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還暦おやじの洋楽日記

Chicago 13 / Chicago

シカゴの歴史が語られる際、テリー・カスの事故死から「Hard to Say I'm Sorry(素直になれなくて)」が大ヒットするまでの間は、暗黒の時代とされるのが常。アルバムで言えば「Hot Street」から「XIV」の3枚がその時代に該当するのだが、「Hot Street」推しの立場としては異を唱えたい。「Hot Street」はシカゴの新生面を見せてそこそこヒットした名盤だが、本当に低迷が始まったのは1979年発表の「13」からであると。

1. Street Player
2. Mama Take
3. Must Have Been Crazy
4. Window Dreamin'
5. Paradise Alley
6. Aloha Mama
7. Reruns
8. Loser with a Broken Heart
9. Life Is What It Is
10.Run Away

(Bonus Tracks)
11.Closer to You
12.Street Player (Dance mix)

時はディスコ全盛時代。デビッド・ホーク・ウォリンスキー/ダニー・セラフィン作の「Street Player」を初めて聴いたときは「けっ、シカゴもディスコかよ」と思ったものだが、そうではないのだ。客演したメナード・ファーガスンのいななきトランペットもカッコ良く、初期のブラスサウンドのダイナミズムを髣髴とさせる熱いナンバーで、これはアルバム随一の傑作。このアルバムはこの曲だけ聴けばそれで充分、と言ってしまうと身も蓋もなく本稿も終わってしまうので、もう少し続ける。

「Must Have Been Crazy」はドニー・デイカスのソロワークとも言える曲で最初のシングルとなったがヒットせず。「Window Dreamin'」は強烈なファンクだが、アナログ時代はこのあたりでレコード針を降ろしていたので、ここから先の曲は印象が薄い。このアルバムで彼等が目指したのは、アヴァンギャルドで都会的なファンクロックなのだろうが、アルバム全体を通して楽曲自体に魅力的な作品が乏しいんだよね。コマーシャルな曲は「Street Player」「Must Have Been Crazy」以外はピーター・セテラの「Loser with a Broken Heart」ぐらい。この曲は後年の「Hard to Say I'm Sorry」「You're the Inspiration」の流れを汲むセテラ節だが、このアルバムでは明らかに浮いている。ただ、改めてアルバムを聴いて「Life Is What It Is」が意外に洒落たナンバーであることに気付いた。特に透明感のあるデイカスのバッキングボーカルが良くて、ボーナストラックで収録された「Closer to You」といい、音楽面に於けるデイカスのこのキャラクターは当時のバンドに得難いものだったはず。どれだけの素行不良だったか知らないが、彼を解雇したのはもったいなかった。僕は観に行かなかったが、セラフィンが結成したCTA(California Transit Authority)というバンドが今年4月に来日してライブをやり、ゲストとしてデイカスも参加したとのこと。美青年だった彼も、雑誌で見た近影では年齢相応のオヤジになっていた。

おそらく、このアルバムのサウンドを指向したのはロバート・ラム。セールス面で惨敗したため、バンド内での彼の地位が相対的に弱まり、代わりにピーター・セテラが台頭して「16」の商業的成功に繋がった、と見るのが妥当なところ。当時はそんなこともわからなかったが、何十年も経つと見えてくる。そういう意味でエポックメイキングなアルバムだった。

(かみ)
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