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還暦おやじの洋楽日記

Crazy Eyes / Poco

1973年発表のポコの6作目。バンドの創始者であるリッチー・フューレイ在籍時の最終作となったこのアルバムを僕が買ったのは発表されてから数年経った後だったが、最初の印象はあまり良くなかった。

およそポコのイメージには似合わない黒を基調としたジャケットデザインもさることながら、フューレイが作ったタイトル曲の印象が強すぎた。約10分に及ぶこの大作は、ジム・メッシーナやクリス・ヒルマンも客演し、ストリングも導入したカントリー・ロック・シンフォニーとも言うべきもの。スケール感溢れる重々しさが、この時期のフューレイの苦しい立場を表しているようで、どうにも好きになれなかった。当時、ランディ・マイズナーはイーグルスで順調に活動し、ロギンズ&メッシーナは大成功を収め、それに引き換えポコはなかなか一流になれず、バンド内での力関係も変わってきたから、彼自身、閉塞感なり焦燥感を持っていたに違いないけど、明るさが身上のポコが暗くてはねえ・・・
と当初はリッチー・フューレイの視点からそのように思っていたが、この時期のポコをフューレイのバンドと捉えずにポール・コットンの視点で見ると俄然印象が変わるのだ。このアルバムはポール・コットンが初めてイニシアティブを取ったものであり、彼の成長と飛躍の記録と考えるべきなのであった。

1. Blue Water
2. Fools Gold
3. Here We Go Again
4. Brass Buttons
5. A Right Along
6. Crazy Eyes
7. Magnolia
8. Let's Dance Tonight


収録曲を作曲者別で分類すると、リッチー・フューレイ2曲、ポール・コットン2曲、ティモシー・B・シュミット1曲、ラスティー・ヤング1曲。この他に他人のカバーが2曲あるがボーカルはいずれもコットンなので、おそらく彼が主導したのではないか。
冒頭、コットン作のブルーグラス調の「Blue Waters」で軽快に走り出し、そのままインストゥルメンタルのヤング作「Fools Gold」にバトンを渡す。シュミット作の「Here We Go Again」、このアルバムで彼は1曲しか提供していないがをこの曲を聴くと、曲作りの能力がアルバムごとに上がっていったことがわかる。グラム・パーソンズの「Brass Buttons」はエレピの伴奏をバックにコットンが骨太なボーカルでしっとりと歌い上げる。続くコットン作の「A Right Along」はキャッチーなギターリフで隠れた名曲。
アルバムタイトルになった「Crazy Eyes」の感想は前述の通りだが、ドラマティックに盛り上げようとする気概はわかるが実に痛々しい。次のJ・J・ケイル作「Magnolia」のほうが哀愁漂うペダルスティールの音色が印象的で、ドラマティックな盛り上がりという点ではこちらのほうが優っている。そしてラストの「Let's Dance Tonight」を残してフューレイはバンドを去り、クリス・ヒルマン、J・D・サウザーとSHFバンドを結成、残された4人はメンバー補充せず活動を続ける。(やがて数年後にシュミットをイーグルスに取られ、最大の危機を迎えることになるのだが)

このブログで以前にも書いたが、僕はこの時期のラインアップがいちばん好き。このメンバーでのスタジオアルバムは「From The Inside」「A Good Feelin' To Know」「Crazy Eyes」の3枚だが、アルバムの出来としては各曲の粒が揃っているこのアルバムがいちばんかも知れない。実際、自分がいちばん良く聴いたアルバムは実はこれ。でも、改めて3枚を並べて聴き直すとバンド内の力関係が移り変わっていく様が結構露骨にわかってしまうんだよな。

(かみ)
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