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還暦おやじの洋楽日記

PC98フォーマットのフロッピーデータの取り出し方

数年前に他界した親父が遺した大量のフロッピーディスク。この中に保存されているデータをを現在のWindowsでも使用できるように色々と格闘したので、その作業内容を記す。同じように遺品整理等でPC98フォーマットのフロッピーの扱いに困っておられる方の参考になれば幸いです。

<ここに至る経緯> (個人的な記述なので作業内容だけ知りたい方は読み飛ばして結構)
親父は技術系の研究職だったので1960年代から仕事でコンピュータを使っていたようだ。だから80年代になってパーソナルコンピュータが出現したときも、かなり早い段階から飛びついて家で使っていた。当時パソコンと言えば日本ではNECが標準だったため、親父もNECのPC-9801/9821を愛用していた。OSはずっとMS-DOSで、90年代に入ってもWindowsの波には乗り切れなかった。これは、技術屋だから仕組みを理解しないと気が済まない性格が災いしたようだ。DOS時代のコンベンショナルメモリーのマップまで手書きで整理していたぐらいだから、きっとWindowsに対しても同様のアプローチを試みたに違いなく、でも複雑すぎて手に負えなかったのだろう。多少はWindowsを触った形跡はあったものの、重要な作業は全てPC98のMS-DOS上で行ない、重要なデータは全てフロッピーディスクに保存していた。
仕事も引退し母に先立たれてからは、暇潰しに色んな記録をPC上に転記してデジタル化していたようなので、遺されたフロッピーディスクからのデータ取り出しは自分にとっても宝探しのような意味合いがある。
フロッピー自体が既に過去の遺物になってしまい、使える環境もどんどん狭まっている。遺されたフロッピーディスクそのものが経年劣化で読めなくなるリスクも日々増大する。400枚弱もあるフロッピーディスクの山に二の足を踏んでいたけれど、今やり切るしかないと腹を括った。

<作業の概要>
とにかくフロッピーディスクに保存し続けるのは劣化の危険があるので、データを別のメディアにコピーした上でWindows上で使用できるようにする。フロッピーは読めれば良いし、データをWindowsで閲覧できれば良い。従って作業は必要最低限にとどめた。
1. フロッピーディスク上のデータのハードディスクへのコピー
2. WindowsでのPC98エミュレーション環境の構築
3. 文書データのテキスト化
尚、対象のフロッピーディスクは3.5インチ、1.2MBフォーマットのもの。作業はWindows7 Home(64Bit版)で行なったが、並行してWindows10 Pro(64Bit版、ビルド=1909)でも動作確認した。
以下、順を追って詳細を記述する。

<1. フロッピーディスク上のデータのハードディスクへのコピー>
PC98フォーマットのフロッピーデータの場合、DOS/Vフォーマットとは異なり1.2MBでフォーマットされている。従ってフロッピーを読むためには1.2MBフォーマットをサポートしているドライブ(3モード対応フロッピーディスクドライブ)が必要となる。
ところが、バッファローやIOデータといった主要な周辺機器メーカーでは2010年頃に3モード対応フロッピーディスクドライブの扱いを終了しているため、新品を入手する場合はアマゾンや楽天等から掘り出し物のバルク品を物色するぐらいしか手がない。僕はもともと1台所有していたが、読んだフロッピーの中に不良ディスクが混じっていて壊れてしまい、メルカリで中古品を安く手に入れた。フロッピーディスクドライブはかなりデリケートな機構のようで、400枚弱を読み込む今回の一連の作業で結局4台も壊してしまったことも付け加えておく。
Windows10ではフロッピーはサポートされていないとの説もあるが、使用したUSB接続の3モード対応フロッピーディスクドライブは最新ビルドでもちゃんと認識されて動作した。
老婆心ながら、読み込むフロッピーディスクは念のためツメを操作して書き込み不可にしておいたほうが良い。最新のアンチウイルスソフトでウイルスと誤認識されてフロッピー中のファイルを強制消去されたことがあったから。

<2. WindowsでのPC98エミュレーション環境の構築>
親父はBASICやPROLOGでプログラミングもしていたから、それらがWindows上でも実行できるPC98エミュレーション環境も必要。ところがPC98エミュレータは個人が作ったフリーソフトに頼らざるを得ないという心許ない状況である。98がなくなってもまだ98ゲームを忘れられない人は一定数いるようで、そんな人達が精魂込めて開発したフリーソフトがかつては多数あったが、現在も更新されているフリーソフトとなると「T98-Next」と「Neko Project」の二択のようだ。ざっくり言うと、T98-Nextは機能が豊富、Neko Projectは操作が簡単というのが売りのようで、僕の場合は使用目的が単純なのでNeko Projectのほうを選択した。
Neko Project Ⅱ
使用したバージョンは64bit対応のVer0.86で、Windows7でもWindows10でも動作した。Windowsのレジストリは使わないのでインストール処理は必要なく、exeファイル(np2.exe)を起動するだけで動作する。
Neko Projectは直接フロッピーディスクとの入出力ができないので、仮想フロッピーディスクイメージをハードディスク上に作成しておくことが必要。仮想フロッピーディスクイメージを作成するフリーソフトもいくつかあり、使用したのは「ディスクイマージュ」(Ver13b)と「Virtual Floppy Image Converter」(Ver011010)。
ディスクイマージュ
Virtual Floppy Image Converter
ディスクイメージファイルの形式の違いについてはよくわからないが、Neko Projectで使用できるフォーマットはxdf形式だそう。上記のソフトでイメージファイルを作成したら後は簡単。Neko Projectを起動し、メニューバーの「FDD1」「FDD2」をそれぞれ開いて「Open」で使いたいイメージファイルを指定した上で「Emulate」から「Reset」を選べば、あたかも指定したフロッピーディスクが装着された状態でPC98が再起動される。

<3. 文書データのテキスト化>
MS-DOS時代のワープロソフトと言えば「一太郎」と「松」が双璧だったと記憶している。親父の文書は松文書(拡張子=bun)。一太郎はWindows版が現在でも販売されているので過去の文書もWindows版の互換機能により一太郎上で扱えるのだろうが、松はWindowsに移行することなく終わってしまった。当時の松がどの程度のワープロ機能を持っていたのか不明だが、親父の文書は複雑な機能は使っていなかったのでテキストファイルへの変換を行なう。フロッピーには新松のシステムディスクもあったので、前述のPC98エミュレータで松を起動して松自身のテキストファイル変換機能を使う手もあるが、煩雑な作業になってしまう。もっと効率的にテキストファイル変換ができる「xdoc2txt」というソフトがあった。ビジネス用途ならばシェアウェアだが、個人使用ならばフリーウェアという文書ファイル変換ソフト。
xdoc2txt
使用したバージョンは64bit対応のVer2.19.1で、Windows7でもWindows10でも動作可能。Windowsのレジストリは使わないのでインストール処理は必要ない。但し、このソフトはコマンドプロンプトでのコマンド入力が基本なので、Windowsで簡便なテキスト変換の実行環境を作るにはショートカットを作成するべき。作成したショートカットのプロパティを開いてリンク先の実行プログラム(xdoc2txt.exe)の後ろに"-f"という変数を追加する("-f"は「ファイルに出力する」という変数)。こうすればエクスプローラでファイル一覧を表示し、変換元の文書ファイルをこのショートカットにドラッグすると、変換されたテキストファイルが同一フォルダー上に作成される。
このソフトは松文書をテキストに変換するだけでなく、色んなフォーマットの文書ファイルからのテキスト変換ができる優れもの。対応するファイル形式は公式サイトに一覧表があるのでそちらを参照されたい。

<作業を終えての感想>
今回の一連の作業に必要な情報はすべてネットから仕入れた。特に参考になったのが以下のサイト。
ぼくんちのTV別館:PC9801エミュレーターを導入してみる
ぼくんちのTV別館:T98-next、Anex86、Neko Project II、各種PC98エミュの覚書き
必要な情報がわかりやすく整理されていて非常に役に立った。この場を借りて御礼を申し上げます。

次にPC98エミュレーションに関して。80年代のパソコンを牽引したNECもWindows時代になって守勢に立たされ、1997年に苦しい言い訳をしながらDOS/VアーキテクチャーのPCに鞍替えした。ハードはその後の数年間は販売されていたものの、その時点でPC98シリーズのユーザーは切り捨てられてしまった。PC98アーキテクチャーは今で言うガラパゴス仕様だから淘汰されることは仕方がないにせよ、それまでPC98シリーズを使って膨大なデータやソフト資産を作ったユーザーに対するNECからの救済措置があっても良かったのに。個人でエミュレータを開発・維持している人達には頭が下がるが、そういうものは本来、NECが責任を持って提供すべきだった。

それにしてもDOSの時代、データを保存するメディアは貧弱なものだった。今じゃ1TBのハードディスクなんて当たり前だから、容量は1MBちょっとのフロッピーディスクの百万倍になったということだ。その進化のスピードには驚くばかりだが、大容量化、高速化、小型化という時代の要請に伴なってメディアやインターフェースが変わっていくのはやむを得ない。古いフロッピーディスクを持っている方は早めに他のメディアに引っ越しされることをお勧めします。

(かみ)
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