不定記

ここはsagittaが書きたい時に書きたいことを書くスペースである。更新は不定期。そのため日記ではなく不定記なのである。

「光」の上演許可依頼

2006-02-28 | 演劇
今日、僕の書いた脚本「光」の三度目の上演許可依頼をもらった。
鳥取の高校の演劇部だそうだ。
やはり、僕の脚本は高校生向きらしい(笑)。
まったく知らない誰かが、僕の脚本を読んで演じてみたいと思ってくれたのだ。
本当に嬉しいなぁ。

日日日(あきら)『うそつき―嘘をつくたびに眺めたくなる月』(新風舎文庫)

2006-02-23 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆★★★(2/5)

その筋では超有名な、日日日(あきら)氏の作品。
高校生にしてデビュー時に5つの賞を同時受賞した、とんでもない作家だ。
そんな彼がいったいどんな作品を書くのか、非常に楽しみにしていたのだが……。

意外と普通だった。
ちょっと変わった考え方を持つ若い女の子の主人公の一人称で進む話。
砕けた口調やうがった世界の見方が特徴と言えば特徴だが、最近ではめずらしくもない。
とは言っても、独特の視点でごく普通の日常を切り取って、ああでもないこうでもないと思案を重ねていくような作品は、読むのも書くのも好きなのでなかなか楽しく読みすすめていたのだが。

どうも、後半の強引な展開についていけなかった。
ありふれた日常をつづる話かと思ったら、突然の急展開。
しかもそのストーリーはどちらかと言えば陳腐な感じで、リアルさに欠ける。
何よりも問題なのは、主人公と準主役以外の登場人物たちが、人間に見えないことだ。
どのキャラも極度にデフォルメされていて、ストーリー展開のためのコマ、という感じがしてしまう。
どう考えても主人公たち以外には感情移入しようがないから、主人公のたどり着いた論理に思わず賛成してしまいそうになるのだが、どうも騙されているような気がしてならない。

個人的には、前半の雰囲気のまま最後まで日常を書ききってほしかった。
でもそれで長編にするとしつこすぎるので、すっきりと短編にしてしまった方がよかったように、僕には思われた。
もちろん、個人的な趣味にすぎないが。

まぁ、そうは言っても、文体や視点の切り取り方、文章のスピードなどはなかなか好みだったので、他の作品も読んでみようと思った。
もしかしたら、非常に僕好みの作品を見つけられるかもしれない、と期待している。

フレンチプレスコーヒー

2006-02-22 | 今日の出来事
今日、フレンチプレスコーヒーなるものを初体験した。
450円と、それなりにいい値段ではあったが、それだけの価値は十分にあった。
コーヒーの苦味とか酸味とか、そういうそれぞれの味が、
どれも尖ることなく角を無くして丸くまろやかに混じり合っており、後味がとてもさわやかだった。
ネルドリップ、水出しコーヒー、サイフォン式と、いろんな種類のコーヒーを飲んだが、
フレンチプレスコーヒーが一番お気に入りかもしれない。
まぁ、どれが一番、というよりも気分次第で選べる感じがうれしいのだが。
とにかく、また飲みにいきたいなぁ、と思った。

世界を見る視点

2006-02-19 | 雑記
今日まで3日間、劇団の仲間たちと合宿に行ってきた。
目的だった通し練習も、たどたどしくではあるがなんとか行なうことができて、
そういう意味でも実りの多い合宿だったが、
なんといっても夜中の飲み会でお互いの考え方を相当深く語り合うことが出来たことが、非常によかった。

本当に様々なことを語り合って互いの理解を深められたのだが、
その中でも最も印象に残っているのは、
「世界の見方」について色々な人の視点を知ることが出来たことだ。
みんなと話す中で、「自分とは何か、世界とは何か」ということは普遍的なようでいて、
実は人によって感じ方が大きく異なるのだ、ということを知った。

たとえば、僕は世界を「言語的」に解釈していて、
自分の主観的な思考の中に、それぞれの世界が存在している、というふうに感じている。
普遍的な世界は存在せず、誰もが自分の中に「世界」があり「真実」があるのではないかと思っている。
また、世界の事象を「概念」でカテゴライズして単純化することで、物事を大づかみで理解して、
その事象を自分の中で消化していきたい、という欲求が強い。

一方で、温度とか匂いとか、もっと別な「ことばではないもの」で世界の様々なことを感じ、
カテゴライズや概念化することなく、事象を受け止めている人もいる、ということを知った。
「世界」に客観的な大きな存在を感じ、その中に存在する「自分」の位置を意識している、
という話も聞いた。

みんなが僕と同じように世界を見ているわけではない。
僕が当たり前だ、と思っていること、
それすらも世界の見方が違えば当たり前ではなくなるし、
僕が大切だと思うことが、相手にとっては取るに足らないことだったり、その逆もあり得る。

合宿の二晩を使って語り明かした内容をうまくまとめることなど到底出来ない。
実際、自分の頭の中でもうまく整理できているわけじゃないし、整理する必要があるとも限らない。
これらの語り合いの解釈だって、それぞれ、まったく違う受け取り方をしているのだろう。
でも、なんだかとっても充実した感覚が、胸の中に残っている。
新しい世界を発見したような、知らない景色を垣間見たような、そんな感覚。
とても楽しい体験だった。

風邪でダウンしてました。

2006-02-14 | 雑記
しかも、胃にくる風邪だったので、
食べるもの全てを戻してしまい、とても辛かった……。

というわけで、小説を書いている余裕がなかったので、
エクエス=デイの更新が滞っています。
本を読むのだけはたくさん出来たので、ひたすらに不定記に読書記録を更新しましたが。
さすがに書くほどには頭が回らなかった。

今はすっかり良くなっています。ご心配なく。

舞城王太郎『世界は密室で出来ている』(講談社ノベルス)

2006-02-14 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆☆★★(3/5)

「舞城王太郎」に二度目のチャレンジ。
前の作品(『九十九十九』)は、あまりにエロとグロに満ちた文章に不快になり、
最後まで読むことが出来なかったのだが、
この作品は「新青春エンタ」と名づけているだけあってさわやかな感じで(グロイ描写は散見されたが)、
比較的読みやすかった。
相変わらずほとんど改行のない、独特な文章だが、これが意外に読みやすい。
中身も、回り道するだけして最終的にはベタで、という感じがなかなか楽しめた。
純粋にエンターテイメントという感じでかなりよかった。
これでグロさがなければなぁ……。
人の死は相変わらず(確信犯的に)、記号でしかないし。

沖方丁『微睡みのセフィロト』(徳間デュアル文庫)

2006-02-14 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆☆★★(3/5)

著者曰く、「SFハードボイルド」。
超次元的な力を持つ感応者(フォース)と、普通の感覚しか持たない感覚者(サード)に区別された近未来が舞台。
この「超次元的な力」というのがキーワードで、簡単に言えば超能力と言うべきこの力が、
作品の中にふんだんに散りばめられている。
キャラクターもなかなか魅力的で、サイボーグ兵士な主人公と超能力少女なヒロイン、
それにヒロインの飼っている賢い猟犬の組み合わせなどは、まさにハリウッド映画さながらだ。
多用されるSF用語になかなか慣れないのと、
後半が多少あっさりしすぎていてもの足りなかったところが難点ではあるが、
一冊で完結する割にはしっかりSFしていて、かなり楽しめた。
一冊で終わらせるのはもったいないと思わせるほどの丁寧な設定が、この作品の魅力だろう。

壁井ユカコ『キーリ 死者たちは荒野に眠る』(電撃文庫)

2006-02-14 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆☆☆☆(5/5)

これは面白い!
静かで淡々とした語り口、
素直じゃないが優しい心に満ちた登場人物たち、
異世界ながらリアリティを持った世界観、
単純ではあるものの心理描写を丁寧に描くのに適したストーリー。
それら全てが、独特で繊細な雰囲気を創り出している。
最近の、ゲーム風な設定やストーリーのライトノベルとは一線を画した、
遠い国の御伽噺を思わせるような、質の高い物語だ。
二巻以降も、是非読んでみようと思っている。

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮文庫)

2006-02-06 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆☆☆☆(5/5)

これは面白い! 文句なしに面白い。
「五つの物語が“一枚の壮大な騙し絵”として収斂する」という触れ込みだが、
まさにその通り、五つの物語が非常に鮮やかな手法で一つに繋がっている。
ラストの方は、本当に引き込まれるままに夢中で読みすすめてしまった。

また、淡々としているようでいてユーモアが隠された文体もかなり好みで、
気持ちよくすらすらと読みすすめられた。

キャラクターもなかなか魅力的だ。
特に、「空き巣に入ったら必ず盗品のメモを残して被害者の心の軽減をはかる泥棒の黒澤」(池上冬樹氏の解説より)が、
非常にいい味を出していてお気に入りだ。

とにかく面白い!
ネタバレするわけにもいかないのであまり詳しくは述べないが、是非読んでみてほしい。
僕もこれから、伊坂幸太郎の作品を他にも読んでみようと思っている。

一乃勢まや『ISON―イソン―』(富士見ファンタジア文庫)

2006-02-05 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆★★★(2/5)

第15回ファンタジア大賞佳作。
遺伝子改造で人間離れした能力を持つ主人公トーヤと、幼馴染のティファが、
賞金首を捕まえる掃除屋(スイーパー)をしている、という設定は
かなりありきたりなもので目新しい要素はほとんどなかったが、
しっかりと基本を押さえた設定とストーリーはなかなか面白かった。
目新しくはないが、安心感をもって読めた、というべきか。
ただ、僕はあまりこういう設定の作品に馴染みがないから楽しめたのであって、
普段からこういう作品に慣れ親しんでいる人には物足りないかも。
僕としても、この作品よりは星野亮『ザ・サード』シリーズの方が、
インパクトとオリジナリティがあって好みだ。

志村一矢『月と貴女に花束を』(電撃文庫)

2006-02-05 | 批評のようなもの:小説
おすすめ度:☆☆☆★★(3/5)

第5回電撃ゲーム小説大賞選考委員特別賞受賞作品。
タイトルと表紙のイラストで気付くべきだったんだろうけど……
すっごいベタなラブコメだった!
そりゃあもう、第一章のタイトルが「目覚めれば新婚さん」なくらいベタ。
ただラブコメなだけじゃなくて、
この作品、すっごいベタな主人公の成長物語でもある。
まさに、一昔前の少年マンガのテイストだ。
ベタが好きな僕としては結構楽しめる感じだった。
ラブコメは苦手だけどね(笑)。
ちょっと恥ずかしくなるくらい幸せな、暖かな展開は、
読み終わったあとに元気になれるような、そんな感じがした。
まさにアニメをノベライズしたような書き方の文章も、
いい意味で「ライト」に仕上がっていて、読みやすかった。
多少読みごたえに欠ける気がしないでもなかったが、
暇つぶしに読むにはなかなかいい本だ。
ただ……この作品、続編が出ていて、六巻まであるらしいのだが、
一巻で綺麗にまとまって終わっているために、どうも続きを読む気がしない。
まぁ、機会があれば読んでみるかな。


世界設定の説明

2006-02-01 | 創作メモ
 短編や、現代社会を舞台にした作品ならともかく、ファンタジーやSFを書くときには、世界設定を適宜読者に説明する必要がある。その世界における魔法使いとはどんな立場かとか、主人公のいる国と隣の国が対立しているとか。僕の作品、「エクエス=デイ」でも、「神の騎士(エクエス=デイ)とは何か」ということを説明しなければならない。
 その説明をどれほどうまくやるか、ということがファンタジーやSFの小説の面白さの鍵となるといっても過言ではないだろう。それには、どのような方法があるだろうか。


◆地の文で説明する

 これが最も一般的な方法だろう。三人称なら地の文でいきなり説明を始めてもそれほど違和感がないし、世界設定を一番詳細に記述できる。
 ただ、問題なのは、キャラクター寄り三人称のときに、そのキャラクターが知らない情報を説明することは出来ないということだ。
 また、その世界の誰もが知っている情報を説明するには向いているが、現代ファンタジーのような場合には、タイミングが重要となる。普通に高校の授業を受けているときに、主人公の特殊な戦闘能力を説明したりするのはかなり違和感がある。授業を受けながら、先生の心の声を聞いてしまい、その後に人の心が読める、という主人公の特殊能力を説明するなら違和感がない。


◆会話で説明する

 僕が「エクエス=デイ」で使っている手法だ。誰か設定に詳しい人物がいて、その人が設定を説明するのが不自然でない時にのみ使える。
 しかし、地の文に比べるとあまり詳細な記述や長い文章は適さない。特に説明を担当するキャラクターがあまり聡明でなかったり、特殊な喋り方をするような場合は非常に読みづらいものになってしまう。


◆会話の内容を、地の文で説明する

 上記の問題を解決するための方法がこれ。つまり、説明の冒頭だけキャラクターに語らせて、残りを地の文が引き継ぐのだ。

  例)「つまり、この国はね――」
    彼女は得意げに話し始めた。
    彼女の話を整理すると、こういうことだった。
    この国はひとりの国王によって治められているが、彼はとても病弱で……

 この手法は、むしろ一人称に向いているかもしれない。まぁ、三人称でも出来ないわけではないだろう。


◆行動や描写で説明する

 これが一番難しいが、うまく出来ればわざとらしい説明にならずとてもスマートな方法だといえるだろう。
 「彼は怪力の持ち主だ」という代わりに素手でバットをへし折らせてみたり、「A国とB国は仲が悪い」という代わりに、なんでもない部屋の描写で「A国の戦闘機がB国に攻撃を仕掛けました」というニュースを流したりするのだ。
 うまく出来れば非常にかっこいい。が、説明の内容によってはなかなかそうもいかない。実際は、行動や描写と、地の文での説明を組み合わせることになるだろう。先に、「地の文での説明は、タイミングが大切だ」と述べたが、行動や描写は地の文で説明するタイミングを作り出すのに役に立つ。

 例)「ちくしょう!」
   誰もいない校庭で、彼は金属のバットを地面に叩きつけた。
   鈍い音がして、硬いバットが中ほどからへし折れる。
   とても人間業ではない。……この場合、それは文字通りの意味だった。
   そう、彼は人間ではないのだ。
   見た目は普通の人間に見えるが、彼の正体は「鬼」なのだ。
   この世には、彼のように人間に混じって生活する人にあらざるものが多く存在しているのである……。