁと思った。
 で、後半、唐突なオチ。
 んん?前半だけでも良かったような。あ、でもそれだと確かにお題を消化していないのか。
 後半のノリと最後のオチは文字通り蛇足な気が、しなくもない。
 もしかすると普段書かない耽美な文章への照れ隠し、ってとこなのかな?


A06 たとえ何があっても

 うぉー、これもすげー。
 って僕、すげーすげー言い過ぎ。
 しかしこの、「魔法学園の机上演習」とかいう設定は秀逸だなぁ。
 これまた設定にどこにも破綻がないし、登場人物は信じられないくらい魅力的だし、BL、と言うほどでもない抑制の効いた友情は、若い女の子に大人気だろうなぁ、と。
 まるで、プロ作家のシリーズものの外伝の書き下ろし短編のような完成度。
 どうしたらこんな文章が書けるのか、教えていただきたい。

→とりあえず、書いているのは女の人、だと思う。雰囲気が。


A07 ドM道

 お、おい! 出オチっすか!!
 これは笑ってしまいます。なんじゃこりゃーきもちわるいー!(笑)
 でも出オチなだけじゃなくて、なんだかんだ言ってちゃんと設定があるんだよなぁ。
 なんなんだこのグループは。設定魔ばかりか?
 キャラクターの性格もわかりやすくて、シンプル・イズ・ベスト。
 出オチのインパクトを弱めない程度にさくさく読み進められる設定とキャラクターで、面白く読ませてもらいました。


A08 大都会の秘密基地

 これは推理するまでもなく……素顔ですな(笑)。
 「ですます調」と「だ・である調」が混じっているのもいつも通り。
 なるほど、そんなところもあるんだー、と主人公たちと一緒に楽しませてもらいました。
 なんか区役所のパンフレット風。

→もちろん、K.Sさん


A09 空の果て、あの道に

 これは何ともすごい話ですね。
 急展開すぎてなかなかついて行けないけど、描写の美しさにこだわる人なんだろうな、って思う。
 設定がちょっとわかりづらくて、それを地の文で事細かに説明しちゃっているのがちょっと残念。

→たぶん、女の人が書いた文章だと思う。


A10 月のゆりかご

 これもなかなか。良くできた短編だなぁ。
 最初の方できちんと感情を描写して、読者を主人公に共感させているから、後半のネタばらしでも、不気味さを感じるよりも切なさを感じてしまうような。
 「SF」という道具立てを使って、人の感情を書き慣れている人と見た!
 ……でもやっぱりちょっと不気味に感じてしまうよね。
 そこもまたSFらしい。


A11 かえりみち

 うぉ。すごい好み。いい作品だ。本当に。
 「幽霊じゃない」なるほど、成仏してるからね。お盆の里帰りは、未練があってするわけじゃないんだ。
 ラストへのつなげ方が、本当にうまかった。素晴らしい。
 「煙草」の道具立てもすごくいいな。強がっている男の子の気持ち。

→ぷよ夫さん。たぶん。文章の書き方と、女の子と男の子の雰囲気が、ナイトメアっぽい。大人の文章。
 

A12 もんどう

 ええと……。挑戦しすぎ!
 孫子の兵法なんですね。兵法は学ではなく人を生かす道である。=兵道とか。
 「不可能を可能にする必要はなし」ってなんか心に響くなぁ。

競作小説企画第三回「夏祭り」!

2009-08-14 | 執筆
明日一五日に一斉公開です!
おそらくは日付変わった瞬間にGOできるはず、
なので、明日と言うより今日ですね。

サイトの準備も整えて、準備万端!
現在拙作も含め、12作品が提出されています。
今日の提出が、おそらくはいっぱいあるはず。
さーてどうなるかなぁ。ものすごく楽しみ!

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帰還。

2009-08-06 | 旅行記
帰ってきました。
いや実は、昼頃にはすでに帰っていたんですけどね。
やはり疲れたのか、今まで寝ていました。
いや、寝過ぎだろ自分……。

しかし、なんだかんだ言って楽しかったなー!
なかなかすごい体験でした。
移動距離は片道で八〇〇キロですよ!
生まれて初めて瀬戸内海見てきたし!
横浜に生まれて太平洋しか知らない僕にとって、
あんなに狭い中に山ほどの島がひしめいている
(しかも島にはそれぞれ人が住んでいたりする!)海というのは、
もう違和感ありまくりでおもしろかったです。
波も穏やかだったし、湖にしか見えなかったぜ。

そして色んなものを食べてきました。
印象に残ったものだけメモ。

・タコの播磨揚げ(姫路)
・穴子茶漬け(姫路)
・えきそば(姫路)
・釜玉うどん(高松)
・地鶏のつくね(豊橋)

どれもめっちゃうまかったー!
満足。

ずっと電車に乗っていたり、
インターネットカフェで夜を明かしたりしたので、
本もたくさん読めましたよ。
文庫本六冊半、マンガも七冊。
小説に至っては、五冊持って行って、二冊現地調達(笑)しちゃいました。

それから、ひとつ前の日記にコメントをくれた方々、
本当にありがとうございます。
別に、落ち込んでたりするわけでもないんですけど。
ひとり旅のおかげで、自分と向き合って、
今まで考えなかったようなことを考えることができたので、
どうしてもメモしておきたかった。
最近調子に乗っている自分に警告の意味も込めてね(笑)。
とはいえ、基本的には、やっぱり「無駄も必要さ!」と思っている僕です。

今回の旅で吸収した色んなものは、
すぐには役に立たないだろうけど、
でもきっと僕の中に確実に降り積もったんだと思う。

何はともあれ、ただいまー!

ひとり旅。

2009-08-06 | 旅行記
三日間のひとり旅は、僕には長すぎたかもしれない。
自分の中と会話する機会が長すぎて、
そして――正直に言えば――とても淋しかった。
しかし、あるいは、この寂しさを味わうために、
僕は一人旅をするのかもしれない、とも思う。

ひとり旅はすべて、自己裁量だ。
何をしても怒られないし、逆にほめられることもない。
そして自分の判断のツケは、100%自分だけで払わなくてはならない。
今回の旅も、いくつかの小さな判断ミスがあって、
いつもなら、それもまた良し、なんて言って気取っているのが、
誰にも責められない一人旅にあって、
却って自分をすり減らしたりしている。

人恋しいと思う。切実に。
最近は手を差し伸べてくれる人に、寄りかかりすぎなのかもしれない。
誰かに「君はすばらしいよ」と言ってもらえないと、
自分が保てなくなってしまっているような。
そして誰かにそう言わせるような、
偽善に近い優しさが、見せかけの自律心や賢さが、
僕の中で幅を利かせつつある。

ひとり旅の中では、
僕はむき出しの、ただの一人の人間になる。
僕が今仕事をしていないことも、
それについて大抵の人間なら納得させられるだけの、
ご大層な理由をもっていることも、
誰も知らないし、関係がない。
この旅の中では僕個人のその場の判断だけが意味を持ち、
そして判断がもたらしたツケを(あるいは恩恵を)自分だけが払う。
強烈な原理原則の世界。

そうして僕は自分を見つめなおす。
何もしていないことに気づく。
薄っぺらな理論は、理由は、理屈は、役に立たない。
もうすぐ、動き出さなくてはならないだろう。
きっかけを、どのように作ろうか。
判断のツケは、自分が払う。
そういう原理原則。