「俺がいるからこの1ヶ月 は遊びに来ないんだろうな って思ってた」
「でもさ、オレに付き合ってる人間がいたら、最初から一緒に先輩に守ってもらうと思わない?」
「そういやそうだな」
と何気なく返事をしてから、俺ははっとした。
「でもびっくりした。聖名が フリーだなんて…」
「うーん、大学に入って2年くらいから、起業の準備を始めたら付き合う暇なんてなくなって自然消滅…って、やっぱり縁がないってことだよね」
「そうだな…」
俺が 次の話に困っているとテーブルの上の聖名の携帯が鳴った。
「あれ? 横浜のおじさんだ。もしもし…」
聖名の育ての父の矢野氏なのだろう。
聖名は動くのが辛いだろうと、俺はコーヒーカップと携帯を持って自分の部屋へいったん引き上げた。
…部屋の中で 俺は身構えていた。
聖名に用事を言われたらいつも以上に早く動きたかったからだ。
それにしてもこんな時間に電話なんて 矢野会長 絡みの話としか思えない。
電話は長かった。
〈ごめん。コーヒー入れなおすよ〉
と、聖名からLINEが来たので、俺は急いで部屋を出た。