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還暦おやじの洋楽日記

Blood, Sweat & Tears 3

ラジオの深夜放送を聴き始めた頃、頻繁に流れていたBS&Tの曲は「Lucretia MacEvil」だった。いきなり切り込むようなブラスのイントロは実にカッコ良かったなあ。ライバルのシカゴとよく比較されていたけど、シカゴがあくまでもワイルドなロックをベースにしていたのに対して、BS&Tはより知的でジャズに近いという評価だった。このアルバムは彼等の絶頂期の1970年に発表されたもの。

1. Hi-De-Ho (Gerry Goffin, Carole King)
2. The Battle (Dick Halligan, Steve Katz)
3. Lucretia MacEvil (David Clayton-Thomas)
4. Lucretia's Reprise (Blood, Sweat & Tears)
5. Fire and Rain (James Taylor)
6. Lonesome Suzie (Richard Manuel)
7. Symphony for the Devil (Dick Halligan) / Sympathy for the Devil (Mick Jagger, Keith Richards)
8. He's a Runner (Laura Nyro)
9. Somethin' Comin' On (Joe Cocker, Chris Stainton)
10. 40,000 Headmen (Steve Winwood, Jim Capaldi)

前作「Blood, Sweat & Tears」同様いくつかの曲は自作だが、大半は他のミュージシャンの楽曲を取り上げている。他者の曲をカバーし卓越したアレンジを施して提供するというスタイルは同時期に活躍したスリードッグナイトとも重なるが、スリードッグナイトが無名の新人の曲を発掘して名を馳せたのに対して、BS&Tの場合、それなりの知名度のミュージシャンの曲を取り上げているのは話題性を重視したのかも知れない。
静かに始まり徐々に盛り上がる「Hi-De-Ho」、スティーブ・カッツが淡々と歌い上げる「The Battle」、そしてカッコ良いイントロとデビッド・クレイトン・トーマスの熱いボーカルが光る「Lucretia MacEvil」と出だしは順調に進む。だが、このアルバム、竜頭蛇尾な感が否めないのだ。ジェイムス・テイラーの「Fire and Rain」にせよザ・バンドの「Lonesome Suzie」にせよ、ホーンがフィーチュアされることによってオリジナルの持っていたしみじみとした切なさが吹き飛んでしまったように感じる。ストーンズの「Symphony / Sympathy for the Devil」に至っては換骨奪胎、フリーキーなジャズ演奏が繰り広げられる。僕はジャズの素養がないので、ここら辺りから聴いてて正直ちょっと辛くなってきた。たしかに皆上手いよ。DC・トーマスのブルージーでソウルフルな歌唱力、演奏陣だってホーン奏者は言うに及ばずボビー・コロンビーの主張の強いドラムスなんてのも凄い。だが、前作はジャズとロックのブレンドの按配が良かったけど、本作はちょっとジャズに寄り過ぎでロック好きの耳には馴染めなかった。このサウンド、当時のジャズファンにはどう受け止められただろうか。ジャズファンから見ればロックは一段低い音楽だろうから、ロック寄りのジャズなんて苦々しく聴かれたのかも知れないね。まあ、ジャズとロックはその後こういうスタイルではなく、フュージョンとなって融合することになるのだが、当時はそんなこと知る由もなし。
粗野なロックシンガーのトーマスと、インテリっぽい他のメンバーとの人間関係もうまくいってたとは思えない。前作ほどの商業的成功は得られず、今俯瞰すると彼等にとっての「終わりのはじまり」となってしまったと思われるアルバム。

(かみ)
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