「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その25・痛々しい彼

2023-03-31 21:49:00 | 傾国のラヴァーズその21~30
 午後になっても、高橋さんには呼ばれない。
「海原、一応泊まれる用意だけはしてこい」
 と言われて、トランクに荷物を詰めて会社に戻ったが、まだ連絡がなかった。
 ようやく高橋さんから電話が来たのは夜で、近くの居酒屋の個室で、彼と高橋さんとやっと契約になった。俺ではなく、月曜の担当の先輩が彼らを迎えに行った。

「すみません。僕が予定を取り違えていたばかりに、今日は一日中ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 彼の謝罪から始まった。
 
 高橋さんも何か言いあぐねているようだったし、彼に至っては、ほとんど俺と目を合わせてくれない。
 ただ、今日からよろしく、と張りついた笑顔で言ってはくれた。
 
 しかし、契約の方は無事に済んだ。
 場は和やかだったが、俺以外はみんな時間が気になっているようだったので、早々におひらきとなった。

 彼と一緒に帰るのは当然俺だが、俺は少し嬉しい気持ちになっていた。
 高橋さんにも、
「プレッシャーをかけるわけじゃないけど、そちらの課長さんにもメールしたけど、社長は海原さんに決まって良かった、って言ってたんです。端から見ててもすごくウマが合いそうに見えたし」
…と、よろしくお願いします、と言われた。

 …しかし、車の中で二人になってしまうと、彼はずっとうつむいていて、痛々しい感じがした。





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