聖名の笑顔はリラックスしていたので 俺は安心して冷蔵庫に食材を入れ始めた。
久しぶりの知人との商談は長電話になった。
それで 夕食は俺が適当作ったのだが 、聖名は美味しいと言ってくれた。しかし、そんな事よりも商談のことばかり楽しそうに話していた。
と、そこで何かを思い出したように、
「そういえば 土曜日って センパイは、休み?」
「いや、 この部屋で勤務だよ。あなたが行くところならどこへでもお供しますよ」
それでさっきの電話の主のもとへ行きたいと言われた。
「もちろん、いいですよ」
それを聞いた聖名の、ぱあっと広がった笑顔はいつも以上に輝いて見えた。
こっちまで幸せな気分になった。
しかし、俺がいつも通り 手早くシャワーを浴び終えて服を着ていると、洗面所のドアの向こうで聖名があたふたしているようなのが伝わってきた。
「聖名! どうした!」
急いでドアを開けると聖名は、
「非通知! 携帯に!」
と、怯えた表情で、自分の携帯を俺に渡してきた。嫌な思いを以前しているからだ。
それでも、まだ若い会社なので社長の聖名は非通知でも出ないわけにいかない。
そんな彼を守るためにも、俺はこの部屋に派遣されている。
俺は携帯を受け取ると落ち着いて出た。
ーもしもし。
電話の向こうは無言 だった。