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還暦おやじの洋楽日記

Down the Road / Manassas

マナサスの活動期間は1972年から73年にかけての2年ぐらい。この前後にCSN&Yの活動終息と再結成ツアーの敢行や、バーズの一時的な復活、サウザー・ヒルマン・フューレイバンドの結成等があり、70年代前半のウエストコースト人脈のめまぐるしい離合集散の嵐に翻弄されて、短く儚い活動に終わってしまったのは今にして思えば残念なことだった。

1. Isn't It About Time
2. Lies
3. Pensamiento
4. So Many Times
5. Business on the Street
6. Do You Remember The Americans
7. Down The Road
8. City Junkies
9. Guaguancó de Veró
10.Rollin' My Stone

僕はマナサスは完全に後追いで、このアルバムもCD時代になってから入手した。デビューアルバムは賞賛されて世間に迎えられたものの、このアルバムはひっそりとリリースされ話題にもならなかったことは覚えている。デビューアルバムが2枚組だったから、このアルバムは随分コンパクトに思える。それに、前作よりも南部のサウンドとスパニッシュな色合いが強まった。
「Isn't It About Time」からしてスティルス流のブルージーなナンバー。ヒルマン作の「Lies」も泥臭いが、泥臭さで言えばアルバムタイトルとなった「Down The Road」が極めつけ。全編スペイン語の「Pensamiento」を経た「So Many Times」はCSN&Y風のコーラスで、このアルバム唯一のアコースティックな曲。「夜をぶっとばせ」みたいなイントロの「City Junkies」は「New York City took my love away」というフレーズが執拗に繰り返されるハートブレイクな歌詞だが、実生活のスティルスはフランス人シンガーのヴェロニク・サンソンと熱々だった時期で「Guaguancó de Veró」の邦題は「素敵なヴェロニク」。ヴェロニク・サンソンは一時期日本でも紹介されたが、フランス人形のような華やかな美人シンガーだった。この曲は邦題から想起されるような甘ったるさはなくラテン系の明るいナンバー。

マナサスが短命に終わった理由について、てっきりスティルスがCSN&Yの夢を忘れられず再結成のためにマナサスを捨てたのだと思っていたのだが、どうやら実際は違うらしい。むしろヒルマンがバンドのナンバー2の座に収まりきれなくなってしまったのが原因のようだ。彼はマナサス在籍中にオリジナルバーズの一時的な再結成アルバムを制作し、マナサス解散後は、アル・パーキンス、ポール・ハリスらのメンバーを引き連れて、J・D・サウザー、リッチー・フューレイとのサウザー・ヒルマン・フューレイバンドに参画する。しかし、もともとアサイラムレコードが主導して結成されたこのスーパーバンドは結局、長続きしなかった。
10年ぐらい前にリリースされたお蔵出しの「Pieces」のことは以前にこのブログでも取り上げたが、僕はそのアルバムに感じられる剥き出しの臨場感が大好きで、それに比べるとこのアルバムは地味。だが、その後のサザンロックの興隆に先駆けた作品であり、その登場は少し早すぎたようだ。もっと評価されるべき佳作。

(かみ)
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